THE OFFSPRINGのあの日、あの時 8 『THE OFFSPRINGのあの日、あの時』へ戻る

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2012年8月22日 (水)


この頃、THE OFFSPRINGは葛藤と前進意欲の狭間にいた…
文●有島博志(GrindHouse)

 連載前回にも書いたとおり、THE OFFSPRINGは『IXNAY ON THE HOMBRE』発売から10ヵ月後の'97年12月に再来日し、5都市を巡演し、計8回公演行った。そのさなかの東京滞在中に、デクスター・ホーランド(vo,g)の対面取材が実現した。作品を重ねるたびにバンドがどんどんビッグになっていくことについて、当時デクスターはこんなふうに語っている。

「今回アメリカでは頭っから規模のデカいアリーナ・クラスの会場を使ってのライヴが多かったんだけど、オレ自身は今でも小さい会場のライヴの方が好きでね。今回の日本公演はほかより小さい規模の会場を使ってのものだからすごく楽しい。観客がより近いところにいた方が、エネルギーもより多く感じることができるしね。もちろん、実際の距離がすべてじゃないだろうけど、やはりライヴの最中は観客をそこに参加させ続けなければならない。それなのに、大きい会場だと観客に“自分たちもライヴの一部なんだ”って実感してもらうのが難しい。売れるということは決して悪いことじゃない。むしろ嬉しいし、とてもありがたいことだとも思う。どうもオレたちは根っからのD.I.Y.バンドのようだよ(笑)」

 D.I.Y.バンド…ほかのなにかに頼らず、自分たちの力ですべてを切り盛りし、やっているバンドのことを言う。パンク・ロック・リバイバル・ムーヴメント、つまり“メロコア”が欧米や日本で大隆盛を見せたとき、このD.I.Y.という言葉がひとつのキーワードになったことがある。この手の音楽好きの間でしょっちゅうその言葉が語られ、その発言や活動アティテュードからD.I.Y.バンドと思しき連中は超カッコいいとされた。今考えると実に興味深い話だ。“メロコア”ブームはこうした風潮も生んでいたのだ。この連載を最初から読んでもらえばわかるとおり、THE OFFSPRINGはもろD.I.Y.を地でいくバンドだ。ほかの“メロコア五天王”と言えたGREEN DAYBAD RELIGIONRANCIDNOFXもみな出自から今日に至るまでの間、頑なにその活動アティテュードを変えていない。THE OFFSPRINGやGREEN DAYはメジャー・レーベルという巨大機構に属したものの今もなお不変だし、BAD RELIGIONは結局メジャーの水に合わず、自ら進んでEpitaph Recordsに出戻った。NOFXはご存知のとおり、頑としてメジャーにはいかなかった。そうした背景や活動アティテュードがあるだけに、上記デクスターのコメントからはD.I.Y.バンドがビッグになっていくことの難しさを垣間見せる。デクスターがさらにこう続けた。

「ライヴの規模が大きくなっていくにつれて、“ショウ・ビジネス”という言葉もだんだん身近なものになってきているよ。自分のなかにあるその言葉に関するイメージもかなり変わったと思う。だけど、それって実は簡単なことでさ。バンドにいれば、誰だって自分たちの本質は変えずも進歩したいと思うようになるからね。最初に日本にきたときは…それこそ45分間くらいしかプレイできなかった(笑)。日本の観客についてもよくわかっていなかったから、自分たちにできる一番のことは、ステージに上がり、ただただできる限り速くプレイすることだけだと思っていたしね(笑)。だけど、今はみんながいろいろな楽曲をプレイしてくれと望んでいるのがわかるし、プレイ以上のものを見たいと望んでいるとも思えるんだ。オレ自身も今は、ステージに上がってただ20曲ドドドッとプレイするだけというのは退屈だから、いろいろなものを加えて面白いものにしたいと思うようになったし、自分も観客も楽しめるものにしたいとも考えているんだよ」

 この対面取材中や、その直後にはそんなふうには思わなかったけど、今回改めてその頃のバンドを取り巻く環境や状況を思い返し、手元に残る取材内容全文を読み返すと、当時のデクスターの心のなかに深く宿る二面性がよく表れていることがわかった。D.I.Y.バンドがビッグになっていく過程での難しさを痛感しているところと、もはや直面していたビッグになっていくことを徐々に受け入れ、則し始め、そこで新たなことをやろうとしているところが一度の取材で見事に出ているのだ。これまでに何度もデクスターを対面取材してきているけど、こうした二面性が一度の取材でハッキリと出たのはこのときが初めてのように思う。ここから、外からは絶対に覗くことのできない、当時の彼のなかにおける彼のロック・シーンでの立ち位置が透けて見える。葛藤がありつつも、前にも進もうとしている彼の姿も浮き彫りになっている。これはなにも彼に限ったことじゃなく、ヌードルス(g)、グレック・K(b,vo)、そしてロン・ウェルティ(ds)も同じように感じていたはずだ。欧米で一大ブレイクするのと、日本でのそれとは規模もケタもあまりに違う。欧米で一大ブレイクするということは、すなわちそれまでとは住む世界が異なるということを意味する。もちろん、さまざまな恩恵を授かるのも紛れもない事実なのだけど、と同時にそれと同等の、イヤそれ以上の負荷も圧しかかってきて、決断を迫られることも少なくない。この時期、THE OFFSPRINGは間違いなく、このただ中にあった。が、しかし、こうした状況、環境をうまく乗り切り、次作かつ通算5枚目の『AMERICANA』('98年)で、彼らはさらなるブレイクを成しとげるのであった…。

THE OFFSPRING関連タイトル!

AFI / 『THE ART OF DROWNING』(2000年)
 THE OFFSPRINGの再来日公演に同行することで初来日したのが、このAFI(A FIRE INSIDEの略)だ。2枚目『VERY PROUD OF YA』('96年)からこの5枚目『THE ART OF DROWNING』まで、デクスター主宰のNitro Records所属した。USカリフォルニア州北西部ユカイア出身の4人組で、今年で結成21年を迎えたベテランだ。“メロコア”ブーム真っ只中の時期にはもうシーンの最先端で活躍していたけど、その音楽性も、また立ち位置的にもほかの“メロコア”勢とは一線を画していたのが、彼らの特徴。強烈なるカリスマ性を放つデイヴィ・ハヴォック(vo)がフロントに立ち、ややゴシック色漂わせ、物悲しい響き満載のシンガロング・コーラスを連発/連打する独自のスタイルを誇る。今作でかなりの注目と期待を集め、後にメジャー・レーベル、DreamWorks移籍を経て発売した6枚目『SING THE SORROW』(2003年)で完全に突き抜けた。つまり、今作は“大成功前夜作”というわけだ。が、しかし、残念ながら日本での人気度 & 評価度はあまり芳しくない。なぜそうなのか、日本のパンク・ロック界の“七不思議”のひとつだと自分は思う。
文●有島博志(GrindHouse)

THE OFFSPRING 最新作ニュース


  • OFFSPRING ニューアルバム!
    4年ぶり、待望の新作がいよいよリリース!国内盤限定のシークレット・トラックで未発表ライヴ音源が3曲収録!

■■■ 有島博志プロフィール ■■■

 80年代中盤よりフリーランスのロックジャーナリストとして活動。積極的な海外での取材や体験をもとにメタル、グランジ/オルタナティヴ・ロック、メロディック・パンク・ロックなどをいち早く日本に紹介した、いわゆるモダン/ラウドロック・シーンの立役者のひとり。
 2000年にGrindHouseを立ち上げ、ロック誌GrindHouse magazineを筆頭にラジオ、USEN、TVとさまざまなメディアを用い、今もっとも熱い音楽を発信し続けている。
※ ※ ※ ※ ※

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関連タイトル

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