HMVインタビュー:ShinSight Trio

2010年9月16日 (木)

interview

ShinSight Trio

ShinSight Trio インタビュー
聞き手:久保(HMV 横浜VIVRE)

お互いの特徴について

--- Shin-SkiってMPCを叩いてビート作ってるってイメージ強いと思うんだよね。弾いてるとか演奏してるっての知られてないんじゃないかな。

S: そう〜。

R: Shin-Skiは特徴的な作り方するよね。もともとドラマーじゃん。だから、俺らだったらプログラムでシーケンスを組んでくというか、数値で組んでいっちゃうほうだからね。 でもShin-Skiはチッチッチッチッパパンツッパンみたいに、いちいちドラムを叩く感じで打つから、乗りが出る。ゴーストとか遊びの部分が面白いよ。 コンピューターじゃ出せない打ち方だし。よくShin-Skiが作った音に食いついてくるドラマーの人多いよ。

--- そうなんですか。

R: 「Shin-Skiさん、スゲーいいっすよね!」って。だいたい男のドラマーだけどね(笑)。

S: 全然もてへんな〜 オレ(笑)。

--- 昔からそういう作り方なの?

S: うん。むしろオレはステップの意味がわからへん(笑)。なんで数字なん?って思うねん。リアルタイムで打てるからさ、数字を使う意味がわからへん。

--- 直感タイプなんですね。

S: ギターとか鍵盤も弾けるから、そういう感覚で、今回も乗せたよね。

--- Ryowさんは、自分のアルバムで弾きなおしたりしたって言ってたじゃないですか。

R: オレはネタを使うってことをが得意じゃないの。だから、Shin-Skiの音を聞くと俺はこういうの作れないなって。作らないんじゃなくて作れないって思う。ネタを使って、ネタの恩恵を受けて作る作り方とネタをアップデートする作り方があって、Shin-Skiは後者だと思うんだよね。

--- Pete Rockみたいな。ネタがわかってて、同じネタを使うにしても、組み替えたり、使い方次第でどうにでもなりますよって人と、丸使いする人とタイプが分かれますよね・・・。

R: 丸使いしてもさ、ネタのテンポだったり早いネタをゆっくり加工するスキルは凄い。BPMをそのままで使いましたとかタイムストレッチで伸ばしたとかじゃないからさ。 元ネタは何かわかるんだけど、なんでこのテンポでこのグルーヴで走ってるんだろうとか、そういうところがこの人は凄い。

--- そういうのって、作り手じゃないとわかりませんよねぇ。

R: 思ったより手間かかってますよって(笑)。

S: そうそう。見えない努力(笑)。

R: ホントはシレーってやっておきたいところだけどね。そこまで器がでかくないって(笑)。

S: もっと見て!

(一同笑)

S: でも、RyowくんはオレからみるとPremier感覚に近いよ。切って切って、それを組み替えて。オレは逆にできへんって。出来ないこともないけど、出来上がったもんに対して親しみを感じないっていうか。Premierのビート自体は死ぬほど好きやけど、オレはああは絶対ならへんと思うし。細かい打ち方とか、ああいうチョップ系って切った時のサンプルの音の長さとかでグルーヴが変わるじゃん。そういう感覚がオレには無いのかも。

--- ドラマーだからですからね。

R: Insightとかは、上手だよね。絶対あのネタでしょってのを、物凄い切り方してくるんだけど、乱暴っていうかアグレッシブな感じが真似できないんだよね。

--- それはアメリカ人と日本人の違いですか?

S: そういうモンでもないと思う。自分がどんな音楽を聴いてきたかとか、どんなことをしてきたかで大きく違ってくるし、どんな機材使っているかでも違うし。

--- ShinSight TrioでRyowさんは自分のことをスパイスって言いますよね。

R: それ言うとShin-Skiが怒るんだよね。「オレらは3人でトライアングルやねーん!」って(笑)。

S: 違うねん!みんな、均一、並列じゃないとあかんねんって思ってるからオレは。作業分担的に言えばさ、格差が出るってのはわかってるんやけど、作業云々ていうんじゃなくて、気持ちとかスタンスとしてね。常に並列でいないとダメやねんて。

R: でもさ、オケがあってヴォーカルがあってさ、Shin-Skiが担当してるのって作曲、Sightが担当してるのって作詞でしょ?オレはそこがないと動けないからさ。 どちらかというと後ろでどっしり見守ってる、野球で言うとキャッチャー的な役割だと思ってるんだよね。 2人が作ってきたものをオレは膨らますよって感覚で見ているから。一人で作るとさ、オケもやんなきゃいけない、ヴォーカルもキャストも考えなきゃいけない、Sightだったら歌も入れなくちゃいけないって。しかもコスリも。 色々作ってディレクションしなくちゃいけないしね。

--- 自分の作業が増えますよね。

R: それを流れ作業みたいな、お互いの作業に専念できるからさ。それぞれの仕事が10だけ必要だとしても、各々が10以上のものを出せるんだよね。

--- Insightは最近活動してないですよね。

S: もう6年くらい出してないんちゃう?

R: もう海外でもやってないのかな。

S: いや、やってんねんけど、出してないんちゃうかな。俺ん家、いーっぱいあるよ、Sightの新曲(笑)。

(一同笑)

S: オレ、アルバムできるんちゃうかなって思うんやけどさ(笑)。KRSとやってるのもあるしさ。

R: でも、ライブは結構やってるよね。

S: ヨーロッパは強いみたいね。フランスとかドイツとかでライブやってる。作品出せばいいのにね。びっくりするくらいうちにあるよ。アルバム2枚くらい。その他にもiPodとかにも作りかけの曲もいっぱいあるし(笑)。

R: いいラッパーだよね。

--- 声質がラップ向きっていうか。

R: すごいよね。素で勝負できるよね。変にいじってないし、ナチュラルでリリカルなしっかりしたスキルも持ってるし、スタンダードでかっこいいね。

ユニットについて

R: まあ最初から関係性作れてきたのが良かったよね。お互いの出会いもそうだし。その後のそれぞれの作品に関してもさ。 レーベルさんはじめ全力で取り組んでくれてね。最近はドライなレーベルさんも増えてきたけど、関係性がドライじゃないっていうか。

--- それってユニットをやる上一番大切ですよね。

S:ユニットっていうよりさ・・・友達なんやと思う!

R: うわ〜、、、言っちゃったよ(笑)!

--- ShinSightフレンズ(笑)

S:いや、ほんまそんな感じなんやもん。グループというのもおこがましいっていうかさ(笑)。

R: そうね。確かにバンドとかも最初は友達っていうのも多いだろうからね。ShinSightもそういう感覚に近いのかも。

--- でも海外のアーティストと国境越えたチームってなかなかないじゃないですか。

R: ヴォーカル・・・フロントマンがいると楽しいよね。

--- お2人の場合、ソロでアルバム作るときって、フロントマンっていうかアーティストを招聘しなくちゃいけないじゃないですか。自分も前に出なくちゃいけないし。 でもShinSightは、それぞれが自分のペースで出来てるじゃないですか。その辺はうまいバランスが取れてますよね。

S: まあそうやね。

--- 友達ですからね(笑)。

S: 友達ってことで、音楽だけじゃなくてさ、日々の生活とかもさ、ある程度共通項を持って接してたりるやんか。そういういのが結果的に音楽に反映されてればさ、それってすごいいいことだと思うんだよね。それを全面に押し出すわけじゃないけど、そういうところから出てくる安定感とか信頼感とかさ、そういうのが礎になってShinSightの音楽てのは成り立ってるのかなってね。

今のシーンについて

--- 2人から見て、今のシーン、アンダーグラウンドってどう思う?

S: オレ、全然知らんもん。

R: Shin-Skiはいったんヒップホップから離れたもんね。

S: 聴いてへんから。DJとして呼ばれるのもハウスとかテクノが多いし。

--- まれな存在ですよね。トラックメイカーとしては両方作るけど、DJとしてはもっぱら四つ打ちって。だから、そういう立場でどう思ってるのかなーって

S: これかっこいいよって教えてもらって聴くのも昔の作品だったりするしさ。逆に、最近、ある?Jay Z聴いたりとかはするけどさ、アンダーグラウンドで。俺、Ryowくんの『Scenes from Life』。あれ以来聴いてない(笑)。あとボノボ、良かった。

--- でもボノボはヒップホップじゃないじゃん(笑)。

S: 一時期、凄い量の作品が出たやん。飽和状態になっちゃったじゃん。良し悪しの区別すら出きなくなっちゃったよね。派手かとそうじゃないかとか、綺麗かそうじゃないかって基準でさ。こういうのが売れるんでこういうの出しましょうってなって。で、結果飽和状態になって客足が遠のいて売れなくなったら、このジャンルあかんからもうやめましょうって。

R: オレさ、去年アルバム(『Maintain The Focus』)出したじゃん。あの時さ、結構大きい店舗のバイヤーさんに、「すごくカッコイイですね。本物だと思うんですけど、もっとライトなのが欲しいんですよね。リスナーにアピールするには、本物過ぎますね。」って割とバッサリ言われたのがショックだったのね。自分では、それは違うって思う部分と、確かにわかるなって部分とで揺れたりしたんだけどね。 結局ぶれない方向で行っちゃったけど、そこで悩んでいるアーティストも多いのかなって・・・。ただ、それでセールスが伴えば、その人の気持ちの部分はわからないけど、戦略勝ちっていうのもあるだろうしね。 そっちを選んだ人だって、自分達にしかわからない苦しみもあるだろうし・・・。

S: BGM的な感覚になっちゃたんかな。俺たちはBGMをやりたいわけじゃないからなあ。

--- ではそろそろ締めで、最後にリスナーにメッセージを。

S: これを聴くことによってさ、テンションがあがったりさ、気分が良くなったりさ、それで日々の潤滑油になってくれれば、それが一番だと思います。楽しんで聴いててくれればいいなって。

R: 俺が言うのもおこがましい事かもだけど、音楽が出来上がるまでの過程って、リスナーの人たちとか、サポートしてくれているレーベルさんとか、バイヤーさんとか、色んな人達がいなければ成り立たないと思うんだよね。そういう部分も含めて、みんな でやってる意識があるから、そこも踏まえての「One For All、All For One」っていうか。 自分たちはたまたま音楽をやっているだけで、会社員、ブルワーク、デスクワークだったり、いろんな仕事をしている人がいるけど、その中のひとつの職業として俺らがあると。何も変わらないから等身大で聴いて欲しい。同じ人間で、こういうことやっているってやつもいますよっていうことで、少しでも元気をもらってくれれば嬉しいかな。 こいつらもこんなに楽しそうにやってるんだから、俺らもがんばろう、みたいな。何より肩の力を抜いてリラックスして聴いて欲しいね。

--- フィルターをかけないで聴いて欲しいですね。

S: ただの、いち音楽として楽しんでください。

R: 今のいいコメントじゃない?

S: 超良かったよね。

(一同笑)

新譜Where's There A Moon That Is Mine
世界が嫉妬する圧倒的なサウンド。新世代アーバン・ヒップホップの到来! Shin-Ski、Insight、DJ RYOW a.k.a. smooth current、国境を超えた最強ヒップホップ・グループShinSight Trio。 2006年に発売大ヒットを記録し、数々のレコード会社からコンピレーションCDへの収録依頼が殺到した「Early Dayz Amazement」をはじめ多くの名曲を世に放った傑作1stアルバム(現在もiTunesのヒップホップ・アルバムチャートにランクイン中!)から、4年ぶりネクストステージへ昇華した2ndアルバム遂に解禁!!