ん? 設立40周年? おかしいぞ、敏腕プロデューサー、クリード・テイラーがA&Mレコード内にCTIを設立したのは、たしか1967年だったはず・・・そうか! 完全にA&M傘下から独立したのが1970年、つまり「Creed Taylor Issue」から「Creed Taylor Incorporated」に正式名称が変わってから、今年でちょうど40周年ということなんですね!
Wax Poetics Japan Compiled Series 「Dance Classics」
キングレコード KICJ601 2010年11月3日発売
【収録曲】
1. Star Borne / ジョニー・ハモンド 2. Super Strut / デオダート 3. Boy, I Really Tied One On / エスター・フィリップス 4. Baretta's Theme / ロン・カーター 5. You Keep Me Hanging On / デヴィッド・マシューズ 6. Sugar Free / スタンリー・タレンタイン 7. Turn This Mutha Out / アイドリス・ムハマド 8. Stanley's Tune / アイアート・モレイラ 9. Macumba / ラロ・シフリン 10. Corazon / ハンク・クロフォード 11. Hard to Face The Music / アイドリス・ムハマド 12. Nights in White Satin / デオダート
Wax Poetics Japan Compiled Series 「Soulful Vocals」
キングレコード KICJ602 2010年11月3日発売
【収録曲】
1. Say you Love Me / パティ・オースティン 2. Home Is Where The Harted Is / エスター・フィリップス 3. Rich Girl / ニーナ・シモン 4. You Got Style / フィル・アップチャーチ 5. More Today Than Yesterday / パティ・オースティン 6. California Dreaming / デヴィッド・マシューズ 7. I Hear A Symphony / ハンク・クロフォード 8. Baltimore / ニーナ・シモン 9. Little Baby / ニーナ・シモン 10. Shoogie Wanna Boogie My Girl / デヴィッド・マシューズ 11. House Of The Rising Sun / アイドリス・ムハマド 12. Unfogettable / エスター・フィリップス
Wax Poetics Japan Compiled Series 「Sample & Breaks」
キングレコード KICJ603 2010年11月3日発売
【収録曲】
1. Canned Funk / ジョー・ファレル 2. September13 / デオダート 3. Power of Soul / アイドリス・ムハマド 4. I Had a Dream / ヒューバート・ロウズ 5. Rhapsody in Blue / デオダート 6. Sister Sanctified / スタンリー・タレンタイン 7. Ziggidy Zag / ガボール・ザボ 8. People Make The World Go Round / フレディ・ハバード 9. Olinga / ミルト・ジャクソン 10. That's All Right With Me / エスター・フィリップス 11. Rock Steady / CTI オールスターズ 12. Wildflower / ミルト・ジャクソン
1967年、A&Mレコード内に「CTI(Creed Taylor Issue)」を発足。ウェス・モンゴメリー『A Day In The Life』、クインシー・ジョーンズ『Walking In Space』といったレーベル最初期の作品には、これまでのジャズにはなかった新しい要素が敷き詰められており、CTIレーベルは新進気鋭のジャズ・レーベルとして最高の船出を飾ることに成功。その後1970年に独立し、正式名称を「Creed Taylor Incorporated」に変更。1972年、ゴスペル作品を中心とした傍系レーベル「Salvation」を立ち上げ、また1974年には、ソウル・ジャズを中心とした「KUDU(クドゥ)」をスタートさせました。
と、まずはクリード・テイラーという人物の簡単なご説明を。 そして、「ジャズにとっての70年代」というのは、いったいどういうものだったのか? ということに続けざま着目。マイルス・デイヴィスが『On the Corner』などに顕著なぐちょぐちょとしたエレクトリック・ファンク路線にシフトし、その枝葉から派生した、ウェザー・リポート、ハービー・ハンコックのヘッドハンターズ、リターン・トゥ・フォーエヴァーといったチルドレンが、さらに電化を強め、つまりは「クロスオーバー」、または後の「フュージョン」の雛形がそこかしこで形成されたシーズンだったということは、大方の意見の一致を見るところでしょう。
名門Blue Noteですら、所謂「LA時代」と呼ばれるユナイテッド・アーティスツ傘下におけるシーズンには、担当プロデューサーのジョージ・バトラーの改革腕の下、マイゼル・ブラザーズのスカイハイ・プロダクションなどをブレインに擁しながら、悉くソウル、ポップス要素の強い作風を標榜し、新時代に取り残されないよう苦心。同じく老舗レーベルのPrestige、Atlantic、Fantasyなどにしても、この70年代には(試行錯誤ありながらも)すでにバピッシュな4ビート・ジャズに代表される伝統的な概念からは乖離したサウンド・コンセプトを標榜し顕在化させていました。またドイツでは、マンフレート・アイヒャーが独自の審美学を軸にECMレーベルを設立。「The Most Beautiful Sound Next To Silence (沈黙の次に美しい音)」というコンセプトを掲げながら、より「アンビエント」、「フリー・ミュージック」(フリー・ジャズではありません)色の強い空間芸術の創出に従事し、当時における新しいジャズのイメージを植え付け、定着させていきました。
現在も現役バリバリのブラジリアン・パーカッショニスト、アイアート・モレイラの73年録音のCTI盤。クラブ・サイドからの熱いラヴ・コールが絶えない「Tombo in 7/4」を収録。方や、王道ジャズ〜フュージョン・シーンで、”もう一つのリターン・トゥ・フォーエバー”として未来永劫語り継がれる前作『Free』もオススメ... ≫
ブラジル音楽だけでなく、現在で言う「ダンス・クラシックス」のようなソウル・ミュージックを発表してきたこともCTIレーベルの大きな特徴と言えるでしょう。その代表的な作品でもあるパティ・オースティン『End Of A Rainbow』。爽やかな歌唱で歌われるラヴ・バラード 「Say You Love Me」を筆頭に、そこに60年代前半まで当たり前のものとして、半ば押し付けがましく鎮座していた「ジャズ、その本分とは?」といったようなヤクザなクリシェや、むき出しのエゴなどはもはや微塵も存在していません。それもそのはず。これは、れっきとしたソウル・ミュージックのアルバムなのですから。しかし矛盾するかのように、そこには、クリード・テイラーが当時思い描いていた「ジャズ側の意識改革」という信念のようなものもしっかり反映されていることに気が付かされます。アレンジャーに登用されたデヴィッド・マシューズをはじめ、スタッフ、ブレッカー・ブラザーズの面々といったジャズ(あるいはフュージョン)側のミュージシャンたちが、己の出自でもあるジャズを「手段」として活用しながら、「聴きやすく、気持ちのいい音楽」を創出し、見事に転回していく様。これを悪い意味で捉えてしまったヒトは、この時代の本当のジャズ・シーンの旨味を完全に味わい損なってしまったのではないでしょうか?
1967年、記念すべきレーベル第1作目となったウェス・モンゴメリー『A Day In The Life』では、ビートルズをはじめロック、ポップス、ソウルの名曲をドン・セベスキー編曲の下に最も「とっつきやすい」カタチのジャズとしてコンバートし、それまでのジャズのイメージにまとわり付いていた高尚さ、難解さを徹底的に排除することに努め、そこに主役ミュージシャン共々新たなジャズの活路を見出すことに成功しています。
ジャズ・アルバム史上屈指のベスト・セラーを記録した人気作にして、CTIジャズのエッセンスが凝縮された1枚。マイルス・デイヴィスが『Sketches Of Spain』で取り上げたことで有名となったホアキン・ロドリーゴのギター協奏曲「アランフェス協奏曲」を、ドン・セベスキーがより親しみやすくシンプルな解釈で編曲している。チェット・ベイカー、ポール・デスモンドの2管が加わる「You'd Be So Nice to Come Home To」もクール... ≫
LP時代には、2枚組全6曲というカタチでリリースされていた、1971年7月18日 L.A.はハリウッド・パラディアムにおけるCTIオールスターズによるコンサート盤『CTI California Concert』。約40年の時を経て、米Masterworks Jazz 社よりいよいよ完全盤が登場します。こうなると、現在廃盤となっている翌72年7月30日にハリウッド・ボウルで行なわれた同オールスターズによる『CTI Summer Jazz At The Hollywood Bowl Vol.1〜3』も再リイシューしていただきたいところです!
CTI: The California Concert
Masterworks Jazz 776405 2010年10月26日発売 2枚組
【収録曲】 [ディスク 1] 1. Impressions 2. Fire And Rain 3. Red Clay 4. Blues West 5. So What
[ディスク 2] 1. Here's That Rainy Day 2. It's Too Late 3. Sugar 4. Leaving West 5. Straight Life
オリジナルの2トラック・アナログ・マスターを初めて使用したリマスタリング。CTIの膨大な音源を「Straight-up Jazz」、「Big Hits」、「The Brazilian Influence and Cool」、「Classic Sounds」の4つのテーマに振り分け、コンパイルした4枚組ベスト。
CTI Records:The Cool Revolution
Masterworks Jazz 88697768212 2010年10月4日発売 4枚組
【収録曲】 [ディスク 1] 1. Sugar 2. Moment's Notice 3. So What 4. Autumn Leaves 5. Speed Ball 6. The Intrepid Fox 7. Ifrane 8. Free As A Bird 9. So What?
[ディスク 2] 1. Red Clay 2. It's Too Late 3. Home Is Where The Hatred Is 4. We've Got A Good Thing Going 5. White Rabbit 6. Fire And Rain 7. What A Difference A Day Makes 8. Follow Your Heart 9. Also Sprach Zarathustra 10. Mister Magic
[ディスク 3] 1. Stone Flower 2. Ponteio 3. First Light 4. Salt Song 5. Pensativa 6. Tombo in 7/4 7. Sunflower 8. Return To Forever 9. Wave 10. Carly & Carole 11. Brazil (Alternate Take)
[ディスク 4] 1. My Funny Valentine (Live) 2. All Blues 3. Song To A Seagull 4. Pavane 5. What'll I Do 6. Westchester Lady 7. A Child Is Born 8. Take Five 9. Concierto De Aranjuez
【おさらい】 CTIは、サンプリング・ソースの宝庫です。
P.U.T.S.レーベルによる ”Nuff Respect” 究極形。
「この期に及んで」感満載の表題ではありますが、何しろ”U-25”を中心としたヒップホップ・リスナー層が、ランDMC、ブギ・ダウン、ジュース・クルーはおろか、ネイティヴ・タン、ハイエロ、D.I.T.C さえも「名前だけなら・・・」とヌカすこのご時勢。音楽の趨勢が「一周回って何とやら」となることを願いつつ、このたびリリースされるWax Poetics Japan 監修・編集のCTI音源コンパイル・シリーズ 3タイトル、今日、その中で最も注目したいタイトルが「Sample & Breaks」、というお話。
ジャズのレコードの山々から、Blue NoteのL.A.シーズンの作品がヒップホップのサンプリング・サイエンスにより再評価を得たのと同じく、CTIのLPに関してもそのカタログは、ビートメイキングにおける抜群の「材料」たる勲章を手にしました。ランDMCが「Peter Piper」の中で鳴らした「Take Me to the Mardi Gras」や、ヒップホップ・ビーツの骨格のみでなく、のちにハウス界のマイスター・プロジェクト=マスターズ・アット・ワーク(MAW)によってもカヴァーされた「Nautilus」など、ボブ・ジェイムスの両楽曲がこの時代にこうしたカタチで効力を発揮し、はてはサンプリング・ミュージック時代の礎を築くなどとは当の本人ですら想像だにできなかったことでしょう(そして、露骨な弾き直しを含む楽曲の無断サンプリング使用のあまりの多さに、自身の著作権を有した各楽曲にはバカ高いサンプリング使用料を課したことは有名)。80年代半ば、日本でいうところの「ミドル・スクール」期、ボブ・ジェイムスのこの2曲によりヒップホップとCTIの蜜月がはじまったと言っても過言ではなく、と同時に、それまでJBズ、クール&ザ・ギャングで足踏みをしていた日本のBボーイ連がこぞって中古レコード屋のジャズ/フュージョン・コーナー(特にエサ箱と呼ばれる100円コーナー)めがけて突進したという現象も各地で頻繁に見られるようになりました。
また、クラブ・ジャズ方面では、アイアート「Tombo In 7/4」を筆頭とした所謂「ブラジリアン・ジャズ・ダンサーズ」楽曲がカヴァー、リミックス、DJプレイなどで取り上げられる機会が同時多発的に発生。こうした一連のクラブ・サイドからの熱いラブコールの流れを受け、90年代後半〜2000年代前半にかけては、音楽業界全体に「CTI 再評価」の波が一気に押し寄せ、角松敏生、青木智仁といったフュージョン・シーンに所縁のある邦人プレイヤーによるCTI音源のプライベート・セレクション・コンピも多数リリースされました。