【連載】Lamp 『遥かなる夏の残響』(第7回) Lamp 『遥かなる夏の残響』へ戻る

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2011年12月26日 (月)













        Lamp・染谷大陽による月イチ連載コラム『遥かなる夏の残響』第7回。
        今回は染谷さんのオススメ日本人アーティストをご紹介。





今回は、僕が知る同時代の日本のマイナーな音楽家二人とその作品について書こうと思う。


まずは、菅井協太の『Madonna』(2004年リリース)。
このアルバムでは、ジョージ・マーティンの影が見え隠れする後期ビートルズや60年代後半のブライアン・ウィルソン、ヴァン・ダイク・パークスやハーパース・ビザールなどバーバンク・サウンドといわれる人たち、さらに、奇才とでも云うべきピーター・アイヴァースやシド・バレットなどから感化されたような宅録サイケ・ポップが展開されている。

僕は、Lampが「面影」で参加したコンピレーション・アルバムで「Freak Show」という曲を知った。それが彼の音楽との出会いだった。

歌声や曲の良さもさることながら、奇抜さとポップさが一つの曲の中に同居し、そこに凝った管弦アレンジやマジカルなコーラス・ワークが加えられていることに衝撃を受けた。
これを全て一人で作ったということがさらに驚きであった。
一人で作ったからこそ、ここまで拘り抜いた音楽の世界を構築できたのだろうとも思う。
共同作業は、作品の平均化の母である。

このアルバム発表後の数年間、彼は、アルバム・タイトル曲「Madonna」の気怠さやサイケデリックな雰囲気を広げたような楽曲の数々をLos Blinds(ロス・ブラインズ)名義で作り続けた。
ソロ名義で感じられたバーバンク〜マジカル・ポップス色は影を潜め、変わりにサイケデリック・ロック〜マイナー・ブルース色が強くなり、歌詞も全て英語になっている。
Los Blindsには、1枚の公式アルバムと数十曲に及ぶ未発表曲が存在する。
個人的には、この公式アルバムよりも、暗く重たい雰囲気の曲が多くを占める未発表曲群や公式テイクのオルタネイティヴ・ヴァージョンの方が好きだ。
未発表曲の一部がMySpaceというサイトで聴けるので、そのURLを記しておく。

MySpace -The Lost Tapes of Los Blinds



もう一枚ここに紹介したいのが、2003年にリリースされた新川忠の『Sweet Hereafter』。
リリースされた当時から、そのマニアックな音楽性とクオリティの高さが一部で話題になっていた。

細野晴臣の70年代のトロピカル3部作、マーティン・デニーやフィル・ムーア等に通じるエキゾチックな雰囲気、高橋幸宏の「サラヴァ!」に通じる洒落たボサノヴァのエッセンス、そして、こちらもやはりハーパース・ビザールなどバーバンク・サウンドからの影響が感じられる。日本発欧米経由東洋行きとでも言おうか、摩訶不思議な音楽だ。
良い音楽を作る人はほぼ例外なく色々な音楽を聴いている。

このアルバムでは、特に、彼の存在を知ることになった6曲目「Carnival」と、冒頭のスモーキー・ロビンソンのカヴァー「I'll Try Something New」が凄く良い。
彼の音楽の場合、何より、辿るメロディーのセンスが凄いなということ、そして、音作りの細かさとそこから来る雰囲気作りの上手さに感心する。イコライジングの一つ一つが本当に細かい。
こういうセオリーから外れたようなミックスは所謂プロの現場では行われないだろう。余程自分の好きな音楽を研究したに違いない。そういうものを自分のものに出来るのもまた才能だよなと思う。

ここまで書いておいてなんだが、実は、僕はこのアルバムを最近初めて聴いた。
前述の「Carnival」という曲からクオリティは想像出来ていたのだが、実際アルバムを聴いてみたら予想以上にグッと来た。
どのトラックも出来が良く、アルバム通して、穏やかな心地良さと素敵な空気を持っており、部屋のBGMとしてもうってつけだと思う。自分のアルバムのことをここで言うのはちょっと気が引けるけど、特に『ランプ幻想』が好きな人にお薦めしたい。
加えて、彼の書く詞のセンスも良い。こういう歌詞を書ける人は中々居ないよなと思う。
これがリリースされたのが2003年2月ということだから、僕らの1stアルバムより2ヶ月早いことになる。
それにしても、1stにしてこの完成度は凄すぎる。

そんな彼は、僕の隣町の出身ということで、実家は目と鼻の先ということがわかった。
彼は僕の2級上ということだが、学生時代なんかは、柏のCD屋やスタジオですれ違っていたのかも知れない。

彼は、この『Sweet Hereafter』の後、まったく別の音楽性を持った2ndアルバムを発表した。その後は第一線からは退いていたようだが、現在は新たな作品の制作に向けて静かに動いているようなので、個人的には出来る限り応援と協力をするつもりだ。

やはりMySpaceで近年制作された音源の一部が聴ける。
この中の「Arms Of Venus」は、僕の人生の100曲に入りそうな超が付く名曲だと思っている。

MySpace -新川忠

聴いてわかるように、最近の彼の音楽は、80年代の音楽のエッセンスが多分に盛り込まれていて、非常に心地良く洗練されたものだ。
聴いていると、懐かしさで胸が締め付けられそう。
こういう路線でも、センスの良さと研究熱心さ、耳の良さは容易に感じ取れる。



才能がありながらも、へそ曲がりで、人との共同作業が向かない故、作詞作曲から歌や演奏、録音、ミックスまで全てを自分でやることになってしまった宅録ミュージシャンの作る音楽が僕は大好きなんだなと改めて思う。
彼らは人に合わせる事も人に媚びる事も知らない。
それほど自分の中にある音の質感や音楽の理想的な形、表現したいものが大切なんだと思う。
こういう人たちが作った音楽は、そもそも音に籠められた熱が違う。それはなぜか聴いた瞬間すぐにわかる。これは不思議なんですよね。本当に音に出るから。

才能がありながらも、音楽に真面目すぎて売れないアーティストは、よく生まれてくる時代を間違えたなどと言われたりするが、そういうタイプのアーティストはいつの時代でも不遇だと思う。現在はそんな人たちが取り分け不遇な時代だといえるかもしれない。
まあ彼らも彼らで自分のやりたい音楽を犠牲にしてまで世間に合わせようという気なんて毛頭ないのでしょうけど。
こういった才能が広く聴かれずに埋もれたままになるのは、何とも勿体無い。


(文/Lamp 染谷大陽)


Lamp プロフィール

Lamp

染谷大陽、永井祐介、榊原香保里によって結成。永井と榊原の奏でる美しい切ないハーモニーと耳に残る心地よいメロディーが徐々に浸透し話題を呼ぶことに。定評あるメロディーセンスは、ボサノバなどが持つ柔らかいコード感や、ソウルやシティポップスの持つ洗練されたサウンドをベースにし、二人の甘い声と、独特な緊張感が絡み合い、思わず胸を締めつけられるような雰囲気を作り出している。 日本特有の湿度や匂いを感じさせるどこかせつない歌詞と、さまざまな良質な音楽的エッセンスを飲み込みつくられた楽曲は高い評価を得ている。これまでに6枚のアルバム(韓国盤を含む)をリリース。

  オフィシャルHP
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商品ページへ   Lamp  『東京ユウトピア通信』
    [ 2011年02月09日 発売 / 通常価格 ¥2,500(tax in) ]     

どこを切っても現在進行形のバンドが持つフレッシュネスに溢れている。
真っ先に"成熟"を聴きとってしまいがちな音楽性にもかかわらず、だ。
そんな人達あんまりいない--そしてそこが素敵です。

- 冨田ラボ(冨田恵一) -
前作『ランプ幻想』では文字通り儚く幻想的な美しさと、巷にあふれるサウンドとは一線を画す質感を持った世界を作り上げ、あらたなポップスのフィールドを更新する傑作を作り上げた。2010年夏に発売された限定盤EP『八月の詩情』では、夏をテーマに季節が持つ一瞬の儚さを切り取った詩とその情景を見事に表現したサウンドが一体となり、より濃密なLampの世界を持つバンドの新たな可能性を提示した。そして待望のニュー・アルバムとなる今作『東京ユウトピア通信』は、EP『八月の詩情』と同時に並行して制作され、丁寧に1年半という時間を掛けて作り上げられた作品。そのサウンドは新生Lampとも言うべき、より強固なリズムアレンジが施され、これまでのLampサウンドを更に昇華させた独自の音楽を作り出している。冬という季節の冷たさと暖かさや誰もが一度は通り過ぎたことがある懐かしい感覚、どこかの街のある場所での男女の心象風景などこれまで同様に物事の瞬間を切り取った美しい歌詞を、新しいサウンドの乗せて編み上げた8曲の最高傑作。現在の音楽シーンにの中でも極めて独自な輝きを見せる彼らの奏でる音は、過去や現在を見渡してもLampというバンドしか描けない孤高のオリジナリティーを獲得し、新たな次元に到達している。



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※次回に続く




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