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【コラム】Lamp 『東京ユウトピア通信』(第4回) Lamp 『東京ユウトピア通信』へ戻る

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2011年2月22日 (火)














  そして現在へと続いていくLampヒストリー。
  全4回・4週に渡り大好評の内お送りしてきました
  Lampの連載コラム『東京ユウトピア通信』。
  第4回目更新です。
   
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  Lamp  『東京ユウトピア通信』
    [ 2011年02月09日 発売 / 通常価格 ¥2,500(tax in) ]

前作『ランプ幻想』では文字通り儚く幻想的な美しさと、巷にあふれるサウンドとは一線を画す質感を持った世界を作り上げ、あらたなポップスのフィールドを更新する傑作を作り上げた。2010年夏に発売された限定盤EP『八月の詩情』では、夏をテーマに季節が持つ一瞬の儚さを切り取った詩とその情景を見事に表現したサウンドが一体となり、より濃密なLampの世界を持つバンドの新たな可能性を提示した。そして待望のニュー・アルバムとなる今作『東京ユウトピア通信』は、EP『八月の詩情』と同時に平行して制作され、丁寧に1年半という時間を掛けて作り上げられた作品。そのサウンドは新生Lampとも言うべき、より強固なリズムアレンジが施され、これまでのLampサウンドを更に昇華させた独自の音楽を作り出している。冬という季節の冷たさと暖かさや誰もが一度は通り過ぎたことがある懐かしい感覚、どこかの街のある場所での男女の心象風景などこれまで同様に物事の瞬間を切り取った美しい歌詞を、新しいサウンドの乗せて編み上げた8曲の最高傑作。現在の音楽シーンにの中でも極めて独自な輝きを見せる彼らの奏でる音は、過去や現在を見渡してもLampというバンドしか描けない孤高のオリジナリティーを獲得し、新たな次元に到達している。

どこを切っても現在進行形のバンドが持つフレッシュネスに溢れている。
真っ先に"成熟"を聴きとってしまいがちな音楽性にもかかわらず、だ。
そんな人達あんまりいない--そしてそこが素敵です。

- 冨田ラボ(冨田恵一) -






もともとLampの出発点は、僕が作曲をしてギターを弾き、永井と香保里さんが歌うというシンプルなものだった。
活動を始めた頃、永井は曲を作るということはまだ積極的にはしていなかった。今も大して積極的ではないが。
活動の中で、彼を無理にそういうことに追い込んでしまっては、バンド自体が長続きしないと、なんとなくそう思っていた。

「君は僕の恋人」(『雨に花』収録)という、Lamp結成よりも前に永井が作った曲がある。
香保里さんと出会い、三人のメンバーが集まったときに、その曲が当時の僕に大きなヒントを与えた。自分たちの基本的なスタイルはこれだ、と思った。簡単に言えば、ボサノヴァと日本語のポップスを混ぜた三人の弾き語り、というスタイルだった。

その曲からも永井の曲作りに対する才能は感じていた。
いずれは、僕の曲だけでなく、永井が作った曲も、録音・演奏していけるようになれば、もっと素敵なものになると考えていたのだ。
そうして活動していくうちに、ファースト・アルバム『そよ風アパートメント201』の制作前(2002年9月)までに、永井は、「愛の言葉」「風の午後に」「今夜の二人」の3曲を作っていた。
この頃の僕らは、現在のように、イニシアチブが作曲者本人にあったわけではなく、例えば、それらの3曲のレコーディングにおいて、僕の意向もかなり反映された。

アルバムにシングル曲が必要だとは考えていなかった。
ただ、アルバムを引っ張っていく曲は必要だった。
『そよ風アパートメント201』なら「風の午後に」、『恋人へ』なら「ひろがるなみだ」、『木洩陽通りにて』なら「冷たい夜の光」と、永井の傑作曲がまずあって、そのまわりを僕が中心となって三人で固めていくイメージだった。

『木洩陽通りにて』の制作終盤、永井はかなり疲弊していた。
これまでのように、彼の曲が中心となるアルバムは、当面は作れない感じだった。

『木洩陽通りにて』の制作が終わり、僕は次のアルバムのイメージを固め始めた。
それまでは永井の曲に頼ってきた感じがあったし、自分としてもそろそろ作曲に自信がついて来ていたので、次は自分がアルバムを引っ張るような曲を作れたら、と思っていた。
2005年暮れから、まず、「雨降る夜の向こう」と「ムード・ロマンティカ」、2006年に「君が泣くなら」、そして、「空想夜間飛行」を作った。
全体のバランスを考えて創作してきた僕に、作曲家としての自我が芽生えてきたのがこの頃だった。

そんなとき、二つのアイディアが浮かんだ。
まず一つは、結成当初からやりたかった、日本的な趣の曲を集めたアルバムの制作。
これは活動を始めたばかりの頃に作った「泡沫綺譚」と「二十歳の恋」から着想を得た。この雰囲気でアルバム一枚作ってみたいと思ったのだった。その時点では、アルバムタイトルは決まっていなかったように思う。
音作りの方向性は、『残光』での「ムード・ロマンティカNo2」で、感触を掴めてきていた。
もう一つが、音楽的にさらに発展させたアルバムの制作。そんなことを考えていたときに、ふと、『東京ユウトピア通信』というタイトルが思い浮かんだ。こちらのアルバムの色は、また別にあった。

それぞれのテーマやコンセプトをメンバーや佐久間さんに伝え、制作に取り掛かろうとした。ただ、二枚分を同時に作るのは、作業量があまりにも膨大だということで、順番に作ることにした。

その一枚目、『ランプ幻想』制作中に、Daniel Kwonのレコーディングを行った。
彼の音楽に魅了され、自分たちの制作を中断した。
自分たちも十分アマチュアだが、ダニエルはもっとアマチュアだった。なんでもありのレコーディングをみんな楽しんだ。
他人の、しかもダニエルという奇抜なアイディアの持ち主のレコーディングをサポートし、プロデュースしたことが結果的に良い経験となり、この後の自分たちの作品に少なからず影響した。

途中、『八月の詩情』という急なアイディアによる若干の予定変更があった。
発売当初、5曲で「アルバム」と呼んでしまうのは、ちょっと世間に対して横柄な感じがしたので、「EP」として告知したが、これは僕らにとって5回目の儀式であったし、内容からすれば、アルバムと呼んでもなんら恥ずかしくないものであり、その点、考え直し、今はこれを5枚目と数えることにしている。

そして、今回の『東京ユウトピア通信』。

着想から5年強、2011年2月に、ようやく蓄積したアイディアと作りこんだ楽曲の全てをアルバムにして出せた。

これから先、僕らはどこに向かうか、自分たちでもわからない。
今は一寸先も見えていない。
楽しみな気持ちと不安な気持ちとが、混ざり合っているんです。



Lamp 染谷大陽





















関連作品

 2007年03月07日 発売
 2008年12月03日 発売
 2010年08月04日 発売
 2010年07月14日 発売
 2009年03月04日 発売
 2010年04月21日 発売

Lamp プロフィール

Lamp

染谷大陽、永井祐介、榊原香保里によって結成。永井と榊原の奏でる美しい切ないハーモニーと耳に残る心地よいメロディーが徐々に浸透し話題を呼ぶことに。定評あるメロディーセンスは、ボサノバなどが持つ柔らかいコード感や、ソウルやシティポップスの持つ洗練されたサウンドをベースにし、二人の甘い声と、独特な緊張感が絡み合い、思わず胸を締めつけられるような雰囲気を作り出している。 日本特有の湿度や匂いを感じさせるどこかせつない歌詞と、さまざまな良質な音楽的エッセンスを飲み込みつくられた楽曲は高い評価を得ている。これまでに5枚のアルバム(韓国盤を含む)をリリース。

  オフィシャルHP
  myspace

Live情報

Lamp ワンマンライブ "東京ユウトピア通信"
【日程】2011年5月6日(金)
【時間】18:30開場/19:30開演
【会場】渋谷duo music exchange
【チケット】前売3500円(ドリンク代別)/当日4000円(ドリンク代別)
【問合せ】渋谷duo music exchange
(TEL 03-5459-8716 / http://www.duomusicexchange.com

CM情報

佐々木希さん出演のサントリー“カクテルカロリ。”CMソング「ロマンティックあげるよ」(アニメ「ドラゴンボール」エンディング曲)をLamp の榊原香保里さんが歌っています。

Lamp染谷大陽 推薦盤
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『A Via Lactea』
(1979年)


ブラジルのミナスのミュージシャン、ロー・ボルジェスのセカンド。分類不可能な魅力と輝きを感じる。特にこのアルバムの最初の4曲とか、6-9曲目とか。最初は意味わからないかもしれないけど、メロディーを口遊むようになった頃には、もう抜け出せなくなってるはず。
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『Toninho Horta』
(1980年)


これもブラジルのミナスのミュージシャン、トニーニョ・オルタのセカンド。せっかく生まれてきたのですから聴いてください。今まで味わったことのない感情になること必至。
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トッド・ラングレンのセカンド。『Pet Sounds』以降のThe Beach Boysなんかもそうだけど、なんだかんだ、音楽を作るときいつも影響を受けている。
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ジョージ・ハリスンのギターのプレイと音が良い。特にこのアルバムは曲もすごく良くておすすめ。特に、静かな曲、きれいな曲がたまらない。
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『Curtis』
(1970年)



カーティスのファースト・アルバム。これもかなりすごいので、おすすめ。ブラック・ミュージックとか、そういうカテゴリー分けで聴くレベルのアルバムではない。音楽を作るとき、この盤にいつもお世話になっている気がする。


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筆者:染谷大陽(Guitar)




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