マレイ・ペライアのブラームス！

2010年10月6日 (水)

マレイ・ペライアのブラームス！
ヘンデル変奏曲、ラプソディ、間奏曲

現代最高の「美しい演奏」を聴かせるピアニストとしてすでに世界的な名声が確立しているマレイ・ペライア。強音でも決してにごらないクリアな音と、シャープなリズム感の反映された克明かつ滑らかなフレージングは、ショパンの作品でもその持ち味を最大限に発揮しており、詩情豊かな名演奏に結実していると高い評価を受けてきました。
　今回、ペライアが久々に取り組むブラームス・アルバムには、技巧的な面でも魅力十分の28歳の時の大曲『ヘンデル変奏曲』のほか、46歳の時に書いた情熱的な２つのラプソディ、そして晩年に書かれた間奏曲、バラード、ロマンス、ラプソディという魅力的な小品群が収められています。

【若き日の力作、ヘンデル変奏曲】
『ヘンデルの主題による変奏曲』は、ヘンデルのクラヴィア組曲第2巻の第1曲「エア（アリア）」を主題に使用した２５の変奏曲とフーガから成る作品で、当時ブラームスが研究・取材していたバロック音楽やハンガリーの民俗音楽の影響もあって、山あり谷ありの変化に富む作風に仕上がっています。その内容の面白さは、２０世紀英国の作曲家エドマンド・ラッブラ[1901-1986]がオーケストラ曲に編曲してしまうほどで、ピアニストには、各変奏とフーガを描き分ける豊かな表現力に加えて、かなりの技術力も要求されるという難曲でもあります。

【円熟期の傑作、２つのラプソディ】
「２つのラプソディ」は、ブラームスの友人でもある作曲家ヘルツォーゲンベルク[1843-1900]と結婚した元弟子のエリーザベト・フォン・シュトックハウゼン[1847-1891]のために書いた作品。14歳下のエリーザベトはブラームスにとって心を許せる親しい存在だったこともあり、ヘルツォーゲンベルク夫妻とはその後も親密な交流がありました。作品は表現の振幅のきわめて大きなもので、活力に満ちていたブラームスのパワーが奔流のように反映されています。『ヘンデル変奏曲』と同じく、オーケストラのように多彩な音楽が実に魅力的です。

【晩年の美しい小品群】
一転して作品118と作品119の小品集には、晩年の静かな気分が反映されていますが、中の「ラプソディ」1曲だけは作曲時期がもっと前ということもあって、「２つのラプソディ」にも通じる鮮烈な作品となっています。
　ラプソディ以外の9曲はどれも簡素な美しさが印象的なもの。グレン・グールドによる表情を抑えた名録音によって半世紀近くも世界各国で親しまれてきたという経緯はありますが、今回のペライアの演奏にも期待が持てるところです。

【ペライア２度目のブラームス】
ペライアは1991年にブラームスのソロ・アルバムを録音しており、ラプソディ作品79-1とラプソディ作品119-4、間奏曲作品118-6の3曲についてはそちらにも収録されていたので、その3曲については今回は19年ぶりの再録音ということになります。
　1991年の親指故障直前の旧録音と、数年間に渡る演奏活動休止期間中にバッハを研究してその音楽に深い慰めを見出し、復帰後は以前よりもヴィルトゥオジティ、スケールとも大幅アップした現在のペライアによる録音の比較も興味深いところです。（ＨＭＶ）

【収録情報】
ブラームス：
ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ作品24
2つのラプソディ 作品79
・第1番ロ短調
・第2番ト短調
6つのピアノ小品 作品118
・間奏曲イ短調
・間奏曲イ長調
・バラード ト短調
・間奏曲ヘ短調
・ロマンス ヘ長調
・間奏曲変ホ短調
4つのピアノ小品 作品119
・間奏曲ロ短調
・間奏曲ホ短調
・間奏曲ハ長調
・ラプソディ変ホ長調

　マレイ・ペライア（ピアノ）

　録音時期：2010年6月19〜24日
　録音場所：Funkhaus Berlin Nalepastrasse, Saal 1
　録音方式：デジタル（セッション）