HMVインタビュー:daisuke tanabe

2010年1月15日 (金)

interview

daisuke tanabe

初期のWARP勢、特にエイフェックス・ツインには大きな衝撃を受けました。彼のように、リリースの度にオーディエンスを裏切りつつ、自分の色を提示していく事に成功しているアーティストには、大きな影響を受け続けています。

--- 海外のリリースが多く、逆輸入されたイメージがありますが、これまでの活動について教えていただけますか?

制作自体は非常に長く続けていますが、元々は作品をオーディエンスに向けて発信していくという意識があまりありませんでした。はじめのうちは、非常にパーソナルで自己完結型のものでした。  それが変化してきたのは、ロンドンでアッティカ・ブルースのトニー・ンワチュクゥが主催するオーディエンス参加型イベント<CDR>に足を運ぶようになってからです。そこで初めて、作品を人に聞かせる事に意識を向け始めました。  最初のリリースはこの<CDR>からのコンピレーションで、その後、ニンジャ・チューンなどでのリリースで知られるゼロDB主宰の<フルーイド・オンス>からシングルをリリースしました。その後も数多くのリミックス・ワークや<ダンシング・タートル>、ドイツの<KI>等、様々なレーベルからリリースをしています。

--- これまでにジャイルス・ピーターソンからの熱烈なサポートを受けていましたが、彼とはどのように繋がったのですか?

先ほどお話ししたフルーイド・オンスからのシングルが、ジャイルスのラジオ番組<BBC Radio 1 Gilles Peterson Worldwide>で2006 All Winnersに選出されたんです。それから、彼のレーベルでのリミックスや、同番組でのミックス等を依頼されました。

--- アーロン・ジェロームにも相当評価されているようですね?

彼もまた<CDR>の参加者であり、以前から僕の曲を聴いてくれていたアーティストの一人です。そういった意味で僕の音楽の変化をリアルタイムに聞いていてくれたアーティストであり、それが今の評価に繋がっているのではないかと思います。

--- デビュー間もなくしてそれほどまでに海外で評価されてきた理由は何だと思いますか?

やはり「CDR」に可能な限り通い続け、様々なアーティストや多くのオーディエンスに音楽を聴き続けてもらう事により、自分の楽曲スタイルをリリース前から理解してもらっていた事が海外での評価に繋がったと思っています。

--- 海外のアーティストにはない、とても日本人らしいエレクトロニカであると同時に、コミカルでファニーな明るさがあると感じます。ご自身では自分の音楽をどのように感じていますか?

コミカルな部分というのは自分にとってはアイロニーなのだと思います。ただ、それがすべてのケースにおいて言える事ではないと思っています。また、ある種の郷愁感というものは意識しているとは思います。

--- 素晴らしい音響感ですが、気取るところがなく、とても親しみやすく聴きやすいです。音楽制作ではどのようなことを目指しているのですか?

耳障りが良いという意味で、自分なりのポップな部分というものを盛り込むようにしています。そうする事でより幅広い年齢層、ジャンルを超えたオーディエンスに自分の音楽を聴いてもらえれば嬉しいです。

--- タナベさんの音楽は、ボーズ・オブ・カナダやエイフェックス・ツインといったWARP系のアーティストやフォーテットなどに例えられていますが、どのような音楽に影響を受けてきましたか?

初期のWARP勢、特にエイフェックス・ツインには大きな衝撃を受けました。彼のように、リリースの度にオーディエンスを裏切りつつ、自分の色を提示していく事に成功しているアーティストには、大きな影響を受け続けています。また、民族音楽やノイズ、クラシック等、様々なジャンルの中から自分の好きなエッセンスを選び取って聞く事で、どのような音楽からも影響を受けています。

--- それらと違う自分らしさはどういうところにあると思いますか?

明確にはわかりません。ただ同じ行動をしても人が違えば他者に与える印象が違ってくるのと同様に、音楽も同じものを作ろうとしても作者が違えばそこには違いが生じてくるものだと思っています。

--- デビュー・アルバムにしていきなりMONDAY満ちるさんが参加していますね。どのようにして実現したのですか?

以前ニューヨーク在住のアーティスト、イエローテイルのリミックスをしたんですが、その曲にヴォーカルで参加していたのがMONDAY満ちるさんでした。またそのリミックスを非常に気に入ってくれたのがきっかけで今回の参加が実現しました。

--- 電話の音やタイプライター、咳きこむ様子など、アルバムでは様々な日常の音がモチーフになっています。こうした音を多用するのにはなにか理由があるのですか?

誰もが聞き覚えのある音を使う事により、楽曲に現実感を持たせるという意味で使用する事もあります。また、そういった日常の音を切り取りループをさせる事で その音にリズム感が生まれてくる。そういった面白みが好きなんだと思います。

---2月には飲料メーカーのレッドブルがロンドンにて主催する音楽学校に招待されているそうですね? フライング・ロータスなども卒業生とのことですが、この学校について少し教えていただけませんか?

様々な国から選ばれたアーティストが共に音楽を作り、お互いの可能性を引き出し合う。そういう場所であると思っていますが、参加前なので想像でしかないですね。色々な場所でのライブも準備されているようで非常に楽しみです

--- アカデミーではどのようなことを期待していますか?

自分の音楽が、海外のオーディエンスに対してどのように届くのか。また多くのアーティストとのコラボレーションによって自分の音楽がどのように変化し、広がりを見せるのか、非常に楽しみなところです。

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