THE OFFSPRINGのあの日、あの時 7

2012年8月8日 (水)


『IXNAY ON THE HOMBRE』が日本で果たし、そして残したもの…
文●有島博志(GrindHouse)

 今振り返ると、THE OFFSPRINGの日本での初期の人気の推移はこう分析できると思う。3枚目『SMASH』('94年)で熱い注視を浴び、グイッと頭角を現し、続くメジャー・デビュー作となった『IXNAY ON THE HOMBRE』('97年)でさらなる弾み、勢いをつけ、次の『AMERICANA』('98年)でその人気度、評価度を完全に不動のものとした、というものだ。

 MARILYN MANSONのストーリー連載第2回にも書いた。90年代初頭に勃発したグランジ/オルタナティヴ・ロック旋風以降ほぼ連鎖的に起きた新たなUSロック・ムーヴメント、つまりインダストリアル・ミュージック/ゴシック・ロック、ヘヴィ・ロック、ミクスチャー・ロックなどのほとんどは、リアル・タイムで日本に流入してはきたものの、なかなか広がらず、根づかずの状況が長らく続いた。その結果、レコード会社や音楽メディアは一斉に「この手の新しい音楽は日本では厳しい、売れん!」との見方で一致した。当時こうした音楽やアーティストが音楽専門誌誌上を賑わすことがなかったのは、そうした背景があったからだ。グランジ/オルタナティヴ・ロックでニルヴァーナだけは別格中の別格で早くから人気に火がついたけど、欧米では肩を並べたパール・ジャムは一大ブレイク作『ten』('91年)から2作品後の3枚目『VITALOGY』('94年)で10万枚のセールスを突破するなど本国から3、4年遅れてようやく“独り歩き”を始めた。このほかにはNINE INCH NAILSが4thリリースの『THE FRAGILE』('99年)で、KORNが3枚目『FOLLOW THE LEADER』('98年)で、MAR1LYN MAN5ONが3枚目『MECHANICAL ANIMALS』でと、どの音楽スタイルの“顔役バンド”もみな往々にして欧米ブレイクから3〜5年経過してからやっと日本での評価、人気を確立する、ということが相次いだ。このヘンな“時差”みたいなのは、当時、総称USモダン・ロックと、日本洋楽ロック市場との間にそびえ立つ高く、ブ厚い“壁”のように感じ、見えた。

 そのとき、その“壁”を軽々と乗り越え、ガンガン日本に入ってきてはそのままものすごいスピードで広まっていったのが、パンク・ロック・リバイバル・ムーヴメント、いわゆる“メロコア”だった。ダークで屈折感を強く内包し、ネガティヴな要素を題材とした歌詞などがスタイルの主部分を成す総称USモダン・ロックは、日本洋楽ロック市場には当時まったくの“初物”であり、多くのロック・リスナーたちにとってはとっつきにくく、やや難解なものと思えたようだ。それに対し“メロコア”は激しいながらも聴きやすく、入りやすく、わかりやすく、口ずさみやすく、そして乗っかりやすいと“五拍子揃い踏み”のある意味“超良質のポップ音楽”だった。前にも書いたけど、“メロコア”の日本における隆盛において、このTHE OFFSPRINGをはじめGREEN DAYBAD RELIGIONRANCID、そしてNOFXが果たした役割は桁違いにデカい。METALLICASLAYERANTHRAXMEGADETHを指して“メタル四天王”と呼ぶ。当時“メロコア四天王”なる呼び方はなかった。今キッパリ断言しよう、当時の“メロコア五天王”は誰がなんと言おうとその5バンドだ。そして“メロコア総本山”“メロコア製造工場”との異名をとったEpitaph Recordsの名、存在も計り知れないほど大きかった。CDショップの洋楽フロア/セクションには必ずと言っていいくらいEpitaphコーナーがあり、そこから飛ぶようにCDが売れた。「EpitaphのロゴがくっついてるCDは取り急ぎなんでもいいから買っとけ」。今ではあまりないことだけど、その頃は確かにそういう風潮、気運が強く、実際それで事、物が動いた。実にイイ時代だったと思う(苦笑)。

 前説が長くなった(笑)。『IXNAY ON THE HOMBRE』発売から10ヵ月後の'97年12月、THE OFFSPRINGは再来日した。デクスター・ホーランド(vo,g)主宰レーベル、Nitro Recordsの当時の看板バンド、AFI(後にメジャー・レーベル、Interscope Recordsに移籍)を連れ立ってのものだった。今作でさらなる弾み、勢いをつけた、と上述したけど、そのときの滞在期間の長さと、公演回数の多さも、それを裏づける。約2週間滞在し、5都市8公演も行った。特筆すべきは長野県松本市の松本社会文化会館で公演をやったこと。洋楽パンク・ロック・バンドが松本市まで足を伸ばしてライヴをやるなんていうことは当時あり得なかったので、けっこう驚かされたことを覚えている。'95年1月の初来日のときは東名阪を巡演し、ほぼクラブ・クアトロ級の会場が使われたけど、再来日のときは東京が赤坂BLITZ(ここで言うのは旧・赤坂BLITZのことで、現・赤坂BLITZよりも規模が大きく、会場のキャパシティは約2,000人を誇った)、大阪がベイサイドジェニー(現在閉鎖)と使用ライヴ会場の規模も一気にスケールアップしている。この点からも、『IXNAY ON THE HOMBRE』発売で、THE OFFSPRINGが『SMASH』のときよりさらに弾みをつけ、勢いづいていることがわかる。

 その来日のときに実現した対面取材で、デクスターはこう語っている。ライヴ中に頻繁に大合唱が起きたことについての質問に対しての答えだ。

「とても嬉しかったよ。煽られるし、励まされるしね(笑)。だけど、もしかしたら観客の大半は、オレがなにを言っているかわからないまま一緒に歌っているのかもしれない。だけど、それは問題じゃない。オレにとっちゃ一緒に歌ってくれること自体が驚きなんだ。オレたちのことが好きだからこそ彼らは歌ってくれてる、とオレは信じている。もしかしたら言葉の意味は伝わってないかもしれない。だけど、音楽に合わせて歌ってくれている。そっちの方がずっと驚きだよ」


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 トニー・スライ(vo,g)が8月1日に亡くなった。死因は発表されていない。まだ41歳の若さだった。自分にこの訃報を教えてくれたのはSUGARCULTBAD ASTRONAUTのマルコ・ディサンティス(g,b)で、メールには「とても驚いたし、今オレは深い悲しみに暮れている」との一文も添えられていた。そのトニーが長らくフロントマンを務めていたのが、このNO USE FOR A NAME。かつて“パンク・ロック/ハードコアの聖地”と言われたUSカリフォルニア州オレンジ・カウンティ産の4人組だった。これまでに何度か来日経験があり、最近作『THE FEEL GOOD RECORD OF THE YEAR』(2008年)を含めると8作品を残してきたキャリアがあるバンドだけに、日本にもファンは多い。現FOO FIGHTERSのクリス・シフレット(g)、現BLEEDING THROUGHのデイヴ・ナッシー(g)が在籍していたことでも知られる。今作は5枚目にあたり、彼らお得意のしっかりメロディを際立たせた、軽快で、ときにライト感覚も放つメロディック・パンク・ロックを聴かせる。なお、“Fairytale of New York”はTHE POGUESのカヴァーだ。パンク・ロックを愛聴していく上で絶対に避けて通れないバンドだ。トニーよ、永遠に…合唱。
文●有島博志(GrindHouse)

THE OFFSPRING 最新作ニュース


  • OFFSPRING ニューアルバム!
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■■■ 有島博志プロフィール ■■■

 80年代中盤よりフリーランスのロックジャーナリストとして活動。積極的な海外での取材や体験をもとにメタル、グランジ/オルタナティヴ・ロック、メロディック・パンク・ロックなどをいち早く日本に紹介した、いわゆるモダン/ラウドロック・シーンの立役者のひとり。
 2000年にGrindHouseを立ち上げ、ロック誌GrindHouse magazineを筆頭にラジオ、USEN、TVとさまざまなメディアを用い、今もっとも熱い音楽を発信し続けている。
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