Vol.3 HIBIYA COTTAGEをつくる人々

  • ◆プロフィール◆
    1976年岩手県生まれ。武蔵野美術大学卒業後、広告代理店勤務を経て、2005年独立。ブックデザインを中心に紙まわりの仕事を手がける。第45回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。
  • 主な仕事に、『口笛の上手な白雪姫』著 小川洋子 (幻冬舎)、『こぐまのケーキ屋さん』著 カメントツ(小学館)、『早稲田文学 女性号』 編 川上未映子(早稲田文学会)、『BABEL Higuchi Yuko Artworks』 著 ヒグチユウコ(グラフィック社)など。

いつかはこのマークを見ただけで 「HIBIYA COTTAGEだ」って浸透したら嬉しいですね

多くの女性たちが「HIBIYA COTTAGE」を魅力的な本屋にすべく力を注いでいます。そんな彼女たちがこの本屋に込めた思いを紹介していく本コーナー。 第3回目は、ブックデザイナーの名久井直子さん。文芸書からコミックス、絵本まで幅広く携わっており、読書家にとってのカリスマ的ブックデザイナーの名久井さんに「HIBIYA COTTAGE」の顔ともいえるロゴをデザインしていただきました。


―― ご多忙にもかかわらず、ロゴのデザインをご快諾いただき、ありがとうございました。

名久井:いえいえ。本屋さんのロゴと聞いて楽しそうだなと思ったのと、もともと本屋さんは好きなので。
ユトレヒトとか印象的な本屋さんのマークって、結構ありますよね。
すごくいい仕事だなと思っていたので、嬉しい気持ちでお引き受けしました。



―― そのうえ紙袋やブックカバーのデザインもしていただきました。

名久井:私の方からやらせてください、って言い出したんです。
せっかくロゴをつくるなら、いい形で浸透していくようなアイテムがつくれたらと思って。紙袋、包装紙、あとブックカバーを2種類つくらせていただきました。いつかはこのロゴマークを見ただけで「あ、HIBIYA COTTAGEだ」って皆がわかってくれるくらい浸透したら嬉しいですよね。
なので、紙袋やブックカバーも統一感を持たせたくて。そこは、ないがしろにできないと思ったんです。



―― このロゴは、どういうアイデアから生まれたんですか?

名久井:最初に担当の方と打ち合わせをした時に「こんな感じかなぁ?」ってサラサラッと描いたのが、ほとんどそのまま……(笑)。
当時は店名もまだ決まっていない時期でした。「コテージ」ってキーワードだけは貰っていて、家とか小屋のモチーフはすぐ浮かんで。気づかないかもしれないんですけど、このお家の屋根は本なんです。開いた本が屋根の形になっていて。
本屋のスタッフさんはエプロンをつけているので、そこにロゴマークのピンバッジを付けたらきっと可愛いだろうな、なんて考えながらデザインしました。


―― 色をグリーンにした理由はありますか?

名久井:店頭に並ぶ本の色って沢山あって、それぞれ主張しあっていますよね。それをまとめる色は、落ち着いた色のほうがいいと思っていたんです。ただ黒だと、ちょっとクールで硬質すぎる感じがして。「HIBIYA COTTAGE」が入っている「日比谷シャンテ」は、素敵だけど親しみやすさもある印象で。いい意味で「かっこよすぎない」ですよね。そういうバランスを考えて、デザインや色選びをしました。


―― 店頭では、名久井さんデザインのトートバックも販売いたします。

名久井:このトートバック、すごく気に入っています。
私自身、サンプルが届いたときから毎日使っていて。丈夫で使いやすいですし。これで800円は安いと思います。



―― デザインされている言葉の意味を教えてください。

名久井:これは私が考えた言葉を、英語ができる友人に訳してもらったもので、「この中に何冊本が入っているかわかる?」っていう意味です。サンフランシスコにあるGreen Apple Booksのトートバッグにプリントされている「SO MANY BOOKS / SO LITTLE TIME」というのが好きで、本屋さんの仲間として、言葉を発信したいなと思いました。
わたしも本好きではあるのですが、友人達はさらに輪をかけた本好きばかりで。旅行に行くときは「本が切れたら危ないから」って言って、好きな作家の本を4〜5冊持って歩くんです。「本が切れたら」って、「旅行中に本が終わっちゃったら」という意味です。




―― ガス欠とか、酸欠的な症状になるんでしょうか。

名久井:そういう友人が本当に多くて。まぁわたしもその仲間なんですけど。その人達は本が重く感じないんですよ。
単行本を4〜5冊持ったら2キロ位ですから、本当は重たいはずなんです。
本が好きすぎて、重たさを忘れるという。そういう本好き達の為のカバンにしたいなと思って。
トートバックの形もマチがあったほうが沢山入るとか、持ち手が長くないと肩にかけられないよね、とか考えて選びました。
ほんと便利ですよ。沢山の人に、エコバックみたいな感じで使ってほしいです。
なんなら、ラッピング代わりにトートバックに本を入れてプレゼントしてもいいぞ、と思っています。



―― 3月30日に「HIBIYA COTTAGE」で、川上未映子さんと名久井さんのトークイベントを開催します。

名久井:はい。川上未映子さんの新刊発売を記念して一緒にトークイベントをやらせていただきます。



―― そもそものお二人の出会いは?

名久井:きっとトークイベントで詳しくお話しすることになると思うんですけど。元々は未映子さんが音楽活動をしていた時代に、当時ユリイカの編集長が引き合わせてくれたんです。もう何年になるかな。旧い付き合いですね。


―― 川上未映子さんの作品の装丁はいくつ担当されていますか?

名久井:いくつでしょう。『先端で、さすわさされるわそらええわ』、『水瓶』、『愛の夢とか』、『あこがれ』……もちろん全部ではないですけど、結構たくさんです。 新刊の『ウィステリアと三人の女たち』も担当させていただきました。



―― 名久井さんの装丁は、女性らしさを形にしていて、かといって乙女チックなわけじゃなくて、でも可愛くて……。

名久井:実は自分ではよくわかってなくて(笑)。なにかにじみ出ちゃっているんでしょうか。
私自身は苦手なジャンルも多いので、あんまり万能なデザイナーではないんです。でもたまに親和性の高い作家さんがいらっしゃって。
未映子さんもその一人なんですけど。その方の作品となら、遠くまで行ける感じがするってことはありますね。
やっぱりフィクションの世界がすごく好きなんです。子供の時からフィクションがなかったら、もっとやさぐれていたと思うから。
本に関わる仕事をしている時、その恩を返す感じはいつもあります。




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