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--- 野坂さんの活動テーマの変遷は、そうした歌を通しても垣間見れるという。
80年代はこのポスターにもあるように「お米」がテーマになってきたんだけど、90年代っていうのは小泉純一郎が出てくる前で何となくごちゃごちゃしてた時期でしょ? 実はこの頃、野坂さん参院選にまた立候補しようかって話があったの。「昭和ヒトケタが暴れなきゃ日本はもっとヒドくなるんじゃねぇのか」って雰囲気が何となくあったんだよね。
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--- そこから『ザ・平成唱歌集』につながっていき・・・
『ザ・平成唱歌集』ではその三人も歌ってるけど、直接関係あったのはむしろ1999年の「国旗・国歌法案」の可決のほう。「日の丸」と「君が代」。まだこの当時渋谷にジァンジァンがあったんだけど、そこで三人が「君が代」について考えたり、明治の色んな唱歌を考えるシンポジウムみたいなものを開いたのね。そのときに「じゃあ明治唱歌のパロディを作ったらどうなるのか?」って何となく思い付いて作ったのがまさしく『ザ・平成唱歌集』。ディズニーランドが消える歌(「浦安太郎」)や、病気の名前をズラリ並べた歌(「病院唱歌」)なんかにしても昔の唱歌と引っ掛けて作ってね。
70年代は、僕もよく分からないまま勢いで書いてて、野坂さんもあまり考え込まずに歌ってて、それが何となくメッセージになってたのかもしれないんだけど、それ以降は「風刺」の対象がハッキリしてる歌に向かった感じはあるんだよね。対ゼネコンだとかさ。
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--- 野坂さんは歌手デビュー以後折々「紅白歌合戦」出場を目論んでいたそうですが、そのためにNHKの「新人歌手オーディション」を受けたりすることも考えていたらしいですね。
半分冗談、半分本気で「紅白出よう」とはよく言ってた。その頃はNHKのディレクターにも僕らの仲間が随分いたから、ホントにその気になったら「世直しトリオ」なんかで出れたのかもしれないけど。でもまぁ、NHKに出てハクが付くっていうんじゃなくて、あくまでそれをコケにしながらっていうスタンスだからね(笑)。とにかく危険な三人だから(笑)。
「昭和ヒトケタ」ってどこか生理的につながるところがあるの。いつも権威に対して楯突いたり、あとは「東大法科」大嫌いっていう共通点なんかがあって(笑)。そのへんをバックボーンにして、どんなことでも笑い飛ばして叩きのめすおもしろさに溢れてるんだよね。
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--- 僕のような白面郎からすると、野坂さんや桜井さん世代の “馴れ合いではない“ 連帯感はうらやましくもあります。
そういうのはあるかもしれないね。僕らの世代はみんな70年代がいちばんの活躍時期で、それぞれ同じような価値観を持って何かをやっていたのはたしかだから。そこに自然と仲間意識のようなものが生まれて。永さんにしろ亜星さんにしろ今でもつながってるからね。
50年代の終わり頃から今のテレビ朝日やフジテレビなんかが次々に開局されて、その記念番組を三木(鶏郎)さんの「冗談工房」で手がけたんだよね。そこから仕事がバァーっと増えていった。それまでのテレビ局は全部局内で番組を作ってたから、規制がなく何でもアリだったの。おもしろけりゃいいって。ちょうどその頃に僕らの世代がポンとあてはまって、それで60年代の終わり頃からフォークソングなんかの世代が出てくるんだけど、それまでの間十年ぐらい、新しいことやおもしろいことをやる人がいなかったブランクがある。そこに僕らが入り込んだっていう感じがあるんだよね。
僕らのすぐ下には「目の下のタンコブ」って、所謂「団塊の世代」がいた。学生運動の中心世代にあたる彼らに、僕らは突き上げられたカタチになるんだけど。まぁ僕らの世代にも小田実みたいに「ベ平連(ベトナムに平和を! 市民連合)」なんかをやってた人はいたけど、野坂さんは別にそういう活動はしてないからね。でも「心情三派」、気持ちだけは一緒だよって。「団塊の世代」はその後日本の経済発展の中核団体になって、今じゃ定年を迎えて悠々自適の生活を送ろうかっていう時期にきてるわけだよね。そういう人らを真ん中に据えながら、僕らの世代としても、これから先の世代にメッセージみたいなものを送りたいっていうのは一応あるんだよ。そろそろみんな棺桶に片足突っ込んでる感じになってきてるから(笑)、「今のうちに色々言っとかねぇとダメかな」っていうのはあって。それで昔の話しなんかを書き始める人が多くなってきてるんだよね。
「昭和ヒトケタ」に共通することとしてはもうひとつ、空襲なんかで命の危機を感じる体験をして、食べる物がないっていう時期も少しの間あった。それが根っこにあるから、野坂さんは60年代から「日本人は飢死にする」っていうことを言い続けてるわけなんだよね。「バカじゃねえのか」って思われるのかもしれないけど、でも今あらためて考えてみると、色んなものが煮詰まってきて、世界の総人口にいたっては70億を超えて、三十年後には100億に届くって言われてる時代を迎えて、どこの国も一律に中流の生活を送れるようになってくると、穀物は全部食い尽くされちゃうわけ。穀物を育てるには水が必要だから、今度は水が足りなくなる。そうなると野坂さんの「農本主義」っていうのはあながち的外れなことじゃないんだなってことになる。40年前より今の状況のほうが、はるかにそのことを現実的に感じるんだよね。
「じゃあ、どうするか?」ってことになる・・・「んなこたぁ知らないよ、お先にっ!」ってなことになるんだけどね(笑)。
【取材協力:BRAIN JACK/ウルトラヴァイブ/聞き手:HMV 小浜文晶】