2012年3月20日 (火)
[シリーズ名盤] 大滝詠一
不定期連載でお送りしている「シリーズ名盤」企画(アーカイヴはコチラ)。今回は大滝詠一を特集します。特集するにあたって改めて一連の作品を聴いた訳ですが、これがめちゃめちゃ良かったんですよ。いや、もちろん良いのは解ってたんですけど「なんで最近聴いてなかったんだろうな?」って思うくらい良かったんです。以前読んだインタビューで、大滝詠一が「時代に勝てるのは普遍性しかない」と語っていたのを思い出し、大いに納得した次第であります。
さて、72年で解散したはっぴいえんど。大滝詠一ソロとしてのキャリアは、はっぴいえんど活動中の71年からスタートします。そしてその解散前にはアルバム『大瀧詠一』を発表。
解散後ソロ活動を本格化させるわけですが、そこで力を入れたのがCMソングの制作・・・ここで言うCMソングというのは出来合いの曲をCMで使用するといった類のものではなく、CM用に制作するジングル的な楽曲です。日本中の人が日常的に聴いていた「三ツ矢サイダー」「ブルボン」「花王」「シチズン」のCMソングは実は大滝詠一の手によるもの。CMソングというと量産?みたいなイメージがあるかもしれませんが、そうではないのが大滝詠一のCMソングです。
幼少時代からFENから流れるアメリカンポップスに熱中し、筋金入りのレコードヲタクだったその知識を屈指し、CMソングにニューオリンズR&B、ドゥーワップ、スペクターサウンドを巧みに組み込んでいく事になります。この事は日本のポップス史にとって、もの凄く重要な事実だと思うんです。それまで歌謡曲一辺倒だった日本の音楽史にポップスという新しい価値観をブッ刺したわけですからね。しかもCMソングという手法が天才過ぎます!不特定多数が無意識に聴いている媒体を通してポップスを"刷り込み"を成功させたわけです。この事が日本人の無意識下にポップスを受け入れる土台を作り、後の『A LONG VACATION』のヒットに繋がっているのは間違いありません。もしこの事がなければ、日本の音楽シーンはどのようになっていただろうか?と考えると少しぞっとしますね。
ともあれ74年に自身のレコード・レーベル「ナイアガラ」を立ち上げた背景には、そのCMソングをシングルでリリースする目論見もあったとか。その目論見は当初どのレコード会社からも相手にされなかったわけですが、後にリリースされた『NIAGARA CM SPECIAL Vol.1』は70年代のナイアガラレーベル最大のヒットだったと言います。
70年代にリリースされた『NIAGARA MOON』『GO! GO! NIAGARA』『多羅尾伴内楽団』『NIAGARA CALENDAR』『LET'S ONDO AGAIN』と、今でこそ評価の高い作品群も当時は一般的にはなかなか理解されず、一部の好事家だけに愛聴されていたようです。音頭や洋楽パロディ、ノベルティ・ソングなど、大滝詠一の趣味全開の独特なセンスは良くも悪くも偏っていたわけです。
ところが81年、松本隆と組んでポップスの王道を極めた説明不要の名盤『A LONG VACATION』で、ミリオンヒットを記録。その後は『NIAGARA TRIANGLE Vol.2』『EACH TIME』と『A LONG VACATION』系統の作品をリリースしていたにも関わらず、歌手としての活動を休業してしまいます。
シーンに再び帰ってきたのは約14年後の事です。月9ドラマ「ラブジェネレーション」の主題歌としてリリースされたシングル『幸せな結末』は、全くブランクを感じさせずミリオンセラーを達成してしまいました。帰ってきたとは言え、続くリリースはさらに6年後の2003年。ドラマ「東京ラブ・シネマ」主題歌としてシングル『恋するふたり』を発表します。どちらの楽曲も全くブレない大滝詠一の王道ポップスサウンドで、ファンを喜ばせてくれました。
それ以降は今のところリリースは無いですが、山下達郎のサンデーソングブック(TOKYO-FM)の「新春対談」への出演は定番となっていて(2012年はお休みでした)、ファンも待つ事には慣れっこといった感じです。
また、自身のオリジナル作品群のリイシュー作業には余念がなく、現在30周年記念盤の定期的なリリースが続いています。そのライナーを読むのもファンの楽しみ一つ。今回『NIAGARA TRIANGLE Vol.2』がリリースされ、とりあえずお次は2014年に予定された『EACH TIME』。シングル発売を妄想したりしながら楽しみに待つわけです。ここに紹介した名盤たちを聴きながら。
『EACH TIME - 30th Edition』発売のお知らせ!
『EACH TIME - 30th Edition』 / 大滝詠一
[2014年03月21日 発売] 84年リリースにして、大滝詠一の最新アルバムであり続けた作品。松本隆とのコンビで制作。『A LONG VACATION』路線の作品でやはり美メロ佳曲が多いのが特徴的。遂に30周年を迎えた今年。「30th Anniversary Edition」がリリース!大瀧本人による最新リマスターは勿論のこと、EACH TIMEの真価が分かる純カラオケ(本邦初公開!)を加えた2枚組。ナイアガラサウンドの神髄を堪能出来る1枚です。 |
『NIAGARA TRIANGLE Vol.2 - 30th Edition』発売のお知らせ!
『NIAGARA TRIANGLE Vol.2 - 30th Edition』 / 大滝詠一、佐野元春、杉真理
[2012年03月21日 発売] 永遠のロングセラー『A LONG VACATION』の翌年82年に発売された『NIAGARA TRIANGLE Vol.2』の発売30周年記念盤!アニバーサリーエディション2枚組仕様でのリリース。disc 1は、ヒット曲「A面で恋をして」を含む全13曲。disc 2は『A LONG VACATION』に引き続いてリクエストの多かった全曲分の 純カラオケを本邦初公開。「A面で恋をして」だけはコーラス有り、無しと2バージョン のカラオケを収録。全14曲分のカラオケで構成されています。 『A LONG VACATION』の方法論を継承し、当時ブレイク寸前だった佐野元春、杉真理を従え3人で挑んだブリティッシュテイストあふれるポップチューン。『A LONG VACATION』に劣らず名曲に彩られたエヴァーグリーンな作品です。その後の佐野元春、杉真理の活躍はご存知の通り。大滝詠一のプロデューサーとしての視点も光る1枚。 |
大滝詠一 名盤集
『SONGS - 30th Edition』 / シュガーベイブ
[1975年作品]
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『NIAGARA MOON - 30th Edition』 /
大滝詠一 [1975年作品]
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『NIAGARA TRIANGLE Vol.1
- 30th Edition』 / 大滝詠一、山下達郎、伊藤銀次 [1976年作品]
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『GO! GO! NIAGARA - 30th Edition』 / 大滝詠一
[1976年作品]
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『NIAGARA CM SPECIAL Vol.1 - 30th Edition』
[1977年作品]
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『多羅尾伴内楽團: Vol.1 & Vol.2
- 30th Edition』 / 多羅尾伴内楽團 [1977年作品&1978年作品]
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『NIAGARA CALENDAR
- 30th Edition』 / 大滝詠一 [1977年作品]
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『LET'S ONDO AGAIN』 /
Niagara Fallin' Stars [1978年作品]
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『A LONG VACATION - 30th Edition』 / 大滝詠一
[1981年作品]
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『NIAGARA TRIANGLE Vol.2 - 30th Edition』 / 大滝詠一、佐野元春、杉真理
[1982年作品]
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『EACH TIME - 20th Edition』 / 大滝詠一
[1984年作品]
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これさえ持っていれば!
『NIAGARA CD BOOK I』
[完全生産限定盤 CD 12枚組]
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『ALL ABOUT NIAGARA 1973-1979+Α 増補改訂版』 / 大滝詠一
[重要書籍]
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