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「ベルリン・フィル・ラウンジ」第34号:ヨーヨー・マがベルリン・フィルに16年ぶりの登場!

Thursday, January 13th 2011

ドイツ銀行 ベルリン・フィル
ベルリン・フィル&HMV提携サイト
 ベルリン・フィル関係ニュース

ベルリン・フィル・メディア、マーケティング部長トビアス・メラーより新年のご挨拶
 「ベルリン・フィル・ラウンジ」の読者の皆様に、新年のご挨拶を申し上げます。HMVジャパンのご協力でスタートしたこのサイトも、すでに34号を迎えました。日本の皆様のベルリン・フィルへの高い関心、デジタル・コンサートホール(DCH)への熱心なアクセスは、世界的に見ても特別なものです。このことを私どもは、日頃よりたいへん嬉しく思っております。
 今年はマーラー没後100周年にあたり、芸術監督のサー・サイモン・ラトルが交響曲全曲を指揮します。CDリリースが困難な今日において、DCHではそのすべてがリアルタイムでご覧いただけ、遠く離れた日本の皆様には、絶好の機会と思われます。このツィクルスも、ヨーロッパ音楽界の最高峰と呼べるもので、サー・サイモンと当楽団のひとつの頂点となることは、疑いありません。今年も皆様に「ベルリン・フィルの今」を、ぜひキャッチしていただきたいと思っております。
 2011年が皆様にとって素晴らしい年となり、多くの音楽的ハイライトをもたらすことを心から願っております。

トビアス・メラー
ベルリン・フィル・メディア/マーケティング部長

サー・サイモン・ラトルのマーラー・ツィクルス一覧


朗報!デジタル・コンサートホール(DCH)が完全日本語化。検索機能も充実
 この11月より、デジタル・コンサートホール(DCH)のサイトが、日本語でご利用いただけるようになりました。これまでは英語とドイツ語のみでしたが、今後は演奏会のプログラムのみならず、操作メニューや支払い方法まで、日本語でより簡便にご覧いただけます。
 日本は現在、ドイツ本国に続きDCHの利用者が最も多い国です。ベルリン・フィルでは、50年以上にわたる日本との関係に感謝する意味も込め、ウェブサイトの日本語化に踏み切りました。皆様にベルリン・フィルの演奏をより身近に感じていただけることを祈っております。
 またこの機会に、サイト全体が一新されました。ご利用の方はお気づきと存じますが、すでに8月のシーズン開幕と共にラウンチしています。当サービスが開始してから2シーズンが経過し、すでに70本以上の演奏会がオンディマンドで再生可能。今回は特に検索機能を充実させ、アーティストや演奏曲目を迅速に探し出せるようになっています。「1回券(9,90ユーロ=1,100円)」から、お試しにぴったりな「30日券(29ユーロ=約3,200円)」、1年存分に楽しめる「12ヵ月券(149ユーロ=約16,650円)」までを揃えて、皆様のお越しをお待ちしております。今後もwww.digital-concert-hall.comをぜひご利用ください。


リング・プロジェクトのドキュメンタリーが完成
 2006年から10年にかけて、ラトルとベルリン・フィルはエクサン・プロヴァンス音楽祭とザルツブルク・イースター音楽祭で《ニーベルングの指輪》を上演しました。教育プログラム「未来@ベルリン・フィル」では、この機会にエクサン・プロヴァンスとザルツブルクの生徒、ベルリンの刑務所服役者、ザルツブルクの合唱団をワークショップに招待し、ワーグナーの神話的物語を解釈し、理解を深めてゆくプロジェクトを行ないました。このほど、その模様を収めたドキュメンタリー映画が完成し、1月にZDF(ドイツ第2放送)演劇チャンネルで放映されます。ここでは、青少年がベルリン・フィル団員や出演者と語り合う姿が活写されています。
 ドキュメンタリーはエクサン・プロヴァンスとザルツブルクの両音楽祭の共同制作で、ドイツ銀行のサポートにより実現しました(写真はベルリンの刑務所での撮影シーン)。


N・ヤルヴィ、ヴォロドス、ゲルギエフの演奏会がアーカイヴにアップ
 12月に行なわれた3つの定期演奏会が、デジタル・コンサートホール(DCH)のアーカイヴにアップされました。キリル・ペトレンコのキャンセルを受けてネーメ・ヤルヴィが2回連続で登場し、チャイコフスキーからタネーエフ、ショスタコーヴィチにいたるロシア・プログラムを集中演奏。なかでも注目に値するのは、近年頻繫に取り上げられているショスタコーヴィチの「交響曲第14番」でしょう(1回目の演奏会)。《死者の歌》と題された作品は、長い間難解とされてきましたが、今日では作曲家後期の傑作として、高く評価されています。一方2回目のコンサートでは、ピアノ界の実力者アルカディ・ヴォロドスがチャイコフスキーの第1コンチェルトを演奏します。
 昨年のデジタル・コンサートホールの締めくくりは、10年ぶりにベルリン・フィルに登場したヴァレリー・ゲルギエフの《展覧会の絵》でした。今号では、同演奏会の批評も紹介していますので、ぜひご覧ください。

N・ヤルヴィ指揮によるチャイコフスキー《フランチェスカ・ダ・リミニ》、ショスタコーヴィチ「交響曲第14番」の演奏会をDCHで聴く!
N・ヤルヴィ&ヴォロドスによるチャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」の演奏会をDCHで聴く!
ゲルギエフ指揮《展覧会の絵》の演奏会をDCHで聴く!

 次回のDCH演奏会

ヨーヨー・マがベルリン・フィルに16年ぶりの登場!
(日本時間1月16日午前4時)


 新年最初のコンサートには、ヨーヨー・マが登場します。彼がベルリン・フィルに最後に出演したのは、1995年のベートーヴェン「三重協奏曲」(バレンボイムとパールマンとの共演)ですので、何と16年ぶりのカムバックとなります。今回は、ショスタコーヴィチ「チェロ協奏曲第2番」を取り上げ、巨匠の芸を聴かせてくれるに違いありません。
 プログラムはアンデシュ・ヒルボルイの新作《冷たい心》でスタートしますが、コンチェルトの後はニールセンの「交響曲第5番」が取り上げられます。ニールセンは、今日では交響曲やコンチェルトの一部が知られているにすぎませんが、その作品は緊密な構成とストレートな表現で独自の個性を放つものです。ベルリン・フィルの常連であり、日本でも人気の高いデイヴィッド・ジンマンの解釈に期待が掛かります。
 なお放送2日前より、こちらからリハーサルの模様が無料でご覧いただけます。

【演奏曲目】
ヒルボルイ:《冷たい心》世界初演
ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第2番
ニールセン:交響曲第5番

チェロ:ヨーヨー・マ
指揮:デイヴィッド・ジンマン


放送日時:1月16日(日)午前4時(日本時間・生中継)

この演奏会をDCHで聴く!

 アーティスト・インタビュー

ヘルベルト・ブロムシュテット
作品解説:ブルックナー「交響曲第6番」(後半)
「ブルックナーが“威勢がよく、小生意気な作品”と呼んだことは、当たっています」
(定期演奏会2010年6月2〜4日)

【演奏曲目】
ベートーヴェン:ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための3重協奏曲
ブルックナー:交響曲第6番

ヴァイオリン:ダニエル・スタブラヴァ
チェロ:ルートヴィヒ・クヴァント
ピアノ:マルティン・ヘルムヒェン
指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット


 前回より引き続き、ヘルベルト・ブロムシュテットによるブルックナー「交響曲第6番」の作品解説をお届けします。ドレスデン・シュターツカペレ時代から、ブルックナー指揮者として日本でも人気を博している彼ですが、ここでも含蓄溢れるコメントを行なっています。
 「交響曲第6番」は、ブルックナーとしてはコンパクトで平明な印象を与えることから、やや軽視されている気配があります。ブロムシュテットもそれを指摘し、遺憾としていますが、作曲家自身の「私の最も威勢がよく、小生意気な交響曲」という判断を支持しているところが興味を誘います。彼にとってもこの交響曲は、「いたずら心」に溢れた作品ということなのでしょう。

ヘルベルト・ブロムシュテットによる解説
「第3楽章はスケルツォです。非常に短い楽章、あらゆるブルックナーの楽章のなかでも、最も短い楽章です。ここでは、短い旋律の断片が飛び交うように構成されています。第2楽章は3つの和音で終わりましたよね。これに対し第3楽章では、同じように3つの音が同じ音程で繰り返されます。まったく同じではありませんが、同じ発想から導き出されたものです。この基本音型の上に、第2ヴァイオリンとヴィオラが短い上昇音型をリピートします。第1ヴァイオリンにも断片的なモチーフが反復され、木管にも別の短い音型が現われます。すべてが短く、メロディーというよりは切れ端という感じです。それが様々な方向に投げ出されるのですが、その様子はお化けが出ては消える、といった感じを与えます。すべてはピアニッシモ。しかし、突然金管を加えた全強奏が起こります。とても独創的な音楽です。3分ほどした後に、イ長調のファンファーレで頂点を迎えますが、これに続くしトリオはとても変わっています。スケルツォ主部のように3/4拍子ではなく、突然2/4拍子なのです。つまりこれまでの楽章に現われてきた、2拍子対3拍子の対立が組み込まれています。ヴァイオリンのピッツィカートで奏される主題は、おずおずと、自信がなさそうな感じ。これにホルンが同じリズムで決然と自信たっぷりに応え、コントラストを成します。その後、ブルックナーは自身の第5交響曲のフレーズを引用します。
 第4楽章もたいへん独創的です。最初はヴィオラのトレモロでスタートし、第1ヴァイオリンが流れるようなメロディーを静かに演奏します。これはどこへ行くのか分からない、目標を探しているような感じの旋律です。そこへ金管がパパン!と決然とした合いの手を入れます。楽章は不確定な弦と、きっぱりとした金管のコントラストを中心に進められます。第2主題は、非常に込み入った構成で、3つの旋律が重なり合っています。最も中心となるのは、第2ヴァイオリンですが、ヴァイオリンとヴィオラにも、それぞれ別のメロディーが置かれている。そこにバッハのような低音が付いています。バロック的なバス音型が続きますが、ブルックナーはオルガニストでしたので、バッハを知り尽くしていたのです。すべては非常に自然に流れ、ここまで込み入っているようには聴こえません。難しく聴こえない、ということが「技」なのです。作品の終結部では、第1楽章の第1主題が戻ってきます。これは第1楽章では低弦で提示されましたが、ここではトロンボーンでフォルティシシモで再現されます。弦で静かに始まったメロディーが、金管でイ長調の輝かしいコーダを迎えます。
 ブルックナーは「第6番は私の交響曲のなかで一番威勢のよい、小生意気な作品だ」と言っていますが、これは確かに当たっています。非常に明朗で、輝かしい感じがあり、表面的には分かりやすい印象さえあります。他の作品のように、哲学的というか、韜晦したところが少なく、それでいて特徴的な性格を備えています。私はこの作品が大好きですが、他の作品より好きかと言われると困ってしまいます。というのは、他の作品と同様に素晴らしいからです。残念ながら演奏機会が不当に少ないのですが、それには様々な理由があるでしょう。ひとつには、出版譜の印刷の質が悪かったこと。この初版は、ブルックナーの死後に出版されましたが、改竄と呼ぶべきものでした。彼の友人たちは、オーケストレーションを変え、ワーグナーのように響くようにした。当時、ワーグナーは絶対的な存在だったので、ワーグナーのように演奏すれば、聴衆にも分かりやすくなると思ったのでしょう。マーラーはこの曲を演奏した最初の指揮者のひとりですが、彼もオーケストレーションを変えて指揮しました。さらに「ここを50小節、ここを30小節」と、大幅なカットを行なっています。ですからそれは、ブルックナーの真意を伝えるものとはなりませんでした。オリジナル・ヴァージョンが出版されたのは、1935年になってからのことです。この楽譜が出たことで、どのように演奏すべきかという問いに、明確な解答が生まれたのです。それ以来、まずこの版で上演されるようになり、今日のコンサートでも原典版を用いて演奏します。
 それでは皆さん、この素晴らしい作品を楽しんでください。」

ブロムシュテットのブルックナー「交響曲第6番」をDCHで観る
このインタビューの前半を読む

 ベルリン・フィル演奏会批評(現地新聞抜粋)

ゲルギエフ、10年ぶりのベルリン・フィル登場は、辛口の批評
(2010年12月21〜22日)

【演奏曲目】
シチェドリン:交響的ディプティク(ドイツ初演)
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番
ムソルグスキー:《展覧会の絵》

ピアノ:デニス・マツーエフ
指揮:ヴァレリー・ゲルギエフ


 12月、ベルリンで特に期待されたコンサートは、10年ぶりにベルリン・フィルに客演したヴァレリー・ゲルギエフの演奏会でした。ドイツでは首席指揮者のポストを持ったことがなく、もっぱらマリンスキー劇場等の客演で知られる彼は、この町ではやや評価の固まっていない存在です。新聞では残念ながら辛口の評が目立ち、演奏が全体に大音量でねじ伏せるタイプのものだったと結論しています。ゲルギエフがベルリンで安定した評価を獲得するには、まだ時間が必要なようです。

「これ以上ロシア的であることは、不可能だろう。フィルハーモニーにはベルリン在住のロシア人が集結し、故国の有名人ゲルギエフに熱烈な喝采を送った。ラフマニノフの第3コンチェルトには、技巧的なドラマがたくさん織り込まれているが、同時に安らぎに満ちた個所も存在する。しかし指揮者もソリストも、全体に力強さを強調した表現を行なっていた。つまりゲルギエフもマツーエフも、“戦う音楽家”のスタイルで演奏したのである。ゲルギエフは《展覧会の絵》でも、“音の大伽藍”というような表現であった(2010年12月24日『ベルリナー・モルゲンポスト』紙/クラウス・ガイテル)」

「ゲルギエフは震える手で血の凍るような雰囲気を生み出す。そこには情熱がないわけではないのだが、聴き手は熱くならない。ラフマニノフでは、彼はオーケストラを押さえ、ソリストに完全に道を譲っていた。マツーエフはその申し出に喜んで答え、作品から憧憬的なタッチを取り去り、一人芝居に徹した。オーケストラとの対話に欠けた、パワー一点張りの演奏は、自分の筋肉に見惚れるボディービルダーのようであった。ゲルギエフは《展覧会の絵》では、ラヴェルの繊細さよりもムソルグスキーの原曲の粗野さを強調した表現を行なっていた。それは彼の精神的高貴さよりも、酔っ払いの天才の閃きを表すものであった(2010年12月22日『ターゲスシュピーゲル』紙/ウルリヒ・アムリング)」

この演奏会をDCHで聴く!

 ドイツ発最新音楽ニュース

本コーナーでは、ドイツおよび欧米の音楽シーンから、最新の情報をお届けします。

大寒波とジルベスター・コンサート
 ドイツでは、ベルリン・フィルとドレスデン・シュターツカペレがジルベスター・コンサートで年越しを祝ったが、歴史的大寒波によりトラブルも生じている。ベルリン・フィルでは、エリーナ・ガランチャの飛行機がベルリンへ飛べず、彼女はライプツィヒ空港からタクシーでリハーサルに駆けつけた。一方、ドレスデン・シュターツカペレでは、ルネ・フレミングがニューヨークの空港で足止めを喰らい、12月30日の演奏会はキャンセル。しかしアンナ・ネトレプコとアーウィン・シュロットが代役を引き受け、オペレッタのナンバーを数曲披露した。フレミングは、テレビ中継の入った大晦日の演奏会には、無事出演している。


ビエロフラーヴェクがチェコ・フィルの首席指揮者に再就任
 エリアフ・インバルに続くチェコ・フィルの首席指揮者に、イルジー・ビエロフラーヴェクが就任することになった。ビエロフラーヴェクは、1990年から92年にかけて同オーケストラの首席指揮者を務めたことがあり、今回の就任は2度目となる。契約のスタートは、2012年夏からという。


2013年バイロイト音楽祭の《リング》演出家は、ヴィム・ヴェンダース?
 映画監督のヴィム・ヴェンダースが、2013年バイロイトのワーグナー生誕200周年記念《リング》の演出を担当する可能性がある。新聞の報道によると、バイロイト音楽祭はヴェンダースと具体的な交渉に入っており、実現の見込みは大きい。ヴェンダースは、『ベルリン天使の詩』で成功した、ドイツを代表する映画作家。音楽祭側は、「新しいアイディアでワーグナーに迫ることのできる、オペラ専門外の演出家」を求めていたという。なお同プロダクションの指揮は、次期バイエルン国立歌劇場音楽総監督のキリル・ペトレンコに決まっている。


ヒルデ・レッセル=マイダンが死去
 12月15日、オーストリアのメゾソプラノ、ヒルデ・レッセル=マイダンが89歳で死去した。レッセル=マイダンは、1921年ニーダーエスターライヒ生まれ。1951年にウィーン国立歌劇場にデビューして以来、1976年11月に《モーゼとアロン》で引退するまで、同劇場に計1553回出演。なかでも《フィガロの結婚》のマルチェッリーナは194回、《ばらの騎士》のアンニーナは172回も歌ったという。

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