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【インタビュー】 DCPRG 菊地成孔×ヒップホップ 〈2〉

2012年3月21日 (水)

interview
DCPRG 菊地成孔 インタビュー


--- これはラジオでおっしゃっていたことですが、“二重秩序”に関しては、「口と性器には、訛る特権がある。ゆえにセックスは訛りの連続だ」と。

 例えば眼は、ステレオ視で見てる。耳もステレオ聴で聴いてる。要するに情報が二つ入ってきて、それを統合してるんだよね。そもそも右、左って脳が二つあるわけなんだけど。そういう風になってる中、発声器官は一個。性器も一個。言っちゃあ肛門も一個で、あれも性器みたいなもので。で、一個のもので行なおうとすると、やっぱり複数秩序が集中したら訛るじゃない? だから、発声器官から出る言葉は訛ってるし、セックスも然りで。

 つまり快感が100パーセントだったらセックスできないし、不感症が100パーセントでもできない。快感が100だったら瞬時に終わってしまうわけで(笑)、逆にまったく気持ちよくなかったら永遠に終わらないわけ。「気持ちがイイ、だけどイッてはいけない」っていうアンビバレンスの中でずっと訛り続けてるから、セックスっていうのは。食事みたいに、お腹が減ってて、どんどん食べてお腹いっぱいになったから終わるっていうのとは違うじゃない? 最初から興奮してるんだけど、まだイケない。挿入してるんだけど、それは変わらず。ずっと行ったり来たりした結果、最後にイクと。その葛藤のことを、ラジオでは象徴的に「言葉とセックスには訛る特権があるんだ」っていう言い方をしたわけなんですよ。

 例えば両手は、訛らずにポリリズムが出せるわけで。極端な話、手が1本だった場合、ポリリズムを出そうとすると、訛らざるを得ないっていうかさ(笑)。これは単なる一例ですけど、サンバのタンボリンって普通に人が叩くと訛ってるわけね。それは、片手で打ってるからで。両手で打てば訛らない。当たり前だけど、手ひとつに指5本分の秩序があるから、メカニズム的にも、例えばブラジルの打楽器だとか、片手で叩くものは訛ってくるんだよね。

 だから、そうしたところから発生した訛りを両手でマネたりするような形ですよね。そういう意味では、セックスは本質的に訛ってるっていうことだよね。行為自体が。ストレートなセックスはないっていうかさ。まぁ時折あるかもしれないけど。「ウワーッ!」って勢いまかせにやっちゃうとかさ(笑)。とうとうイカなかったとか。そういうのはあるかもしれないけど、大概のセックスはアンビバレンスの中で行ったり来たりしつつ進むっていう。で、そのセックスが仮に気持ちいいものだとしたら、それは訛りが気持ちいいっていうことだから、ラップが気持ちいいってことと根源的にひとつなわけで。だから、訛ってるものは「セクシー」なんだっていうね。セクシーの定義っていっぱいあって、ヤバい服着てれば「セクシーだ」って言うけど、そういうことよりも行ったり来たりしてる方が断然セクシーだとすると、ラップの訛りはセクシーなんだっていうことですよね。  

--- ちなみに、フェラチオってどうなるのでしょうか? 一応、行ったり来たりの訛りが...

 フェラチオは、口接性交であれ、セックスには変わりないんで。だから、フェラチオが特別な意味を持つとは思わないんだけど。まぁ象徴的には、口と性器がくっ付くわけだから、大変な出会いですけど、逆に言うと、口と性器は容易く結合するんだよね。セックスのときに絶対性器を口にしませんっていうのはかなりの潔癖症でしょう? 色んなところに口が付くわけだけど、単純に性器には付きやすいわけで。それはやっぱり、性器、肛門、口っていうのが一個しかないから、呼び集まりやすいんじゃないかなと思いますけど。セックスは全身を使いますけど、口だけ手だけ性器だけっていうのは、まぁ訛るよね。 

--- 同じくラジオでは、菊地さんはO.C.の大ファンであると。そのO.C.にしろ、ビギーウータンスヌープにしろ、ラップの訛りが表面化してきたのはざっくりと90年代初頭になるわけですよね。一気にその時代のラッパーが訛りはじめたっていうのには、何か特別な理由でもあったのでしょうか?

 いや、そんなに時代と癒着してどうこうって感じじゃないと思うよ。もちろんゼロとは言わないけど。流行りみたいなものってさ、あるとき誰かが始めて、それに「いいね、いいね」って他の人がバーッてついて行ったってことだから。要するにひとつのモードじゃないですか。で、日本もまったく同じじゃない? 最初はガチガチで。いとうせいこうさんみたいなオールドスクーラーの人たちは。

Word...Life / O.C.
ダイアモンド・D、ショウビズ & AG、ロード・フィネス、バックワイルド、ファット・ジョー、ビッグ Lらを擁したD.I.T.C.(ディギン・イン・ザ・クレイツ)の一員として活躍していた技巧派マイカー、O.C.のソロ1stアルバム(94年 Wild Pitch)。高いラップ・スキルと、盟友バックワイルドによるドープビーツが世界中のB坊連の心を鷲掴み。レス・デマール「A Day In The Life」ネタの「Time's Up」や「Born 2 Live」などシングル曲はいずれもクラシック。ちなみに、菊地氏はラジオ番組にてビッグファンを公言し、本作から「O-Zone」をチョイスしている。

--- スネークマンショーの「咲坂と桃内のごきげんいかがワン・ツゥ・スリー」もフロウ変遷の“比較対象”としてかけてらっしゃいましたよね。

 スネークマンショーはもう秋田音頭のパロディみたいなもんで(笑)。だけど、90年代からでしょ。僕の知る限り、餓鬼レンジャー韻踏合組合からだよね。彼らが出てきて、それからSCARSSEEDAとかね。彼は訛ってる上に英語風の発音っていう。その後、一昨年ぐらいにRAU DEFが出てきて、聴いてる人はほとんど日本語かどうか分からないっていう状況の中で、SIMI LABが出てきたっていうさ。だからいきなりじゃなくて、それなりにホップ・ステップ・ジャンプはあって出てきたっていう。僕もヒップホップにグッと近付いたのは、やっぱりラッパ我リヤだったり、餓鬼レンジャーだったりするわけで、訛り始めてからですよね。

23edge / SEEDA
英語と日本語を組み合わせた独特のスタイルを持つSEEDA(シーダ)の9枚目となるオリジナル・アルバム。日々楽曲を生み出し続けている彼らしく、前作『瞬間 -IN THE MOMENT-』から約4ヶ月という短いスパンでのリリースとなる本作は、ワン・プロデューサーで臨んだ前回とは対照的にSEEDAが共鳴した様々なサウンド・プロデューサーとの共作を記録。常に進化を続けるリリシスト、SEEDAの新たな魅力が詰まった1枚。
ESCALATE / RAU DEF
RAU DEFがフロウすると、誰もがその気持ち良さに身を任せる。フレッシュでいて普遍的、フリーキーかつスタンダードなスタイルを既に確立。2009年に発表されたSEEDA & DJ ISSO「CONCRETE GREEN 9」 や、PSGの特典音源「M.O.S.I Remix」等でその才能を遺憾なく発揮したRAU DEFの2010年デビュー・アルバム。PuB KEN、ZAKK、STUTSといった新進気鋭のビートメイカーほか、SEEDAにトラック提供の経験もあるNAKKID、練馬ザファッカーやD.O氏のプロデュースでも知られるJASHWON、福岡親不孝通りからの同世代ラッパーPOCKY、ビート提供&客演のS.L.A.C.K.などが参加。


--- さんぴんCAMP以前・以降で、大まかにジャパニーズ・ヒップホップの“訛り史”を分節することも可能じゃないかなと思うのですが。

 言ってしまえば、さんぴんまでが、訛ってないラップの総決算。大谷くんの原点はさんぴんなのよ。だから、大谷くんが美声でフロウがないのには、さんぴんCAMPリスペクトっていうのがすごい出てるわけ。僕はそれ以降をリスペクトなんで、ものすごいフロウしてるっていう形ですよね。

--- 菊地さんは“何を言ってるか分からないリリック”、つまり訛りまくったラップがお好きで、大谷さんはその逆の嗜好と。

 少なくとも大谷くんは、英語風の巻き舌っていうのはやらない人なんで。「ハロー、アメリカ!」「グッドモーニング、アメリカ!」って言ってるぐらいだから(笑)、もう片仮名英語丸出しなわけ。あとは美声で聴かせて。朗読のCD出してるぐらいだからね。

 ヒップホップの歴史も色々と掘っていくと、演説の歴史なんかにも当たるわけ。要するに今回入ってるアミリ・バラカとかさ。あれバックトラックがあったら普通にラップですよね。マイク・タイソンが試合後にマイク向けられて、興奮してまくし立ててる映像にバックトラックが流れ出して、それがラップになるっていう有名なYouTubeもあるぐらいだから。黒人が喋るとほぼフリースタイルのラップになるんだっていう流れもあるし、それと、フランスなんかのポエトリー・リーディングの歴史もあって。大谷くんって教養の塊っていうかさ。色んなものがアマルガムになってる、不気味なほど教養を湛えた人なんだけど(笑)。なにせ一冊目の本が『フランス革命』っていうぐらいだから、フランス文化が好きなのね。だから、マイク回しと朗読の読み聞かせっていう部分もかなり入ってて。僕みたいにストリートものが好き、もっと言うとギャングスタものが好きで、しかも巻き舌で「テメェこのやろう、バカやろう」っていう感じとは明らかに違うんですよ(笑)。

 今回のJAZZ DOMMUNISTERSのテイクオフっていうのは、みんながビックリしてる間に終わっちゃうというか、まだまだキャラも出きってないっていうかさ(笑)。だけど、ウチらの中では、巻き舌もフロウもない大谷くんと、英語風の発音が入ってフロウのある僕の2MCで、キャラが違うんだってことも分かってきたから、今後アルバムでも作ろうかなとは思ってますけどね。さすがにそれはユニバーサルから出せないでしょうけど(笑)。とにかく、大谷くんは「さんぴんCAMPが自分の青春だ」ってすごい言ってるからね。

--- そういう意味では、大谷さんはライム巧者というか...コモンに通ずるところもあって。

 そうだよ。USオーヴァーグラウンドで言えばコモンみたいな....全然違うけどね(笑)。まぁでも、ある意味コモン。ジャジーだしね(笑)。

 大谷くんのあの声を持ってしたら、もっとスムース寄りのこともできるから。すごくオーヴァーグラウンドな声をしてるんだよね。単純に、太くて豊かな声で。僕の方が、声だけ聞くと、不良っぽいというか、「テメェこのやろう」っていう声だからさ、結果ああいうラップになったっていうところはありますけどね。




大谷能生&菊地成孔
左から) 大谷能生、菊地成孔



 ヒップホップはオールドスクールから聴いてるけど、オールドスクールってニューウェイヴィでさ、パンク過ぎたんだよね。とにかく新しいものが出てきたっていうイメージしかなくて、自分がブラック・ミュージックに持ってる興味の対象には当て嵌まらなかったの。やってる人もロックをやってる人ばっかりだったから。近田(春夫)さんとか。まぁ、ヤン(富田)さんはロックじゃないけど。そういう感じだったから、レコード擦ったりしておもしろいなとは思って聴いてたけど、自分と関係ある感っていうのは全くなかったのね。

 コスリにしても、昔はただヴァイナルをリズムに合わせて擦ってるだけじゃない? 「シャカシャカシャカ」って(笑)。だけど、コスリも“エクセキューショナーズ・スタイル”っていうかさ、ものすごく技術が向上してきて。パーカッションみたいな役割も果たすようになってきて。さらに、さっき言ったように、アメリカも日本も90年代以降はどんどんフロウするようになってきたんで、これはもう自分と関係があるものだっていう感じになってきたんですよね。


  エクセキューショナーズ (The X-ecutioners)・・・東海岸を代表するバトルDJ/ターンテーブリスト集団。「DMC」、「ITF」など、数々の世界的なDJバトルで好成績を収めたミスタ・シニスタ(現在は脱退)、ロブ・スウィフト、トータル・エクリプス、ロック・レイダがオリジナル・メンバー。アクロバティックなトリックプレイなどで知られる”X-Men”というクルーからその活動を開始した。ターンテーブリストとしては初めてのフル・アルバム『X-pression』(98年)を皮切りに、『Built from Scratch』、『Scratchology』、『Revolutions』といったアルバムをコンスタントにリリースしている。


--- 実際に菊地さんがご自身のヴァースのリリックを書くときというのは、訛ることを前提とした、若干“何を言ってるか分からないリリック”のための言葉選びなどもされるのですか?

 “何を言ってるか分からない”っていうのは別にミッションで持ってるわけじゃないんで(笑)、自分なりに“このぐらいが丁度いい”っていうところで作ってるだけなんですけど。

 それこそ、さっき言ってたSEEDAでもRAU DEFでも、聴いてたら分かんないけど、歌詞カード読んだら分かるって、そういう感じじゃない? で、多分ヒップホップのネクスト・ステップは、読んでも分からないっていう風になると思うんだよね。ストリートの言葉と、ライミングも英語とかがグチャグチャになっちゃってて、読んでもすぐには分からないっていう。現代詩みたいになって。

 大谷くんと『アフロ・ディズニー』って本を書いて、そこにも載せたことなんだけど、ファレル・ウィリアムスのリリックを自動翻訳機にかけたっていうのがインターネット上に落ちてて。それは、自動翻訳機の限界によって、英語の翻訳が何だか分からない現代詩みたいなことになってるわけ。それが子供の遊びみたいでおもしろくて、ショウの頭に掲げたこともあったんだけど。

 まぁそれとは別に、おそらくヒップホップのリリックはすでに読んでも分からなくなり始めてるの。おっさんとかが読んでも何だか全然分かんないっていう(笑)。それは歌謡曲の詞でもさ、80年代とかに桑田佳祐さんの詞をパッと聴いても何言ってるか分からないって言われ始めたことと同じで。カニエ・ウエスト程度でも、ネイティヴ英語が理解できる人が最初聴いても分かんないですよ。後で読んで「あ、そうか」っていうね。だから、そのうち読んでも分からない領域に入ってきて、最終的には何だかよく分からないことになってくるんだろうなっていうのは思ってますね(笑)。

--- テクニカル・ターム、流行語・造語、さらに日本語、英語に、第三外国語と...

 うん、多言語になって、方言、スラングなんかも入ってきて、さらにライミングがテクニカルになってさ。いずれにせよ、言語は放っておけば壊れてくるわけだけど、意味が通じなくなるかって言うとそうじゃなくて、壊れながらも意味が通じていくっていうね。それが言語のすごいところですけど、ラップはこれから急進的に意味が通じなくなってくるというか、SIMI LABなんて、すごいよく分かると同時に、分かんないんだよね、何言ってるのか。で、いずれそういう感じになっていくんだろうし。彼らとは親子ぐらい年が離れてますけど、でも僕らは僕らなりのやり方でっていう。そういう意味では、世代を超えるというイメージが大きくあるのかもしれませんよね。ラジオでも言ったけど、“ヒップホップはジャズの孫”なんで、それが今回僕らとSIMI LABが親子ほど年が離れているってことにそのまま重ね合わせられるっていうイメージが無きにしもあらずっていうかね。

--- SIMI LABのメンバーの中には、普段ジャズを聴いてる人もいたりするんじゃないですか? ネタ視点だったりで。

 う〜ん、ネタぐらいでは聴いてるかもしれないけどね。ただやっぱり、今20代で相模原のアンダーグラウンドでヒップホップをやってる人たちの生活って、何してるのか想像も付かないよね(笑)。レコードばっか聴いてるのか、逆にまったく聴いていないのかなんて。

--- ノートに日々リリックを書き溜めていたり。

 いやもう、リリックはみんなiPhone(笑)。それもすごい違いだよね。僕と大谷くんはノートに書いてあんの(笑)。それを譜面台に乗せてやってるから、見た目からしておっさんなのよ(笑)。SIMI LABはみんな立って、こうiPhone片手にリリック作ってたから。あれはすごかった。

--- では最後に、DCPRGの今後についてということで、このヒップホップ路線はさらに推し進めていくという感じでしょうか?

 それはもうやってみてっていう感じで。大谷くんと一緒に、あるいは一緒じゃなくても、僕が考えるジャジー・ヒップホップの実践っていうのはこれからもやっていきたいんですよね。それこそラジオでも言いましたけど、今までのジャジー・ヒップホップには確かに好きなものもあるんですけど、でも、もしジャズとヒップホップが融合するんだったら、もっとこうやった方がいいだろうよっていう音像があるんで、それをやろうと思ってますけど...DCPRGでやるかどうかは甚だ疑問。DCPRGにはDCPRGの進む道があるだろうから、何しろこのアルバムが出て、どの国でどう評価されてどうなるかっていうことを見てから色々決めようと思ってますけど。

 僕の中では、基本的にヒップホップってアンダーグラウンドで、低予算で作るものっていうのがあるんで、そういう形で別個にやろうとは思ってますね。ただ、全部ヒップホップでやろうとしたことが、DCPRGにそのまま全部ライドされる可能性も逆にあって、そうしたらラッパー入れてっていう感じになるとは思いますけど、まぁその辺は未定ですよね。

--- US本国のリアクションは気になりますよね。おそらくImpulse!からヒップホップ・アルバムがリリースされるということ自体前例がないと思うので。


  * 追記・・・1994年に Impulse!/GRPから、ザ・ルーツ&ロイ・エアーズ「Proceed II」、MCソラー&ロン・カーター「Un Ange En Danger」などを収録した『Stolen Moments - Red, Hot & Cool』というオムニバス形式のジャズ×ヒップホップ・コラボ・アルバムが発表されています。ここでは”単体アーティストのフル・アルバム”という意味合いで話を進めております。


 これが多分最初だと思う。一昨年のホセ・ジェームスのアルバムにもラップは入ってなかったはずだし。だけど、訛りに置き換えて言えば、コルトレーンも大変な訛りだけどね。だから、万が一Impulse!の人に「ラップはイカン!」って英語で言われたら、日本語で「そりゃおかしいぞ!」って返す準備はありますけど(笑)。

 でもとにかくこのアルバムは、大きく言ってラテン、混血のアルバムなんだっていうことを強調したいですよね。

--- ミックス・アイデンティティで。

 そう。ボカロもいる。SIMI LABもいる。そして、大谷くんもいる(笑)。大変な混血性のアルバムなんだっていうね。




【取材協力:ビュロー菊地/ユニバーサル インターナショナル】





Second Report From Iron Mountain USA / DCPRG
菊地成孔率いる11人のドープな特殊部隊DCPRG。昨年Impulse!と電撃ディールを結び、2枚組ライブ盤『Alter War In Tokyo』を発表した彼らの移籍第2弾は、活動再開後初となる5年ぶりのスタジオ・アルバム。待望の新曲に加えて、ライヴの定番レパートリー(「サークル/ライン」、「キャッチ 22」)の新録音やマイルス・デイヴィスのカヴァー(「デュラン」)を収録。さらに今回は多彩なラッパーを大胆にフィーチャリングし、新機軸をプレゼンテーション。日本アンダーグラウンド・ストリート・シーンの最前線を行く、ネクスト・ブレイクの最右翼ヒップホップ集団SIMI LAB (シミラボ)が2曲で参加するほか、MC YOSIO*O とMC 菊地(大谷能生と菊地成孔)によるアブストラクト・ジャジー・ヒップホップ・チーム「JAZZ DOMMUNISTERS」と、ボーカロイド「兎眠りおん」が奇跡のマイク・リレー! 現在の“JAPAN COOL”のハイでドープな側面を体現する強力作。ジャケットは新進気鋭のイラストレーター、Dragon76 による描き下ろしライヴ・ペインティング。




菊地成孔 今後のライブ/イベント・スケジュール


Ron Zacapa presents DCPRG

【日時】2012年4月12日(木)
【場所】新木場STUDIO COAST
    [開場] 18:00 [開演] 19:00
【料金】スタンディング 6,500円 指定席 7,000円 当日券 7,500円(税込)
    ローソンチケット (L コード:72970)
    ゲスト:SIMI LAB
    オープニングアクト:KILLER SMELLS
    ※6歳未満入場不可
【問い】サンライズプロモーション東京 TEL. 0570-00-3337


”Dance” Party, for Couples
「NARUYOSHI KIKUCHI PRESENTS ”HOT HOUSE” @CAY」

【日時】2012年3月30日(金)
【場所】青山・CAY
    [開場・開演] 19:00
【料金】オールスタンディング 5,000円(税込・ワンドリンク付き)
    ローソンチケット (L コード:71598)
【出演】MC:菊地成孔&大谷能生 (JAZZ DOMMUNE)
    DJ: NADJA / 菊地成孔
    BAND: REAL BOPPERS FROM TOKYO
    坪口昌恭(p)、安藤正則(ds)、永見寿久(b)、津上研太(sax)、市原ひかり(tp)
    LINDY HOP INSTRUCTOR: AMORE&LULU(Swing Gigolo)
    BEBOP/FUSION DANCE: IZM.(STAX GROOVE)+Steppin Jazz Dancers
【問い】CAY TEL. 03-3498-5790





菊地成孔 その他の関連記事


profile

菊地成孔(きくち・なるよし)

 音楽家/文筆家/音楽講師、1963年千葉県銚子市生まれ。25歳で音楽家デビュー。山下洋輔グループ、ティポグラフィカ(今堀恒夫主宰)、グランドゼロ(大友良英主宰)を経て、「デートコース・ペンタゴン・ロイヤルガーデン」、「スパンクハッピー」といったプロジェクトを立ち上げるも、2004年ジャズ回帰宣言をし、ソロ・アルバム『デギュスタシオン・ア・ジャズ』、『南米のエリザベス・テイラー』を発表。現在ジャズ・サキソフォニストとして演奏するほか、作詞、作曲、編曲、プロデュース等の音楽活動を展開。主宰ユニットに「ペペ・トルメント・アスカラール」、「ダブ・セクステット」をもち、そして2007年に解散した「デ−トコース・ペンタゴン・ロイヤルガーデン」を2010年に活動再開させ、2011年Impulse!より『Alter War In Tokyo』をリリースしワールドワイド・デビューを果たす。今年2012年には、5年ぶりのスタジオ・アルバムとなる『Second Report From Iron Mountain USA』をリリース予定。音楽、音楽講師、また執筆(音楽にとどまらずその対象は映画、料理、服飾、格闘技と幅広い)をよくし、「時代をリードする鬼才」、「現代のカリスマ」、「疾走する天才」などとも呼ばれている。






DCPRG 2012 その他のメンバー


坪口昌恭 坪口昌恭
(つぼぐち まさやす)


いまやDCPRGの副司令官とも言える結成当初からのメンバーのひとり、坪口昌恭。菊地氏とはDCPRGとほぼ時を同じくして、自動変奏シーケンスソフトがリズムを刻む、多重力的エレクトロ・ジャズ・ユニット、東京ザヴィヌルバッハを立ち上げているのは広く知られているところ。ラップトップ・テクノの鬼才numbとのコラボ活動や、自身のソロ作品におけるエフェクティブ手法やポリ・スイングの実践などを行なう一方で、ソロ・ピアノやトリオ〜小編成コンボではアコースティック・ジャズ・ピアニストそのものの魅力をアピールするなど、菊地氏に負けず劣らぬ「アンビバレンツ(両面性)」を兼ね備えている。


丈青 丈青
(じょうせい)


DCPRG 第三シーズンの中核を担うであろう、ドスの利いた「爆音ジャズ」「デスジャズ」でシーンに風穴を開けまくるSOIL&PIMP SESSIONS (別働トリオ・プロジェクトに J.A.M.)のピアニスト/キーボーディスト、丈青。2003年に音源も出さないままフジロックに出演するというSOILの快挙は、2000〜01年上半期までにスプリット・シングル『全米ビフテキ芸術連盟』 1枚こっきりの作品目録でライブハウスを夜毎熱狂させたDCPRGの徹底的な現場主義と共通している。


大村孝佳 大村孝佳
(おおむら たかよし)


坩堝感がさらに極まった新生DCPRGの中でも一際異彩を放つのが、2011年2月20日の「巨星ジークフェルド」がお披露目公演となった新加入ギタリスト、大村孝佳の存在。様式美ヘヴィメタル/メロディック・ヘヴィメタル・ギタリストの「最速王」というのがそのスジでのふれこみ。従って「ザッパ・バンドのヴァイみたいに弾いてくれ!」(©菊地氏)という明瞭なパラブルと明確な着地場所がきちんとあってこそのヘッドハンティング、ということになる。しかもこのメタリックなギタリズムが、化学反応という意味合いも含めて、とてつもなくDCPRGにフィットしている。そして巧い。スピードを競うソロよりは、堅実な刻みや音の出し入れみたいなものがハンパなく手練れている。


千住宗臣 千住宗臣
(せんじゅ むねおみ)


PARACOMBOPIANOウリチパン群など幅広い活動で爽やかに暗躍するドラマー、千住宗臣。メタルやハードコアから、ファンク/グルーヴ・ミュージックへと向かい、さらにNO WAVEとテクノを通過しながら、民族音楽と現代音楽を同時に貪る。「聴き手の意識を変容させていくようなビートの創出」を無機質的に表出することで、その独特とも言える空間芸術が生まれている。数々のレコーディング/ツアー・サポートに引っ張りだこなのも納得だが、この若さにして菊地氏や大友良英はおろか、ビル・ラズウェルアート・リンゼイ高橋幸宏細野晴臣ダモ鈴木(!)といった一筋縄ではいかない巨匠ドコロと共演歴がある。


大儀見元 大儀見元
(おぎみ げん)


背中一面にバカでかい「雷神」を刻んだ、泣く子も黙るパーカッション・リズムマスター、大儀見元は、菊地氏と同級生の初期メンバー。オルケスタ・デ・ラ・ルスの初代リーダーとしても知られ、脱退後の1991年にN.Y.へ移住し、サルサ界の大御所シンガー、ティト・ニエベスのバンドでコンガを叩くようになる。帰国後の97年、総勢11名からなるリーダー・コンボ、サルサ・スインゴサを立ち上げ、07年にはフジロックにサルサ・バンドとしては初めての出演を果たしている。ラテンのみならず世界各地のリズムを吸収した幅広いプレイスタイルと抜けがよく迫力のあるサウンドは、エムトゥーメのそれにも全く引けをとっていない。


津上研太 津上研太
(つがみ けんた)


2000年加入のアルト/ソプラノサックス、フルート奏者の津上研太。同じく初期メンである大友良英ONJQ/ONJOにも2007年まで参加し、ゼロ年代東京の緊迫した裸のジャズの在り方をケイオスに吐き出した。2000年に南博(p)、水谷浩章(b)、外山明(ds)と旗揚げしたリーダー・バンド「BOZO」ほか、村田陽一オーケストラ、渋谷毅との活動などでもその骨太でエレガントなブロウを聴くことができる。


類家心平 類家心平
(るいけ しんぺい)


DCPRGの「トランペットの王子様」「傷ついた美男子」(©菊地氏) 類家心平。海上自衛隊大湊音楽隊に在籍していたという驚くべき経歴を持ち、退隊後の2003年に6人組のジャム系ジャズ・コンボ「urb」に参加。2007年には、マイルスと並び敬愛してやまない菊地氏の当時の新バンド、ダブ・セクステットに加入し見事その念願を叶え、以来若手No.1 トランペッターの名を欲しいままにしている。その甘いお顔立ちからは想像できないほど激しく燃え上がるアドリブで、DCPRGファンからアッパーギャル層のハートを総ざらいしていることは、あの『美男子JAZZ』に堂々フィーチャーされている点においても顕著。2011年9月には、自らが率いるワンホーン・カルテット、類家心平 4 Piece Bandの2ndアルバム『Sector b』もリリース。プロデュースはもちろん親方・菊地氏。氏書き下ろしのポリリズミック・チューン「GL/JM」、DCPRG若衆が寄ったジャズバンド「アンフォルメル8」の三輪裕也が書いた「アトム」、さらにはレディ・ガガ「Poker Face」のカヴァーなど、かなりバラエティに富んだコンポジションが散りばめられている。


田中教順

アリガス

高井汐人
田中教順 (たなか きょうじゅん)
アリガス
高井汐人 (たかい しおひと)

「DCPRGを聴いて育った世代の成長ぶりにとにかく驚かされた」と語っていた菊地氏肝煎りの新メン・トリオ。2010年、ダブ・セクステットのフジロック公演で本田珠也のトラも務めたドラマー、田中教順、ベースのアリガス、テナー/ソプラノ・サックスの高井汐人。いずれも「朱雀大路」というインストバンドのメンバーで、主幹の私塾「ペンギン音楽大学」出身でもある言うなれば「菊地成孔チルドレン」にして腹心。「新人の腹心」「腹心の新人」という実体があってないようなものを起用するというこうした人材育成・開発メソッドは、まさにエレクトリック期以降のマイルスのそれに追随している。