LINKIN PARKのあの日、あの時 15

2012年9月29日 (土)


2007年開催のLive Earthの取材現場ではただならぬ空気が…
文●有島博志(GrindHouse)

 連載前回LINKIN PARKが、3枚目『MINUTES TO MIDNIGHT』(2007年)発売直後の7月に開催されたLive Earth参戦のときの話を書いた。で、執筆後少ししてからふと思い出した、「あー、あんとき現場けっこう荒れ模様だったな」と。

 そのLive Earthのとき、自分はデイヴ・“フェニックス”・ファレル(b)との対面取材が予定されていた。写真撮影はなく、取材のみ。与えられた取材時間は確か15分、または20分のどちらかだったと記憶する。その時間内に写真撮影をするかしないかはけっこう大事なポイントになる。仮に撮影をする場合、その時間を5分とすると、そのぶん取材を早めに終えなければならない。まさにちっちゃいながら時間との闘いとなる。よって取材中、相手と話をしながらどうしてもチラチラ腕時計や部屋の壁にかかっている時計を見ては時間の流れを掴みつつとなってしまう。この仕事についてもう長いけど、自分はいまだにこれがヤでヤで仕方がない(笑)。正直、落ち着かないし、取材に専念することも難しいし、第一、時計を見ながら話をするなんて相手に失礼極まりない。だけど、これだけはどうしようもないし、相手もそれをわかってくれているのだけど…。もし予定時間をオーバーすれば、当然取材スケジュールに遅れが生じる。後続の取材団に迷惑をかけることになる。ヘタすると、そのせいでオーバーした時間分そのまま後続の取材団の持ち時間が削られる、ということもたまに起きる。かつて何度か、そういったことで割を喰ったことがある(笑)。

 フェニックスとは取材だけだったので、気持ち的には軽やかな感じで集合場所に指定されていた幕張メッセ楽屋裏通路に着いた。アーティストが大物であれ、中堅であれ、新人であれ、取材現場が荒れ、緊張感が漂う、なんていうことがもし仮にあったとしても、非常に希だ。が、このときはすでにただならぬ空気があたりを覆っていてピリピリしていた。思わず立ち止まり、「いったいなにが?」とあちこちを見回すほどだった。大メディアのライヴ映像撮影隊と、日本のレコード会社のスタッフ数人が向き合い、真剣な面持ちで話し合っている。そこから少し離れたところに(当時の)マネージャー氏の姿も。するとレコード会社の女性スタッフ1人がその集団から離れ、そのマネージャー氏のところにいき話をし出した瞬間、彼が首を左右に振ったのを目撃してしまったのだ。「あ、なんかの許諾が下りないんだな」と即ピンときた。話はこうだ。映像撮影隊がそれから数時間後に行われるLINKIN PARKのライヴの模様を数曲収録することになっていた。これ自体の許諾は下りていたのだけど、マネージャーはその映像を確認のため一度事前に見せてほしい、その後に放送を、ということを主張し、一切譲歩しない。しかし、それに対し映像撮影隊は頑として譲らず、それはできないの一点張りで、話は平行線のまま。日本で、これだけ緊張感の高い取材現場に居合わせたのはこのときが初めてだ。あれからもう5年以上もの月日が流れている。すでに時効と判断し、今回書くことにした。だけど、その話がどう落ち着いたのかはいまだに知らない(笑)。

 そうしたある種の交渉ごとにバンドが介在することはない。よって緊張感が張り詰めた環境下でも取材は粛々と進んでいく。「○○○さーん、次こちらの部屋で取材なので、ここでお待ちくださ〜い」というような案内の声が上がる。同じくLive Earth出演者のひとりだった、黒人女性シンガー、リアーナが関係者たちと思しき人たちと楽しそうに談笑していた姿も遠目に見えた。なんともなぁ的アンバランスな空間も、そこにあったのもまた事実だ。ちなみに吐露すると、その黒人女性がリアーナ本人だと知ったのは、それから数時間も経ってからのことだった(笑)。

 フェニックスは物静かな人、という印象が強い。決して饒舌っていう感じでもないし、誰かを差し置いてまでも「我が我が」と強く自己主張する人でもない。それでいて、自分の考えや想いはわかりやすくきっちり話してくれる人だ。彼はこう言いつつ自分の前に座った。

「実はオレさ、1時間半前に日本に着いたばかりなんだよ。もう時差ボケ必至だよね(苦笑)」

 来日公演を行う場合、普通アーティストは初日公演前日にやってくるものだ。LINKIN PARKほどの大物になれば、初日公演の2、3日前に来日し、体調を万全にしてから臨む、ということも決して珍しくない。だけど、このときフェニックスは…。

「ほかのメンバーたちは昨日来日したんだよ。だけど、オレはちょっとした個人的な理由から来日が今日になり、あと数時間後にはステージに上がる(苦笑)。日本は大好きな国だけど、今回の滞在は24時間もないんじゃないかな。ものすごく短い旅さ」

 「わ、スーパースターのスケジュールってやっぱハード」と思ったと同時に、「ちょっとした個人的な理由」というのも気になった。だけど彼はそれを詳しく話そうとはしなかったし、それを受けて自分もあえて言及することを避けた。その相手がLINKIN PARKであれ、誰であれ、またその環境が取材であれ、ただの立ち話であれ、それに踏み込まないというのはマナーだし、限られた短い時間内での取材を円滑に進める手段のひとつだとも思う。そして取材中、『MINUTES TO MIDNIGHT』で初めてタッグを組んだ超大物プロデューサー、リック・ルービン(RED HOT CHILI PEPPERSSLAYERSLIPKNOTほか)についてこう語った。

「リックは、前2作を一緒にやったドン・ギルモアとはあまりに違う仕事の仕方をする人でね。ドンとの仕事に慣れていたぶん、最初は驚くことも多かった(笑)。なにしろリックはほとんどスタジオにこないし、きてもいる時間が短い。サウンド面の多くもエンジニアに任せっきり。だからマイク(・シノダ/vo,g,key)の名前が今作に共同プロデューサーとしてクレジットされている。彼の貢献度は計り知れなくデカかったから。つまりリックは船の舵取りのような存在で、全体のビジョンを大切にするタイプのプロデューサーでね。リックのスタジオにいる時間が短かったぶん、そこにはフリーダムがあったし、それでオレたちも突っ走ることができた。だけどね、たまに不安になることもあったよ。だってリックが現場にいないんだもん(笑)」

 間違いなく、これはフェニックスの本音だ。先述したとおり、自分の考えや想いをわかりやすくきっちり話してくれる人なのだ。

 取材終了から数時間後、LINKIN PARKはステージに上がり、熱演を繰り広げた。途中マイクがカンペを見つつ日本語でLive Earth開催の趣旨である“地球温暖化防止活動”の重要性を説明している姿や、その内容に胸を打たれたし、その内容は後に彼らが運営することになる非営利チャリティ団体、Music For Reliefでも生かされていることも後にわかった。また、このライヴの最中、マイクが楽曲によってギターやキーボードを弾く姿も初めて観た。それまでのライヴでは観られなかったことだった。


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■■■ 有島博志プロフィール ■■■

80年代中盤よりフリーランスのロックジャーナリストとして活動。積極的な海外での取材や体験をもとにメタル、グランジ/オルタナティヴ・ロック、メロディック・パンク・ロックなどをいち早く日本に紹介した、いわゆるモダン/ラウドロック・シーンの立役者のひとり。
 2000年にGrindHouseを立ち上げ、ロック誌GrindHouse magazineを筆頭にラジオ、USEN、TVとさまざまなメディアを用い、今もっとも熱い音楽を発信し続けている。
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