[連載] DJ PMX 001

2011年3月23日 (水)

DJ PMX 「LocoHAMA CRUISING」を科学する〜何故大ヒットシリーズとなったのかを検証〜

[連載] DJ PMX 「LocoHAMA CRUISING」を科学する 001
〜何故大ヒットシリーズとなったのかを検証〜

DJ PMX・・・ジャパニーズ・ヒップホップ・シーンの黎明期〜試行錯誤期にあたる80年代後半より、MAZZ+PMXとして活動を開始し(当時のレア音源の一部は『The Chronicle Best Works』のボーナス・トラックでも聴ける!)、その後ECD、GAS BOYS、ZINGI、Rhymester、BUDDHA BRANDなどの作品にサウンド・プロデューサー、マニピュレイター、DJとしてクレジットされてきたシーン最前線の生き証人”であり、自ら手がけたOZROSAURUSの「Area Area」(‘00)以降、全国に裾野が広がったジャパニーズ・ウェッサイ・シーンの基盤を、相棒Kayzabroとのグループ=DS455(一昨年には20周年のアニヴァーサリー・ライヴが盛大に行われ、昨年にはNWAばりのトリビュート・アルバムも制作された)で築き上げ、その頂点に君臨し続けている“VIP=重要人物”。
“豊富な知識と経験”そして“研ぎ澄まされた感性”が裏付ける、時にゲトーで、時にラグジュアリー、常にドラマティックな「誰が聴いてもPMXだと解る」文字通りのシグネチャー・サウンドを武器に、地元であるLocoHAMAこと港横浜から巨大なムーヴメントを興したパイオニアとなるDJ PMXが長らくの間目指してきたもの。それは、本場LAに負けないくらい充実したシーンを築き上げることだった。それにはまず、その向こうのウェストコースト・スタイルをNYの音や情報からの影響下にあった東京、日本のヒップホップ・シーンを変えなければ始まらなかったのだが、それは先にも挙げたクラシック=OZROSAURUS「Area Area」以降、大きな変化を見せている。また、彼がクラブという現場や、ミックステープ、ラジオや雑誌などで同時に紹介し続けた、LAを主体とするウェストコースト・スタイル(それは今や、ヨーロッパの各地でも根付いている)も、世代を超えて浸透している印象。彼自身がそれを実感したのは、やはり『LocoHAMA CRUISING』シリーズの第1作をリリースした後の反応なのだとか。

「ハッキリ言って、想像以上でしたね。制作する前から、向こうのもの(洋楽)しか聴かない人と、また日本のものしか聴かない人、それぞれがその“今まであまり聴かなかったもの”に触れてみるキッカケになればいい・・・というコンセプトは立てていたんですけど。両方カッコイイよ!と思ってやっているので。やっぱり、ライヴとかでも、ステージが終わると帰っちゃうお客さんもいるし、クラブ・プレイが好きな人はサイドMCはいらない、ってくらい曲を楽しみたい、って感じでバラけてきてる気がしていて。あと、最近は中高生のファンも多いので、夕方のライヴは行けるけど、深夜のクラブは入れない。となると、洋物を知るキッカケがあまりないし。そんなどこから聴いたらいいかな?という層の入り口にしないと、いう気持ちもありました。これもDJにしか出来ない仕事ですし。そんなミックスCDが予想以上の結果を出せて、とにかくよかったです。クラブ・プレイでの反応も変わってきたみたいだし。だからこそ『The Original』という自分のソロを出したい、出さなければ!という想いに駆られたんですね」


「4 My City」PV試聴
「Tha Rootz」PV試聴
「Miss Luxury」PV試聴
「Make It To Da Top」PV試聴
「Next Door」PV試聴
※上記または文中の動画で動画が切り替わります。
ご存知の通り、DJ PMXはそのマスターピースとなる『The Original』以前にも、MACCHOとZEEBRAをフィーチュアしたシングル「No Pain No Gain」や(遡れば、他にもPMX名義のインスト物などもあるのだが)、『LocoHAMA CRUISING』に自己名義の新曲として制作した“PMXがテーマに合わせてピックした面子によるマイクリレー物”、各地のラップスターが地元をレペゼンした「4 My City (⇒)」や、それぞれがウェストコースト・スタイルに目覚めたキッカケ=ルーツをラップで語った「Tha Rootz(⇒)」といった楽曲を発表しているのだが、それらのビッグ・チューンからも見えたのは、(それぞれの)地元や、この音楽、スタイルへの強い“こだわり”と、揺ぎ無き“プライド”だった(俺にはこれ=ヒップホップしかねぇ!と歌われた「No Pain No Gain」にしてもそう)。その理由について、ここでクドクドと語る必要はないだろう。それは、彼自身のノン・ストップの活動の原動力となるものだから(DJ PMX作品のビデオ・クリップという意味では、『The Original』からのリード・トラックにして大ヒット作、”Miss Luxury” (⇒)も忘れられない)。
そして、今ここにある“木”だけではなく、“森”=シーンのことを考えているからこそ、各地の志を同じくする同業者たち(札幌=HOKT、名古屋=AK-69、福岡=ZANG HAOZIetc)に“サウンド・プロデュース”という形で手を貸し、またKOZなどのニューカマーの育成にも力を注いでいるのだ。その「アップカマーのフックアップ」というテーマは、『The Original』以降に『LocoHAMA〜』で発表してきた「Make It To Da Top」(⇒)、「Next Door」(⇒)に参加した顔ぶれからも判るだろう。つまり、同シリーズは“洋・邦それぞれのミックスCD2枚組”という“こだわり抜いた構成”、そしてヒップホップならではのアティテュードとエンタテインメントを全て表現し、ただのヒット曲の寄せ集めになりがちなミックスCDとは一線を画す、まさしくヒップホップ的なメッセージが等しく貫かれた仕上がりゆえにヒット・シリーズと成り得た、のである。

DJ PMXのコダワリ、それは前代未聞のスケールで制作されてきたミュージック・ヴィデオの数々(最新曲「Next Door」のPVは、“貴方にどうしてもプロデュースして欲しくて・・・”という想いを込めたヴィデオとデモを送ってきた無名の新人が、やがてスタジオでその神様とセッションする、という感動的なドラマ仕立てになっている!)からも窺えるが、『Locohama』シリーズに自身初となるDVDミックスも組み込んだ彼の、その映像に対する想いはこんな感じだ。

「ローライダーやラグジュアリーカーを含めて、車文化やファッションなど、音楽だけじゃないウェッサイというカルチャーを丸ごと伝える・広めるには映像が一番なんじゃないか、って思ったんですよね。“生”でその風を浴びることが出来ない、触れることが出来ない人にとっては。あと逆に、その魅力を肌で感じてきた人も絶対に欲しくなるような。それが今のDVDマガジン『West Up!TV』とかにも繋がってるような(笑)。そうやって、行ったことがない地方にも広がって、営業に呼ばれて繋がりも増えた。俺たち(DS455)のようなウェストコースト・スタイルにこだわってるヤツらは、90年代の東京中心の日本語ラップ・ブームの時にも現場に呼ばれることが稀だったから、とにかく自分たちで何もかも作り出していく他なかったんですよ。映像もそうで。“これが自分たちのライフ・スタイル”ということを明確に示さなければ、その違いが判らない人からすれば十把一絡としか見られない。だから、こだわるしかなかったのかも知れませんね。今はそれが全国に広まってるので、ひたすらスケールアップを狙ってます(笑)」

それがいかにシンプルなものであれ、出来るだけ“多角的”に、その想い・考えこそが、単発ヒットを生むのではなく、「カルチャーを丸ごと伝える」ことに繋がっているのは、もうお解かりかと。そう、これもDJ/プロデューサーにしか出来ない役割・仕事、なのだ。

text by 二木崇(D-ST.ENT)