【連載】Lamp 『遥かなる夏の残響』(第6回) Lamp 『遥かなる夏の残響』へ戻る

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2011年11月2日 (水)













        Lamp・染谷大陽による月イチ連載コラム『遥かなる夏の残響』第6回。
        今回は70年代前半のソウル・ミュージックから、
        偉大なる3アーティストを中心に名盤をご紹介です。





ソウル・ミュージックが最も刺激的だったのは、間違いなく70年代の前半。
少なくとも僕の周りの狭い世界にいる人間の中ではそういうことになっている。

僕は、ソウル・ミュージックの中でも、ソフトでメロウでスウィートな感じのものが大好きで、聴くのは決まってそういう雰囲気のものばかりだ。

70年代前半に全盛期を迎えたカーティス・メイフィールド、スティーヴィー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ等の作品の数々は、どれも今の音楽以上に魅力的で、この時代にしか生まれ得ないエネルギーに満ち溢れている。
なぜ今でもその3人が高く評価されているのかといえば、やはりこのソウル・ミュージックの革命期にいくつもの凄いアルバムを出したからなんでしょうね。

カーティス・メイフィールドは、70年代前半において、神懸り的に何枚もの名盤を生み出したが、中でもソロ名義第1弾、1970年の『Curtis』は飛び抜けている。
実際、その後の『Superfly』や『There's No Place Like America Today』等も、この時代のソウル・ミュージックを代表するような、かなり凄い内容のアルバムである。
が、やはり1枚選べとなると『Curtis』に敵うアルバムはない。
特に、2「The Other Side Of Town」から3「The Makings Of You」、4「We The People Who Are Darker Than Blue」と続く3曲は、ソウル・ミュージックという範疇を完全に超えている。

今の「整理され過ぎている音楽」ばかり聴いている若い世代にこそ、こういうアルバムを聴いて欲しいと思う。
もうね、全然違うから。
僕はレコーディング等で行き詰まった時にいつもこのアルバムから力をもらっています。
こういう勢いで音楽を作らなくてはいけないな、と。
なんでこの人はずっとファルセットで歌ってるんだろうなぁとか、そういう風に思っているうちにカーティスの音楽の虜になっていると思います。


スティーヴィー・ワンダーなら、僕は『Music Of My Mind』。
一般的には、この『Music Of My Mind』の後の3枚(『Talking Book』〜『Fulfillingness' First Finale』)や76年の『Songs In The Key Of Life』辺りが有名で人気もある。確かにそれらも充実した内容のアルバムである。
まあなんでしょう。この人の場合、どの時代も変態的に凄くて、楽曲はいつの時代も素晴らし過ぎるものを作っているので、70年代前半に絞って語る必要もないのですが、でも音と演奏が一番良いのはこの頃なんですよ。
そこは間違いないので、続けますね。

74年の『Fulfillingness' First Finale』あたりになると、サウンドもしっとりとしてきて、音も上手くまとまってきているんだけど、この『Music Of My Mind』は生々しさや粗さが違う。
若さ故の熱が音で感じられる作品なのです。
そして、2「Superwoman」の出来が半端じゃない。この曲は、二部構成になっており、前半も後半もそれぞれで完全に独自の世界を作り上げている。すごく気持ちよくてポップなんだけど、そこら辺のポップスとは全然違う。これはこの人にしか作れなかった。そう思わざるを得ない出来なわけです。
これを、21歳で発表しちゃったわけですからね。
それは天才と呼ばれるわけだ。
僕の好みを言えば、このアルバムでも、元気でファンキーなセブンス系の「Love Having You Around」や「Keep On Running」などはそんなに興味がなかったりする。
「Superwoman」もそうだけど、「Seems So Long」や「Happier Than The Morning Sun」、「I Love Every Little Thing About You」など、ポップでメロディーがきれいな曲の方が好きなのだ。
繰り返しになるけど、70年代以降のスティーヴィー・ワンダーのアルバムはどれも凄いので、気に入った人は調べてどんどん聴いていってもらいたい。


マーヴィン・ゲイは、どれか1枚となるとちょっと迷う。
『What’s Going On』(1971年)と『Let’s Get It On』(1973年)、『I Want You』(1976年)。この3枚はどれも甲乙付け難い出来。
有名度で言ったら、それはもう『What’s Going On』の圧勝なんだけど、これは、歌詞の内容や作られ方が画期的だったという理由で評価されている向きもあり、音だけを聴くならば、『I Want You』の方が何度も聴いてしまうような深みがある気がする。
と言いつつ、僕、『What’s Going On』も気持ちよく聴いているんですけどね。
この際、『Let’s Get It On』含め、どれも凄いアルバムだと言い切ってしまったほうがいいかな。
いや、でもせっかくこういう機会なので、無理にでも1枚選んでおきます。
というわけで、76年の『I Want You』ですね。
「76年って、70年代の前半じゃないじゃん」とか細かいことは言わないでくださいね。

これは、全体が一つに感じるタイプのアルバムで、ずっと同じムードのまま全部聴ける。
実はこのアルバム、曲を作り、録音などの大部分を制作したのは、マーヴィン・ゲイではなく、リオン・ウェアという別の人。そのリオン・ウェアのほぼ完成された作品をマーヴィンが譲り受け、そこに歌を重ね、リリースされたアルバムなんです。
楽曲と歌のマッチングが良すぎて、これ以外のマーヴィン・ゲイのアルバムと全く違和感なく感じられてしまうのが不思議。本人からしてみれば、これが一番良いアルバムだって言われるのは、癪かも知れませんね。
そして、ソウル・ミュージックの醍醐味である「キラキラ」が満載なのも良い。
「キラキラ」とは、多分通じないと思うけど、僕が好きなソウル・ミュージックの楽曲に共通する、「とある雰囲気」のことを指します。すみません。
因みにこのアルバム、始終男女の喘ぎ声が挿入されているので、自ずと聴く場所は限定されると思います。


最後に、70年代前半のソウル・ミュージックで、どうしてもお薦めしておきたいメロウなアルバムをいくつか。
カーティス・メイフィールド主宰のレーベル「Curtom」所属でメロウな鍵盤奏者リロイ・ハトソン渾身の1枚『Hutson』(1975年)、フィラデルフィア録音だがフィリー・ソウルっぽさは薄く、全曲メロウでスウィートなノーザン・ソウルといったところのウィリアム・ディヴォーン『Be Thankful For What You Got』(1974年)、マーヴィン・ゲイの『I Want You』が気に入ったならこれも是非聴いてみてほしいシルヴィアの『Pillow Talk』(1973年)、ドナルド・バードとマイゼル兄弟による極上のスカイ・ハイ・サウンド『Places & Spaces』(1975年)、30年以上先回りした音楽性とサウンドの名盤、シュギー・オーティスの『Inspiration Information』(1974年)。
この辺りはどれも間違いない。
シュギー・オーティスなんかは、かなり今っぽいサウンドで、ソウル・ミュージックにあまり興味がない人でも一気に好きになってしまう内容だと思う。
そして何より、これらは今の音楽のように画一されたようなものではなく、それぞれが非常に個性的であり、そこがこの時代の音楽を聴く醍醐味にもなっていると思う。


「流行っているから」とか「見た目が好きだから」とか、音楽をそういう哀しい物差しで計らないで、純粋に音に向き合ってみてほしい。そうすれば、きっと今までと違った世界が目の前に開けると思う。まあこの文章をここまで読む人はそんな風に音楽を聴いていないだろうけど。
そして、世の中には、まだまだ知らない良い音楽が沢山あるということを認識してほしい。
僕のこの文章が、そのような深い深い音楽の森への入り口になったなら幸いです。
僅か千円とか二千円とかでこんなに良い音楽が聴けるわけで、良い時代に生まれたものだと思う。
短い人生、良い音楽を沢山聴こう。


(文/Lamp 染谷大陽)


Lamp プロフィール

Lamp

染谷大陽、永井祐介、榊原香保里によって結成。永井と榊原の奏でる美しい切ないハーモニーと耳に残る心地よいメロディーが徐々に浸透し話題を呼ぶことに。定評あるメロディーセンスは、ボサノバなどが持つ柔らかいコード感や、ソウルやシティポップスの持つ洗練されたサウンドをベースにし、二人の甘い声と、独特な緊張感が絡み合い、思わず胸を締めつけられるような雰囲気を作り出している。 日本特有の湿度や匂いを感じさせるどこかせつない歌詞と、さまざまな良質な音楽的エッセンスを飲み込みつくられた楽曲は高い評価を得ている。これまでに6枚のアルバム(韓国盤を含む)をリリース。

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    [ 2011年02月09日 発売 / 通常価格 ¥2,500(tax in) ]     

どこを切っても現在進行形のバンドが持つフレッシュネスに溢れている。
真っ先に"成熟"を聴きとってしまいがちな音楽性にもかかわらず、だ。
そんな人達あんまりいない--そしてそこが素敵です。

- 冨田ラボ(冨田恵一) -
前作『ランプ幻想』では文字通り儚く幻想的な美しさと、巷にあふれるサウンドとは一線を画す質感を持った世界を作り上げ、あらたなポップスのフィールドを更新する傑作を作り上げた。2010年夏に発売された限定盤EP『八月の詩情』では、夏をテーマに季節が持つ一瞬の儚さを切り取った詩とその情景を見事に表現したサウンドが一体となり、より濃密なLampの世界を持つバンドの新たな可能性を提示した。そして待望のニュー・アルバムとなる今作『東京ユウトピア通信』は、EP『八月の詩情』と同時に並行して制作され、丁寧に1年半という時間を掛けて作り上げられた作品。そのサウンドは新生Lampとも言うべき、より強固なリズムアレンジが施され、これまでのLampサウンドを更に昇華させた独自の音楽を作り出している。冬という季節の冷たさと暖かさや誰もが一度は通り過ぎたことがある懐かしい感覚、どこかの街のある場所での男女の心象風景などこれまで同様に物事の瞬間を切り取った美しい歌詞を、新しいサウンドの乗せて編み上げた8曲の最高傑作。現在の音楽シーンにの中でも極めて独自な輝きを見せる彼らの奏でる音は、過去や現在を見渡してもLampというバンドしか描けない孤高のオリジナリティーを獲得し、新たな次元に到達している。



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※次回に続く




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