マイルス・デイヴィス・クインテット加入翌年に吹き込まれたウェイン・ショーターの隠れた名作。マイルス・バンドの同僚であるハービー・ハンコック、ロン・カーター、そして盟友フレディ・ハバードやジョー・チェンバースといった60年代ジャズ界きっての精鋭と共に、即興・作曲・アレンジの三位一体を極限まで追求している。実兄のフリューゲルホーン奏者、アラン・ショーターとの唯一の共演盤としても貴重。

Wayne Shorter (ts) / James Spaulding (as) / Ron Carter (b) / Joe Chambers (ds) / Alan Shorter (flh) / Herbie Hancock (p) / Grachan Moncur III (tb) / Freddie Hubbard (tp,flh)

ホレス・シルヴァー・クインテットの黄金時代に貢献した名トランペット奏者ブルー・ミッチェルの魅力的な一枚。テナー・サックス奏者ジュニア・クックとのコンビネーションはますます絶好調、ハンク・モブレーの大人気アルバム『ディッピン』を支えた名コンビ、ハロルド・メイバーンとビリー・ヒギンズの起用も見逃せない。マイルス・デイヴィス『マイルス・スマイルズ』より9ヶ月早く「ジンジャーブレッド・ボーイ」を取り上げているところにも要注目。

Blue Mitchell (tp) / Junior Cook (ts) / Gene Taylor (b) / Billy Higgins (ds) / Harold Mabern Jr. (p)

“ファンキー・プロフェッサー”の異名をとるトランペット奏者ドナルド・バードが残した最高にハッピーでソウルフルな逸品。生涯の名演に数えられる＜フライ・バード・フライ＞、R&Bフィーリング満載の＜ディキシー・リー＞、情感豊かなバラード＜アイ・ガット・イット・バッド＞等、選りすぐりの曲目で魅了する。ジョン・コルトレーン・カルテット脱退翌年のマッコイ・タイナーが、颯爽としたピアノ・プレイを聴かせているのも嬉しい。

Donald Byrd (tp) / Sonny Red (as) / Walter Booker (b) / Freddie Waits (ds) / McCoy Tyner (p) / Hank Mobley (ts)

大傑作『ユニティ』に続いて発表された、“オルガンのコルトレーン”ことラリー・ヤングの新境地。“ゲットー・ミュージック”を提唱したトランペット奏者、エディ・ゲイルを含む6人編成のバンドで、フリー＆スピリチュアルな世界に全精力を傾けている。現代音楽への深い造詣を示す＜パヴァーヌ＞から、スペイシーなアレンジが施されたマイルス・デイヴィスの愛奏曲＜セヴン・ステップス・トゥ・ヘヴン＞まで、すべての演奏が鮮烈だ。

Larry Young (org) / James Spaulding (as,fl) / Jerry Thomas (ds) / Wilson Moorman III (ds) / Herbert Morgan (ts) / Eddie Gale (tp)

マイルス・デイヴィス・クインテットの一員として来日したこともある異能のマルチ・リード奏者が残した、あまりにも独創的なスタンダード・ナンバー集。＜縁は異なもの＞、＜ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ＞、＜シークレット・ラヴ＞といった甘美なポピュラー・ソングが、火の出るような熱いモダン・ジャズに生まれ変わっている。のちにブレッカー兄弟と“ゲリラ・バンド”を結成するハル・ギャルパーの清新なピアノが楽しめるのもポイント。

Sam Rivers (ts,ss,fl) / Herbert Lewis (b) / Steve Ellington (ds) / Hal Galper (p)

伝説の来日公演から2ヵ月後、ヴァン・ゲルダー・スタジオで吹き込まれながらも発表が見送られていた幻の傑作。ウェイン・ショーター作＜ゾーズ・フー・シット・アンド・ウェイト＞、ボビー・ティモンズ作＜ア・リトル・ビジー＞、リー・モーガン作＜アフリーク＞等、メンバー会心のオリジナル曲を中心とした構成。ハード・バップ、ファンキー・ジャズから新たな地平に飛びたつジャズ・メッセンジャーズの姿が味わえる。

Art Blakey (ds) / Jymie Merritt (b) / Bobby Timmons (p) / Wayne Shorter (ts) / Lee Morgan (tp)

ジョン・コルトレーン・カルテット脱退直後のマッコイ・タイナーを迎え、ワン・ホーン・カルテット編成で存分に吹きまくったテナー・サックス奏者タレンタインの代表作。スタンダード曲＜アローン・トゥゲザー＞、ファンキーな自作＜ミート・ウェイヴ＞、ディオンヌ・ワーウィックの歌でヒットしたバート・バカラック・ナンバー＜世界は愛を求めている＞など幅広いセレクションすべてを、自らの個性に染め上げていく。

Stanley Turrentine (ts) / Bob Cranshaw (b) / Mickey Roker (ds) / McCoy Tyner (p)

60年代ブルーノートを代表する名オルガン奏者が従来のソウル・ジャズ路線を封印、ストレート・アヘッドなプレイで迫る通好みのアルバム。ホレス・シルヴァー・クインテットの黄金時代に活躍したテナー・サックス奏者、ジュニア・クックをパートナーに迎え、時にハードに、時にエレガントにサウンドを演出する。生涯の代表作となったオリジナル曲＜マイナー・スイング＞の決定版も収録。愛称“ビッグ・ジョン”が示す通りのスケール大きな音世界！

John Patton (org) / Clifford Jarvis (ds) / Jimmy Ponder (g) / Junior Cook (ts)

一聴イージー・リスニング調だが、底には深いジャズのソウルがある。60年代ブルーノートで最高の人気を博したテナー・サックス奏者が、サド・ジョーンズのアレンジでバート・バカラックやビートルズの定番、そしてチャップリンの＜スマイル＞までを快演。若さに似合わぬ風格を感じさせるタレンタインのプレイと、メル・ルイスとの双頭オーケストラで波に乗っていたサドの音作りが、リスナーを極上の音のカーペットに誘う。

Stanley Turrentine (ts) / King Errison (conga) / Victor Feldman (per) / Paul Humphrey (ds) / Joann Growler (p)

フリー・ジャズの革命児オーネットが、元ジョン・コルトレーン・カルテットのジミー・ギャリソン＆エルヴィン・ジョーンズと正面衝突。重厚なリズム・セクションを得て、限りなく自由でファンキーなオーネット節が炸裂する。パット・メセニーの愛奏曲としても知られる＜ブロードウェイ・ブルース＞は、これが初演。のちにキース・ジャレット・カルテットに参加するデューイ・レッドマンも得意の“声混ぜサックス奏法”で絶大な存在感をアピールしている。

Ornette Coleman (as) / Jimmy Garrison (b) / Elvin Jones (ds) / Dewey Redman (ts)

60年代のブルーノートが送り出した最後のオルガン奏者、ルーベン・ウィルソンの単独初リーダー・アルバム。R＆Bユニット“ウィルデア・エキスプレス”時代そのままのダンサブルかつファンキーなプレイで全5曲を一気に聴かせる。タイトル曲はドゥーワップ・グループ、ドリフターズの大ヒット曲で後にジョージ・ベンソンがリバイバル・ヒット。サックスのトレヴァー・ローレンスはマーヴィン・ゲイとの交友でもおなじみ。

Reuben Wilson (org) / Malcolm Riddick (g) / Tommy Derrick (ds) / Trevor Lawrence (ts)

キング牧師が暗殺された1968年にジェームス・ブラウンが発表したナンバーをブルーノートきっての人気者、ルー・ドナルドソンが鮮烈にカヴァー。怪しくこだまするエレクトリック・サックスの音、新星チャールズ・アーランドのオルガン弾きまくり、そしてバック・ビートの利いたレオ・モリスのドラムス。あらゆるブラック・ミュージック・ファンが必聴必携の一枚。

Lou Donaldson (sax) / Leo Morris (ds) / Jimmy Ponder (g) / Charles Earland (org) / Blue Mitchell (tp)

こんなにファンキーでポップなアンドリュー・ヒルは他にない。60年代ブルーノートに新しい波をもたらした名ピアニスト/作曲家が、自身の原点であるブルースやフォーク・ソングの要素を取り入れて完成させた意欲作。リー・モーガンやブッカー・アーヴィンとの息もぴったり、＜ソウル・スペシャル＞を筆頭に、つい口ずさみたくなる、踊りたくなるパフォーマンスが続く。子供が登場するジャケット・デザインも人気が高い。

Andrew Hill (p) / Freddie Waits (ds) / Ron Carter (b) / Booker Ervin (ts) / Lee Morgan (tp)

ピアニストとして、作編曲家として不滅の人気を誇るデューク・ピアソンが才能を120％発揮したオーケストラ作品。厚みのあるアンサンブル、バリエーション豊かなハーモニーとリズム、奔放なソロが3拍子揃った音作りは、まさしくビッグ・バンド・ジャズの醍醐味。ランディ・ブレッカー、ルー・タバキン、ジェリー・ドジオン、ペッパー・アダムス等、ビッグ・バンドのスペシャリストがずらりと揃った顔ぶれも素晴らしい。

Duke Pearson (p,arr,pro) / Al Gibbons (as) / Jerry Dodion (as) / Pepper Adams (bs) / Bob Cranshaw (b) / Mickey Roker (ds) / Frank Foster (ts) / Lew Tabakin (ts) / Benny Powell (tb) / Garnett Brown (tb) / Jimmy Cleveland (tb) / Kenny Rupp (tb) / Burt Collins (tp) / Jim Bossy (tp) / Joe Shepley (tp) / Marvin Stamm (tp) / Randy Brecker (tp)

世界を放浪した鬼才、ドン・チェリーがジャズ・トランペット（コルネット）奏者としての凄みを見せつける傑作。オーネット・コールマンとのコラボレーションでジャズ史に名を残すチェリーだが、ここではジョン・コルトレーン・バンド加入間もないファラオ・サンダースをパートナーに採用。イマジネーションに富んだチェリーのプレイと、ファラオの自由奔放な吹奏が一体となって、クリエイティヴ極まりない世界を創出する。

Don Cherry (cornet) / Henry Grimes (b) / Ed Blackwell (ds) / Pharoah Sanders (piccolo flute,ts)

限りなく飛翔するサウンドの数々。ブルーノートを代表するトランペット奏者、ドナルド・バードの60年代をしめくくるヒット・アルバム。才人デューク・ピアソンのフェンダー・ローズを大きくフィーチャーしたポップかつ斬新な音世界が味わえる。ラテン・タッチのタイトル曲や＜アイ・ラヴ・ザ・ガール＞はクラブ・シーンの定番。ブラック・ファンクの金字塔『ブラック・バード』の原点がここにある。全米ジャズ・チャート最高7位。

Donald Byrd (tp) / Roland Wilson (b) / Joe Chambers (ds) / Leo Morris (ds) / Duke Pearson (el-p,pro) / Jerry Dodgion (fl) / Lew Tabackin (fl) / Jimmy Ponder (g) / John Robinson (per) / Nat Bettis (per) / Frank Foster (ts) / Julian Priester (tb)

“ミスター・ハード・バップ・テナー”、ハンク・モブレーがパリ滞在中に残した痛快な一枚。やはり当時ヨーロッパに居住していたフィリー・ジョー・ジョーンズ、ディジー・リース、スライド・ハンプトンら千両役者をサイドメン迎え、何の迷いもなくストレートなハード・バップを展開している。つい口ずさみたくなるメロディ、切れ味のよいアドリブの連続・・・再評価が巻き起こること間違いなしの痛快なアルバム。

Hank Mobley (ts) / Alby Cullaz (b) / Philly Joe Jones (ds) / Vince Benedetti (p) / Slide Hampton (tb) / Dizzy Reece (tp)

ポリリズムの神様、エルヴィン・ジョーンズの超人的なドラム・プレイが満喫できる極めつけの一枚。語り草の名演＜ミスター・ジョーンズ＞、＜アジェンダ＞も、ここに収録されている。元マイルス・デイヴィス・クインテットのジョージ・コールマンを含む3人のサックス奏者が圧倒的なブロウを聴かせ、キューバが生んだコンガの達人キャンディドも3曲に参加。多層的なグルーヴが渦を巻く。

Elvin Jones (ds) / Pepper Adams (bs) / Wilbur Little (b) / Candido Camero (congas) / Fred Tompkins (fl) / George Coleman (ts) / Joe Farrell (ts,b-fl,english-horn)

モーダル＆スピリチュアルな世界が充満する、絶頂期マッコイ・タイナーならではの力作。ウディ・ショウ、ゲイリー・バーツ等、60年代を代表する気鋭ばかりでメンバーを構成し、＜ペレジーナ＞、＜ソング・オブ・ハピネス＞等の代表的オリジナルを次々と演奏。マッコイのパワフルなピアノ・プレイは留まるところを知らない勢いでリスナーを圧倒する。ウェイン・ショーターのクラリネット、ロン・カーターのチェロも聴きもの。

McCoy Tyner (p) / Gary Bartz (as,fl) / Herbie Lewis (b) / Ron Carter (cello) / Freddie Waits (ds) / Wayne Shorter (ts,cl) / Woody Shaw (tp)

ブルーノートNo.1ヴィブラフォン奏者のジャズ・ファンク宣言。テキサス出身のテナー・サックス奏者ハロルド・ランド（元クリフォード・ブラウン＝マックス・ローチ・クインテット）、クルセイダーズ発足直前のジョー・サンプルをキーボードに迎え、＜ジャズ＞、＜Ummh＞などグルーヴ感満載のサウンドを展開。ハッチャーソンの人気アルバムであると共に、世界中のクラブDJにとってのマスト・アイテムである。

Bobby Hutcherson (vib,marimba,per) / Harold Land (ts,fl,oboe) / John Williams (b,el-b) / Mickey Roker (ds) / Joe Sample (p,el-p)

ジャズの預言者、ウェイン・ショーターがウェザー・リポート結成前年に完成させた一大叙事詩が27年ぶりに国内CD化。テーマは「魂の転生」。マリンバ、ツイン・ドラムス、ツイン・ベースが織り成す幻想的なサウンドの上で、唯一無二のテナー＆ソプラノ・サックスが響き渡る。録音から40数年を経た現在もなお、計り知れないほどの示唆に満ちた、あまりにもマジカルな音世界。27年ぶりの国内CD化。

Wayne Shorter (ts,ss) / Cecil McBee (b) / Ron Carter (b) / Al Mouzon (ds) / Billy Hart (ds) / Gene Bertoncini (g) / Frank Cuomo (ds,per) / Dave Friedman (vib,marimba)

デイヴ・リーブマン、スティーヴ・グロスマン、フランク・フォスターという、あまりにも強力なサックス・セクションと丁々発止を演じたエルヴィン・ジョーンズの傑作。冴え渡るポリリズム、ドラムの機能の限界に挑戦するようなプレイは圧巻のひとことに尽きる。名曲＜スリー・カード・モリー＞の初演収録、そして72年の金字塔『ライヴ・アット・ライトハウス』に向かう前哨戦に相当する一枚としても価値が高い。

Elvin Jones (ds) / Gene Perla (b) / Herbie Lewis (b) / Dave Liebman (ts) / Joe Farrell (ts) / Frank Foster (ts.a-fl)

名手ルー・ドナルドソンが、ブルーノートとの契約20年目に残したウルトラ・ファンク・アルバム。電気アルト・サックスのディープな音色にレオン・スペンサーのワイルドなオルガン、ソウルフルな混声コーラスが絡む。なかでも＜ザ・キャタピラー＞は全ブラック・ミュージック・ファン必聴のダンス・ナンバー。ローリング・ストーンズやレイ・チャールズの撮影でも知られる名カメラマン、ノーマン・シーフが手がけたジャケットも素晴らしい。

Lou Donaldson (as)
Jerry Jemmott (el-b) / Ray Armando (congas) / Idris Muhammad (ds) / Melvin Sparks (g) / Leon Spencer (org.el-b) / Ed Williams (tp) / Mildred Brown (vo) / Naomi Thomas (vo) / Rosalyn Brown (vo)

70年代のジャズ界に彗星の如く現われたフルート・クイーン、ボビー・ハンフリーのデビュー・アルバム。キャロル・キングの＜イッツ・トゥー・レイト＞、ビル・ウィザースの＜エイント・ノー・サンシャイン＞といった名曲の数々がアーバンにアレンジされ、ファンキーなフルート・プレイで表現されていく。彼女を見出したリー・モーガンがゲスト参加し、往年のビッグ・ヒット＜ザ・サイドワインダー＞を再演しているのも嬉しい。

Bobbi Humphrey (fl) / George Duvivier (b) / Ray Armando (congas) / Idris Muhammad (ds) / Jimmy Johnson (ds) / Gordon Edwards (el-b) / Gene Bertoncini (g) / Hank Jones (p,el-p) / Billy Harper (ts) / Lee Morgan (tp) / George Devens (vib,marimba,per)

33歳の若さで凶弾に倒れた天才トランペッター、最後のリーダー・セッション。若きビリー・ハーパーやハロルド・メイバーンを含むレギュラー・グループに、デビュー間もないフルート奏者ボビー・ハンフリー等を加えた特別編成でスピリチュアルな世界を存分に展開。もしモーガンが生きていたらどうなっていただろうか？と想像せずにはいられないほど、豊かな発展性を感じさせるサウンドが70数分間に凝縮されている。

Lee Morgan (tp,flh) / Jymie Merritt (b) / Reggie Workman (b,per) / Freddie Waits (ds) / Bobbi Humphrey (fl) / Harold Mabern (p,el-p) / Billy Harper (ts,a-fl) / Grachan Moncur III (tb)