【連載】歌謡曲番外地 HMV ONLINE編(1)
2011年6月16日 (木)
Hotwax編集長にして「歌謡曲番外地」シリーズの企画・監修を務める高護(こう まもる)氏、 自らの解説によるHMV ONLINEオリジナルの不定期連載スタート!
【第1回】 田代麻紀 / 朋ひろこ
「潮風の季節」のB面にして「月曜日は泣かない」を彷彿とさせる「愛を抱きしめて」。
「あなたなんか バカみたい」 橋本淳の歌詞が冴え渡る軽快なポップス「お熱い娘たち」。
橋本淳の散文詩と筒美京平のワルツが見事に融合された心に沁みる名曲「未練」。
艶のある美しい外見とはうらはらにドスの効いた絶叫を聴かせる 朋ひろこも残したシングルは3枚。
森進一の「女のためいき」と藤圭子の「女のブルース」を混ぜ合わせたかのような絶叫歌唱はひたすら濃い。
阿久悠・猪俣公章コンビの「北へ帰る」で展開される馬飼野俊一の16ビートのバック・トラックを従えてすべてを諦めたかのようなヴィブラート全開の歌唱はお子様一切お断り。深い深い情念の世界。
と書くとアイドル・ポップスから演歌に転じたかのように思えるが、世の中それほど単純ではない。彼女は本名・杉原優子。朋ひろことしてやさぐれ演歌でデビューして芽が出ず、一年後にポップスに転じて田代麻紀として改名。
橋本淳・筒美京平の渾身の名曲もヒットには至らずあえなくリタイア。と思いきや数年後になんと奇蹟の復活。お名前は原ゆう子と改名されていました。女は魔物である。
★橋本淳・筒美京平コンビといえば
原稿を書き始めて、ふと思いましたが、「橋本淳・筒美京平コンビといえば」という投稿サイトは無いでしょうか。.........あるわけ無いね。探したけど。作りますか。ここに。どうですか。
橋本淳・筒美京平コンビの楽曲は600曲近くあります。私が知ってる限りで。最近だと『GSワンダーランド』でお願いした「海岸線のホテル」ですが、その前にも前川清の「よろこびの予感/愛を下さい」のカップリングを書いていて、これがまたいい曲なんだ。両面とも。持ってない人はただちに買って聴いた方がいいですよ。2004年のマキシ・シングルだから、廃盤になったら探すの結構苦労しそうだし。プロデューサーのクレジットは無いけど飯田久彦がテイチクの社長時代ですからその流れでしょう。
★橋本淳・筒美京平コンビといえば
「弘田三枝子/渚のうわさ」。まあ妥当ですね。基本というか。「木の実ナナ/真赤なブーツ」とともに67年を代表する初期の傑作ですから。ちなみにデビューの1966〜67年にかけて発表された橋本淳・筒美京平コンビの作品は下記の28作しかありません。藤浩一/涙のナイト・トレイン/SDRー1229/1966年8月/ポリドール
望月浩/黄色いレモン/TP-1332/1966年9月/東芝
望月浩/あなたのおもかげ/TP-1332/1966年9月/東芝
泉健二/黄色いレモン/SV-504/1966年11月/ビクター
ガス・バッカス/黄色いレモン/DP-1507/1966年12月/ポリドール
サベージ/涙をふいて/FS-5003/1966年12月/フィリップス
ザ・ライジングサントリオ/海よ忘れて/HIT-702/1967/2月/キング
黒沢年男/ふたりの汐風/LL-10019-JC/1967年3月/日本コロムビア
木の実ナナ/真赤なブーツ/BS-639/1967年5月/キング
木の実ナナ/恋のかたみ/BS-7166/1967年7月/キング
弘田三枝子/渚のうわさ/P-1/1967年7月/日本コロムビア
弘田三枝子/風とオトコのコ/P-1/1967年7月/日本コロムビア
ヴィレッジ・シンガーズ/バラ色の雲/LL-10032-JC/1967年8月/日本コロムビア
尾藤イサオ/センチメンタル波止場/TP-1493/1967年8月/東芝
尾藤イサオ/ダーティー・ドッグ/TP-1493/1967年8月/東芝
奥村チヨ/愛の真珠貝/TP-1497/1967年8月/東芝
ザ・ピーナッツ/離れないで/BS-692/1967年8月/キング
黒沢年男/花と海/LL-10040-JC/1967年9月/日本コロムビア
尾藤イサオ/命のしずく/TP-1530/1967年10月/東芝
藤浩一/夢はバラ色/SDP-2012/1967年11月/ポリドール
藤浩一/風はあなたのたより/SDP-2012/1967年11月/ポリドール
渚ゆう子/女の指輪/TP-1546/1967年11月/東芝
ヴィレッジ・シンガーズ/好きだから/LL-10042-JC/1967年11月/日本コロムビア
ヴィレッジ・シンガーズ/風の中の瞳/LL-10042-JC/1967年11月/日本コロムビア
弘田三枝子/枯葉のうわさ/P-3/1967年11月/日本コロムビア
弘田三枝子/悲しみの足音/P-3/1967年11月/日本コロムビア
奥村チヨ/あなたに逢いたい/TP-1563/1967年12月/東芝
★橋本淳・筒美京平コンビといえば
「佐川満男/フランス人のように」。これも基本でしょう。え、GSが先。まあ、そうですね。「ザ・ガリバーズ/赤毛のメリー」ってもとはザ・バロンのために制作されたんですけど。まあ、色々あって。.......。ちょっとマイナーすぎますか。
「ザ・ジャガーズ/マドモアゼル・ブルース」。イントロの「Baby be my free」の二声ハーモニーがカッコいいです。「今日の誓い」を持ってくるっていうのもなかなか。メンバーが「ミ」の音から始まる曲はやめてくれ、と言ったそうで、確かに「ラ」から始まってますね。キーはAm。決め手はBパートの「たとえ どんなに ぼくがつらくても」の「ミミレ〜 ソファミ ミミレ♯ファ♯ファ♯ ラシラシ〜」の半音を駆使した旋律から後半の「シルクのドレスを 着せてあげたい」の「ミレドシ〜 レドシレ〜 トドシラソシソ」を二声で展開する箇所の、長三度と短三度のコンビネーションで押していくハーモニー。これぞ筒美京平ですね。ほんとは譜面で示した方がわかりいいかも。あと、シルクのドレスも大事ですよ。橋本淳ファンにとっては。
★橋本淳・筒美京平コンビといえば
「佐川満男/フランス人のように」に話を戻すと、この曲は私にとっては子守唄みたいなものです。「島倉千代子/捧げる愛は」「西田佐知子/くれないホテル」「ヒデとロザンナ/粋なうわさ」「ジャッキー吉川とブルー・コメッツ/涙の糸」「橋幸夫/東京−パリ」。これ全部1969年の作品ですよ。「中尾ミエ/いくつもいくつも目をとじて」とか「佐良直美/ギターのような女の子」「麻里圭子/裸足のままで」「ジュディ・オング/ブラックパール」。このあたりも69年ですね。他にも「チコとビーグルス/新宿マドモアゼル」「カサノヴァ7/異邦人ブルース」。楽曲の完成度の高さはどれもハンパじゃないです。本当にすごい。まとめて聴けるCDないですか。あと橋本淳ではありませんが「宇野ゆう子/サザエさん」も69年ですよ。作詞は林春生。
★橋本淳・筒美京平コンビといえば
平山三紀ですよ。今は平山みきと表記します。黄色い服しか着ないのはもう過去の話だそうです。2009年11月10日のスウィート・ベイジルのライヴもよかったですよ。「さよならのブルース」を生で聴けたのは本当に感激したなあ。1970年のレコーディング以来初めて歌ったそうです。
橋本淳・筒美京平・平山三紀といえば。
そりゃあ「真夏の出来事」でしょ。まあ当然ですね。「真夜中のエンジェル・ベイビー」も人気ありますよ。「マンダリン・パレス」とか。コロムビア時代だと「フレンズ」。これもマストでしょ。
個人的には、ってずっと個人的なんですけど、「帰らない恋」と「思い出の朝」のカップリングはどちらもすごく好きな曲で、一時期はカセットに入れてエンドレスで一日50回ずつくらい毎日聴いてました。あとCBSソニー時代の「麦の匂い」。「愛の戯れ」のB面だけど、これもずいぶんと聴いたなぁ。
あと何があっても絶対に外せないのが「潮風の季節」でしょう。第6弾シングル「月曜日は泣かない」のB面です。こんないい曲めったにないですよ。で、よくよく調べると、実はオリジナル、というかほぼ競作で田代麻紀のデビュー・シングルだということがわかって。大急ぎで聴きました。発売は田代麻紀が1972年8月25日で平山三紀が同年の10月10日。アレンジと楽器の編成はほぼ同一ですが、テンポは田代麻紀がBPM 122で、平山三紀の方がやや早くてBPM 125。いやあシビれるでしょ。この音圧を利かせた歌いっぷり。平山三紀とも相通じるやや鼻にかかったちょっと不良っぽい声質ですが、ビート感ありつつもアクセントの置き方や語尾のひっかけ方が藤圭子を彷彿とさせる独特のやさぐれ感を醸し出しています。一般的にいうコブシやヴィブラートとも違うし。ポルタメントとかレガートではない。ちょっとオリジナルな歌唱法ですね。不良っぽい声質って何ですか、といった野暮な質問はお断りですよ。
田代麻紀ヴァージョンと平山三紀ヴァージョンとで歌詞が微妙に違うっていうのが謎ですね。何故なんでしょう。橋本淳さんにいきさつをお尋ねしたい気もしますけど、こういうのはあれこれ想像してた方が楽しいもんですよ。世の中には知らない方がいいこともたくさんありますからね。
歌詞の違いは微妙なとこなんですけど、物語は決定的に違うものになってます。まあ、この辺りは実際に聴き比べてみるといいんじゃないでしょうか。
★橋本淳・筒美京平コンビといえば
田代麻紀は3枚のシングルをリリースしたのみですが、全曲が橋本淳・筒美京平コンビですよ。滅多にいません。というか、シングル3枚で全曲橋本淳・筒美京平コンビの作品という歌手は田代麻紀以外一人もいません。
「潮風の季節」のB面の「愛を抱きしめて」。ワウ・ギターにホーン・セクションが続くイントロがいい感じですが、モチーフが「月曜日は泣かない」と共通、というか要するに姉妹曲とでもいうようなよく似たイメージの作品です。歌詞も世界観は橋本淳・平山三紀のやや醒めた雰囲気ですが、田代麻紀のビート歌唱が言葉の輪郭をはっきりと伝えるので、もう少しコントラストがはっきりした感じで物語が前に出てきてますね。
続く第2弾シングルの「昼さがり」。これは何というんでしょう。「解説できそうなんだけど解説できない曲」っていうのが希にあって、これはそのひとつです。演歌と非演歌の境界線を歌詞面から考察すると場面設定や物語展開といった技法だけでなく、主題とそこから導かれる人物造形とその心理や行動原理に行き着くわけですが、「昼さがり」は読解が難しい楽曲です。
田代麻紀のラスト・シングルとなった「お熱い娘たち」。筒美京平は冴えてますよ。アップ・テンポでヴァイブとフルートのコンビネーションにストリングスやアコギが絡むアレンジは、系統としては南沙織に近い爽やかなサウンド。明らかにヒット狙ってます。ジャケットもちゃんとライト・ユーザー向けになってますよ。井上ひさしの「モッキンポット師の後始末」を石坂浩二と夏木マリ主演でテレビ・ドラマ化したことでちょっと評判になった『ボクのしあわせ』(CX系)の主題歌ですから、ヒットするんじゃないかと思いましたが、そうは問屋が卸さなかったようで不発でしたね。田代麻紀の歌唱は良好ですよ。ところどころ(主としてサビ部分)に演歌風味の歌唱が混ざってるのが不思議な雰囲気です。「あなたの彼ェ いぃかしてるン〜」のあたりでしょうか。二番の「あなたなんかぁ 馬鹿みたい」。個人的にはこの箇所がこの歌のハイライトです。ここが聴きたくて何度もこの歌を聴いちゃいます。何しろ私の詩的な感性は橋本淳によって形成された部分が大きいので。
「未練」。西田佐知子「くれないホテル」と同じくワルツ。寂しい曲です。寂しいんだけど田代麻紀の歌唱が絡みついてくるので、寂しさと執着と少しの希望と絶望が入り交じった独自の世界観になってます。朋ひろこ時代はやや低めのキーでトーンも落として歌ってたのが、田代麻紀になると全体にキーが高いので、それも影響してるような。キーを思いっきり下げて渚ようこさんにでも歌ってもらうといいのかも。
朋ひろこの「女のなみだ」。この曲でこの歌唱でこのジャケ。世界は広いね。平均とか標準なんて、ただの幻想ですよ。錯覚ともいいますけど。松井由利夫・大沢浄仁コンビってことは井沢八郎「北海の満月」ですよ。「男傘」とか。松井由利夫は石坂まさをが澤ノ井千江児の筆名時代に東芝の準専属となった時の恩人ですね。センスとしては相当旧いですが、朋ひろこの絶叫っぷりが堪能できます。
阿久悠・猪俣公章といえば藤圭子「京都から博多まで」ですが、発売は72年1月なので「北へ帰る」の方が早いです。74年には森進一「さらば友よ」という名曲もありますよ。72年は阿久悠が演歌へ大きく展開する年なんですが、71年の「北へ帰る」は猪俣公章とのかなり初期の作品ってことになります。情景描写から入って空間移動の中で、物語を交えながら主人公の心にフォーカスしていく技法は阿久悠演歌のオリジナルですが、この時点で完成されてます。朋ひろこの絶叫から諦めに転じた抑制気味の歌唱がちょうどいいやさぐれ感を創出してます。捨て身なものに惹かれるのは人の常ですが、ジャケもほどよくやさぐれてます。
- 高 護 (HOTWAX / ULTRA-VYBE) -
【HMV ONLINE特典】田代麻紀・朋ひろこ「シングルジャケットシート+缶バッヂ」セット
※先着ですので、なくなり次第終了となります。ご了承ください。 ※特典の有無は、商品ページにてご確認ください。 ※こちらの特典は店舗ではお付けしておりません。 |
高 護(こう まもる)プロフィール
1954年 東京都生まれ。株式会社ウルトラ・ヴァイヴ代表取締役。 1982年 雑誌「季刊リメンバー」を創刊。 1986年 SFC音楽出版株式会社(現・ウルトラ・ヴァイヴ)を設立。 マネージャー、プロデューサーとして、サエキけんぞう、スケボーキング、小島麻由美らを手がける。編著書 - 『歌謡曲〜時代を彩った歌たち』(岩波新書)『定本ジャックス』『定本はっぴいえんど』『漣健児と60年代ポップス』『Hotwax 日本の映画とロックと歌謡曲』『歌謡曲名曲名盤ガイド』シリーズ、『歌謡曲番外地』シリーズ
CD復刻の監修 - 『筒美京平HITSTORY』『漣健児60年代の60曲』ほか多数
映画音楽のプロデューサーとして - 『GSワンダーランド』(本田隆一監督)、『キャタピラー』(若松孝二監督)
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潮風の季節〜コンプリート・コレクション
田代麻紀 / 朋ひろこ
価格(税込) :
¥2,750
会員価格(税込) :
¥2,530
通常ご注文後 2-3日 以内に入荷予定
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