【インタビュー】miu-clips

2010年11月15日 (月)

interview

autumn leave'sの中心人物でもある阿藤 芳史によるプロジェクト・miu-clipsの最新作『L.O.V.E.』が11/17にリリース。ポップなメロディーとハウス/ダンスミュージックを基調としたTrack、さらにそのキュートなアートワークからも幅広い層に受け入れられているmiu-clips。本作『L.O.V.E.』やその他の活動における楽曲制作について、そして音楽的な原点など、阿藤さんにお答えいただきました!



-- 音楽を始めたきっかけを教えて下さい。

阿藤 芳史(以下 阿藤)  2、3歳の頃に鍵盤を習っていたのですが、決められた音楽を弾くのが退屈で勝手に作った音楽らしきものを弾いている子供でした。小学生の頃は歌うのが大好きでした。中学2年で帰国子女の友達が持って来た、外国の香りのする英語の音楽誌、聴いた事もない様々なCDに衝撃を受け、そうした独創性のある音楽を自分でもやってみたいと思い、ギターとDTMを始めました。ここから本気のスタートになったと思います。


-- 藤井リナ作品のプロデュースをはじめ、2010年はautumn leave’sでの作品集をリリースするなど、精力的な音楽活動を行われていますが、楽曲制作、音作りの際に大事にしている事はありますか?

阿藤  音作りという面で、単純に音として大切にしているのは、イメージ力と持久力、モニター環境です。モニター環境の重要性は言い表しきれないほどで、可能な限り正確でバランスの良いモニター環境さえあれば、あとはイメージ通りの音になるまで試行錯誤を繰り返していけば良いだけです。逆に、どんなに苦労してもモニター環境がアンバランスだと、他の環境で聴いた時に全く違うものになります。敢えてハズしたり、甘くしたりする時も、その基準がないと難しいです。また、イメージ力が全ての源泉で、それに近づける為の持久力、瞬発力の場合もありますが、それらがとても大切です。全てが揃えば、イメージ出来るものは何でも音に出来る事になります。その為に自分自身でもいつもイメージ力を高めたり、音の聴き方を工夫することに取り組んでいます。


-- 作詞作曲編曲、バックコーラス、楽器演奏、マニピュレート、レコーディングまで全て一人で行われるということですが、一連の行程の中で、一番苦労するものは何ですか?

阿藤  曲によって、難所が違ってくる事が多いです。どれか一つというよりは、全ての要素の管理を自分の中でしなければならない所が苦労する部分です。「こうしたい」という到達点があって、どこかの工程で滞っていたり、結果が出せていない場合、全て自分でクリアしなくてはならないので、問題が発生した時の解決に時間を取られます。その代わり、何でも定石で解決して無難な仕上がりになる事はなく、自分のカラーを出せていける点は面白い部分だと思っています。

また、基本的には全行程を一人で完結する様にして雛形を作りつつも、「ここはあの人に頼みたい」という工程があって、複数で作るメリットがある場合は、柔軟に考えてコラボレーションもしています。詳しくは各クレジットを参照して頂ければと思います。

逆に、何も苦労せずに一瞬で全てが完成してしまうこともあります。自分だとあっけなくて納得いかない時もあるのですが、良かったと言われる事もあるので、音楽はつくづく不思議だなぁと思います。


-- 他のアーティストへ提供される楽曲と、ご自身のアルバムの為に制作される楽曲では、気持ちの上での違い、自分の中での棲み分けといったものはありますか?

阿藤  一人で作る経験からも、逆に実感するのですが、音楽を作り上げるには、最終的な形に仕上げるビジョンと責任を持つ役割が必要です。一人で作る場合でも、その役割の自分と、実際に手を動かす自分が出て来ます。それなので、他のアーティストの音楽に関わる場合、誰がビジョンを持っていて責任者になっているかをまず確認します。もちろん、それが案配で数人に別れていたり、役割が分散している場合もありますが、まずは役割を把握する必要があります。「アーティストがこういう物を作りたい」と思っている、ディレクターはこうしたい、権利者はこうしたい、というケースバイケースに合わせます。何もない場合はアーティストの意向に沿った形で、尚かつ自分の特徴を活かせるものを提示します。誰にもビジョンが無い場合、もしくは任されている場合は、好きな様に作ります。自分のアルバムは、何人分ものプレッシャーや労力を一人で受ける、という苦しさはあるものの、自分の責任で描いたやりたい物を作る達成感は何者にも変えられません。


-- miu-clipsの洗練されたポップなサウンドが、幅広い音楽ファンに受け入れられているかと思いますが、今後どのような方にmiu-clipsの音楽を届けたいと思われますか?

阿藤  もし、僕の音楽を必要としてくれる人がいるのならば、その方の為に精一杯の音楽を届けたい、力になりたいと、いつも思っています。これは人生で初めて音楽を人に聴いてもらった時から、一度も変わっていません。音楽の持つ力は、とてつもなく巨大なものではないかも知れませんが、ほんの少しの幸せをプラスして、素敵な毎日を送れるアシストは出来ると思っているんです。

嬉しかったのは、医療関係の方が褒めて下さったとき。「医療では現時点での患者さんにしてあげられる事には限界がある。人の死は止められないし、絶望を取り除く事はできない。でも、音楽には不安を忘れさせたり、安らぎや希望を感じる事が出来る。」このことは、医療と違って、形のない音楽は無力だと思っていた僕には、とても驚きでした。そして、自身を持って音楽に取り組める希望にもなりました。


-- 今作「L.O.V.E」はどういうテーマを元に制作されたのですか?ちなみに制作期間はどのくらいですか?

阿藤  今、時代の大きな変わり目で、価値観も大きく揺らいでいます。この様な中で、大切な物は「愛」だと思っています。「愛」は、ある種のファンタジーであり、信じればあるもの、信じなければないものです。そして、人と人を結びつけるものです。「音楽」と、とても似ている性質です。「愛」というと、ちょっと恥ずかしいというか、大袈裟な感じもします。でも、少し気にかけてみると、普段の生活の中で小さな愛を見つけることが出来ると思います。普段会う人との関係だったり、見過ごしがちな当たり前の事の中にも愛を感じる事ができると思います。そう感じようとする事が大切なのではないかと思っています。人に憎まれたら、人にいじわるしたくなる事はあるけれども、人に愛されて嫌な気分になる人はいないですよね。人に愛されたら、気分が良くなって誰かに優しくできる。そして人から人へ伝わっていく。そうすると、不安は消え去って安らかな気持ちを持て、信じる力が沸いて来る。僕も、そんな循環のその他大勢の一人として、音楽と共に、ささやかな愛を届けたいという思いがあって、それを象徴して「L.O.V.E.」としました。制作期間は少しずつ練り上げていくペースで1年です。


-- どのような音楽に影響を受けられましたか?作品、またはアーティストを教えて下さい。

阿藤  スティーリー・ダンはとにかく大好きで大きな影響を受けました。その他、僕は携帯プレーヤー世代なのと、色々な世代の音楽好きな人達に囲まれて育ったため、幅広いジャンルを広範囲に聴いて育ちました。とにかく音楽好きなもので、クラシック、ジャズ、ブルース、ダンスミュージック、各地の民謡民族音楽、好きな作品は多いです。


-- 最後に、このページをご覧の方にメッセージをお願い致します。

阿藤  今回収録の新曲は、普段の日常の中から、「あ、いいな」という瞬間から、ほんの少しの暖かさを取り出して、折り重ねていったものです。聴いて頂いた方の、ちょっと幸せな毎日のお供にして頂けたら幸いです。miu-clips作品集「L.O.V.E.」是非チェックしてみて下さい。そして今回見えて来たものもあって、また新しい気持ちで新曲作りを始めていますので、今後とも応援の程よろしくお願い致します。




新譜 miu-clips 『L.O.V.E.』
autumn leave'sの中心人物でもある阿藤 芳史によるプロジェクト、miu-clipsの最新アルバムが約1年ぶりに登場。本作には、iTunes ダンスチャート1位を獲得した配信限定EP 「L.O.V.E.」「Flower」も本人リマスタリングにより初CD化にて収録、書き下ろしの新曲の他、リスナーのリクエストに応え選ばれたカヴァー曲2曲、Remixワークなども収録。これまでよりも更に進化したmiu-clipsサウンドが満載の1枚。


    商品ページへ








      miu-clips / L.o.v.e.
    2010年11月17日発売

    autumn leave'sの中心人物でもある阿藤 芳史によるプロジェクト、miu-clipsの最新アルバムが約1年ぶりに登場。本作には、iTunes ダンスチャート1位を獲得した配信限定EP 「L.O.V.E.」「Flower」も本人リマスタリングにより初CD化にて収録、書き下ろしの新曲の他、リスナーのリクエストに応え選ばれたカヴァー曲2曲、Remixワークなども収録。これまでよりも更に進化したmiu-clipsサウンドが満載の1枚。


profile



ミュー・クリップス [miu-clips]

気鋭の若手クリエーター/プロデューサーとして知られる阿藤芳史が2006年より設立した音楽プロジェクト。「遊び心」「イノベイティブ」「ハートフルミュージック」をキーワードに独自の世界観を展開。作詞作曲編曲、バックコーラス、楽器演奏、マニピュレート、レコーディングの細部まで一手に手掛けるスタイルで作品を発表。アーティストへの楽曲提供、CMやメディアへの音楽制作、プロデュース、アレンジメント、演奏等、多岐に渡る活動を行う。コンピレーションFlavorシリーズのトータルプロデュースや、クリエイターユニット・autumn leave's の中心メンバーとしても知られ、各方面で抜群のセンスを発揮している。





関連記事


  • autumn leave's コレクション盤!

    autumn leave's コレクション盤!

    前作から2年、数々のコンピに収録されてきたautumn leave'sによる洋楽カヴァーやオリジナル曲を全て最新エディットにて収録!