【特集】 DCPRG、リユニオン

2011年9月12日 (月)


DCPRG




 アフロ=ポリリズムを世紀末からゼロ年代の東京のクラブシーンに発生させ、持続させたファンクバンド、デートコース・ペンタゴン・ロイヤルガーデン(DCPRG)。ポリBPMによるフェイズの深化、マイルス・デイヴィスのエレクトリック・ファンクと菊地雅章マナーによるマイルスを、クロスリズムのアフリカ的な実践によって、さらなる進化を世界で唯一実現した。2007年に活動を休止した後、2010年10月9日、雨の日比谷野外音楽堂で新メンバーによる伝説的な復帰を遂げる。

 そして今年6月6日の恵比寿LIQUIDROOM。「ALTER WAR & POLYPHONIC PEACE」と掲げられたギグには、アート・リンゼイがゲスト出演。大幅な”血の入れ替え”を行なった新生DCPRGの”訛り”のひとつと化して、クラウドを高揚させ放心させ、はては心のヒダを擽りまくったというのだから聞き捨てならない。さらに、伝説の一夜となったこのギグがCD化、しかもあの老舗名門ジャズ・レーベル「IMPULSE!(インパルス)」からリリースされるということで、マイケル・ヘンダーソン・エレクトリック・マイルス・リユニオン・バンドの日本公演前座(結局はすべてが計画のままエンスト)出演のみの復活計画がここまで発展し膨張するとは...驚きと歓びがハードでコスモポリなアマルガムとなってDCPRG党の横っ面を強烈にはたく。

 その名も『ALTER WAR IN TOKYO』。「別化された戦争に抗する平和は多/重層的でなければならず」(PELISSE 菊地日記より)。「9.11」、そして「3.11」に対峙した我々の然るべき ”最新の戦闘方法”ということで。DCPRGの第三シーズン、一発目の全国区プロダクツは百出まとまらない2011年ニッポンのムードを代弁し救済するかのごとく、慎重且つ物怖じしない態度のクラスターでダンスフロアに至極真っ当でシンプルなラブを量産する。そして、不変の、余りあるマイルス・リスペクトとともに。





Alter War In Tokyo


[disc 1]
1. ジャングル・クルーズにうってつけ
    の日
2. Catch 22
3. ニューヨーク・ガール

[disc 2]
1. Playmate At Hanoi
2. 構造T (現代呪術の構造)
3. Mirror Balls


 
 Alter War In Tokyo
 ユニバーサル UCCJ2091 2011年9月21日発売 

  菊地成孔率いるデート・コース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデンが、名門インパルスから日本人初のメジャー・リリース!
 2011年6月6日、恵比寿リキッドルームにおける菊地成孔DCPRG+アート・リンゼイのライヴを収録した2枚組。ライヴでは聴き取ることのできなかった全く別次元のグルーブが聴こえてくる! バンドの結成12年目にして初のメジャー・リリースとなる作品は、2011年6月6日に恵比寿リキッドルームで行われた最新ライヴを収録した2枚組。鬼才ギタリスト、アート・リンゼイがゲスト参加した熱狂のライヴで、オーディエンスからは公演直後から作品化のリクエストが多数寄せられるなど、早くも伝説化していた。初期からおなじみのレパートリーが新生DCPRGにより鮮やかに甦る。また、マイルス・デイヴィス『オン・ザ・コーナー』収録の「ニューヨーク・ガール」のカヴァーは今回がCD初収録となる。


菊地成孔(cond,CDJ,key)/坪口昌恭(key)/丈青(key)/大村孝佳(g)/アリガス(b)/千住宗臣(ds)/田中教順(ds)/大儀見元(per)/津上研太(sax)/高井汐人(sax)/類家心平(tp)/Special Guest:アート・リンゼイ(g on 「Catch 22」「New York Girl」)



JAZZ JAPAN Vol.14
 JAZZ JAPAN Vol.14 2011年10月号
 ヤマハ ミュージック メディア 

  [特集1] 菊地成孔DCPRG 再確認そして発展 [特集2] ジョン・コルトレーン日本公演の衝撃〜聖者が名古屋に降臨した日 [特集3]木村太郎/宇崎竜童/高橋長英が語るローカル・ジャズの愉悦 [特集4] 土岐麻子,父を語るソング・フォー・マイ・ファーザー 第十二話:土岐英史 ほか




Musical From Chaos 3: HOA-KY


1. Catch22
2. 花旗
3. ジャングル・クルーズにうってつ
    けの日
4. Hard Core Peace
5. フォックス・トロット


 
 Musical From Chaos 3: HOA-KY
 Pヴァイン PVDV34 

 初期より活動を共にしてきた鬼才映画監督・夏目現が、菊地氏の内面から「DCPRG現象」を再構築するというコンセプトのもとに制作されたDVD。もちろんDCPRGの最大の魅力であるライブの模様も収録。新曲を中心にセレクトされている。








 

Franz Kafka's America


[disc 1]
1. ジャングル・クルーズにうってつ
    けの日
2. (イッツ・ア・スモール)ワールド・
    ミュージックス・ワールド
3. 競売ナンバー49の叫び

[disc 2]
1. ワシントンDC
2. 1865年 バージニア州 リッチモ
    ンド
3. フォックス・トロット
4. 花旗


 
 Franz Kafka's America
 Pヴァイン PCD18514 

 カフカの長編小説「アメリカ」を引用したタイトルに着地しながら、「妄想のアメリカ」を描ききった2007年発表の3rdアルバム。カオスに満ちた圧倒的なグルーヴは、さらにその混沌度を増しながら宇宙的な広がりをみせる。「(イッツ・ア・スモール)ワールド・ミュージックス・ワールド」をして、「アメリカ軍の空爆映像にボサノヴァがミックスされたエレガントに等しい、野生の思考による完璧なマリアージュ」(©菊地氏)。




Musical From Chaos 2



1. 構造T (現代呪術の構造)
2. 構造U (中世アメリカの構造)
3. 構造V (回転体と売春の構造)
4. 構造W (寺院と天国の構造)
5. 構造X (港湾と歓楽街の構造)
6. 構造Y (シャンパン抜栓の構造)



 
 Musical From Chaos 2
 コロムビア COCP50828 

 『Musical From Chaos』第二弾では、2003年初頭から2004年暮までのライブ素材から厳選したベストテイクによって第二期を総括。呪術的でなお本能的なダンス欲求に訴えかけるDCPRGのライブが音と映像で甦る(DVD付きおよびDVDは生産終了)。さらに菊地氏による偏執的なカットアップを施し、DCPRGの躍動感に満ちた姿を鮮明に浮かびあがらせている。






 

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1. Stayin' Alive
2. Fame
3. Pan-american Beef
    Stake Art Federation 2
4. 【エンハンスド】 structure I
    (Live Version)
 
 Stain Alive / Fame / Pan-american Beef Stake Art Federation 2
 コロムビア COCP50817 

 2004年のメジャー盤。音源化を熱望されていたライブでおなじみのレパートリーに書き下ろし2曲をプラス(1曲はカヴァー)。DCPRGの入門編としても機能させるべく、かつてないほどメロディックなナンバーが集結。ライブで大定番のビージーズ「Stain Alive」(スタジオテイクは初)、デヴィッド・ボウイの名曲「Fame」のファンキー・カヴァーに、ROVOとのスプリット・シングルで発売した「Pan-American Beef Stake Art Federation(全米ビーフステ−キ芸術連盟)」の続編を収録。

Structure Et Force

1. 構造T (現代呪術の構造)
2. 構造U (中世アメリカの構造)
3. 構造V (回転体と売春の構造)
4. 構造W (寺院と天国の構造)
5. 構造X (港湾と歓楽街の構造)
6. 構造Y (シャンパン抜栓の構造)
 
 Structure Et Force
 Pヴァイン PCD18508 

 タイトルは日本語で「構造と力」。1983年に出版された浅田彰氏の著書より付けられた2003年の2ndアルバム。バンドの支柱とも言える大友良英の脱退はあったものの、ブラス隊を強化したことなどにより、さらにアレンジがアグレッシブに。後任サポート・ギタリストにPANIC SMILEからジェイソン・シャルトンを迎え、ジャズ、ファンク、ロック、クラブ・ミュージックすべてを飲み込んだカオティック体へと進化を遂げた。





 

Musical From Chaos

[disc 1]
1. Catch 22
2. Catch 22
3. Catch 22
4. Catch 22
5. Catch 22

[disc 2]
1. Playmate At Hanoi
2. Spanish Key
3. Stain Alive
4. Circle/Line〜Hard Core
    Peace
5. S
6. ホーチミン市のミラーボール


 
 Musical From Chaos
 Pヴァイン PCD18506 

 人力で創り出す混沌と灼熱の音像。2002年末の脱退も衝撃的だった大友良英が在籍した第一期を総括・検証するフル・ライブ盤。過去の膨大なライブ・ストック音源からベストテイクを選りすぐり。「Catch22」のヴァージョン違い5曲だけで構成されたディスク1には、混沌としたまま爆発したり、ミニマルになったり、さまざま表情をまるで別曲のように聴かせるDCPRGのライブの魅力を見事にパッケージ。





3rd General Representation Products Chain Drastism (1CD)

1. Catch 44.1 (Oe
    Reconstraction)
2. Bayaka
3. Play Mate at Hanoi -Inu
    Ni Kirawareta- (DJ
    Quietstorm Mix)
4. Play Mate at Hanoi
    (Olantunji Mix)
5. Circle Line (DJ Me DJ
    You Mix)
6. Catch 22 (Kazunao
    Nagata Showa Dub Mix)
7. Pan American Beef
    Stake Art Federations
     (Rei Harakami
     Re-Arrange)
 
 3rd General Representation Products Chain Drastism (1CD)
 Pヴァイン PCD24131 

 レイハラカミ、「キャプテンファンク」ことオオエタツヤ、DJ クワイエットストーム、SUKIAのDJ ME DJ YOU、さらにトランソニックの永田一直、メンバーの大友良英という、ひとクセもふたクセもあるメンツによるリミックス盤。これくらいクセのあるメンツでないとDCPRGの音源は料理できない。





 

アイアンマウンテン報告

1. Catch22
2. Playmate At Hanoi
3. S
4. Circle/Line〜Hard Core
    Peace
5. Hey Joe
6. Mirror Balls


 
 アイアンマウンテン報告
 Pヴァイン PCD18502 

 菊地成孔を主幹に、大友良英、坪口昌恭、芳垣安洋、栗原正巳、吉見征樹、藤井信雄、大儀見元、津上研太、高井康生、後関好宏といった錚々たるメンバーからなる「デートコース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデン」、2001年リリースの記念すべき1stフル・アルバム。70年代マイルスへのリスペクトも十分に孕みつつ、「戦時中に刊行された戦争に関する偽書」から引用されたタイトルなど、随所にパイソンズさながらの黒い笑いが仕込まれている。





全米ビーフステーキ芸術連盟

1. シノ / ROVO
2. Pan-american Beef
    Stake Art Federations
    / DCPRG
 
 全米ビーフステーキ芸術連盟
 Pヴァイン PCD18501 

 「全米ビーフステーキ芸術連盟」とは、「1956年から58年にかけて活動した実在の団体だ。全米と名乗っているが、実際にはニューヨークの精肉店主人や菓子職人、画家などから成る数十人の変人の集団だったようだ・・・」とライナーノーツの中で記述され、アメリカ入国前の菊地氏にとっての重要なアメリカン・イコンのひとつであったという。本作は、ROVOと30分ずつをシェアした全2曲のスプリット盤で、表題曲は、元々7分ほどの楽曲しか用意していなかった氏の殺人的な努力によって30分の作品にデッチ上げられたというシロモノ。トータル60分、左チャンネルから聴こえるドラムがすべて芳垣安洋というのもミラクル。




 

スペインの宇宙食


[contents]
・ 放蕩息子の帰還
・ 展望レストラン「光峰」
・ 「愛の世紀が」が生み出した、
   半勃起的に小規模な騒動
・ ダンスバンドを、
   戦争より先に作っておく ほか
 
 スペインの宇宙食
 小学館 4093874654 

 菊地氏の初エッセイ集。1999〜2001年4月の間にHPや雑誌に寄せた膨大なエッセイから傑作を厳選したもの。「今」の都市を生きる音楽家の生活と意見、ひいては神経症的な現代人の感情を捉えたドキュメントである本書には、音楽、料理、映画、文学、セックス、精神分析などについてのペダントリーを全開にした、読者の五感に訴えかける鮮烈な文章がぎっしり詰まっている。DCPRG結成へ氏を突き動かした衝動は「ダンスバンドを、戦争より先に作っておく」で。2009年刊行の文庫版はこちら







Boycott Rhythm Machine

1. Theme of Inuhime
    / 渋さ知らズ
2. 2004.3.17. Fine
    / 外山明・大儀見元 デュオ
3. 構造T 1/2 / DCPRG
4. Song for Che 〜
    Reducing Agent / ONJO
5. 飛行機凧とメリーゴーランド
    / Vincent Atmicus
6. 相対的近似レオーネ
    / 水谷浩章・菊地雅晃 デュオ
7. FUMO / ROVO
8. Praise Song / 南博トリオ
 
 V.A. / Boycott Rhythm Machine
 Vinylsoyuz VSAC2002 

 総勢50名にも及ぶ“ジャズの魔法使い”達による夢の饗宴。2004年を席巻したジャズの新たな潮流を、極彩色の生音で振り返った傑作コンピ。「構造T 1/2」は菊地氏によるセルフ・リミックス。





 

至福刑事 Vol.2

[disc 1]
M-1. Playmate At Hanoi
/ DCPRG
M-2. Hey Joe (MAHER SHALAL HASH BAZ)
/ DCPRG ほか

[disc 2]
M-2. 大人になれば
/ 大場久美子×菊地成孔 ほか


 
 V.A. / 至福刑事 Vol.2
 Pヴァイン PCD5655 

 スペースシャワーTVが発行していたフリーペーパー「ダダダー!」のトリビュート・コンピレーション・ブック CD 「私服刑事」の第2弾、その名も「至福刑事」。3枚組+72ページ・ブックレット仕様。DCPRGは、2001年10月1日の新宿リキッドルームでのライブ音源2曲が収録されている。さらに菊地氏は、自作トラックを提供した大場久美子のセルフカヴァー「大人になれば」でデュエット歌唱までを披露している。






 「戦争直前の初期衝動」

 ちょうど10年前の「クイックジャパン」誌(2001年Vol.38)の表紙にはそんな挑発的な文言が躍り、主幹・菊地成孔をはじめとする第一期DCPRGの面々が二日酔いさながらの鈍く光る視線をこちらに投げかけていた。

 当時、大手家電メーカーに勤務していたOL 岩澤瞳 嬢とのアンニュイ・ポップ・ユニット=スパンクハッピー(この時点で第二期)と併走することで自らの血(AB型。しかも双子座)に従順であることを仄めかし、結果「対極なモノ同士が一個人の中で拮抗し、愛憎がきちんと分割される」ことを欲するという精神的均衡が保たれる。ゆえに菊地雅章「サークル(円)/ライン(直線)」という70sマイルス経由にしてアンビバレンツ極北の完全採譜〜完全再現からすべてがはじまったというDCPRG。後期ティポグラフィカの志を継承しつつも、よりフィジカルでダンスフロア絞りなリズム&グルーヴへとシフトした運動体の画期的な駆動。そして、「アメリカ/戦争/ダンス」。結成・運営当時の1998〜99年、コソボ紛争真っ只中に発芽した「戦争不安」という危機感をごくパーソナルな規模でドライに抱いていた主幹。その不安は、覚醒にも似た衝動へと反転し、超常的なシンクロニシティさえも引き起こす。「自己の不安神経症を治癒するため」としながらも、「リズム・ルネサンスを標榜するがゆえ」としながらも、傍目で目くばせすることだけは已めなかった強国アメリカの21世紀が思わぬカタチで幕を開けた・・・最初のフルアルバム『アイアンマウンテン報告』のリリースからちょうど1ヶ月後の2001年9月11日、ニューヨーク世界貿易センタービル2棟に2機の旅客機が突っ込む。この同時多発テロによりバージニア州アーリントンにある米国国防総省は・・・      

DCPRG
 現代音楽やフリー・ミュージックにおける「カオス」ではなく、ダンス・ミュージックにおける「カオス」というものがユースのダンス衝動を焚き付けるか否か。バラバラなものが瞬間的、そして周期的にひとつのグルーヴとなるポイント。それを身体が本能の赴くままにさぐり当てようとする or 生理的な嫌悪から総てを放棄する「Catch 22」。「戦争の不条理と狂気」をテーマにしたジョーゼフ・ヘラーによる小説から引用したタイトル。メンバー全員のリズムもタイムも異なるグルーヴのレイヤー群(恣意的で偶発的? なポリリズム)で構築されたこの曲をライブの冒頭に持ってくることによって、DCPRGはダンス・ミュージックのあらゆる可能性を模索し精査する。その物質的な集大成は『Musical From Chaos』の、執拗なまでの「Catch 22」 5連発で。 ”ズレ”とズレを脱した一瞬の”ゾーン”とのせめぎ合いは、ライブの現場で驚くべき速度で肥大し進化してゆく。方や、「Spanish Key」のナイーヴなカヴァーから、現代ユースにとっては半ば都市伝説の象徴とも言えるほど草臥れつつも、それが逆に新鮮な”芳ばしさ”を匂い勃たせるバブリシャスなミラーボール・サウンドまで。戦争にも似たある種の極限状態=「家畜化されていないカオス」 下で踊らせることを命題にするも、電化マイルスはおろか、スライJBEW&Fなどで日夜タコ踊りする人たちとも汗ばんだ美学を共有する、整合性のある最大公約数をDCPRGは持ち合わせていた。しかしそれは、扁平な「四つ打ち」を快適とする、現代フロアで定番化された最大公約数とは質を異にする。「リズムの訛り」を大手を振って歓迎する、そんなブラック・ミュージック通史に密接にコネクトしたダンス・ミュージックこそ「カオス」、とでも言わんばかりに(?)

 「踊らせる」「ダンス衝動に訴えかける」ということに執着する以上、包括的なひとつのグルーヴに着地せざるを得ないのはある種の宿命なのかもしれないが、主幹・菊地成孔とその同志が画策するグルーヴの構造は、例えば90年代〜00年代にかけて栄華を極めたクラブジャズ(あるいはアシッドジャズ)的なアプローチともまた異形。その手のフィールドがマイルス・デイヴィスの遺産でさえ首尾よく解凍することができなかったのだから、70sマイルスをセントラル・ドグマに据えて活動を開始したDCPRGがそこに相容れるわけがない、と言ったらあまりにも短絡的か? ただ、ヒップホップ同様にDJカルチャーと共に発展を遂げてきたクラブジャズの分野にとってDCPRGのグルーヴというのは、「ズレで踊る」をモットーに掲げているだけあって、やはりスマートに処理しにくい=レコードでフロアを鼓舞しづらいものであったに違いない。『3rd General Representation Products Chain Drastism』というリミックス盤こそ制作されてはいるが、さすがにこれをクラブジャズと同じ地平で語るにはかなりの無理があるというもの。どの曲も内容の濃い大相撲ながら、クラブに足繁く通うジャズ・リスナーの回路を混線させるだけの強い毒性を持ち合わせているという点で。

DCPRG
 大友良英脱退後のDCPRGを「グラウンド・ゼロ要素を排除した、のどかな第二期」といささかナメてかかった自閉都市に巣食う一部好事家も、『Structure Et Force/構造と力』『Musical From Chaos 2』の2年越しの合わせ技には泡を食ったのか、観てもいないフジロック出演に「アレはヤバかったな」とこぞって吹かす始末。マイルスの『On The Corner』は、そのライブ再現性の低さこそがぶっちゃけた魅力と、何度目かの盛り上がりをみせた時代でもある。メジャー昇格もあってなかったかのごとく、最初からそこに存在したファンク・ミュージック本来の意味、根元的な、「ファンクの根拠」を概念化させる主幹。「現代呪術」「中世アメリカ」「回転体と売春」「寺院と天国」「港湾と歓楽街」「シャンパン抜栓」・・・異なる6つの「構造」すべてがひとつの根元的なファンク力学によって貫かれ反復し続ける、とした。と同時に、主幹自らが結成時に宣言していた解散年=2002年をすでに通過したことを知り得ながら、DCPRGがさらに「リズムの訛り」が聴取不能なほどキツい地方へと、三拍子と四拍子が同居して今なおよしとされる故郷へと、本能的に帰巣するかのごとく引き寄せられていくのを妄想してもそうそうバチはあたらないだろう。ちなみに『構造と力』のワーキング・タイトルは「PRESIDENTS(プレジデンツ)」だったそうで、全曲に主幹選りすぐりの歴代アメリカ大統領10人とジェームズ・ブラウンの名が冠された2枚組を予定していた、と主幹がHP上に記していたのを記憶している。

 スパンクハッピーをすでに休息させていた主幹・菊地成孔は、双子座・AB型の系譜どおりに、DCPRGとは趣の異なる ”もうひとつ” を併走させはじめる。『デギュスタシオン・ア・ジャズ』『南米のエリザベス・テイラー』という2枚のリーダー・アルバムに、UAとの『cure jazz』。ポスト・モダンジャズから、キッチュの定義、ブエノスアイレス、ジャズ還りまでを華麗にやってのけたが、DCPRGの本当の”対抗馬”は主幹に撞着的に内在する何パターンかのダンス衝動への自問自答から登場する。新宿・歌舞伎町に根城を移したのと同じくして自然発生的に生まれた「砂糖漬けの伊達男による拷問」と名付けられたペペ・トルメント・アスカラールでは、グランドキャバレーがある日常/非日常のデカダンス(甘美な地獄)を熱病で祓う儀式を行ない、60年代”スーツ期”のマイルス・セカンド・クインテットにオマージュを捧げたダブ・セクステット(母体はクインテット・ライブ・ダブ)では、文字通りアコースティック・ジャズにリアルタイム・ダブのスリリングなドキュメント性を流し込むことをタスクとして課した。どちらもリュクスやビジュのエレガンスでがんじがらめにしながらも「踊らば踊れ」と拷問的・調教的にダンス衝動を煽っては縛り、煽っては縛り。「Tシャツ・短パン・スニーカー」族でごった返すDCPRGのライブフロアではまずお目にかかれない、さりとて地獄のような快楽を共有するという意味では通底した現場を同時期的に切り盛りする主幹。両極をフラットに陳列することで「実は発狂していた指揮官」というロマンにソフトタッチしかけていたのでは? と邪推する。  

 3枚目のフル・アルバム『Franz Kafka's America』は、フランツ・カフカの未完に終わった長編小説「アメリカ」からそのタイトルが引用されたことは言うまでもないが、そこに描かれた「アメリカの大地を踏むことのなかった筆者による、妄想のアメリカ合衆国」に主幹がピンときたこともさらなる多言を要しないとしてよいだろう。「9.11」(→ ブッシュによる大量破壊兵器保有国であるとの非難)に端を発したイラク戦争がぼんやりと収束に向かう気配を見せはじめた2007年、「戦争不安」はおろか「戦争とアメリカ」というイメージすら音楽へと景気よくコンバートすることに困難な虚脱感ないしは”燃え尽き症候群”にも似たある種の満腹感に見舞われていたというが、「妄想のアメリカ」を妄想することによってアメリカはよりアメリカらしくなったと言うべきか、ひどくデフォルメされた、数多あるインプットを意図的に正確な処理を施さずに ”ズレまくった”コラージュとしてアウトプットした、奔放で饒舌で優れたメロディを持つアメリカ合衆国国歌のエイリアンを身篭る。それが「ジャングル・クルーズにうってつけの日」と命名された時点で主幹の野望はほぼ達成されたと言えるのでは? としつこく邪推を重ねてみる。

 2007年当時における「抗アメリカ」という意味では、エキゾティシズムだけが上から目線で過剰に取り沙汰されて、多民族で不平等なこの国特有の市場主義や消費構造にあっけなく喰い散らかされてしまう恐れだって大いにあるが・・・主幹がカフカを引用しながら「もうひとつのアメリカ」「アメリカのようなアメリカ」を鮮やかに産み出した妄想力というものは極めて屈強だったと言えるだろう。「米ソ冷戦時代に戻るのもオッケー。文化的には極端に面白いものがまた出てくるはずだから」と以前こぼしていた主幹が尻尾付きのパパーハを被っているのは、生産性ゼロのノスタルジーでもタチの悪い冷やかしでもない、むしろ「代理戦争」ぐらい買って出るぞという雄心の証に見えなくもない。ジョン・ゾーンの「コブラ」はいくらか色褪せてしまったかもしれないが、DCPRGの「アメリカ/戦争/ダンス」という三本の矢は、この歴史なき大国の急所めがけて放たれた、と妄想するのもなかなかどうして悪くはない時節ではあった。もちろん、その病的なまでに訛りきったリズムとグルーヴのコアには、戦場さながらの混沌とした状況下でしゃにむに体を動かすDCPRGクルーの姿が陽炎のように揺らいでいる、とするのも健全だが、あくまで状況は「戦前」のままで停滞させておくことの方がダンス・ミュージックの今後にとっては好都合か。

 ”DCPRG アメリカ・ツアー”終了後、「『妄想のアメリカ、妄想の戦争』というDCPRGの基本的な構えは、ここで消失した。」と主幹は添え、DCPRGの歴史、その大きな一本の流れを自らの手で清々しく分断した。


菊地成孔



 「新しい(そして、まったく無名な)メンバー達によって、コンプリートなバンド活動を再開するのである。」とアナウンスされたのは、2010年の初夏だっただろうか。それから3ヶ月後、ドシャ降りの日比谷野外大音楽堂には、「アガパン・バンド」どころか「カムバック・バンド」よろしくのおよそ見慣れない顔が並び立つ。主幹曰く「未知数ながら、リズムに対するリテラシーは高い」というピアニストの丈青(SOIL&PIMP SESSIONSJ.A.M.)やドラマーの千住宗臣COMBOPIANO etc)に関して言えば、それとなくクラブジャズや現代音楽〜ポストロック方面に手を染めている方にはすでに顔も名も割れた存在だが、その陰で「新しい(そして、まったく無名な)メンバー達によって」という本筋のマニフェストはクールに遂行されていた。ピッカピカの新人とは、この年のダブ・セクステット@フジロックで本田珠也のトラも務めた田中教順(ds)と、アリガス(b)、高井汐人(ss,ts)の3人。いずれも「朱雀大路」というインストバンドのメンバーで、主幹の私塾「ペンギン音楽大学」出身でもあるいわば腹心。あるいは菊地成孔チルドレンのセミプロ・トップ3か。ともかく、「新人の腹心」「腹心の新人」という実体があってないようなものを起用するという人材育成・開発メソッドはまさにエレクトリック期以降のマイルスのそれに追随している、と野暮ながらも率直にそう感じる次第。マイケル・ヘンダーソンだのビル・エヴァンスだのリッキー・ウェルマンだのを余裕で想起させるこの”血の入れ替え”戦術には、ガチとエンタメの境界線ですらなしくずし的に有耶無耶にしてしまうほどビッグな「マイルス・ラブ」がチラチラと見え隠れして今さらながら胸を焦がした・・・とヒューマニズムの範疇で温かく収めたかったものの、実際は「DCPRGを聴いて育った世代(≠パイオニアに対する第二世代)の成長ぶりに驚かされたから」と、主幹自らがあるインタビューで語っていたとおりとなる。

 ここに欠席組の津上研太(sax)、類家心平(tp)、翌年正式加入することとなる大村孝佳(g)を加えた布陣が「新生DCPRG」と呼ばれるコンプリートなラインナップ。またこの日は、前座を務めたアメリカン・クラーヴェのリッチー・フローレス(per)、ヨスヴァニー・テリー・カブレラ(sax)に、(大村が加入するまでの)期間限定でツアーに帯同していた元ジュディマリTAKUYA(g)が参加するというイレギュラー且つ豪華なラインナップで、DCPRG第三シーズンの幕が切って落とされた。このギグの模様は、24bit/96kHzのWAVファイル&MP3ファイルを含んだDVDR+写真集「BOYCOTT RHYTHM MACHINE AGAIN Live at Hibiya Yagai Ongakudo Oct.9.2010」(音声データのみのモノもあり)としてパッケージ化されている。

 「恥ずかしながら帰ってまいりました」とツィートしたのは、しこたまジャングルを這いずり回った末、グァムの山中から救出された横井庄一。「もう誰も憶えていないよ」と自嘲するも束の間早速ジャングル・クルーズにボートを走らせるのは菊地成孔。「内なる、妄想の戦場」からみごと生還、みごと脱却した両者の最大公約数を左脳に一切頼らず超強引にはじき出して戯んでもみたり。

DCPRG&Arto Lindsay
 結成から、十二進法できっかりひと回り。主幹のゼロ年代における10年の活動史が『闘争のエチカ』という4ギガ・バイトのメモリー・スティック(×2)に圧縮された年の復活祭、それに前後した人事大幅刷新という大改革、そしていくつかのギグを経た2011年9月、いよいよ!!と声を荒げるべきか、このタイミングでなぜ!?と眉をひそめるべきか、DCPRGはワールドワイド・デビューを果たす。「THE NEW WAVE JAZZ IS ON IMPULSE!(ジャズの新しい波)」をポリシーに掲げて半世紀、米国ジャズ・レーベルの老舗「IMPULSE!(インパルス)」からのアルバム・リリースが決まった。アート・リンゼイがゲスト参加した2011年6月6日の恵比寿リキッドルーム公演を収録したライブ盤『Alter War In Tokyo』。日本人はおろかアジア人(グループ)の作品が同レーベルからリリースされること自体初めて、というトピックに本来ならば大仰なまでに驚愕したいところなのだが、重要なのは正直そこではない。世紀末の「戦争不安」に対する胸さわぎをポリリズミックなグルーヴへと具現化しながらダイレクトなダンス・リヴィドーを突き動かしてゆくという、DCPRGが結成以来 1秒たりともおろそかにしなかった直感に極めて近いコンセプトが、核兵器保有権と「グラウンド・ゼロ(爆心地)」を(「MAD」「SAD」の初歩的なライミングに気付かぬフリをしながら)同義として持ち合わせるアメリカ、特に最前線北米の日常的なダンスフロアで、サウンドシステムで、カーステレオで、ベッドルームのWQXR Q2で、いかにしてつっぱねられ、いかにしてアジャストしていくかという攻防やその戦局に興味津々なんだ・・・

 とするのは2010年まで許されていた、進むことを知らない怠慢なクリティック。主幹の中で、「未経験/未知/妄想としてのアメリカ」という状況はとっくの昔に終了しているのだから、こんな講釈は、妄想やSFにすら掠ることのない、まったくのナンセンスであるわけで。一見パラドックスな様相を呈しているのかもしれないが、すぐそこにあるアメリカ的なコンテクストに寄りかからない、牙を剥かない、むしろ見向きもしないという姿勢からも”別化された戦争”への堅固な覚悟は窺える。クラウドの意識にも確実に変化が芽生えはじめたであろう2011年をその”元年”とする、「マルチプルでポリフォニック」な平和の形。ヘイトを凌駕して余りあるラブの形。「アフター・デートコースとしてのファンクが鳴り始めた時」、まさにその時がいま訪れたことで、DCPRGの反復するファンクの連続性、多層するグルーヴのさらなる重層化を宿命づけられた、本来の存在意義みたいなものが見えてきそうな気がする。

 2008年あたりから”別の戦争”が起こると予感していた主幹。「戦争直前の初期衝動」は「戦争直後の初期衝動」へ。あたかも永久循環となりそうなムードをクラッチしながらも、禁忌と決別、慈愛と恍惚のリターン。












 

DCPRG seven a side


 新生DCPRGの”訛りまくった”グルーヴをしゃにむに生成する、菊地ジャパン七人の侍をご紹介。

 トップバッターは、DCPRGの「トランペットの王子様」「傷ついた美男子」(©菊地氏) 類家心平。海上自衛隊大湊音楽隊に在籍していたという驚くべき経歴を持ち、退隊後の2003年に6人組のジャム系ジャズ・コンボ「urb」に参加。2007年には、マイルスと並び敬愛してやまない菊地氏の当時の新バンド、ダブ・セクステットに加入し見事その念願を叶え、以来若手No.1 トランペッターの名を欲しいままにしている。その甘いお顔立ちからは想像できないほど激しく燃え上がるアドリブで、DCPRGファンからアッパーギャル層のハートを総ざらい。つい先日には、類家が率いるワンホーン・カルテット、類家心平 4 Piece Bandの2ndアルバム『Sector b』もリリースされた。プロデュースはもちろん親方・菊地氏。氏書き下ろしのポリリズミック・チューン「GL/JM」、DCPRG若衆によるジャズバンド「アンフォルメル8」の三輪裕也が書いた「アトム」、さらにはレディ・ガガ「Poker Face」のカヴァーなど、かなりバラエティに富んだコンポジションが散りばめられている。同時代のポップ・ヒットを大きなタイムラグなしにカヴァーするあたりは、実にマイルスちっく。



Sector B
類家心平 4 Piece Band
「Sector B」


 お次も若くてピチピチとした気鋭を。2006年にBOREDOMS a.k.a V∞REDOMSに加入し、現在は山本精一率いるPARAや、渡邊琢磨内橋和久とのCOMBOPIANOウリチパン群など幅広い活動で爽やかに暗躍するドラマー、千住宗臣(せんじゅ むねおみ)。メタルやハードコアから、ファンク/グルーヴ・ミュージックへと向かい、さらにNO WAVEとテクノを通過しながら、民族音楽と現代音楽を同時に貪る。「聴き手の意識を変容させていくようなビートの創出」を無機質的に表出することで、その独特とも言える空間芸術が生まれている。数々のレコーディング/ツアー・サポートに引っ張りだこなのも納得だが、この若さにして菊地氏や大友氏はおろか、ビル・ラズウェルアート・リンゼイ高橋幸宏細野晴臣ダモ鈴木(!)といった一筋縄ではいかない巨匠ドコロと共演歴があるというのがスゴイ!


Combopiano
COMBOPIANO
「Combopiano」


 DCPRG第三シーズンの中核を担うであろうもうひとりの新顔、ドスの利いた「爆音ジャズ」「デスジャズ」でシーンに風穴を開けまくるSOIL&PIMP SESSIONS (別働トリオ・プロジェクトに J.A.M.がある)のピアニスト/キーボーディスト、丈青。2003年に音源も出さないままフジロックに出演するというSOILの快挙は、2000〜01年上半期までにスプリット・シングル『全米ビフテキ芸術連盟』 1枚こっきりの作品目録でライブハウスを夜毎熱狂させたDCPRGの徹底的な現場主義と共通している。この丈青と坪口によるW鍵盤体制は、70sマイルス大好きっコであれば、ロックの殿堂をシビれさせた「チックとキース」のあの美狂乱インプロ合戦を即座に脳内プロジェクターに映し出せなければウソ。どちらがチック? どちらがキース? というのはもはやどうでもよく、両者の過激なコレクティブ・インプロヴィゼーションが指揮官に箍が外れるほどの刺激を与えることができれば、DCPRGにおいては万事がオッケーなのだ、きっと。


Just Another Mind
J.A.M.
「Just Another Mind」


 そしておなじみ、いまやDCPRGの副司令官とも言える結成当初からのメンバーのひとり、坪口昌恭。菊地氏とはDCPRGとほぼ時を同じくして、自動変奏シーケンスソフトがリズムを刻む、多重力的エレクトロ・ジャズ・ユニット、東京ザヴィヌルバッハを立ち上げているのは広く知られているところ。ラップトップ・テクノの鬼才numbとのコラボ活動や、自身のソロ作品におけるエフェクティブ手法やポリ・スイングの実践などを行なう一方で、ソロ・ピアノやトリオ〜小編成コンボではアコースティック・ジャズ・ピアニストそのものの魅力をアピールするなど、菊地氏に負けず劣らない「アンビバレンツ(両面性)」を兼ね備えている。


Sweet Metallic
東京ザヴィヌルバッハ
「Sweet Metallic」


 こちらも初期メンバー。2000年加入のアルト/ソプラノサックス、フルート奏者津上研太と、パーカッションの大儀見元 (おぎみ げん)のふたり。津上は、同じく初期メンである大友良英ONJQ/ONJOにも2007年まで参加し、ゼロ年代東京の緊迫した裸のジャズの在り方を、サインウェーブ、スクラッチ・ノイズの絞りカスを含みながらケイオスに吐き出した。2000年に南博(p)、水谷浩章(b)、外山明(ds)と旗揚げしたリーダー・バンド「BOZO」ほか、村田陽一オーケストラ、渋谷毅との活動などでもその骨太でエレガントなブロウを聴くことができる。電化マイルス・バンドにおけるスティーヴ・グロスマンソニー・フォーチューン? はたまたゲイリー・バーツ
 菊地氏と同級生の大儀見は、背中一面にバカでかい「雷神」を刻んだ、泣く子も黙るパーカッション・リズムマスター。オルケスタ・デ・ラ・ルスの初代リーダーとしても知られ、脱退後の1991年にN.Y.へ移住し、サルサ界の大御所シンガー、ティト・ニエベスのバンドでコンガを叩くようになる。帰国後の97年、総勢11名からなるリーダー・コンボ、サルサ・スインゴサを立ち上げ、07年にはフジロックにサルサ・バンドとしては初めての出演を果たしている。ラテンのみならず世界各地のリズムを吸収した幅広いプレイスタイルと抜けがよく迫力のあるサウンドは、エムトゥーメのそれにも全く引けをとっていない。   



Out To Lunch
大友良英 ONJO
「Out To Lunch」


Aqui Se Puede
サルサスインゴサ
「Aqui Se Puede」


 異種格闘技的なメルティングポット感がさらに極まったとも言えそうな新生DCPRG。その中でも一際異彩を放ち ”坩堝感”を強調するのが、今年2月20日の「巨星ジークフェルド」がお披露目公演となった新加入ギタリスト、大村孝佳の存在。様式美ヘヴィメタル/メロディック・ヘヴィメタル・ギタリストの「最速王」というのがそのスジでのふれこみ。従って「ザッパ・バンドのスティーヴ・ヴァイみたいに弾いてくれ!」(©菊地氏)という明確な着地場所がきちんとあってこそのスカウト、ということになる。しかもこのメタリックなギタリズムが、化学反応という意味合いも含めて、とてつもなくDCPRGにフィットしている。そして巧い。スピードを競うソロよりは、堅実な刻みや音の出し入れみたいなものがハンパなく手練れている。東京JAZZでのステージはしばし釘付けになった。下掲(↓)のアルバム・ジャケットを見るとマイク・スターンをついというか、やっぱり想い起こしてしまうのだが、「ザッパ・バンドのヴァイ」というパラブルにはかなわない。スタンリー・クラークレニー・ホワイトVERTUリッチー・コッツェンが参加している風情ともまた違うし・・・さすがの慧眼。


Emotions In Motion
大村孝佳
「Emotions In Motion」



で、アート・リンゼイ


 6月6日の恵比寿リキッドルーム公演。今やトレードマークとしてすっかり定着した、11本しか弦の張られていない水色の12弦ギターで登場し、「Catch 22」そしてマイルス・デイヴィス『On The Corner』所収の「New York Girl」カヴァーでDCPRGとまぐわったアート・リンゼイ。もちノーチューニング。ペダルでピッチベンドしながら、ここいちばんでおもいっくそファズを踏み込み、ぎゃんと掻きむしったノイズをざっと散らして、くるりんぱ。この日のステージを目撃した知人からのメールなのだが・・・まぁ要点が掴みづらいこと。ただ、何となくイメージできたのは、「中心がない音の塊」を亡霊のようにまとわりつきながら、たまに饒舌なボケをカマしたり、鋭いツッコミを入れられたりと、いちゲストらしくと言えばゲストらしく、リンゼイらしいと言えばリンゼイらしい、浮遊するヒドロ虫綱にも似たレロレロな御姿。とにかくその尋常ではない存在感にひたすらすがったそうな。

 ちなみにこちら(↓)は、マイルス、菊地雅章『ススト』アート・リンゼイを一本のラインで結ぶことのできるギタリスト、ビリー “スペースマン” パターソンが参加した、アンビシャス・ラヴァーズによる、脱臼サウダージ・ファンクの最後っ屁にして佳作。惜しくも廃盤!   



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Ambitious Lovers
「Lust」


On The Corner
 
 マイルス・デイヴィス
On The Corner
 ソニーミュージック SICP845 
 70年代マイルスのメンタリティが明らかにされた強烈なグルーヴとテオ・マセロのテープ・エディットが、シュトックハウゼンへのエニグマティックな心酔と入り乱れながら、不自然で気持ちのよい破綻を生む。後半、曲名は異なるもののすべてが「ブラック・サテン」のヴァージョン違い、しかもそれが切れ目なく演奏されているという極めて現代音楽に近いこのテクストを、「ファンクを脱構築させたもの」と菊地氏は指摘。2011年6月6日恵比寿LIQUIDROOM公演では、「ニューヨーク・ガール」をアート・リンゼイと共奏している。


 
空飛ぶモンティ・パイソン Vol.1
 
 空飛ぶモンティ・パイソン Vol.1
 ソニーピクチャーズエンタテインメント OPL07061 
 1969年にイギリスBBCでスタートした「空飛ぶモンティ・パイソン」。「DCPRGに関する最初の企画書」(『スペインの宇宙食』より)によれば、『On The Corner』録音年と同じ1972年に放送された「僕ちゃんは海外開発大臣」(第3シリーズ 第2話)のスケッチに代表されるパイソンズの黒い笑いをDCPRGのコンセプトとして天啓的に採用。「ブラックジョークと国家間戦争をテーマにしたヘヴィーファンク」、つまり「モンティ・パイソンとマイルス・デイヴィスの融合」を目指した。




ススト
 
 菊地雅章
ススト
 ソニーミュージック SRCS9378 
 スティーヴ・グロスマン(ss)、デイヴ・リーブマン(ss)、アイアート・モレイラ(per)、バリー・フィナティ(g)、ビリー”スペースマン”パターソン(g)といったマイルス劇場の千両役者たちに、日野皓正(tp)らを迎え、『On The Corner』をご本尊とする70年代マイルスの混沌に最接近。1980年11月、ニューヨークのブルックリンにあった彼のアトリエともいうべき「サウンド・アイディア・スタジオ」でレコーディングされた、当時最先端・最新鋭のグルーヴ・ミュージック。DCPRGは、収録曲の「サークル/ライン」を完全採譜〜完全再現することを自らの第一コンセプトに掲げた。


 
スターシップ・トゥルーパーズ
 
 スターシップ・トゥルーパーズ
 ウォルト ディズニー スタジオ ジャパン VWDS04336 
 ロバート・A・ハインライン原作「宇宙の戦士」を完全映画化。ポール・バーホーベン監督が、視覚効果の巨匠フィル・ティペット(「ジュラシック・パーク」)と手を組み誕生させた究極のSF戦争巨編。「戦争そのものであるような音楽」を標榜したDCPRG。来るべき戦場における男女の平等性を、セックスそれ自体が象徴であるかのように描写することで、「荒ぶるセックスシーン(やり放題)に欲情しながら拍手喝采だ」と記述する菊地氏のインスパイアともなり得た。戦時下の抑圧された中で繰り広げられるセックスも、総てが美しいダンスだ、ということ。




地獄の黙示録 コレクターズ・エディション
 
 地獄の黙示録
コレクターズ・エディション
 ジェネオン ユニバーサル エンターテインメント GNXF1225 
 ジョゼフ・コンラッドの小説「闇の奥」を原作に、物語の舞台をベトナム戦争に移し翻案した、フランシス・フォード・コッポラ監督による1979年製作の戦争映画。初期DCPRGを代表するポリリズム・チューン「Playmate At Hanoi」はおろか、初期当時のバンド全体のコンセプトは、この映画の「ベトナムのジャングル奥地にプレイメイトが慰問に来る」というシーンでその凡そがまかなえると言っても過言ではないだろう。







 
アワー・ミュージック
 
 アワー・ミュージック
 アミューズソフト ASBY3395 
 ゴダールが、「9・11」以後の今を生きる若い世代への優しい眼差しをもって、「映画」と「政治」そして「世界」を肯定する。夥しい戦争映像のモンタージュによる約10分間の第1部「地獄編」。サラエヴォを舞台に、映画監督ゴダール(ゴダール自身が演じている)と、彼の講義を聞きにきた女子学生オルガとの魂の交感を描く第2部「煉獄(浄罪界)編」。第2部で殉教に至ったオルガが、アメリカ兵に守られた小川のせせらぎを歩く第3部「天国編」からなる。2005年の公開時には、青山真治とのトークショーの中で、ゴダール映画の録音担当フランソワ・ミュジーへの深い傾倒ぶりも露にしていた菊地氏。2007年の『Franz Kafka's America』は、その名のとおりカフカの「アメリカ」からタイトルを引用する一方で、「ゴダールが大学のゼミで、いかに人類史は戦争の歴史か。といった話をする時に、学生達に一枚のモノクロ写真を見せる・・・」というワンシーンに、着想のトリガーがあったそうだ。


アメリカ
 
 フランツ・カフカ
アメリカ
 角川書店 9784042083054 
 『Franz Kafka's America』のタイトル由来となったフランツ・カフカの未完の長編小説(その小説の多くは生前は発表されず、未完の原稿を友人のマックス・ブロートが編纂して出版されたものがほとんどだという。「アメリカ」もその原題は「失踪者」となる)。カフカ、菊地氏両者に共通する「訪れたことは(ほぼ)ないが、とにかく気がかりで、自己を投影したくなる、そんなアメリカの○○構造に対して物申す」とした破格の妄想力がファンクを恣意的に抽象化。そして、「妄想のアメリカ、妄想の戦争」というDCPRGの基本的な構えは、ここで消失した。



 
グルッペン
 
 カールハインツ・シュトックハウゼン
Gruppen
 DG 4477612  
 マイルスもDCPRGも具体的なインスピレーションの源泉を口に出せないところに、抽象的なものの象徴としてのシュトックハウゼンの凄みというものがあるのでは? ある者は『グルッペン』を挙げ、またある者は『コンタクテ』や『ヘリコプター・カルテット』を挙げる。ヘルシーな客観性を定位させずに狂気に肉薄した高揚・恍惚感だけを残すという点で、どれもが彼らに結果的に与えた影響また被害は甚大。菊地氏の掌篇「ミスタードーナツのシュトックハウゼン」での鮮やかな”妄想”も。




Cobra
 
 ジョン・ゾーン
Cobra
 Hatology HATO580 
 ノルマンディー上陸作戦をシュミレイトした卓上ウォー・ゲームの要素を取り入れた即興演奏のシステム(アルバム『COBRA』は1985〜86年録音)で、10人前後の演奏者に指示を与える”プロンプター”が一人存在する。そういう点では、その初期においてDCPRGを語る際に最も有効な比較照合手段とされていたが、『スペインの宇宙食』の「DCPRGに関する二番目の企画書・・・計画の50%」では、「『コブラ』は、上演を繰り返す内に、本来持っていた『戦争・戦場性』は失われ・・・」と、15年という時間差を埋めることへの不合理性を含めて、当時のDCPRGが欲した「戦時下」とは似て非なることを菊地氏自らが吐露している。


 
Man From Utopia
 
 フランク・ザッパ
Man From Utopia
 ビデオアーツ ミュージック VACK5224 
 R40世代には「ハエ ハエ カカカ ザッパッパ」でおなじみの、ライブとスタジオ録音がミックスされた1982年発表のアルバム。ザッパ楽団に名目上 ”採譜係”として入団したスティーヴ・ヴァイが、親方の歌にギターのユニゾンを入れるという離れ業(オーヴァーダブ?)をやってのけた「危険だらけのキッチン」と「フェチシストのマンゾク快感」。大村孝佳を擁した新生DCPRGキッズにはバカウケ必至? その反面、様々な”裏切り”が仕掛けられているという点で、ザッパ入門にはまったくもって適さずの1枚。CD化に際して原盤レコードから曲順の大幅な変更があったことも重要なザッパイズムのひとつ。