MARILYN MANSONのあの日、あの時13

2012年9月22日 (土)


4枚目『HOLY WOOD(IN THE SHADOW OF THE VALLEY OF DEATH)』発売!
文●有島博志(GrindHouse)

 MARILYN MANSONの4枚目『HOLY WOOD(IN THE SHADOW OF THE VALLEY OF DEATH)』は、2000年11月に発売された。2枚目『ANTICHRIST SUPERSTAR』('96年)、『MECHANICAL ANIMALS』('98年)と続いた3部作の完結作であり、そのコンセプト、ストーリーは発売順とは逆に、今作から『MECHANICAL ANIMALS』と続き、『ANTICHRIST SUPERSTAR』で締めくくられる。それぞれの作品に独自のストーリーが託されているけど互いにリンクしている。

 『MECHANICAL ANIMALS』発売に伴うワールド・ツアーの続編、Rock Is Dead Tourを、'99年8月に富士急ハイランド・コニファーフォレストで開催されたサマソニの前身フェスとも言われるBeautiful Monsters Tour参戦などで締めくくったバンドは束の間のオフをとった。そして早々と次作の作業に取りかかり、まずハリウッドヒルズにあるマンソンの自宅で曲作りが進められた。その流れで、ストリート・レベルでメタルとハードコアを融合するという独自の音楽をやっていたBARKMARKETのリーダーとしても知られたデイヴ・サーディ(vo,g)を招き、マンソンとの共同プロデュースの下、レコーディングにも突入した。かの超大物プロデューサー、リック・ルービンの所有スタジオ、ザ・マンション・スタジオなど数ヵ所が使われた。それまでの作品群にないくらい長期間の制作作業に及び、2000年中盤まで費やされた。大半の楽曲はトゥイッギー・ラミレズ(b)、ジョン5(g)、マンソンによるものだけど、マドンナ・ウェイン・ゲイシー(key)もジンジャー・フィッシュ(ds)も作曲過程においてたくさんのアイディアを出した。そうして今作は、MARILYN MANSONにとって初めてメンバー全員が曲作りに関った作品となった。

 2000年6月、ハリウッドの某レコーディング・スタジオで新音源の試聴会が開かれ、その後マンソンが日本から現地に飛んだ取材団一行の囲み取材に応じた、ということがあった。レコーディングは完了したものの、まだマスタリングなどの最終作業が残されていた、いわば未完成音源をわざわざそうした試聴会という場を設けて取材団に聴かせ、その後、囲みではあったものの取材も受けた、っていうことはまさに異例中の異例の出来事だった。これまでのストーリー連載を読んでいただければわかるはずだ。裏を返せば、それだけマンソンが今作に賭けていたということだ。ただ、なぜかこのときの自分の記憶がハッキリしない。スタジオ名も、新曲を何曲聴いたかも覚えてないのだ。確かなのは、マンソンがすこぶる上機嫌だったっていうこと。手元に残る一問一答で、マンソンはこう切り出している。

「今作は、今までのどの作品よりも焦点が定まっていると思う。今までにやってきたこと(コンセプト、ストーリー)の締めくくりでもあるから、ストーリーを完結させるという意味では特別な作品と言えるかもしれない。今作ではオレの音楽的スタート地点を語り、歌っていて、どうやってオレがここまでこれたかをも知ってもらえると思うんだ」

 初めて共同プロデューサーとしてタッグを組んだデイヴのことも絶賛した。

「彼はオレの好きなバンド(BARKMARKET)出身ということもあるし、前からリード・ヴォーカルという立場にい続けているから、オレの立場というものも本当によく理解してくれたんだ。いい仕事関係を築くことができたね。今まで一緒にやってきたプロデューサーの誰よりもオレをいい方向に導き、そして押してくれたんだ。オレにとっての外部プロデューサーって、その人からどれだけのものが得られるかっていうことがポイントだから」

 3部作のストーリーをわかりやすく言うとこうなる。今作では、自分を必要としない世界に受け入れられるために努力する主人公のことが描かれている。それはすなわち、理想主義と革命への渇望を意味する。そして次の『MECHANICAL ANIMALS』では主人公が起こそうした革命が商品にされ、『ANTICHRIST SUPERSTAR』では自分を創造した大いなる力によって支配されるか、自らを破壊して再出発をするかのどちらかの選択を迫られる、というものだ。

「今作を含む3部作のストーリー、コンセプトをわかりやすく言えば、ようはオレの今日までの自叙伝なんだ。それを逆さに綴ったわけさ。周りの人間みんなが完璧だと思う世界、完全だと思う物事に馴染めない男が主人公。その価値観に合わせるためにものすごい努力をするけど、そのたびにみんなにけなされ、バカにされる。まさに昔のオレさ(笑)。やっとその完璧とされる地点に到達した自分の廻りをふと見回すと、そこにいるのは今まで自分をけなし続けた人ばかり。それに憤慨を覚え、革命が起こる。今作ではその部分を綴った。世のなかを変えたいという欲求、革命についての作品さ」

 前作のジャケには両性具有のエイリアンとして登場したマンソンが今作では一転、十字架に架けられた顎のないキリストのごとく描かれている。メディアが作り上げる殉職者を崇拝するアメリカ人気質と、検閲に対する非難を隠喩したものだそうだ。当然、本国アメリカではこのジャケは発売前から物議を醸した。上からボール紙のスリーヴをかけられて出荷されたケースや、小売店のなかにはオリジナルジャケのままでの仕入れを拒否したところもあった。テネシー州メンフィスでは今作の発売を中止しないとハンガーストライキを決行すると脅してきた教会の牧師もいた。あちこちから再びバッシングを浴びる…マンソンにとってはまさに願ったり叶ったりの状況が今作発売前にすでにでき上がっていた。すべてが恰好のプロモーションとなり、マンソン、そしてMARILYN MANSONへの注視はより強まった。

MANSON'S SINGLE COVER GALLERY

「THE FIGHT SONG」 (2001年)
連載前回ではこのコーナーはお休みしているので、第11回に続くものとなる。そのときは今作からの1stシングル『DISPOSABLE TEENS』(2000年)だったので、今回は2ndシングル『THE FIGHT SONG』を。例のごとく2パート形式の同時発売だ。(写真左)
『〜RARE TRACKS』との副題がつき、8曲入りで日本盤化(ジャケ3番目)もされたけど絶版だ。(写真下)
初回生産盤限定で5枚組のタロットカードがついていた。PVはバンドの演奏シーンとアメフトの試合模様の合体という奇妙な設定だった。よってジャケはPVのシーンからとられたものではない。相変わらず不気味だ。Bサイドではタイトル曲のSLIPKNOTやマドンナ・ウェイン・ゲイシーによるリミックス・ヴァージョンが聴けた。

 音楽的方向性としては、前作はマンソンがデヴィッド・ボウイなどの70'sグラム・ロックからの音楽的影響が我々が思う以上に強いことを知らしめたものだった。今作はそれとはまた異なる作風が貫かれている。前々作のそれを想起させるダークさが始終覆い、インダストリアル・ミュージック風味もまた戻ってきている。2分台、3分台といった尺が短く、実にコンパクトにまとまったタイプの楽曲が大方を占めるのも、今作の特徴だ。あくまでも個人的想いで恐縮だけど、実は今作は思っていたほどハマらなかった。正直、聴いた頻度もそんなに多くない。決してこの作品の出来がよくない、とかではなく、前2作から浴びせかけられた衝撃があまりにもデカ過ぎたからだと思う。それでも「The Love Song」「The Fight Song」「Disposable Teen」、前回のストーリー連載に書いたコロンバイン高校銃乱射事件にインスパイアされた「The Nobodies」、リフにハッキリとジョン5の“色”が出ていると思しき「The Death Song」、インダストリアルな「Born Again」「Come Back」などが好きだ。マンソンが言う。

「前2作を作っているときに学んだ音楽的要素と曲作りのアプローチを基にして、それをさらに壮大でいいものにしようとした。簡単に言えば、前々作のアグレッシヴさと、前作のメロディと楽曲の強さを兼ね揃えた作風と言えるんじゃないかな」

 今作の話はなおも続く…。



MARILYN MANSON 関連タイトル!

CLAWFINGER / 『CLAWFINGER』('97年)
デビュー作『DEAF DUM BLIND』('93年)を初めて聴いたとき、マジで鳥肌が立った。ときに跳ね、ときにうねり、またときにガシガシ攻め込んでくるエレクトロ・ビートに鋭角で重量感にも満ちたギターリフとシーケンサーが絡みまくり、ラッピング・ヴォーカルが煽りつつ引っ張っていく、というスタイルは、当時他に類を見ないものでとても斬新だった。めちゃくちゃカッコよかった!また、彼らがスウェーデン出身というのもインパクトがあった。このスタイル、音楽的混ぜ合わせアプローチは、当時まだ黎明期にあったミクスチャー・ロック・シーンを強く刺激した。本当は上記デビュー作や2枚目『USE YOUR BRAIN』('95年)を聴いてほしいところなのだけどともに絶版で入手困難なので、3枚目にあたる今作を取り上げた。基本的な音楽的スタイルは前2作と同じだ。実はかつて一度だけ来日したこともある。
文●有島博志(GrindHouse)

MARILYN MANSON 最新作ニュース

■■■ 有島博志プロフィール ■■■

80年代中盤よりフリーランスのロックジャーナリストとして活動。積極的な海外での取材や体験をもとにメタル、グランジ/オルタナティヴ・ロック、メロディック・パンク・ロックなどをいち早く日本に紹介した、いわゆるモダン/ラウドロック・シーンの立役者のひとり。
 2000年にGrindHouseを立ち上げ、ロック誌GrindHouse magazineを筆頭にラジオ、USEN、TVとさまざまなメディアを用い、今もっとも熱い音楽を発信し続けている。
※ ※ ※ ※ ※

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3部作の第三弾にして第一幕

Holy Wood In The Shadow Of The Valley Of Death

CD

Holy Wood In The Shadow Of The Valley Of Death

Marilyn Manson

ユーザー評価 : 4.5点 (138件のレビュー) ★★★★★

価格(税込) : ¥1,728
会員価格(税込) : ¥1,590

発売日:2007年03月07日

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3部作の第二弾

Mechanical Animals

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Mechanical Animals

Marilyn Manson

ユーザー評価 : 4.5点 (62件のレビュー) ★★★★★

価格(税込) : ¥1,851
会員価格(税込) : ¥1,703

発売日:2011年10月12日
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3部作の第一弾にして最終章

Antichrist Superstar

SHM-CD

Antichrist Superstar

Marilyn Manson

ユーザー評価 : 5点 (91件のレビュー) ★★★★★

価格(税込) : ¥1,851
会員価格(税込) : ¥1,703

発売日:2011年10月12日

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最新作(輸入盤/国内盤)

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    価格(税込) : ¥1,771
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    発売日:2012年04月30日


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  • Born Villain

    CD

    Born Villain

    Marilyn Manson

    ユーザー評価 : 3.5点 (3件のレビュー)
    ★★★★☆

    価格(税込) : ¥2,700
    会員価格(税込) : ¥2,484

    発売日:2012年04月25日


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関連タイトル

Clawfinger

CD 輸入盤

Clawfinger

Clawfinger

ユーザー評価 : 5点 (3件のレビュー) ★★★★★

価格(税込) : ¥2,095
会員価格(税込) : ¥1,823

発売日:2008年10月13日

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