イスラエル勢、今年も暴れます!
Thursday, April 26th 2012
N.Y.=イスラエル・ジャズ・シーンはなお各位を焚き付ける
とっておきの若手ピアニスト、シャイ・マエストロ見参!
誰が何に対しての”とっておき”なのかはコマーシャル的な片言隻句に他ならず、さておき、としますが、シャイ・マエストロという名を聞いて「そらきた!」とばかりに膝を打つジャズ・ファンの中には、その淀みのない歓びの一方で、「アタシだけが目を付けていたと思しきメシ屋が、ある日突然ミシュラン・ガイドで紹介されている、チクショウ...」という様な、ある種複雑な寂寥感や切歯痛心に見舞われている者がいるということも付け加えておきましょう。それだけ、このリーダー・アルバムの登場が、局地的ながらも待ちに待たれたものである、ということなのです。
さて、本稿主役のシャイ・マエストロ。どんなピアニストかと云いますと。
1987年イスラエル出身。現在25歳の牛若丸にして、折に触れ口酸っぱくお伝えしてきた「N.Y.=イスラエル・ジャズ・シーン」の昨今の興隆を陰ながら(リーダー作を発表していない、という点で)支えてきた腕っこきなのです。シャイの名を一躍有名にしたものとしては、アヴィシャイ・コーエン、ダニエル・ザミール、ユヴァル・コーエンといった同郷イスラエル・タレント作品での脇プレイ、あるいはニューヨークNo.1 ファーストコール・ドラマー、アリ・ホーニグ・コンボへの参加などが主だったところでしょうか。
中でも、2008年 アヴィシャイ・コーエン『Gently Disturbed』におけるシャイのピアノは筆舌に尽くしがたい美しさと芯の強さを誇り、誰もが「こんなピアニストがイスラエルにはゴロゴロいるのか!?」と驚きを隠せなかったことを昨日の事の様に思い出してしまう始末。日本のジャズ・ファンにとっては、主役アヴィシャイ以上に、シャイの存在感とその精鋭ぶりを徹底的に印象付ける1枚となったはずでしょう。
また、昨年リリースされた『Seven Seas』においてもやはり圧倒的とも云えるシャイのピアニズムに耽溺した者は数知れず。今やイスラエル・ジャズ・フリークの間では「彼の地のジャズの未来はシャイの指先にかかっている」と、にわかには信じがたいほどの合言葉が飛び交っている程でもあるのです。
略歴に関しては、公式ホームページをご覧になれば瞭然ではありますが、5歳の頃からクラシック・ピアノを弾き始め、8歳のときに聴いたオスカー・ピーターソン『Gershwin Songbook』でジャズに開眼と、業界デビューの低年齢化などを鑑みればそのフロウは至ってオーソドックス。その後も、テルアビブ郊外ギバタイムにあるテルマ・イェリン国立芸術高等学校に進学し、ジャズとクラシックを両立して学び、またバークリー音楽院の奨学金制度を得て4年間ジャズ・ピアノやコンポジション、さらにはインド音楽などの民族音楽論をみっちりと学んだそうです。ニューヨークに拠点を移して各地のジャズクラブ、コンサートホール、クラシック・リサイタルに登場し始めたのもこの頃。2006年からは、先述アヴィシャイ・コーエンのコンボにも参加。ニューヨークにみならず世界中の名門ジャズクラブ、ジャズフェスに出演するようになりました。そのアヴィシャイ・コンボの秀逸なリーダー音盤群、『Gently Disturbed』、『Sensitive Hours』(2008年イスラエルのみ流通)、『Aurora』、そして現時点での最新作『Seven Seas』といった作品にはいずれも、主役を押しのけそうな勢いで緩急使い分け自在に跳ね回るシャイのピアニズムが克明に記憶されており、もはや声を大にするまでもない静かなる驚嘆を生み出し続けていることは明らかです。
左から) ホルヘ・ローダー(b)、シャイ・マエストロ(p)、ジヴ・ラヴィッツ(ds)
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『Gently Disturbed』でのその衝撃的な出逢いから4年。商業ベースの消費・回転速度が驚くべき数字を叩き出す現代において、「このコだけは、じっくりコツコツと我が道を歩ませてやりたいんだがなぁ」、そんな親心とも似つかない淡い独占欲をサードパーティ連に抱かせながら、このたび晴れ晴れしくデビューを飾るシャイ・マエストロ。衒いなきトリオ・フォーマットにて、三分の一程は捲られたであろうそのベールがいよいよ完全に除幕されようとする日がやって来ました。
ペルーの首都リマ出身のベーシスト、ホルヘ・ローダーは、ロイ・ヘインズ、スティーヴ・レイシー、マリア・シュナイダー、ケニー・ワーナーといった大家たちからも一目置かれる若くして経験豊富なプレイヤー。バート・シーガーのレギュラー・ベーシストを務める傍らで、多岐にわたる活動の能力の高さが認められ、2009年には、ブエノス・アイレスの女性シンガー、ソフィア・レイ・コウツォヴィティスのバンド・メンバー兼舞台芸術監督にも抜擢されています。
ドラマーのジヴ・ラヴィッツも、リー・コニッツや今をときめくエスペランサ・スポルディングとの共演歴もある知る人ぞ知る名手。イスラエル南部の都市ベエルシェバの出身、現在はニューヨークにその拠点を移しているということで、レギュラーを務めるオマー・クラインのグループをはじめ、アヴィシャイ・コーエン、オマー・アヴィタル、ヤロン・ヘルマン、エリ・デジブリといった同胞らのセッションに数多参加しながら、21世紀メインストリーム・ジャズ・シーンのメジャーフォースとも云えるイスラエル・ムーヴメントの一翼を担う存在となっています。
リリースは、ヤロン・ヘルマンやディーデリク・ヴィッセル作品などでおなじみのLaborie Jazz より。またレコーディングは、レーベル拠点となるフランスのラボリエスタジオで行なわれました。
『Shai Maestro Trio』 収録曲
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記念すべき初リーダー盤。気合の入り様が伝わるでしょうか。全曲シャイ渾身のオリジナル・コンポジション&アレンジにて世に放つ ”若きマエストロの奥義”。序曲「Confession」からなだれ込む「Sleeping Giant」では、クラシック仕込みのクリアなタッチながらも、下世話で平均値的な洗練に寄らない特異な緊迫感とアクを創出。トリオの緊密な対話をテーマにしたかのようなアレンジを含めその構成力にまずは一本。
メロディアス、というよりは哀愁溢る民謡(フォークダンス)や童謡のように琴線を弄る和音を用いリリカルに迫る「Brave Ones」。リズム隊がフレキシブルに動き回りながら主役ピアノを煽れば、そこにジャレ合うかのようなライドで応戦。互いに甘噛みを繰り返しながらグルーヴの大波・小波を三位一体で見事に泳ぎ切るサマには溜息のひとつも毀れ出るというもの。『Gently Disturbed』の冒頭「Seattle」に初めて針を落としたときの、あの興奮さえも蘇ってきます。
至極キャッチーなテーマを持つ「Silent Voice」も然り。一貫してリリカルな表情を携えながらもリズムやフレーズに細かな緩急・変化を付けていく、そんなピアノトリオ・グルーヴの極北とも謂うべき一撃必殺のアプローチ。ワールドミュージック・ジャズ然とした免罪符を切らず、その上有り体のようでいて有り体ではない、この絶妙なバランス感覚が N.Y.=イスラエル勢作品のある種のキモになり得ているのではないでしょうか。
後半、出自イスラエル民謡のエッセンスを仕込んだワルツ「Angelo」から雰囲気は一転。オマー・アヴィタルも慄くような極太のベースラインがイニシアチヴを握り、その上をパーカッション、単音ピアノフレーズが妖しく舞い踊る「Lethal Athlete」、こちらも彼の地ならではのメロディをテーマに、その高速のアンサンブルが異様なまでのテンションを生み出す「The Flying Shepherd」。さらにルーツ寄りのテーマで、転調・リズムチェンジを交えて颯爽と風を切る「One for AC」(アヴィシャイはじめ様々なイスラエル勢作品で耳にしそうな、半ば”定番”とも云えるテーマ)。 ”伝統死守”と”絶え間ない革新”、一見相反するかのような二つのテーマを小気味よく両立させたこの3曲においても、イスラエル・ジャズならではの”奥行き”を可及的速やかに味わうことができるでしょう。
ほか、シャイのクラシック・ピアニストとしての腕前を吟味することができる「Painting」や、同路線の完全ソロピアノ曲「Kalimankou Denkou」など、まさに作品多彩で演者多芸。首を長くして待った甲斐、という点においても、そこに”期待通りの”と躊躇なくお墨を付けることができる1枚に。
本作発売に前後して、今年3月には、ギラッド・ヘクセルマンらと共にアリ・ホーニグ・カルテットの一員として日本の地(@Cotton Club)を踏んでいたシャイ。この、あまりにもスペシャル且つ若いエキス溢れまくりの顔ぶれによるライブを見逃した方々は、一様に音吐朗々「再来日求ム」と雪辱を誓う日々を送っているそうですが、近い将来、シャイのリーダートリオでその大願が成就されることは間違いなし! と大風呂敷を広げても概ねミスリードにはなり得ない? むしろ盛夏の各種ジャズフェスなどに積極的に招聘するのがよろしいかと...
まだまだ熱く燃え上がる N.Y.=イスラエル・ジャズ・シーン。大本命の新星プリンシパル見参でその注目度はさらにアップ。からの票田拡大。今年も彼らの大暴れをお約束しつつ、その一挙手一投足から目を離さぬよう心よりお願い申し上げます!
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