Quiet Corner クワイエット・コーナー Vol.4

Quiet Corner クワイエット・コーナー

毎日コーヒーを淹れ、そして時々森へ行くように
〜ヘニング・シュミートのピアノ

今、私が音楽を聴く時間のほとんどは自分の店(小さな喫茶店)にいる時。その日の天気や空気なんかを感じて勝手な好みで店に音を流す。一日と同じ日がないように、その時の音はその時だけの音だな、と思いながら。ドイツのピアニスト、ヘニング・シュミートの『Spazieren』を初めて聴いたのは真夏のように暑かった9月の朝。ピアノの音が流れた瞬間、これから始まる一日が静かで優しい光に満ちているような気がした。ありがとう、と思った。蒸した日、どしゃ降りの日、晩秋のような日にも聴いた。どの日にもやはり光を感じた。すっとした一筋だったり暖かかったり様々な形の光。家ではどうだろうかと思って聴いた。台所にいるとき、椅子に座ってぼんやりしているとき。曲間にある無音を感じて思ったのは、「時」が愛おしいということ。「時」を眺められること。ヘニング・シュミートは毎日の普通の空を見上げたり、ため息をついたりする愛すべき今の時を大切にしている人なのだろう。それは彼の『Klavierraum』や『wolken』を聴いても感じたこと。ふと目の前に現れる美しい瞬間に気づけたことは「flau」の作品を聴くようになって起きたラッキーな出来事のうちのひとつかもしれない。冬、ベルリンで録音された『Spazieren』は、私の住む盛岡の寒すぎる冬にもきっと似合うと思っている。
文●加賀谷奈穂美(carta)
http://carta.blog.shinobi.jp/
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