本年度最高の話題作

2010年4月6日 (火)

孤高のピアニスト、K・ジャレットが、盟友C・ヘイデンを自宅に招いて行ったパーソナルな録音が、作品として日の目を見る。

二人の共演は、キースが1966年に結成した最初のトリオでの『Life Between The Exit Signs』までさかのぼります。その後も『Somewhere Before』『Mourning Of A Star』、デューイ・レッドマンが合流した、キースの通称アメリカン・カルテットによる『El Juicio』『Birth』『Expectations』『Fort Yawuh』『Treasure Island』『Death And The Flower』『Backhand』『Mysteries』『Arbour Zena』『Shades』『Survivors' Suite』『Eyes Of The Heart』『Bop-Be』『Silence』『Byablue』、そしてヘイデンの『Closeness』でのデュオなど、1976年までの10年の間に数多くの作品を残しました。

アメリカン・カルテットが解散してからは、二人はそれぞれ別の道を歩み、キースはヨーロピアン・カルテットやピアノソロ、スタンダーズと、次々と新境地を切り開きシーンをリードしてきました。一方のヘイデンは、古き良き時代のアメリカとジャズへの憧憬を込めたカルテット・ウエストや、エグベルト・ジスモンチ、パット・メセニー、ケニー・バロンなどの大物とのデュオなどで、かつてのトンがったイメージから脱却し、円熟味を増した風格溢れる演奏でジャズ・ファンを魅了しています。

このように、両者はそれぞれの活動を通じて数多くのすばらしい作品を残してきました。そしてジャズ・ジャイアンツとの「伝説」も経験したキースとヘイデンは、巨匠の域に至るとともに、独自の世界の創造に邁進し、その後再び一緒に演奏することはありませんでした。

再会の機会が訪れたのは2007年1月、ヘイデンのドキュメンタリー映画によせてキースがコメントを求められたときのことでした。この依頼を通して3月にはキースがヘイデンを自宅に泊まらないかと招待し、その時彼らはまるで必然のように何度か演奏を共にして、キースの自宅スタジオにてレコーディングを行いました。

そのレコーディングから3年を経て、キースとヘイデンがようやくリリースする準備ができたと宣言。選曲にあたり熟考に熟考を重ねたという各収録曲は、古いスタンダード・ナンバーが中心で、非常にインティメイトな雰囲気を湛えた、優しさ溢れる演奏が、ダイレクトに心に響きます。そして、大きな時代のうねりの中にあっても、永遠に変わらないものがある。その素晴らしさを今一度見つめ直そうと云う、シンプルで強いメッセージを含んだものとなっています。

本年度最高の話題作となるであろう至高のデュオ・アルバム。31年ぶりという時間の流れが嘘のように感じるほど、自然な会話のように紡がれたラヴ・ソング集は、キースの65歳の誕生日(5月8日)にあわせてリリースされます。

収録曲

  • 1. フォー・オール・ウィ・ノウ
  • (For All We Know - J. Fred Coots / Samuel M. Lewis)
  • 2. ホエア・キャン・アイ・ゴー・ウィズアウト・ユー
  • (Where Can I Go Without You - Peggy Lee / Victor Young)
  • 3. 月とてもなく
  • (No Moon At All - Redd Evans / David A. Mann)
  • 4. ワン・デイ・アイル・フライ・アウェイ
  • (One Day I'll Fly Away - Joe Sample / Will Jennings)
  • 5. イントロ/アイム・ゴナ・ラフ・ユー・ライト・アウト・オブ・マイ・ライフ
  • (Intro - Keith Jarrett, I'm Gonna Laugh You Right Out Of My Life - Cy Coleman / Joseph McCarthy)
  • 6. 身も心も
  • (Body And Soul - Johnny Green/ Edward Heyman/ Frank Eyton/ Robert Sour)
  • 7. グッドバイ
  • (Goodbye - Gordon Jenkins)
  • 8. 離さないで
  • (Don't Ever Leave Me - Jerome Kern / Oscar Hammerstein II)

ジャスミンに寄せて 〜キース・ジャレット

音楽は本当に素晴らしいものだ。静止物として存在するものではない。リアル・タイムで動き、演奏する側にとっても聴く側にとっても気持ちを高揚させることもできる。溶けてしまうような、比喩を超越した瞬間、一瞬だけの、全て揃っている感覚、演奏者としての私たちを乗り越えていくような幸福が(私たちが演奏家としてそこまで到達できるほどの能力があれば、だが)次の満ち満ちた瞬間に導いてくれ、常にその翼には、この満たされた気持ちを感じ、祝うことのできる機会が秘められているということを知った上での忍耐を抱きながら望むのだ(これこそ芸術が誕生する本来の方法であるがゆえに)。これこそ、我々が自らの生活を捧げている対象なのだ。

しかしながら、これは我々だけのものではなく、リスナーである皆さんのためにも作られたものだ。我々と共に同じ気持ちを感じて貰い、参加して貰い、そしてそれによって高揚感をも味わって貰いたいのだ。この世界に玩具や特殊効果が溢れていくに従い、この世界の芸術は死に絶えつつあり、同じように聴くという行為そのものも死につつある。この死に伴い、美、優しさ、深み、信頼、真実、哀しみなど、人間の心にとって大きな意味を持ち、彩りで満たすような、さまざまな感情を経験する可能性が消し去られていくに違いない。

親密さを求めるには必ずしも物理的なものが必要ではなくなるかもしれない。愛情を見出すことをも難しくなるだろう。コミュニケーションは失われてしまうだろう。さあ、この音楽は貴方の為のものだ。どうぞ、是非とも手にとって持ち帰っていただきたい、これは貴方のものなのだから。チャーリーと私は美の虜だ。音楽で恍惚を味わえる瞬間には、そこに到達するにあたって、音楽を一生かけてマスターする価値があることを意味する。なぜならそれは共感できるものだからだ。

このアルバムのレコーディングは私の小さなスタジオで行われた。とてもドライなサウンドだが、我々が演奏していたときとまったく同じ音にしたかったからだ。だからこそ一直線のストレートな作品だ。私は、ベスト・コンディションとはいえないアメリカ製スタインウェイを使ったが、実はこの楽器とは特別なつながりを感じており、この音楽とはその余りフォーマルではなく、どちらかというとファンキーな感じが合うのではないかと思っていた。

これくらい良質の曲を揃えると、必然的にすぐに曲に没頭してしまうものだ。本当の意味でのリハーサルというものは行わなかったが、必要なときにはコードをさらった。このセッションは、チャーリーの映画の為のインタビューをし、その後に何曲かを共に演奏した結果生まれたものだった。私たちは30年以上一緒に演奏をしたことがなかったのだが、まるで魔法のようなことが起こった。

その後、チャーリーと彼の奥さんを自宅に招待し、駄目もとで(サウンドも含め)2、3日間演奏しようかと思った。我々はこれらのテープと共に3年に近い間暮らし、それについて話し合い、選択について議論したが、この作品を組み立てるにあたり、やはりチャーリーが最も優秀で繊細な助手だということに気づいた。

私は出来上がったものの本質を蒸留したいと思っていただけで、(中には本当に素晴らしいものがあったが)カッコいいソロや違う路線で曲を演奏してしまわないようにしていくにあたって随分時間がかかった。長すぎる曲もあれば、オリジナルから相当ずれてしまった曲もあった。

チャーリーと私は本当に何度も、何度も(大抵は深夜に)これを聴き直していくうちに、その中にはほかの曲よりもよりマジカルで、本来の完全性を保ちながらも、その場のムードに身をゆだねる瞬間が多くある曲があると気づいた。これこそ私が求めていたものだった。それが故に正しい曲順を模索しなければならない、多分誰も羨ましいと思わないであろう作業を請け負うこととなってしまった。

これだ、と思ったときにチャーリーから電話があり、「どうやってこれを導き出したんだ?」と尋ねられた。それに対しては確か、順序はこうあるべきだという理屈は全く意味を持たなかったので、「何も考えない」モードに入ったときにこれらの最高のカバー曲にとって完璧な曲順が思い浮かんだ(こういうことをバラしてしまったらマズイのかもしれないが)と答えたと思う。

皆さんの多くがこのアルバムを上質のサウンド・システムで聴いてくれることを願っている。本当に多くの細かいニュアンスとディテールがこの音楽をこの音楽たらしめている。ジャスミンは夜に花開く、美しい香りを漂わせる花だからこそ、この作品に注がれた努力を聴きとって欲しいと思う。なぜなら、これが死に絶えてしまうまでこれをリハーサルすることほど心に響くものはないからだ。

何の準備もなく、その場で自然に生まれたこの音楽は、本物か偽者かのどちらかという、我々がほかのものに決して変えることを認めないだろう、我々の人生をかけた尽力を記録するものだ。現実の人生か、アニメかのいずれかなのだ。

夜更けにあなたの妻や夫、あるいは恋人を電話で呼び出して、一緒に座って耳を傾けてほしい。これらは、曲のメッセージをできるだけそのままの形で伝えようとするミュージシャンたちが演奏する偉大なラヴ・ソングだ。私たちが耳にした形で皆さんの耳にも聞こえることを願っている。

公演情報

キース・ジャレット・トリオ「ジャパン・ツアー2010」開催決定

<東京公演>
2010年9月23日(木・祝)/9月29日(水)/10月3日(日)
開場:18:00/開演:19:00
会場:Bunkamuraオーチャードホール

<神戸公演>
2010年9月26日(日)
開場:18:15/開演:19:00
会場:神戸国際会館

<横浜公演>
2010年10月1日(金)
開場:18:00/開演:19:00
会場:神奈川県民ホール
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ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。

輸入盤

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ユーザー評価 : 4.5点 (9件のレビュー) ★★★★★

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発売日:2010年05月07日
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発売日:2010年05月05日

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