HIBIYA COTTAGEオープン記念+川上未映子『ウィステリアと三人の女たち』刊行記念 川上未映子×名久井直子 対談トークイベント
出演者
- 川上未映子(作家)
- 名久井直子(ブックデザイナー)
- 横里隆 (モデレーター) 開催日
2018年3月30日(金)18:00〜
一週間前にオープンしたばかりのHIBIYA COTTAGEにて、新刊『ウィステリアと三人の女たち』を上梓した作家の川上未映子さんと、その装丁を手がけたブックデザイナーの名久井直子さんをお招きしたトークイベントが開催されました。モデレーターは元ダ・ヴィンチ編集長の横里隆さん。
平日にもかかわらず、客席には熱心なファンが詰めかけました。年齢層も幅広く、女性だけでなく男性の姿も多く見られます。客席にはひとり一冊ずつ、新潮社さんのご厚意で川上さんが表紙の『波』(4月号)が配られました。 ステージに登場した川上さんは桜色の着物(帯も美しい桜模様)、名久井さんは赤いリボンが印象的な紺色のワンピースと、素敵な装い。川上さんがミュージシャンの時代に知り合ったというお二人は、同い年でもあってとても気の置けない関係のようです。 イベント当日は川上さんの新刊発売日ということで本の話が中心になるかと思いきや、川上さんが「みなさん、小説の話が聞きたい? それとも雑談のほうがいいのかな」と客席に問いかけるところからスタート。
発売日だからまだ誰も読んでいないしねぇ……、と観客へのネタバレを心配しつつ「新刊については、『波』で黒田夏子さんが素晴らしい書評を寄せてくださっていますから、ぜひ読んでください」と川上さん。「黒田さんの言葉で、自分が関係する作品が語られるっていうのが、すごい。もう、震えちゃって」としみじみ感激の様子。「憧れの画家に、自分を描いてもらうような感じですよね」と名久井さんも頷きます。黒田さんの書評が素晴らしいので、ことさら我々が本について語らなくてもいいのではないか、とまとまりつつある二人に、横里さんが「まあ、そう言わずに」とフォローし、名久井さんの『ウィステリア〜』についての思いを伺うことができました。
名久井さん:「黒田さんの書評に“ゆらがない、というより、むしろゆらぎやめなさを変えない”という一節があって、そうか、って膝を打つような気持ちになったんです。これまでの未映子さんの作品は、自分がどんどん回転していく感じがあって。でも、今回はもう、回転しているかどうかも世界が決めるというような。自分もともに揺らいでいくような面白さがある短編集だな、と思いました」
続いて名久井さんの装丁についても、ワイワイとお話しくださいました。
川上さん:「短編「ウィステリアと三人の女たち」には、二人の女性のちょっとした人生のワンシーンが出てくるんです。私、その二人にとても思い入れがあって。彼女たちの幸せな時間を記録したいという気持ちと、祝福感というか、多幸感のようなものを、装丁で表現できればいいなと思って」
川上さんの思いを受けて取り組んだ装丁は、ノスタルジックな雰囲気ある質感豊かなもの。とりわけカバーは色校正を8通り比べたこだわりようで、贅沢な箔押し加工がされています。
名久井さん:「未映子さんとの仕事は、本当に箔を押しまくっていますね(笑)」
これまで名久井さんと組んで制作された『愛の夢とか』『あこがれ』などの装丁も、印象的な箔使いがされています。「箔が入っているとすっごく贅沢な気分になる」という川上さんに、「嬉しいですよね」と名久井さんも頷きます。次の本はいっそ全面に箔を使ってしまおうか、と壇上は打ち合わせのような展開に。
名久井さん:「装丁をした作品で読み返す本って、ほとんどないんです。できあがっちゃうと過去のものになってしまって。でも、お世辞じゃなく未映子さんの本と桐野夏生さんの本はたまに読み返します。読み返したら、結末が変わっているんじゃないかと思っちゃって、そんなはずはないんですけど、たまに確認しなきゃ、って本を開くんです。私にとって、本というものはそんなに確定的じゃなくて、うつろうイメージなんですね」
その後もお二人のトークは様々な話題におよび「川上さんが最近弱音を吐いた話」「舌打ちは人の心を減らすということ」「名久井さんはなぜ怒らないのか、菩薩なのか」「作家・デザイナーにとって編集者とは」「作家・デザイナーのギャラ事情」などなど。ここでしか聴くことができない、まるで楽屋のようなノリで赤裸々な話が次々と展開。笑いをまじえつつ、たっぷりお聞きしたところでおひらきになりました。あまりの楽しさに1時間半があっというま。川上さんも名残惜しそうに「このくらいの人数だったら、飲み会とかできそうだよね!」とおっしゃり、壇上を後にされました。川上さん、名久井さんを囲んだ和やかな飲み会のような、親密で濃厚な時間を過ごすことができた金曜の夜でした。
HIBIYA COTTAGEでは、現在『ウィステリアと三人の女たち』刊行記念の特設コーナーを設けています(終了時期未定)。ぜひチェックしにいらしてください。
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