ACT25周年記念作品 リッチー・バイラーク×グレゴール・ヒューブナー2012年NYバードランド・ライヴが初登場

2017年5月23日に70歳を迎えるリッチー・バイラーク、かたや同日に50歳を迎えるグレゴール・ヒューブナー。20年来の共演歴をもつ2人とその朋友たちとのNYバードランド・ライヴ。2人の必然ともいえる楽曲と名曲「Elm」を収録した、ACT設立25周年記念アルバム。

1947年5月23日NY生まれ、70年代から詩的かつプログレッシヴな演奏で独自の音楽世界を築きあげてきたピアニスト、リッチー・バイラーク。そして、ちょうど20年後の1967年5月23日にシュトゥットガルトで生まれ、NYをベースに活躍するヴァイオリン奏者グレゴール・ヒューブナー。

2人はNYとヨーロッパと異なる地に生まれていますが、ルーツは双方とも東ヨーロッパ。また、まったく別々の道をたどるも、マンハッタン・スクール・オブ・ミュージックで同じLudmilla Uhlelaに師事し、クラシックのコンポジションを習得。それはもはや偶然ではなく運命といえるものかもしれません。

初めて共演したのは1996年で、20年以上の共演歴。90年代後半から2人は、お互いがルーツとするクラシック音楽とNYのポスト・バップの融合を図った『Round About Bartok』、『Round About Federico Mompou』、『Round About Monteverdi』という画期的な3作品をリリース。

ヒューブナー曰く「リッチーは、”1996年にNYのアパートの一室で初めて一緒に演奏した本当に最初の瞬間から変わらない感覚で今も演奏出来る”と語るんだ。もちろん私たちは信じられないくらい音楽的なものを発展させてきたと感じているけれど、私自身もリッチーと同感だ。私たちの魂と音楽に対する気持ちは最初の時からすでに確固たるものがあったのだろう」。当の2人が語るのですから、それは紛れもない真実の感覚でしょう。




本作は、そんな2人の演奏が理想的な形で録音されて作品化されたもの。共有するルーツを核にして、バルトークにインスパイアされた2人のオリジナル（M2）あり、バッハの「シシリアーナ」をアレンジした演奏（M3）あり、それらを即興によって、ジャズと確固としてコネクトしていくのがこのコンビ。

ジョージ・ムラーツとビリー・ハートといったリッチー・バイラークの数々の演奏を長年支えてきたリズムセクションにランディ・ブレッカーを迎えたクインテット演奏は、詩的、かつ鋭角的な即興の絡みをもって展開されていきます。

いわずと知れた名スタンダードナンバー「You Don't Know What Love Is」やラストの「Transition」には、コルトレーンが60年代に切り拓いた演奏を引き継いだアーティストの気概も感じさせられます。

さらには美しき名曲「Elm」。リッチー・バイラークのECM作品のタイトルともなったこの名曲の静謐感、また明暗のコントラストが微妙に交錯するメロディには、旋律を覚えてもなお毎回新鮮さとカタルシスがもたらされますが、この日の演奏はまた格別。熱い情感がこもったヴァイオリンソロとピアノの対話あり、一音一音確かめるような慈しみにも満ちたピアノソロあり、その演奏に込められたパッションは最高にドラマティック。

録音は2012年。70歳を迎えたリッチー、50歳を迎えたヒューブナー、25歳を迎えたACTレーベル。それぞれのアニヴァーサリーにふさわしい作品となりました。

リッチー・バイラークは、年齢を経ても妥協なく、ある意味頑固なまでに自らの音楽を貫いているアーティスト。今後もその演奏を聴かせ続けてほしいものです。

収録曲

01． You Don't Know What Love Is
02． Around Bartok Bagatelle #4
03． Siciliana
04． African Heartbeat
05． Elm
06． Transition

Richie Beirach (p)
Gregor Huebner (vln)
Randy Brecker (tp)
George Mraz (b)
Billy Hart (ds)
Recorded by Tyler McDiarmid live at Birdland New York, August 25＆26, 2012
Mixed and mastered by Klaus Scheuermann

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