HDM (HMV × DESTINATION MAGAZINE) 【Vol.7】

HDM 〜 HD SELECTION

JAMES BLAKE


驚くべきは、その進化の速度


2009 年に Jack Dunning の「Hemlock Recordings」から 『Air & Lack Thereof』 でデビュー。その当時の作品を聴き返してみると、既存の「ダブステップ」と言うジャンルの概念に囚われていた 1 人の青年は、世界を陵駕するその才能を押し殺していたかの様にも思える。翌年には名門「R&S Records」から 『CMYK EP』 をリリース。後に確立されるであろう唯一無二のスタイル、その基盤を垣間見る事の出来る楽曲 "Postpone" もまだ序の口だ。「BBC Sound of 2011」の 2 位に選出、アルバム『James Blake』の大成功、誰もが James Blake を賞賛した。音数は極端に少ないながらもアタック強めで突き刺さる。エフェクトを効果的に多用し、左右に振り分けられたヴォーカルに脳は揺さぶり続けられ、日を追う毎に注目は高まり、その存在はエイフェックス・ツインにまで辿り着こうとしていた。しかしどこか取り残されたような孤独感と、満ち足りない空虚感で私は熱狂出来なかった。僻んでいる訳じゃない。実際過大評価だと言う者も多かった筈だ。かつて、我が永遠のマスター "DJ Shuffulemaster" こと金森氏は雑誌のインタビューで言っていた。「隙間が大事。隙間が多くなれば多くなる程、難しくなる」と。音数の問題は彼の未熟さを少なからず露呈していたのだと、私は思った。

そして青年は約 2 年の期間に世界中を回り、真の「怪物」になっていた。小細工せず圧倒的に飛躍した歌唱力、意図的かと思わせぶりだったチープなシンセサウンドは消え失せ、叙情的なコードを次々と奏でる。Flying Lotus が『Los Angeles』の後にリリースした『Cosmogramma』で聴かせてくれた「アーティストとしての進化」を感じずにはいられない。前作が彼の中で「静」ならば、本作品は「動」。ブライアン・イーノとの共作 "Digital Lion" は楽曲構成も多彩で壮大な世界観が広がり、先行シングル "Retrograde" と共に今回のアルバムの方向性を指し示す極めて重要な楽曲だ。

24 歳の青年がこれ程までの「世界」に到達し急速に成長を遂げる中、さらにその「次」を空想しながら本作品に芯から浸ります。

文 ● 小澤 祐介(HMV ららぽーと豊洲)

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