【対談】中島ノブユキ×畠山美由紀 ジャパニーズ・ポップス・インタビューへ戻る

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2010年10月5日 (火)

interview

1stアルバム『エテパルマ 〜夏の印象〜』、2ndアルバム『パッサカイユ』、そして今年2月にリリースされたサウンドトラック『人間失格』を経て、いよいよリリースとなった中島ノブユキ3rdアルバム『メランコリア』。 今回はアルバム発売を記念し、対談形式で中島ノブユキさんにインタビューさせていただきました!対談のお相手は、本作ラストに収録されている「アダージェット」に参加、そして中島さんとは数々の共演を重ね旧知の仲でもある、Port of Notes・畠山美由紀さん。お2人の和やかな対談をお楽しみ下さい。それではドウゾ!


「これで歌えたらどんなにイイだろう」と思って



中島ノブユキ(以下 中島)  今日はあれだよね?褒め殺される感じでイイのかな(笑)?

畠山美由紀(以下 畠山)  (笑)。

-- (笑)。そもそも、お2人の最初の出会いというのはどんな感じだったんですか?

畠山 もう随分前になるんですけど…15年前ぐらいですかね?port of notesがまだ“port of notes”って名前もない頃に、 「素晴らしいキーボーディストがいる」ということで紹介してもらって、Liveのリハに来ていただいてお会いしたのが初めてですね。

中島 その時は、事前に資料としてLiveのビデオを貰ってたのね。観ると、背の高いスツールに座って、 ものすごい大きなアフロヘアーで、ミニスカートで、コロナをラッパ飲みしながら歌ってる、それが美由紀ちゃんだったの(笑)。

-- めちゃめちゃカッコイイじゃないですか(笑)。

畠山 驚愕の映像だよね(笑)。

中島 それ観て「このバンドで弾くのかぁ〜、怖いなぁ」って思いながらスタジオ行って(笑)。

-- (笑)。当時と今とでお互いの印象は変わりましたか?

中島 変わらないね。

畠山 変わらないですね、本質的には。おこがましいかもしれないけど、今の方がより分かる気がする。 言うこととか出す音とかがより速く分かるっていうか。

-- なるほど。ではまず本作の畠山さんとの楽曲についてお伺いしたいのですが。

中島 美由紀ちゃんには今回1曲、マーラーのシンフォニー5番楽章「アダージェット」っていう曲で参加していただいて。美由紀ちゃんが「この曲を何かの機会にやれたらイイな」って随分前から話してたんだよね?

畠山 言ってたね〜。この曲は『ベニスに死す』って映画の中で使われてるんですけど…、 今年の5月かな?中島さんとツアーをご一緒させていただいて、その時の編成がこのアルバムにも参加してる 中村潤さん(チェロ)と北村聡さん(バンドネオン)も一緒で。 で、「この編成だったらアレンジ出来るかも」って中島さんが仰って下さって。 じゃあ是非っていうことでライヴでやったのが最初ですね。

中島 しかもアレですよ、僕は用意周到にも「これはもしかしたら自分のアルバムに入れられるかもしれない」と思いながら(笑)。

畠山 絶対そう思ってると思った(笑)。

中島 結構曲も難しいし響きも複雑で、スタジオでせーので録れる感じではなかったから、 ライヴやリハーサルでやって曲が染み込んでこないと、っていうところがあったしね。

畠山 だからすごくイイ流れだったと思いますよね、自然な工程が組めて。 だってアレね、モチロン歌モノでは全くないから。

中島 そう、元はオーケストラの曲。色々な旋律が絡み合って出来ている曲なのでその旋律を美由紀ちゃんの歌やバンドネオン、チェロ、それからピアノに振り分けて。

畠山 メロディーのキーはストリングスと同じ高さでは歌えないので、そこをオクターブ下げたりとかっていうアレンジを中島さんがやって下さって、歌えるラインにしてもらったと。

中島 高野寛さんがね、一番最後に入ってる美由紀ちゃんの曲がすごく良かったって仰ってくれてて。 ファド的な濃厚なものがあると。

畠山 東北のこのクドい血がね(笑)。

中島 クドい血(笑)。

畠山 自分でも持て余すこの激しい血が(笑)。

中島 (笑)。でもさ、元の旋律がマーラーで“ドイツ”でしょ? で、美由紀ちゃんが観た『ベニスに死す』は“イタリア”映画じゃない? それで、美由紀ちゃんは“東北”出身。

畠山 中島さんは“群馬”。

中島 それらが混ざると…。

畠山 ファド的になる(笑)。でも、そういういろんな国とかを内包してる感じが、豊かな音楽性を感じさせる元になってるというかね。でもまさかこんな素敵な感じで出来るとはねぇ〜。バンドネオンとチェロとピアノでやるっていう発想がなかったですもんね。

中島 そうだね。それは自分の1st、2ndアルバムで作ってきたサウンドの核になる音があって、 さっき言ってた美由紀ちゃんのライヴでもその編成でいこう、っていうことがあって、だよね。

畠山 中島さんのアルバムは『エテパルマ』(1stアルバム)から聴いてるんですけど、あの編成の感じが素敵で素敵で。「これで歌えたらどんなにイイだろう」と思ってオファーしたんですけどね。

-- その1st、2ndアルバムからの流れというか、変化みたいなものは意識されましたか?

中島 それは結構難しい話で…。2枚目の『パッサカイユ』をどういう風に作ろうかと考えた時、 1枚目の『エテパルマ』と全く同じモノを作ろうと思ったの。普通、人は変化を求めるでしょ?でもあえて全く同じモノを作ろうと。そしたら当然なんだけど、全く同じモノは出来なかったのね。それはやっぱり感情の変化とか、その時の空気感とか、選曲する時の好みとか、そういうのが全部影響して違うモノになった。
で、もし3枚目を作るとしたら、もうあの世界からは1回離れて全く違うモノを…それこそフロア向けのビートのあるモノを、アコースティックな楽器とかを一切入れないでほぼ打ち込みのみ、みたいな感じで作りたいなっていうイメージだったのね。

畠山 へぇ〜。

中島 それである時、SPIRAL RECORDSの山上君(ディレクター)が「中島さん、次のアルバムを作りましょう」と話をもってきてくれて。で、いろいろアイデアを進めていくんだけど、今までの2枚の感じじゃないモノでいきたいな、っていうようなのもそれなりにあって、そういうアイデアを山上君に相談すると 「いえ、とにかくあの1stや2ndの編成・色彩でいきたいんです」ということをかなり強い意志で言われて。 「それなら、そういうのをもう1度やってみようか」と思って。
というのも、2枚目を作った時に「同じモノを作ろうと思っても違うモノになる」っていうのが何となく分かったから。だから3枚目も同じ気持ちで作っても、何か変化が生じて3枚目として自然に結実するんじゃないかと。



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     中島ノブユキ / メランコリア
    2010年10月06日発売

    1st『エテパルマ 〜夏の印象〜』(06) 、2nd『パッサカイユ』(07)の2枚のソロ・アルバムや、幾多のアーティストに提供してきたアレンジ・ワークスで、幅広いファン層はもとより音楽関係者からも高い評価を獲得。映画《人間失格》の音楽を担当した事で、更にその動向に注目が集まるピアニスト / 作編曲家、中島ノブユキの待望の3rdアルバム。多岐にわたる音楽的造詣に根ざしたオリジナル楽曲に加え、クラシック、ボサノヴァ、アイリッシュ・トラッド、オールド・スタイルなジャズなど、多彩な名曲の数々を独自の視点で取り上げ、彼の音楽に共鳴する豪華なゲスト陣(畠山美由紀、伊藤ゴロー、高田漣、北村聡など)と共に、エレガントなアレンジメントとアンサンブルにより、情感溢れる美しい世界を描き出している。
profile



中島ノブユキ [Nobuyuki Nakajima]

東京とパリで作曲法 / 管弦楽法を学ぶ。ピアニストとしては勿論の事、時に作・編曲家として多種多様な音楽的造詣に根ざしたエレガントかつスリリングなアンサンブルを構築。菊地成孔 諸作品に作/編曲、ゴンチチ、高木正勝、畠山美由紀、沖仁らの作品に編曲等で携わる。ソロアルバムとしては『エテパルマ〜夏の印象〜』(06)『パッサカイユ』(07)をEWEより発表。また2010年2月公開の映画「人間失格」の音楽を担当した。2010年8月にはタップダンサー熊谷和徳氏と東京フィルハーモニー交響楽団が共演する「REVOLUCION」へ音楽監修/編曲/ピアニストとして参加。また3年振りにして3作目のソロアルバムとなる『メランコリア』を10月6日、SPIRAL RECORDSよりリリース。

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畠山美由紀 [Miyuki Hatakeyama]

“Port of Notes”や “Double Famous”のヴォーカリストとして活躍する中、’01年、シングル「輝く月が照らす夜」でソロ・デビュー。唯一無二の透明感溢れる歌声と圧倒的な存在感は、音楽シーンの中で確固たる地位を築いている。ヴォーカリストとして、他アーティストの作品、トリビュート・アルバム、映画音楽等の参加や、ジャズアルバムの選曲も行う。‘09年、長澤まさみ主演映画「群青 青が沈んだ海の色」にて、主題歌を担当。同年6月、初のソロ・ベスト・アルバム『CHRONICLE 2001-2009』(主題歌「星が咲いたよ」収録)を発売。その後、Port of Notesの活動を本格始動。11月には、全曲NY録音、ジェシー・ハリスプロデュースによる約5年振りのオリジナル・アルバム『Luminous Halo 〜燦然と輝く光彩〜』を発売し、全国ツアーを開催する。‘10年は、畠山美由紀、Port of Notesのライブを、全国各地にてゆるやかに遂行中。