[特集] ポエトリーラップ

2011年5月20日 (金)


 [特集] ポエトリーラップ

詩の朗読-ポエトリー・リーディング
それは、詩人が自らのメッセージを表現する一種のアート形態。古くは1950年代のビートニク文化の中で隆盛したカルチャーだ。近年はスポークンワーズと呼ばれる事も多い。声のトーンやボリュームの抑揚、またジェスチャーも交えながら演劇的要素すら感じさせるその表現は、とても魅力的だ。
Def Jamの創立者ラッセル・シモンズの取り組み(ポエトリー・シーンの人気アーティストのライブ番組「Russel Simmons' DefPoetry Jam」を放送)等により、2000年代前半より再び注目を集めたポエトリー・リーディング。ここ日本ではアンダーグラウンドながらも、毎月第一金曜日に新宿MARZで開催されるSSWS(新宿スポークンワーズスラム)を筆頭に、各地でポエトリーイベントが開催されている。HIP HOPカルチャーとも密接な関係にあり、ポエトリーリーディングのシーンからCDリリースに繋がる事も珍しくない。SUIKAtoto小林大吾らが良い例だ。
ラップよりも更に言葉に焦点が当てられるポエトリーリーディングの世界から輩出されたアーティストの表現は、底知れぬ深さがある。世の中の事象や自己の内面に鋭く深く切り込んだ言葉達が、人の心を魅了し始めている。
今回は、ポエトリーリーディングを感じさせるHIP HOP作品に焦点を当ててみようと思う。

 ▼ ポエトリーラップ 最新注目作品

toto 日本のポエトリーリーディングと言えば、この人!ヒップホップバンドSUIKAでも、すべてをやわらかく包み込むような天使の朗読を聴かせてくれるtoto。待ちに待った1stソロアルバムが遂にリリースされる!リアルとおとぎ話の間を自由に行き交う詩の世界観、母性を孕んだその天性の声はどこを切り取っても唯一無二。伝説のイベントSSWS(新宿スポークンワーズスラム)でも強豪MCたちを物ともせず上位に食い込む常連だった。クセになるtotoワールドにハマって欲しい。
無人島 〜俺の10枚〜 【toto 編】

今月のドススメ toto


不可思議/wonderboy 『○ To ○』 / toto
[2011年6月8日 発売]
「明かりのように灯る声がある。」HIP HOPバンドSUIKAのtoto初ソロとなる、待望のポエトリー・リーディング・アルバム!すべてをやわらかく包み込むような天使の朗読が、生楽器を効果的に使用したオーガニックかつバラエティ豊かなトラックに載り、toto本来の魅力が全開に引出されている。totoの真骨頂とも言えるファンタジーなポエジーに満ち、多くのゲストを迎え、音楽性の強い前半と、より母性に溢れ、パーソナルな世界観が強まる後半、レコードのA面、B面のように二つの世界によって構成された素晴らしい作品。


不可思議/wonderboy注目したいのがこの男、不可思議/wonderboy。07年にポエトリーリーディングという表現方法に衝撃を受け、以降数々のポエトリーイベントに参加し、優勝を勝ち取ってきた男だ。昨年代々木公園で開催された野外朗読サイファーでは予選を勝ち抜き、なんと国民的詩人・谷川俊太郎降神とのサイファーを経験している。さらに11年、「俊読~shundoku7~」に出演し、再び谷川俊太郎と共演。そこで谷川俊太郎の詩をラップにした楽曲「生きる」を披露し、のちに谷川俊太郎氏本人から直接音源化の許諾を得ている。人生における様々な事象を深く深く思考したリリックが特徴的な最注目の新人である。
ポエトリーラップ


不可思議/wonderboy 『ラブリーラビリンス』 / 不可思議/wonderboy
[2011年5月4日 発売]
不可思議/wonderboy、渾身の1st Album。迷わず迷い、人生の迷宮を愛してしまった男の至極の11編。--- 待ってろ、未来、すぐに行く。サラリーマンを辞め、フリーターとなった今、確実に人生の迷路が深く、混沌としていく中で見据える現在と未来―。もう無理だと思った瞬間に光が差す。人生という名の迷宮を、あなたとともに歩く一枚。
トラックメイカーにはYoung-G(stillichimiya/おみゆきCHANNEL)をはじめ、注目のレーベルLHW?よりEeMu、Solvents and orbitsなど、数々の今勢いに乗る才能を迎えて制作されている。
【HMVオンライン/モバイルオリジナル特典】SPCIAL CD-R「LOW HIGH WHO? SAMPLER」
LHW?とは何かがこれ1枚でわかってしまう13曲入りコンピレーションアルバム。本気の選曲。
 ▼ ポエトリーラップ 名盤選

小林大吾 『詩人の刻印』 / 小林大吾
日本のポエトリーシーンを代表する人物、小林大吾。文学性が高く、イルマティックな詩はアディクト注意!音楽的なリズムで放たれる言葉が心地良い名盤。

小林大吾 『オーディオビジュアル』 / 小林大吾
2010年にリリースされた小林大吾の最新作品。前作から2年半ぶり。相変わらず言葉は冴え渡り、期待を裏切らない快作!次回作にも期待!

SUIKA 『スイカ夜話』 / SUIKA
SSWSともゆかりの深い、タカツキ、toto、ATOMを擁するSUIKA。降神との約15分(!)にも及ぶ大作も収録。豊かな言葉と温かい生音が魅力の素晴らしい作品です。

タカツキ 『旅人のリズム』 / タカツキ
SSWS初代チャンピオン!03年のド名盤『東京・京都・NY』を筆頭に、日本のラップシーンの中でも独特な存在感を放つラッパー。09年発売の4枚目のアルバム!

降神 『望-月を亡くした王様』 / 降神
演劇的な世界観を帯びて迫り来る言葉。ドープな音とリンクしていくintrospective世界はまさにオリジナル。神出鬼没、他の追随をゆるさない名盤。1stもマスト。

なのるなもない 『Melhentrips』 / なのるなもない
降神の奇才MC、なのるなもない初のソロ作品。アンダーグラウンドと呼べるものだけが持つ独特の空気感がずしりと...同じく降神MC志人の名盤『HEAVEN'S 恋文』もマスト。

神門 『栞』 / 神門
自己の内面と向かい合い、物事を深いところで捉え、それを言葉にする稀有な才能、神門。未だかつて誰も目につけなかった題材の物語。「いのち」は必聴。

MOROHA 『MOROHA』 / MOROHA
昨年ROSE RECORDSからデビューしたMCのアフロとアコギのUKからなる二人組。葛藤や希望を抱えてもがくアフロの言葉は、聴く者の心の深い部分まで届いてくる。要注目!

狐火 『27才のリアル』 / 狐火
赤裸々な心情を露にする悩めるリリシスト狐火。感情的且つ情景描写は的確で、狐火が描き出す風景が、頭の中で映像化されていく。今後ますます話題になるだろう。

MAKKENZ 『私を軸にして街が回転した時に出来る回転面に私達が加わり街を軸にして私達が回転した時に出来る回転面に私が加わる』 / MAKKENZ
このタイトルから推察される通り!散文のような韻文!?


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