HMVインタビュー: デリック・メイ

2011年11月18日 (金)

interview

Derrick May

大好評 Heart Beat×AIRのMIXシリーズに再び登場するゴッド、デリック・メイへのHMVオンライン初のインタビューが実現!熱いキャラ全開でたまに意味不明な部分もありますが...そこは黙ってスルーでお願いします!(笑)音楽への愛や哲学、そしてニッポンへの思いを純粋に語ってくれたインタビューを是非最後までお楽しみください。

何を使ってミックスするのかなんて構わないが、自分の手でミックスしなけりゃ駄目なんだ。


--- 実に13年ぶりとなった前作『Vol.1』リリース後の反響はどのようなものでしたか?またあなたはその状況をどの様に受け止めましたか?

Derrick May: 1枚目のミックスCDを発表した後に受けた最初の反響は素晴らしかったよ。反応が熱狂的だったし人々はとてもワクワクしていた。何故かというと、前作はご存知の通り『メーデー・ミックス』だったからね。皆かなり喜んでいたよ。たくさんの人達が長い年月、俺の新しいミックスCDの発表を待ち望んでいたことにもかなり驚いたね。14〜15年も経過して、人々からこれほどの反響を受けるとは予想さえつかなかった。新しい世代が興味を持ってくれるのは予想してたけれど、期待していなかった上の世代からも気に入って貰えたのは嬉しかったね。

--- 前作はより若い世代からも受け入れたと感じましたか?

Derrick May: ああ、もちろんだよ。俺が思うに若い世代が受け入れてくれたから前作は成功したんだよ。彼らは今クラブに熱心に通ってクラブをサポートしてる人達だからね。上の世代も受け入れてくれたのはとても喜ばしい事であったけど、また若い世代が興味を持ってくれたのは気持ちがよかったね。

--- そしてHeart Beatからの第2弾作品となる本作は、どのようなイメージで挑まれたのでしょうか? Vol.1と比べて特に意識した部分などがあれば教えてください。

Derrick May: 基本的に本作で表現したかったのは、自分が打ち出しているいつも通りのイメージなんだ。単に音楽を使い表現し、良質な音楽をプレイする事。プロの立場で、意気揚々と勢力的になって、自分がやっている事に集中し、それを上手にやる事だ。
わかるか?それが俺にとっていつも全く変わらない常に表現したいメッセージなんだ。俺には新しいメッセージやアイディア、コンセプト、目的、考え方などないし、全く変わってない。25年前から俺が言っている事と今日話している事とを比べれば、いつも同じ事を言っているはずだ。

--- 前作と比較すれば、貴方は新しいミックスCDで完全に異なるトラックを選曲しましたが。

Derrick May: 1枚目と2枚目の制作方法はそれほど変わっていないから、違いと言えば俺自身が本作に対して打ち込んだ“気持ち”だろうね。音楽的に言えば、俺は常に同じ音楽スタイルを感じ、集中している。それがエレクトロニック・ミュージックなのさ。俺はいつも俺自身の感情を表現する音楽に集中しているし自分自身を高揚させる音楽をプレイするのが好きなんだ。俺はこのミックスCDに凄く満足しているよ。制作するのも心地良かったし、今DJとして、どのような気持ちであるのかを上手く表現出来たと思うね。

--- そうですか。1枚目と比較し、新作に意識的に注入したかったある特定な要素はありましたでしょうか?

Derrick May: 大昔のミックスCD『ミックス・アップ』まで話を戻そう…
このミックスCDは全く異なるコンセプト、完全に違う制作方法で行ったんだ。俺はミックスCDを制作する際、幾つかのオプションとスタイルを備えている。皆は俺に「なぜあなたは最初の『メーデー・ミックス』のような、新作ミックスを出さないの?」と質問してくるが、なぜならそれは俺が全く異なる哲学、精神性、感じ方で生きていた時代にあのミックスCDを制作したからだ。俺はその当時別人だった。今でも同じようなものを作る事は出来るが、今回は他のやり方を選んだんだ。
今、俺は上手に“ミックス”することをとても重要視してる。最近はあらゆる場面でコンピューターを使用して、誰も上手く”ミックス”しようとしなくなってる。多くのDJ達は認めないが、コンピューターにすべてお任せしているような気がするんだ。だから、(今回の)作品では、“ミックス”というのは、俺のミスも含めて、人間が素手でミックスした、人間味溢れる行為だということを多くの人にわかって欲しかったんだ。
DJするってことは単に音楽を再生するものなんかじゃなくて、DJ達が自分の個性を注入して“ミックスした音楽”の中にこそ本来のDJの本質があるんじゃないかな。

--- という事は、あなたはターンテーブルにてヴァイナルをかけ、自身の経験とテクニックを駆使しプレイするのを好むという事でしょうか?

Derrick May: それがまさにDJの醍醐味。そうだろ?1つの事を25年以上修行して、そしてある日に突然理由もなく辞めたりしないだろ?そんなの阿呆らしい。それがまさに俺が言いたいことだ。それが今まで起こった事さ。
シンプルに話すと、俺にとっては皆が同じスタイルのサウンドで、似たようなミックスで、同じ音楽をプレイしているように聴こえる。今はDJである事とはひょっとして凄くつまらなく、不毛な時代なのかもしれない。誰でもDJになる事は容易だからね。だからこそ、音楽をプレイする時に自分の個性を見いだして、エネルギッシュに回すのが凄く重要だと思うんだ。そしてそれをやるのには自分自身の手でミックスしなければならない。何を使ってミックスするのかなんて構わないが、自分の手でミックスしなけりゃ駄目なんだ。

--- 本作でもVol.1 に続き、エモーショナルなライヴ感溢れるミックスを聴く事ができますが、今回もアナログ+ターンテーブルでの一発録りですよね?

Derrick May: ああ、その通りだ。前作同様にワン・テイク、一発で(本ミックスCDを)制作した。一回きりで行うのは事故が生じても気にならないベストな方法だね。

--- 今も変わらずにアナログ+ターンテーブルでDJプレイする事に対する思いを教えてください。

Derrick May: 俺は楽しんでるんだ。さっきも言った通り、次に何をプレイするのか解らないっていう挑戦を楽しんでいる。次のミックスで自分を驚かすアイディアが好きなんだ。自分にはこれが求められた仕事であるって事実も嬉しいよ。
もし俺がコンピューターで音楽をプレイしていたら、たぶん自分のメールもチェックしてしまうだろうからね。俺にとってそれは全く同じようなコンセプトだと思えるんだ。もちろんコンピューターを使用している多くのDJ達は俺みたいに考えていないかもしれないし、実際彼らはミックスがとても上手だ。
俺も(PCでDJすることを)いつかは習わなくちゃいけないとも思うが、今は出来ないね。やりたくない。出来ないとは言わないが、自分から率先してやりたくはないね。俺にとってはつまらない事だから。

--- 本作にはクニユキさんやHiroshi Watanabeさんといった日本人のトラックも使用されていますね。そして「生きてて良かった〜」のフレーズは日本人にとっては特に印象的なものなのですが、そこにはあなたのどのような思いが込められているのでしょうか?

Derrick May: いや、俺は日本のコミュニティとはリアルなコネクションを持ってるんだよ。第1に、俺の娘は日本に親戚がいる。第2に、俺は昔から日本の文化、日本のダンスミュージックカルチャーに親密な関係を感じてた。俺は日本の音楽ムーヴメントの一部であるアーティスト達、例えばYMOや喜多郎を聴いて育った。プラスティックスも聴いていたよ。だから、2〜3年前に初来日して日本が大好きになったアーティスト達とはだいぶ違って、大昔から日本との繋がりを持ってるんだ。 来日してる時はよりコミュニティと密着しているような気がするし、日本にじっくりと滞在して色々と探検して、いろんな人と知り合いになって、コミュニティと密着するのが好きなんだ。
だから、俺にとって日本人のアーティストのレコードをプレイするのはごく自然な事なんだよ。あえて意識的に考えてプレイしてるんじゃない。日本人のアーティスト、彼らの音楽と「生きていて良かった」といったフレーズが入っているレコードを、特別に時間をかけて計画してプレイしてる訳でもない。当然やるべき事だと感じて自然にやっただけさ。言わんとしている事、わかるかい?じっくり考えてやった事じゃないんだ。これらのアーティスト達と彼らの音楽を意識的に考えてプレイしたりなんかしない。彼らの音楽をプレイするのが楽しいんだ。これらのレコードをプレイするのは光栄なんだよ。彼らは俺にとって大事だし、特に今年日本人は多くの苦しみとドラマの中で過ごしてきたから、彼らの音楽をプレイするのは特別な意味がこもってる。日本にとって苦痛な年だったからね。不快な、恐ろしい年だった。台風やら、津波やら、不景気やら、本当に辛い年だった。

--- 日本人の皆様の代表として、貴方にこのような事を言って頂き、感謝をしております。

Derrick May: Thank you, arigato.

--- あなたのDJミックス音源は、80年代のラジオショーの頃からライヴ録音のスタイルですよね?ファンの多くもそれを期待していますが、やはりあなたにとってはそれが一番良い方法ですか?また、このスタイルはこれからもずっと変わる事はないと考えますか?

Derrick May: 誰でも行動を起こす時は、個性的で、ユニークだと思う。ミックスCDを制作する、また音楽やリミックスを制作する時の俺のアプローチは、常に個人的なんだ。これらは俺の個性の一部で、その個性によって創造してるんだ。俺自身が単にレコードをプレイし、音楽制作を行い、音楽をリミックスしているだけじゃない。どっちかというと、俺自身の個性が出現するんだよ。なぜだかわからないが、俺は音楽に俺自身の個性を注入出来る。それはとっても光栄な事だよ。そして、よい事だと思う。長年レコードをプレイし続けてそんな事が出来るなんてね。俺がプレイするほぼどのレコードも自分が想像するようなサウンドに聴かせる事が出来るんだ。それはクールな事だね。
長年かかるが皆もこのテクニックを自分で開発し、習得すべきだと思う。でもひょっとしたらこれは、俺にとっては天性なのかもしれないな。自分独自の才能で、あまり深く理解しない方がいい事なのかもしれない。プレイ出来なくなる時がくるまでその才能を単に活用すべきなのかもしれないな。

--- すでに何度か出演されていますが、DOMMUNEなどのライヴ・ストリーム放送についてはどのような見識をお持ちですか?

Derrick May: 俺はドミューンが大好きだ。それにこの新しいメディアは物凄く重要だと思うよ。なぜかって言うと、ドミューンは海外に住んでる人達がほとんど知らないもう一つの日本の印象を披露する事が出来てるからさ。
ほとんどの外国人は日本の一部分のイメージしか持っていないから、ドミューンのサイトがいち早く成功した事はとてもクールな事だと思うね。俺は彼らに協力出来て嬉しいよ。凄くクールな事だし、言うまでもなく絶対に100%ポジティヴだ。

--- ドミューンを見た事のある、海外に住んでいる人と会った事がありますか?

Derrick May: おお、もちろんあるよ。それに、世界中の人達から「今、あなたの(DJ)セットを聴いたよ」と言われて、どこで聴いたのかと尋ねたら「ドマミユーで聴いたよ」と答えるんだ。彼らはドミューンって発音が出来ないから、間違ってどのように発音するのかも結構笑えるね。
ドミューンは自身のサイトを上手く宣伝していると思う。彼らは世界中の人達とお互いにリンクし合うことに成功したと思うね。凄く素晴らしい。

--- このサイトの番組を(海外の方々が)見て、日本の印象を変わったと思いますか?

Derrick May: ああ、もちろんだ。なぜかって言うと海外の多くの人達は、日本に対して凄く限定的なイメージしか持っていないからね。彼らは日本の事を全く知らないんだよ。だから彼らがビデオ映像で、日本のコミュニティや芸術と音楽シーンを流す(ドミューンの)番組を見る機会があるのは凄くクールだと思うね。

--- あなたはもう30年近く常にシーンの中心いる偉大なDJですが、そんなあなたが考える、クラウドを躍らせる為の最大要素とは何でしょうか?

Derrick May: 凄く簡単な質問だけど、返答するのは難しいな。恐らくこの質問に真剣に応えるには、“DJする時、素直な気持ちで立ち向かうしかない”ってことだけだね。いつも凄く素直な気持ちで取り組む事だ。俺は何をするのか全く計画をたてる事が出来ない。DJする前に何をしたいのかも考える事はしない。DJブースに入って、最初にこのレコードをプレイし、そしてあのレコードを次にプレイするなんて事は考えないし一切しない。
会場入りする時、俺は常に人々を観察し、彼らの目と身体の動きを見る。ダンスフロアの、その場のエネルギーに注意を払うんだ。そして、そんな事を気にしながらDJを始める。そして俺の前にプレイしているDJがかけているレコードに注目して、開始するんだ。それらが俺にとっての判断基準だ。それらの要素がフロアを踊らせるための参考ポイントだよ。それ以外、次に何を行うかは全く予想がつかない。俺は何か特定の計画を練ったりはしないし練習やリハーサルなんかもしない。
レコード・ショップに行き、レコードを買い、クラブに俺の音楽を持って行って、それで突進する。そして、先のことなんか考えずにあるがままを受け入れて1枚ずつレコードをプレイするのさ。

--- そんなにシンプルなんですね。

Derrick May: 簡単に聞こえるが、そんなに簡単ではないよ。知ってるか?最も簡単な事っていうのが凄く難しいんだよ。複雑である事や手間に満ちている事、難しい事は実はとても簡単なんだ。しかし、凄くシンプルになること、凄くプロになることはとても難しくて、簡素になることも難解だ。たやすく上手になる事は凄く難しい事なんだよ。

--- 日本で行われるこのアルバムのリリース・パーティへ向けての意気込みをお願いします。

Derrick May: 何を言ってんだよ!!もちろん俺はスゲー、スゲー楽しみにしてるよ。そんな事は聞かなくてもわかってんだろ。ニッポンに行くのはいつも楽しみにしてるし、ニッポンで起きている事に協力することには、いつもワクワクする。例えば、今回の俺のミックスCDとかもそうだよ。
知ってるか?シンディ・ローパーと俺は“津波”が起きた直後に来日した唯一のDJとアーティストだったんだぜ。デトロイトから旅立った飛行機には乗客が5人しか乗ってなかった。空港の警備員、デトロイトの警官、航空会社の全員から、「ミスター・メイ、本当に日本に行く飛行機に乗りたいの?」とまじめに聞かれたよ。だから俺以外のDJは誰も来日しなかったけど、俺はクラブAIRでDJした。情動的でパワフルな出来事に参加出来て、いつも嬉しいよ。津波直後にプレイした時に観客から受けた恩恵と愛は凄まじかったね。あの夜に感じたフィーリングは説明出来ないほどのものだった。空気にエネルギーが充満していた。それは津波と天災が起きた1週間後の夜だったんだ。今回のミックスCDの最後に、その夜のDJの4〜5分間のライヴ・レコーディングを収録したんだけど聴いたかい?本作の最後の5分間のライヴ。その箇所聴いた?

--- はい、聴きました。ぺヴィン・エヴァートのトラックを貴方がプレイしている箇所ですよね。

Derrick May: 誰も日本に来なかった、津波が起きた1週間後にプレイしたAIRでの夜だよ。これがあの週で、あの瞬間だった。

--- あの週、あの時良く覚えています。凄く強烈でしたね。

Derrick May: ああ、かなりエモーショナルで強烈だったのは確かだ。

--- それでは最後に我々の読者にメッセージを下さい。

Derrick May: It's Good to Be Alive. (生きていて良かった)


text & interview by
HMVオンライン × Ken Hidaka (hangouter/ Wax Poetics Japan)



新譜Heartbeat Presents Mixed By Derrick May Vol.2
絶妙な人選と確かなサウンドで好評の村田大造氏による Heart Beat × AIRシリーズにテクノゴッド=デリック・メイがまさかの再登場!前作同様、ターンテーブルとミキサーのみの一発録りライブレコーディングで生々しくエモーショナルなプレイを展開する本作には、東日本大震災直後に来日し行った@AIRのライブ音源も収録されています!



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    (Heartbeatレーベルのプロデューサー村田大造氏が10/28にオープンさせたライヴ&サウンドスペース、キャパ1500人収容の大型クラブ) http://www.vision-tokyo.com/

    応募締切り:2012年1月10日(火)消印有効

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