HMVインタビュー: Wagon Christ

2011年2月24日 (木)

interview

Wagon Christ

様々な名義を使い分け、独自のサウンドを展開してきた音の魔術師。Wagon Christ名義では実に7年ぶりとなるニューアルバムを<NINJA TUNE>よりリリースする、Luke Vibertにインタビュー!

片足を未来に踏み入れて、もう片足は過去に置いたまま。それが一番自分に合っているんだ。


--- 久しぶりにWagon Christ名義でリリースした理由は?

Luke Vibert: 何年ぶりだろう?5年ぶりくらいかな?なぜこんなに久しぶりなのかはっきりとは分からないけれど、主な理由は、僕は最近Wagon Christのサウンドを作っていなかったからだと思う。Wagon Christのサウンドは、僕がアシッド・ハウスやドラム&ベースを作るよりも前から作っていたサウンドで、僕が音楽制作を始めてから最初に作った、ヒップホップにインスパイアされたサウンドなんだ。

--- 今回のニューアルバム『TOOMORROW』の制作にはどれぐらい時間がかかりましたか?コンセプトやメッセージのようなものはありましたか?

Luke Vibert: 2004年から2007年にかけてちょこちょこ作っていた曲を、<Ninja Tune>でまとめようという話が出たんだ。以前もアルバムの話はあったんだけど、結局その時は実現しなかったんだ。今回はリミックスしたものをアルバムに収録するというオファーをもらって、ようやくリリースが叶ったよ。コンセプトとしては、、、申し訳ないけど、、、全くなかったと思うよ。「アルバムを作るから曲を作ろう」って流れじゃなくて、2004年から2007年までの間に曲を貯めすぎたんで、その中から一番気に入ったものを選んでリマスターして曲順を決めたって感じかな。今回は特別なコンセプトはないけど、いつものようにフレンドリーで、新鮮でちょっと未来的な、それでいてレトロな雰囲気を出したかった。片足を未来に踏み入れて、もう片足は過去に置いたまま。それが一番自分に合っているんだ。

昔観た60年代の映画のどこかに書かれていた『TOOMORROW』が印象に残っていて、いつか使いたいと思っていたんだ。わざと“O”をひとつ余計に入れているのは“TOO MUCH”をモジって入れてあると考えれば“TOO MUCH TOMORROW”って、皮肉っぽい感じで良いなと思って。あと“Spell&Speak”という、入力した言葉をロボヴォイスで喋ってくれる昔流行ったおもちゃで遊んでいたら、「トゥゥー」って音を伸ばしているように聞こえたから「あ、これいいな」って思ったんだ。

それとね、ジャケットのデザインは友達がやってくれたんだ。おもちゃ屋のウィンドウを覗いているようなイメージなんだけど、古そうな人形やこけしっぽいものもあれば、ロボットや近未来的な機械がごちゃごちゃに並んでいる。彼は日本の文化、デザインやマンガが大好きで、かなり影響を受けたらしいよ。日本でも気に入ってもらえると良いけど。

--- 制作中、一番苦労した事は何ですか?

Luke Vibert: 「SENTIMENTAL HARDCORE」がどうしても思い通りにいかなかった事だね。シンセサイザーを3台使ってリミックスしたんだけど、何度も何度もやり直したよ。ちゃんとしたスタジオでやったわけじゃないから妥協点は色々あったんだけど。終いには投げ出したくなったけど、娘のかわいい声をたくさんミックスしてあるんで捨てられなかったよ。実は今でも100%満足していないんだ。そのうち、ちゃんとしたスタジオで、モーグや本物の楽器を使ってまた再チャレンジしたい曲だね。

--- Luke Vibert、Wagon Christ、Plug等、沢山の名義を持っていますが心境の変化や、自身の中で決めているルールはありますか?

Luke Vibert: <Planet Mu>や<Warp>から出すときはLuke Vibertだし、プライベートでDJをするときもその名義でやっている。Wagon Christは何年も前に名義だけ<NinjaTune>と契約していたんだ。<NinjaTune>は、Plugのようなドラム&ベース、アシッド系のクラブ・ミュージックより、Wagon Christのようなメロウでトリップ・ホップのようなジャンルを好むんだよ。
確かにWagon Christの音楽はクラブでかけるより、家にいる時や移動中にデカいヘッドフォンで聴きながら自分の世界に入り込むのに向いているのかもね。でもWagon Christの曲でも、いくつかはクラブに合うものもあるよ。

ちなみに、Wagon Christっていうのは、僕が17か18歳くらいの時に読んだアングラ・コミックのタイトルで、いつか何かに使いたいなって思っていたんだ。テクノDJよりもっとロックな名前が欲しかったんだ。当時はそのコミックにバカウケしていたけど、今読み返したら多分くだらない内容だろうね。(笑)

--- あなたの音楽的背景を象徴するような作品またはアーティストを3人教えてくれますか?

Luke Vibert: 影響を受けたアーティストは山ほどあるから3つだけなんて答えられないね。僕の音楽と似たようなものを作る人はいないし、影響を受けたからといってその人の音楽と似たようなものを作っているわけでもない。正直、最近の音楽には本当に興味がないんだ。聴かないし興味もない。

でも、影響を受けたのは、まずPrinceかな。それからAphex Twin。Aphexに関しては音楽の影響、というよりも僕が17歳の頃、初めて自宅の寝室で音楽をミックスできると教えてくれた人なんだ。彼自身もその頃すでに寝室でミックスしていたんだけど、僕はそれまで音楽はスタジオでレコーディングしなければいけないという古い概念があってさ。1989年ぐらいだったかな。衝撃だったよ。

ヒップホップからも強い影響を受けている。De La Soul やA Tribe Called Questみたいな、ビートやベースが強くて、ファンキーでハッピーなヒップホップが好きなんけど、今はもうない類のヒップホップだね。今のヒップホップは全く聴かないよ。気にならないし、知りたいとも思わない。偶然耳に入ってくる新しい音楽でいいなと思うものもあるけど、僕が持っているレコード数千枚の中でまだ一度も聴いてないものもあるから、正直新しい音楽はもう必要ないんだ。別に今の音楽が悪いという訳じゃなくて、興味が沸かないんだよね。2000年あたりから出てくる新しい音楽に興味がなくなったんだ。でもJ-Dillaの音楽だけは大好きだった。本当の意味で尊敬できる最後のプロデューサーだ。彼が亡くなったと同時に、新しい音楽への興味を無くしたのかもしれない。Flying Lotusも影響を受けたって言っているし。

自分が作る音楽に関しては、自分の中で最高のものを作りたいと思うけど、どうしたらカッコ良くできるかとか、流行のダブステップにしてみようとか、全く思わなかったね。父親になってから好みが変わったのかな?今10歳と8歳の子供がいるんだけど、彼らはBlack Eyed Peasとか最近のヒップホップばかり聴いているよ。

--- トラック制作はどのように進められるのですか?実際の作業においてのそれぞれの役割り分担などありましたら教えてください。

Luke Vibert: よく一緒にコラボレートするミュージシャンたちがたくさん居るんだ。クリス・フランク(Chris Franck)、トニー・レミー(Tony Remy)、ジュリアン・クランプトン(Julian Crampton)、マット・クーパー(Matt Cooper)、ピート・クズマ(Pete Kuzma)、トーマス・ダイアニ (Thomas Dyani)、オリ・サヴィル(Oli Savill)とかね。親友でもあるトニー・エコノミデスも大きな役割を果たしてるよ。

--- 今作のアルバムの中で一番お気に入りの曲を教えてください。

Luke Vibert: その時の気分によるな。強いて言えば「TOOMORROW」と「CHUNKOTHY」が、このアルバムの象徴的トラックだと思うよ。一番長く温めていた曲でもあるし、アルバム制作を始めるとき最初にリミックスしたものだから、「古くて新しい」という意味ではこのアルバムのコンセプトの土台となっていると言えるかな。

--- 最後に、日本のファンに何かメッセージはありますか?

Luke Vibert: 今はまだ予定はないけど、近いうちに日本に行きたいよ。前に子供達も連れて行った事があって、また行きたいってせがんでいるしね。(笑)

新譜Toomorrow / Wagon Christ
音の魔術師ルーク・ヴァイバートによる人気プロジェクト Wagon Christが実に7年ぶりとなるニューアルバムを<NINJA TUNE>よりリリース!抜けの良いブレイクビーツにユーモア心溢れる様々なサンプルを散りばめた独自のサウンドは懐かしくもカッコ良く、、クラブ〜ヒップホップ好きまで幅広くオススメしたい一枚!!



    • Toomorrow
      Wagon Christ
    • 2011年2月26日発売

    • YosepH
      Luke Vibert
    • 2011年2月16日発売(リイシュー)


    • Moog Acid
      Jean Jacques Perrey / Luke Vibert
    • 2011年2月16日発売(リイシュー)

profile

Wagon Christ (ワゴン・グライスト)

ワゴン・クライスト、ケリア・ディストリクト、プラグ等、様々な名義を使い分け、<Warp><Mo’Wax><Rephlex>等90年代以降の主要テクノ/クラブ・レーベルから多くの作品をリリース。エイフェックス・ツインをはじめ、スクエアプッシャー、トータス、ナイン・インチ・ネイルズ、竹村延和といった幅広いアーティストから支持されている。そして2011年2月26日約7年振りにワゴン・クライスト名義で新作をリリース!!多種多様なサンプルを駆使し、360度あらゆる方向に広がっていくサウンド、そして今まで以上にバラエティ豊かでポップな世界が繰り広げられている。様々なテイストを持った色とりどりの楽曲に何度聴いても楽しめるようアレンジを加え独自のスタイルを構築し、一つの作品として見事に纏め上げている。

ハウス/クラブミュージック最新商品・チケット情報