【インタビュー】ゆず(1)

2012年5月18日 (金)

4月に発売したベストアルバム『YUZU YOU [2006-2011]』に続いてリリースされる、ゆずのニューシングル「with you」。日本生命のCMソングでもあるタイトル曲に加え、「イエス」「虹[Symphonic Orchestra Version]」の3曲を収録。15周年を迎えた彼らにとって大きな意味合いを持つこのシングルに付いてお話を伺いました。


---  「with you」は日本生命の CMソングにもなっていますが、どんなところから曲作りが始まったのですか?

北川:これは CMの話がなかったら出来ていない曲ですね。前の日本生命の CMソングになっていた「虹」を震災直後の CMでも使っていただいていたんですが、同じ制作チー ムから「新たな CMを作るにあたって、またゆずさんにお願いしたい」という熱のこもったプレゼンがあって、そこからスタートしました。“みらいへの挑戦”というテーマをいただ いて、楽曲制作のために取材をし、なおかつそのドキュメント映像も使用するとのことで、初めてのことがたくさんあり、刺激をもらいながらトライしました。

---  こうした形のコラボレーション、岩沢さんはいかがでしたか?

岩沢: ベスト盤とほぼ同時期に新曲を作るというスタンスがいいなと思ってました。前のベスト盤の『Home』と『Going』を出した時に、「GOING HOME」という曲を作った時の心 境に近いかもしれない。ベストだけではなく、次の新たな曲も作ろうじゃないかって。その意味では、いいタイミングでお話をいただいたなと思いました。ただし CMありきの着手 の仕方だったので、北川さんが苦心している様子も伝わってきましたけど。

---  初めての作り方となると、産みの苦しみもありそうですよね。

北川: “with you”というテーマ自体は CMの話をいただく前から温めていたんですよ。 15周年のベストアルバム『YUZU YOU』を出すことになった時から、そのベスト盤を 1曲 で表す曲を作りたいということはずっと頭にあったんですよ。 CMのお話しをいただいて、最初はもっと日本生命の CMの企画内容に寄る形で曲を書いてたんですが、なかなか はかどらず、もともと持っていた “with you”というテーマに戻してみようということで、作っていったという感じですね。幸いなことに、日本生命からいただいたテーマと僕らが 15 周年で伝えようとしてた “with you”というテーマとで重なる部分がかなりあったので、タイアップ曲ではあるけれど、無理なくいつも通りのゆずの曲の作り方に、プラスαがある という感覚で作ることが出来ました。

---  体操の内村航平選手、アーティストの高橋理子さん、西洋野菜農家の浅野悦男さん、ニッセイの方々と、取材してみて、いかがでしたか?

岩沢: 常に追求しているという姿勢は職業が違っても一緒だなと思いました。“だってそうしないとおもしろくないじゃん”ってやり続けている人達の姿を見ると、刺激になりますよね。 フィールドは違えど、僕らもそういうところを目指してやっているし、今回のシングルもその刺激をエキスして、出来上がった作品なのかなと思います。

---  取材した方々の人選は?

北川: 日本生命から提案していただいた方々ですね。ただ、内村選手に関しては「翔」という曲が体操のテーマ曲だったこともあって、実際に生で体操も見させてもらっていて、 思い入れも強かったので、「僕らも会いたいです」ということはお伝えしてました。内村選手もゆずの曲を聴いてくれているとの言ってくれて嬉しかったです。

---  取材での相手の言葉が歌詞に反映した部分はありますか?

北川:  具体的に言葉自体は使っていないんですよ。取材をする時って、いつもだいたいそうなんですけど、言葉よりもその人の熱を感じることが重要なので。

---  サビの“きっといつか夢を掴むその日まで”というところも、人間の熱が伝わってくるフレーズですね。

北川:  サビのモチーフは仕事で神戸に行って、ひとりだけ残るということになり、そのホテルで断片を作った思い出がありますね。夢という言葉を使うのは善し悪しがあるので、 迷うことが多いんですよ。僕自身も夢を描けない学生時代があったので、そういう人が聴いた時に責められているような気持ちにしたくなかった。なので、この言葉を使うのは勇 気が必要でした。取材とは別に、色んな方が挑戦してるテーマをネット上で募集して、その文章を見ながら作業をしたんですが、主婦の方や学生の方が大きなコトではなくても 明日に向かって挑戦している姿が見えてくるような気がして、自然に“夢”という言葉に託せたというか、背中を押してもらいました。“夢”という言葉をいろんなことに置き換え てもらえる作品にすべく作っていました。

---  サビの最後の “with you”というコーラスも新鮮でした。

北川:  今回、自分的にキモだと思ってるのはあの “with you”のラインなんですよ。ちょっと機械っぽい感じ、ボーカロイドっぽい感じをイメージしつつ、自分が普通に歌っていた ら、絶対にやらないラインなんだけど、もし自分がボーカロイドでいじくったら、こんな感じになるかなって想像しながら作りました。ボーカロイドゆずバージョン、初音ミクならぬ、 初音ゆずみたいな (笑 )。あれは人に近づけて機械がやっているけれど、機械に近づけて人がやったらどうなるのかっていう逆の発想。みんながデジタルでやってることをアナロ グで丁寧にやったらおもしろいんじゃないかなって。人間的なものと機械的なものが行ったり来たりすることで、人間味がないようであるような感じをうまく表現出来たかなと思って ます。

---  岩沢さんは曲が出来るまでは見守っていたんですか?

岩沢: 北川さんが水面下で作っていた曲をある日突然、“これが「with you」です”って出されたという感じでしたね。「with you」という存在があるらしいっていうところから実際 に仮歌録りに行くまでに時間がかかって、曲もどんどん変化していったので、歌いこんで録るというよりは、聴き込んで歌入れをした曲ですね。僕はひたすら「with you」の完成を待っ ていました。

北川: Aメロもかなり悩んだところで。サビはしっかりしてたので、そのサビと同じぐらいの価値を持つ Aメロを作りたかった。僕が出演させてもらったテレビドラマ『イノセント・ラヴ』 でお兄ちゃんを演じていた福士誠治君の芝居を見に行ったんですよ。芝居の内容は関係ないんですけど、自分が煮詰まってた時に違うフィールドで頑張っている彼を見て、自分 も頑張らなきゃって、帰りのタクシーで奮起した瞬間に Aメロが言葉と共に浮かんできました。

---  Dメロも時空を超えるような独特の広がりがありますね。

北川: 「趣味は Dメロ作り」って書きたいぐらい、Dメロを作るの好きなんですけど (笑)、新しい感じでやってみました。イメージとしてはサカナクション。ユズクションみたいな。(笑)

---  サウンドを作る上でポイントにしたことは?

北川:いつもは弾き語りにどんどん足していく感じなんですけど、この曲は全部が同時進行でした。歌の存在感はイメージ出来ていたので、サウンドは攻めたいな、聴いたこと のないものにしたいなって思ってました。「虹」の流れをいい意味で組みながら、蔦谷好位置君と一緒に作ったんですが、ゆず、クラシック、さらには蔦谷君の持っているダンス・ ミュージックやクラブ・ミュージックの要素の融合のおもしろさを極めたいなって。

---  確かにイントロなどからもクラシックの雰囲気が漂っています。

北川: イントロのチェロなどはバッハをヒントにしたところはありますね。チェロの前に入ってくる音もエレキを重ねて作っているんですが、クラシック的な音をあえてループで入れた り、 4つ打ちのリズムにアナログなものを入れたり、アナログとデジタルの融合は最初から意識していました。

---  そうしたサウンドに乗ることによって、歌詞もこれまでとは違う部分もあるのではないですか?

北川: 仮歌を適当な英語で歌っていて、フィーリングを大事に作ったので、いままでのゆずの曲よりも歌の余白がありますね。テンポのわりにたっぷり歌ってるところが多い。普 段はもうちょっと言葉を詰め込むんですけど、あえて詰め込まないで、英語っぽい譜割にしているので、歌詞のはめ方も難しかった。言葉数も多くないし、メロディーも削って削っ て必要なものしかない構成になっているので、その分歌に対するプライオリティが高くなっていて、言い訳出来ない感じになってます (笑)。

---  ハーモニーも新鮮に響いてきました。

岩沢: 岩沢 信じられないぐらい高いんですよ (笑 )。本チャンでこの高さ、出るのかな、大丈夫かなっていう不安はあったんですが、なんとか絞りだしました (笑 )。キー的に高いとこ ろと低いところがたくさん出てくる曲で、高低差が相当あるので、ひとりだと歌いきるのは難しい曲だと思います。ゆずは 2人組なんですが、 2人必要だなっていう曲ですね。

---  コーラスの寄り添い方も温かみがあって、いいですね。

北川: そこは気をつけました。高いんだけど、優しくなるにはどうしたらいいかなって、考えながらやりました。

岩沢:デモの段階では二声、三声でやっていたんですけど、蔦谷君からの提案もあって、もう一声加えてみたり、普通だったら入れなくてもいいところに入れたり、おもしろい挑 戦もたくさんやったんですが、さすがだな、蔦谷好位置と思いました (笑)。

---  “未来への挑戦”というキーワードとサウンドのアプローチも連動していますね。

北川: 今まで通りのことをやろうと思えば、経験値もあるので出来るんですが、新しいことに挑戦すると、あってるのか間違ってるのかわからないから、怖くなる瞬間もあるんです よ。でもきっと色んな分野で挑戦している人たちも、恐怖や不安を乗り越えているんだろうし、自分たちが音楽でそういうことをメッセージしようとする以上、自分たちも限界を越え るべく挑戦しなきゃ説得力がないよなって。

---  “信じてくれた君の為”というフレーズも印象的でした。

北川: 新たな挑戦は大変だけど、それを支えてくれるのは聴いてくれる人たちですから。歌詞の通りですね。最終的に聴いてくれる人にちゃんと届けたいという一心しかない。

---  この曲はたくさんの人が関わっている分だけ、期待も大きかったと思うのですが、その分だけ、不安やプレッシャーをはねのけるパワーも感じました。

北川: そこはちょっと歌詞に出ちゃいましたね (笑 )。何もないところから挑戦するのも挑戦だと思うんですけど、今あるところから飛び立とうとする時の怖さというのもあって。今回 は最初から背負ってるものが大きかったので、こういう作り方はたまにやるくらいがいいのかなって思いました (笑 )。でも楽しみにしてくれる人がいることがうれしいという気持ちも あって。怖さとうれしさが半分半分でした (笑)。





new single


 ゆず 『with you』
5月23日発売

[収録楽曲]
01 with you (日本生命CMソング 第2弾)
02 イエス
03 虹〜シンフォニックオーケストラVer.〜

best album


 ゆず 『YUZU YOU [2006-2011]』
4月25日発売

[収録楽曲]
01 虹
02 桜会
03 逢いたい
04 シシカバブー
05 Yesterday and Tomorrow
06 いちご
07 明日天気になぁれ
08 ストーリー
09 from
10 慈愛への旅路
11 超特急
12 春風
13 陽はまた昇る
14 Hey和
15 栄光の架橋 [Symphonic Orchestra Version] (New Recording SPECIAL TRACK)
16 T.W.L [Y.Z ver.] (New Recording SPECIAL TRACK)

best album

Going [2001-2005]

2005年06月08日発売



Home [2001-2005]

2005年06月08日発売






リーダー:北川悠仁(きたがわゆうじん)
生年月日:1977年1月14日 山羊座
血液型:A型
出身地:横浜市

サブリーダー:岩沢厚治(いわさわこうじ)
生年月日:1976年10月14日 天秤座
血液型:O型
出身地:横浜市

ゆず official site