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「ベルリン・フィル・ラウンジ」創刊号:ベルリン・フィルがHMV ONLINEとの提携でミニサイトをスタート

Sunday, August 16th 2009

ドイツ銀行 ベルリン・フィル
ベルリン・フィル&HMV提携サイト
 ベルリン・フィル関係ニュース

ベルリン・フィルがHMV onlineとの提携でミニサイトをスタート
 ベルリン・フィルが、HMVのインターネットショップHMV onlineで直営のミニサイト「ベルリン・フィル・ラウンジ」を開始することになりました。これはベルリン・フィル直属のメディア子会社「ベルリン・フィル・メディア」が、HMVの協力を得て実現したもので、日本の皆様にベルリン・フィルの最新情報をお届けするためのファン・ラウンジです。ベルリン・フィル関係のニュースや、映像配信サイト「デジタル・コンサートホール」の情報が扱われるほか、ドイツの最新音楽ニュースが織り込まれる予定となっています。サイト上では、「デジタル・コンサートホール」のハイライト映像(YouTube公式ポータルからの抜粋)が視聴でき、また演奏会に登場するアーティストのインタビュー、現地新聞の批評なども読むことができます。
 更新は定期的で、月3〜4回を予定。HMVでのお買い物の折には、ぜひお立ち寄りください。ベルリンより、ベルリン・フィルの最新の活躍をお伝えできることを楽しみにしております。

ベルリン・フィル次期インテンダントにマルティン・ホフマンが決定
 6月19日、ベルリン・フィルの次期インテンダントに、マルティン・ホフマンが就任することが発表された。これにより彼は、2006年より現職にあるパメラ・ローゼンベルクの後任に就くことになる。ホフマンは、ドイツの大手民放SAT1番組部門の取締役を務めたのち、2004年よりテレビ制作会社「MME」の会長を務めている。
 就任は2010/11シーズン。サー・サイモン・ラトルは、ホフマンの抜擢を次のようにコメントしている。「マルティン・ホフマンの迅速な理解力、洞察力、そして深い音楽への愛情は、我々の新しい音楽の旅をサポートするのに最適の人物。我々はこの点において、皆意見が一致しています。」

シュテファン・ドール(Hr)がオーケストラ代表に
 ソロ・ホルン奏者を務めるシュテファン・ドールが、オーケストラ代表に選出された。ドールは、アンドレアス・ヴィットマン(Ob)と共に、2011年6月までこの任に当たることになる。ドールの任命は、前任者のヤン・ディッセルホルスト(Vc)の急死により、急遽必要となったものである。


 次回のデジタル・コンサートホール演奏会

ラトルがシーズン開幕コンサートを指揮!
(日本時間8月28〜29日の深夜)
 昨年ベルリン・フィルでベルリオーズの《幻想交響曲》が演奏された際、フィルハーモニーは火事に見舞われました。原因はフィルハーモニーの屋根の修繕工事でしたが、コンサートは急遽テンペルホーフ空港の格納庫に移動して行われました。こうした特殊な状況にも関わらずコンサートは成功を収め、『ベルリナー・ツァイトゥング』紙は次のように評しています。「格納庫の不十分な音響においてさえ、ラトルがいかに《幻想交響曲》を得意としているかは明らかであった。つまり彼は、作品の特異な要素をピタリと捉えるだけでなく、そのバランスを取ることにも成功していたからである。」今回の演奏会では、同じ作品がフィルハーモニーの理想的な音響のなかで再現されるとこになり、期待はさらに高まります。
 今回の「2009/10年シーズン開幕コンサート」では、同時に2つの作品も演奏されます。ブリテンの《青少年のためのオーケストラ入門》は、変奏曲の形式(パーセルの主題による)で様々な楽器が「自己紹介」する名曲。一方サーリアホの《ラテルナ・マギカ(幻灯機)》は、本公演が世界初演となります。彼女の作品では、「魔術的な瞬間」と「光の音楽化」がテーマとなっていますが、本作ではその両者が統合されます。

【演奏曲目】
ブリテン:青少年のためのオーケストラ入門
サーリアホ:ラテルナ・マギカ(世界初演)
ベルリオーズ:《幻想交響曲》

指揮:サー・サイモン・ラトル


放送日時:8月29日(土)午前2時(日本時間・生中継)

この演奏会をデジタル・コンサートホールで聴く!

 アーティスト・インタビュー

キリル・ペトレンコ&ラルス・フォークト
5月8〜10日定期演奏会
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番ハ短調作品37
エルガー:交響曲第2番作品63
聞き手:サラ・ウィリス(ベルリン・フィル、ホルン奏者)

サラ・ウィリス 「フォークトさん、あなたは2003年にベルリン・フィルのピアニスト・イン・レジデンスを務められましたね」

ラルス・フォークト 「そうです。2003/04年シーズンでした。その時は室内楽やマエストロ・ラトルとのコンチェルトなどをやらせていただきました。ベルリン・フィルで演奏するのは、いつも本当に特別なことです」

ウィリス 「ペトレンコさんは、今回2度目の登場でいらっしゃいます。デビューの時、ラフマニノフの交響曲第2番を振られて、私も演奏させていただいたんですが、その時のことはよく覚えています。普通、新しい指揮者が来ると、“彼には次があるだろうかね”と話題になるわけですが、あなたの場合は“彼は次、いつ来れるのかい”という調子だったのです。それほど弾いていて楽しい演奏会だったのですが、今回は当時とは状況が違いますか」

キリル・ペトレンコ 「そうですね。正直に言いましょう。最初の時は、オーケストラは素晴らしく弾いてくださり、特にラフマニノフは成功だったのですが、リハーサルでは私は非常にシャイだったのです。何しろ相手がベルリン・フィルですから、“これはもう一度やり直してもらった方がいいかな。言わない方がいいかな”と遠慮してしまったのです。というわけで、リハーサルでは自分自身に満足できませんでした。しかし今回は、他のオーケストラとするのと同じように、私は私、と普通にやるように心が掛けました。今日もリハーサルしましたけれども、上手く行っていると思います。まだちょっとシャイなところもありますし(笑)、2回目でオーケストラと独自の関係を築き上げる、というわけにも行きませんが、今回は少し自由になっていると思います。作品についてもより自由に話すことができましたし、メンバーの方からもアクセプトしてもらえていると思います」

ウィリス 「私は今回は演奏に参加していないんですけれど、リハーサルの後に同僚がホールから出てくるのを見ていると、皆ニコニコ笑っているんですよ。これは本当に良いサインだと思います。今回のコンサートでは、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番をフォークトさんと演奏されますね。おふたりはドリーム・コンビだと思います」

ペトレンコ 「そうですね。このコンチェルトは、大好きな曲です。ハ短調という調性で書かれていますが、当時コンサートを短調で始めるというのはかなり特殊なことでした。ラルスが素晴らしいのは、大変明確に、クリアーに弾いてくれることです。“なにかしなければならない”と表面的に変な表情をつけて弾く人もいるのですが、彼は本当に自然に弾いてくれます。一緒にできるのは、たいへんな喜びです」

ウィリス 「フォークトさん、あなたは我々ともヒンデミットやブラームスを演奏・録音するなど、広いレパートリーを持っていらっしゃいます。ベルリン・フィルとは、この曲を室内楽的に演奏できそうですか」

フォークト「素晴らしいですよ。メンバーの方々はひとりひとりが優れた室内楽奏者です。だから要所要所で目線を合わせたりして、コンタクトを取ることができる。管楽器のソリストとか……」

ウィリス 「指揮者とか(笑)」

フォークト 「特に指揮者ね!キリルが素晴らしいのは、彼が正直な本物の音楽家だからです。私は彼のそういうところが大好きです。それと今彼が私について言ってくれたことは、そのまま彼自身にも当てはまります。キリルは変なショーはしません。音楽が本当に要求していることしかしないのです。それこそが指揮をする上で、また音楽家である上で最も素晴らしいあり方なのです。ですから今回ご一緒できるのはとても嬉しく、また誇らしく思います。」

ウィリス 「以前から共演したいと思っていらした?」

フォークト 「ええ。彼がベルリン・フィルにデビューした時にソリストだったクリスティアン・テツラフが親しい友人なのですが、彼も“ペトレンコは素晴らしい。楽しく演奏できるよ”と言っていたのです」

ウィリス 「前に一緒に演奏したことはまったくないんですね」

ペトレンコ 「初めてです」

フォークト 「最後じゃないといいですね(笑)」

ウィリス 「今回の演奏会では、エルガーの交響曲第2番も演奏されます。エルガーというのは、ドイツではまだ未知の作曲家ではないでしょうか。私はイギリス生まれなのでエルガーで育ちましたが、ドイツではプロムスで有名になった《威風堂々》とか、たまに《エニグマ変奏曲》が演奏される程度です。あなたはロシア人の指揮者で、イギリスの作曲家の作品をドイツのオーケストラで演奏されるわけですが、そのあたりはいかがですか」

ペトレンコ 「なるほど、確かにそうですね。正直申し上げて、最初の演奏会でラフマニノフを取り上げたのには理由があります。自分があまり慣れていない曲をやるのは、リスクが大きすぎると思ったからです。もっともロシア人指揮者としてロシアものをやりすぎるのも問題です。もちろん私はロシア音楽を愛していますが、そればかりだと専門家扱いされてしまう危険があります。シュトラウスやブルックナーをやっても、“彼はロシアものをやった方がいいね”みたいに言われたり……。さて、エルガーの第2交響曲についてですが、この曲を最初に知ったのはCDででした。チェロ協奏曲のCDを探していたのですが、同じ盤にこの曲が入っていて、最初の5分だけ聴こうと思ってプレイヤーに入れたのです。ところが作品の素晴らしさに魅せられて、ずっと聴き入ってしまったのでした。第2交響曲は深い音楽で、大きなスケールを持っています。オーケストラの可能性を引き出すすべての要素が入っていて、美しいカンティレーナから悪魔的なスケルツォ、ドビュッシー風の印象主義まであります。これらのすべての側面を引き出すのは大変難しいことです。というのは、大きな音量で弾くということそのものが難しいから。大音声で心の喜びを表現した後に、音量を下げて悲しみを表現するのは(その音色を見つけるのは)、とても困難なのです。ベルリン・フィルは、そうした表現をする最高の条件を備えています。私はそのような意図を持って指揮しているわけですが、オーケストラもこの音楽の素晴らしさを感じ取ってくれていると思います」

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 ベルリン・フィル演奏会批評(現地新聞抜粋)

定期演奏会(5月28日)
曲目:ジークフリート・マットゥス「5人のソリストのための協奏曲」(世界初演)
ワーグナー《神々のたそがれ》抜粋

指揮:サイモン・ラトル
ソリスト:カタリーナ・ダライマン(S)、カレン・カーギル(Ms)、アンドレアス・ブラウ(Fl)、アルブレヒト・マイヤー(Ob)、ヴェンツル・フックス(Cl)、シュテファン・シュヴァイゲルト(Fg)、ラデク・バボラク(Hr)

 ジークフリートは弾丸に当たって倒れたのだろうか?ベルリン・フィルが《神々のたそがれ》の葬送行進曲で弾くフォルティッシモは、あたかも冷酷な銃声のようで、ハーゲンが放ったのは槍ではなく、ピストルの弾だったのではないかと思ってしまう。ラトルとベルリン・フィルは、ワーグナーの音楽のドラマと緊張感を、ハンマーやブリキ板といったこけおどしを用いることなく、正確かつ爆発的な表現で最高度に高めた。クライマックスへ至る道筋は、きわめて慎重に形作られ、ジークフリートの弔いが、ショッキングなまでの鮮烈な効果で表現される。しかも響きはブリリアントで、アーティキュレーションには説得力がある。この能力のゆえにラトルとベルリン・フィルは有名となったが、それも当然と思わせられた。
(略)溢れ出るような力強さとテンペラメントに溢れた<ジークフリートのラインの旅>、恍惚的なまでの歓喜に満ちた<日の出>も素晴らしい。見事な演奏であり、指揮であると言うよりほかない。(5月28日付け『Klassikinfo.de』/ローベルト・ユングヴィルト) 

(略)ワーグナーは、夜明けの情景をみごとな筆致で作曲した。ベルリン・フィルはそこで、朝焼けの色合いの変化を陶然とするような美しさで描き出す。山の頂から太陽が現れたところで、音楽も頂点に達するが、それはまるでドビュッシーの音楽のようである。その瞬間聴衆は、このオーケストラが《神々のたそがれ》を(ほとんど初めて)演奏するのを聴けて良かった、と思うに違いない。ここで演奏しているのは、作品を知り尽くしている経験豊かなオペラ・オーケストラではない。楽員たちは、スコアを新しく「発見」するのであり、その響きには恥じらいと新鮮さが溢れている。(5月30日付け『ターゲスシュピーゲル』紙/フレデリク・ハンセン)

(略)《神々のたそがれ》の抜粋では、とりわけ弦が力強く、また明晰に弾いた。それはまるで、これまでもずっとワーグナーばかり弾いてきた、と言わんばかりの熟練した演奏であった。(略)演奏はクリアーではあったが、響きはかなり重く、重戦車風といったところで、いわゆる「ドイツ的響き」を連想させるものであった。(5月30日付け『ベルリナー・ツァイトウング』紙/ペーター・ユーリング)

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 ドイツ発最新音楽ニュース

ザルツブルク音楽祭、《モーゼとファラオ》プレミエ
 8月8日、ザルツブルク音楽祭でロッシーニの《モーゼとファラオ》が新演出プレミエを迎えた。ザルツブルク音楽祭総監督ユルゲン・フリムの演出は、モーゼの出エジプト記をユダヤ人とイスラム教徒の対立に置き換えており、ユダヤ人は1940年代のナチス迫害時の服装、エジプト人はアラブ人の民族衣装を着て登場する。指揮は近年ザルツブルクに数多く登場しているリッカルド・ムーティ。彼とマリーナ・レベカ(アナイ)、ニーノ・スルグラーゼ(シナイード)、エリック・カトラー(アメノフィス)、イルダー・アブドラザコフ(モーゼ)らの若手歌手には、各紙で賞賛が寄せられている。これに対し演出には、批判的な評 が目立った。(写真:© Clärchen Baus-Matter & Matthias Baus)

アーノンクール、ザルツブルク音楽祭で《魔笛》を指揮
 墺週刊誌『ニュース』は、アレクサンダー・ペレイラ政権下のザルツブルクで、ニコラウス・アーノンクールが《魔笛》を指揮すると報じた(演出:トビアス・モレッティ)。プレミエは2012年。アーノンクールは、2006年を最後に現在まで当地でオペラを振っていない。

ネトレプコ、将来を語る
 アンナ・ネトレプコが『日曜版フランクフルター・アルゲマイ ネ』紙のインタビューで、将来のレパートリーについて語っている。昨年秋の出産後、彼女の声は豊かさと陰影を増したと言われるが、7月にバーデン・バーデン音楽祭で歌った《イオランタ》(チャイコフスキー)の後、「アンナ・ボレーナ、マルグリート、《トロヴァトーレ》のレオノーラを勉強したい」と抱負を述べた。ワーグナーのエルザについても、レパートリーに加える可能性を示唆。これに対し、ヴィオレッタからはやや距離を取りたい様子である。「ザルツブルクのヴィリー・デッカー版は本当に素晴らしかった。今はあのように演じられないと思うし、それならば別のチャレンジを模索したい。」デッカーとダニエル・バレンボイムは、彼女にルルを歌うように求めているそうだが、「それは私のマネージャーが禁止しました(笑)。役自体には惹かれますが、バレンボイムがやりたがっている3幕版は好きではないし、第一音域が高すぎます。」

ミュンヘン・フィル、ティーレマンの契約非更新について遺憾を表明
 7月下旬ミュンヘン市は、クリスティアン・ティーレマンのミュンヘン・フィルにおける契約を2011年以降更新しないことを決定したが、8月に入り、オーケストラがそれに遺憾を表明している。非更新の争点は、ティーレマンが客演指揮者のプログラムの決定権を要求したことで、ミュンヘン市はインテンダントのパウル・ミューラーに最終的権限を与える決断をした。オーケストラは、「芸術的に高水準にあるティーレマンとの共同作業を継続したかった」と強調した上で、「彼の望むプログラムが客演指揮者に取られてしまう、という危険は、実際には存在しない」と市の立場にも理解を示している。

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