HMVインタビュー:J.Rocc

2010年2月12日 (金)

interview

J Rocc

何でもアリっていうこと。それはJ・ディラから学んだことなんだ。何のルールにも捕らわれちゃいけない。エフェクトをかけながらサンプリングしたっていいし、ビートを作るときに、欲しい音を作るために何をやったっていいんだ。

--- 初めて『Secondhand Sureshots』のアイデアについて聞いたときはどう思いました?

何だコリャ?って思ったね(笑)。でもフロスティやダブラブは前から知っていて、あいつらはいつも時代の先を行っているし、ネクスト・レベルなことを考えてる連中なんだ。みんなよりずば抜けたアイデアをもってる連中なんだ。「また変わったアイデアを言ってるな」って思ったけど、俺はいつもダブラブをサポートしているから、すぐに快諾したよ。どういうものになるか全く予想できなかったけど、彼らにアイデアを聞いて、すぐに参加を決めたよ(笑)。

--- スリフトストアでレコードを探すのはどんな感じでした?

ダブラブの連中と楽しみながらレコードを探している感じだった。ダブラブのラジオ・ショーに誘われるときもいつもDJしているから、そのノリで参加したんだ。フロスティたちが、バーバラ・ストライサンドのレコードが何枚出てくるか探そうというアイデアを出していたから、そういうレコードを探すのも楽しかったよ。最終的に俺はバーバラ・ストライサンドのレコードを1枚買ってみたんだ。

--- バーバラ・ストライサンドのレコードを買ったのは初めてだった?

初めてかな?いや、恥ずかしいけど、ドナ・サマーとバーバラ・ストライサンドの7インチを持ってるよ(笑)。確か「Enough Is Enough」というヒット曲を二人で出したんだけど、子供の頃に買ったんだ。

--- あなたが『Secondhand Sureshots』で作った曲は素晴らしかったですが、あの曲はどうやって生まれたのでしょうか?

まずバーバラ・ストライサンドのレコードから上モノのサンプルを見つけて、その後はドラムを見つけて重ねたんだ。その後に、更に別の音を見つけて追加していったんだ。最初はメインのループを見つけてから、5枚のレコードの中からドラムの音色をいくつか探して、サンプラーの中でドラム・キットを作った。他にいくつかのノイズやキーボード音を見つけて、重ねていったんだ。試行錯誤しながら作っていく感じだったよ。上モノは、バーバラ・ストライサンドのレコードをチョップして使ってるだけなんだ(笑)。

--- 普段サンプリングでトラック作りをするときは何を意識していますか?

何でもアリっていうこと。それはJ・ディラから学んだことなんだ。何のルールにも捕らわれちゃいけない。エフェクトをかけながらサンプリングしたっていいし、ビートを作るときに、欲しい音を作るために何をやったっていいんだ。CDJのループを使ったっていいし、Seratoからループをとったっていいし、何を使ったっていいんだ。自分の目の前にある道具は、レコードを含め何を使ったっていい。

---ルールがないっていうことですね。

そう、ノールールなんだよ。最近のビートメイカーだったみんなそうさ。フライング・ロータスとかガスランプ・キラーのトラックを聴いていると、本当にルールがないっていうことを思い知らされるよ。音楽にはルールなんてないんだ。優れた音楽というのは、ルールがないところから生まれるんだ。

---レコードとの出会いについてはどういう思い入れがありますか?

全部がディギングの一部なんだ。ジャケに惹かれて買うこともあれば、何年に制作されたレコードかをチェックしてから買うこともある。言葉で説明するのは難しいよ。DJだったり、長年レコードを集める人であれば、パッとレコードを見たときにしっくりくることがあるんだ。でも、ジャケだけでジャッジできないんだ。買ってみないと分からないんだ。実験してみることが大切なんだよ。俺は普段、『Secondhand Sureshots』の中で登場するバーバラ・ストライサンドのレコードやジーン・アンド・ケリーのレコードは買わない(笑)。通常のディギングのときは、そういうレコードは買わないんだ。このプロジェクトのために特別に買ったんだ。通常もジャケ買いすることはあるけど、『Secondhand Sureshots』の方が遊び感覚だったね。通常掘ってるときは買わないような、くだらないレコードをあえて買ってみたんだ。

---今年J・ロック名義のアルバムも出すんですよね?

そうアルバムはもう完成していて、アートワークを待っている状態なんだ。全部インストの作品なんだ。バブーのソロ・アルバムではラッパーがたくさんフィーチャーされていて、俺も同時期にアルバムを制作していたんだ。彼が使ったラッパーが全部俺の友達でもあるから、俺がラッパーを参加させるとしたら、メンバーが丸かぶりになるところだったんだ。だからインストにすることにした。俺のアルバムも中古セクションに置かれるかもね(笑)。長年シャドウやカット・ケミストのようなトリップホップとかインストのヒップホップを聴いていたし、大好きだったんだ。俺のDJプレイのスタイルも、色々なジャンルの曲をミックスしているから、そういうアルバムになる。ディスコ、ブレイク、ハウスとかを混ぜた、J・ロックのDJセットみたいなアルバムさ。

---改めて、最後に『Secondhand Sureshots』についてのコメントをお願いします。

これはLAから生まれた画期的なプロジェクトさ。他にこういう映画はないよ。あまりにも奇抜な作品だから、コメントできないくらいだよ(笑)。様々なリサイクルの要素から成り立ったプロジェクトなんだ。デラックス盤のジャケだって、中古レコードを再利用してる。このプロジェクトでは、色々な要素がありすぎて、一つのコメントではまとめられないよ。それが俺のコメントさ(笑)。

profile

DAEDELUS
ビクトリア調の衣装にもみ上げ、そして縦横に点滅するインターフェースmonomeを操る姿で有名なデイデラスは、Ninja Tune、Warp、Soul Jazz、Stones Throw、など著名なレーベルからのリリースでワールドワイドな人気を誇るLAを代表するプロデューサー。

NOBODY
マーズ・ヴォルタやプレフューズ73のツアー・メンバーとしても活躍するノーバディは、サイケデリック・ロックとヒップホップを見事に融合。ボーカリストのニッキー・ランダをフィーチャーしたブランク・ブルー名義のアルバム『Western Water Music Vol.II』も評判となった。

J.ROCC
伝説のターンテーブリスト・グループ、ビート・ジャンキーズの創立メンバーであり、その後、マッドリブやビルド・アン・アーク、KEEPINTIMEなどのプロジェクトに参加して、DJのみならずプロデューサーとしても活躍し、LAシーンのキーパーソンの一人となっている。

RAS G
ダブやジャズも飲み込んだスモーキーなビートと、コズミックな世界観で、ユニークなサウンドを作り上げ、日本でも人気の高まっているプロデューサー。Low End Theoryにも幾度も出演し、ガスランプ・キラーやフライング・ロータスらとBrainfeederの一員としても活動。