CUT CREATOR$ インタビュー
Monday, February 22nd 2010

ニューヨークのクラブ・シーンで絶大な信頼を得ているDJ SOULJAHと、MUROのメイン・エンジニアとしても名高いプロデューサーのSUIからなるプロダクション・チーム=CUT CREATOR$。 彼らが手掛ける人気ミックスCDシリーズ『Spice Of Life』の初のオフィシャル盤がいよいよリリースされる。題して、『Spice Of Life: R&B Reggae Rockers』。R&Bクラシックのリメイクを中心とするスウィートでメロディアスなラヴァーズ・レゲエで構成された至福の78分は、さまざまな角度からグルーヴの核心にアプローチするCUT CREATOR$の真骨頂。ホット・チョコレートのような甘さと温かさを兼ね備えた、究極のフィール・グッド・アルバムの登場だ。
Interview&Text by 高橋芳朗
ヒップホップやR&Bとはまた違った文化なので、それなりに造詣が深くないと手を出せない分野でもあると思うのですが、そういう点ではレゲエというカルチャーがしっかり根付いた土地で2人とも生まれ育っているので違和感なく入っていけたと思います
- --- 『Spice Of Life』は、CUT CREATOR$のミックス・テープの中でも看板シリーズと言っていいと思うのですが、そもそもこのシリーズはどういう経緯でスタートしたのでしょう? また、このシリーズに通底するコンセプトやタイトルの由来などを教えてください。
DJ SOULJAH: リスナーの日々の生活にスパイスを・・・特に音楽の部分を担当できればと思って始めた企画です。特に聴きやすく制作過程で参考にしたい楽曲などを中心に和洋ごちゃ混ぜでミックスしています。今では増えましたが、始めた当初は誰しもやっていなかったありそうでなかったCDです。
SUI: タイトル通り、日々の生活にスパイスどうぞ!っていう軽いノリです。 「コショウかけたらもっと美味しく食べられる」とかそういう感じかな。といっても選曲、ミックス、仕上げにいたるまでいちいち入魂というか、作っている側はいたって本気なので、何気ないときにミックスの向こう側に僕らの存在を感じてもらえたらものすごくうれしいです。
- --- では、今回の『Spice Of Life: R&B Reggae Rockers』の制作に至った経緯を教えてください。また、ざっくりとどんな作品にしたいと考えていましたか?
DJ SOULJAH: シリーズ同様聴きやすく、カバー物と日本語R&Bを中心に、R&B層とレゲエ層をどちらの層も満足してもらえるようになるよう心掛けました。
SUI: BBQにオファーをいただき、今までやってきた『Spice Of Life』のコンセプトにもピッタリだったのでがんばった次第です。シリーズを通して言えるんですが、洋楽だけじゃなく日本の歌心にも注目していて、それもうまく反映できるといいなって思ってました。
- --- 選曲面とミックス面、それぞれでどんな点に配慮したか教えてください。
SUI: DJミックスとしてそれぞれの楽曲の持つバックグラウンドや、曲調、歌の世界観などを意識しつつ、それを僕らで拡張していけるようなものになるよう心掛けました・・・って言うと小難しいですが、単純に「僕らならこう」という感じが出るようにってことです。ミックスについてはまず音楽ありきなのでできるだけシンプルな手法を採用しています。必要ないものは入れない。そのぶん音楽を楽しんで欲しいという感じです。
- --- アルバム中、特に気に入ってる流れや聴きどころなどを幾つかあげていただけますか?
SUI: 1曲目から2曲目とか、邦楽つなぎですよね(注:英語詞の2曲目はUTADA「Come Back To Me」のカヴァー)。ミックスの冒頭ってその作品のつかみの部分でもあるので、そこは日本の歌心でいこうという。 また、全体を通して前半はわりと新しめでだんだんクラシックな楽曲に移行していく全体の流れなんか、今どきのミックスCDじゃなかなか聴けなくなりましたよね。 そこはしっかり守ってる感じです。 古くさくてスミマセン(笑)。
- --- アルバムのハイライトといえる2曲のリミックス作品の解説をお願いします。 まずは、JAY'ED「ずっと一緒」。
SUI: この曲の歌詞の譜割やメロディってもともとレゲエ調なんですよね、実は。 元々そこを狙って選ばせていただいたというのもあるので、リミックスというか原点に返してあげるという感じで制作しました。また、この曲で一番聴いて欲しいのは歌詞であり、歌なんです。誰もが親しめる言葉で大切なことを歌っている。そういうポピュラリティって大好きなんですよね。なので、そこを完璧にサポートしていくことだけを考えてサウンドを構築したつもりです。トラックそのものも難しいことは一切やっていません。ただし、それぞれの音色や楽曲全体の品質は高めになるよう、かなり気をつけました。
- --- 続いてSUGAR SOUL「悲しみの花に」。 比較的オーソドックスな作りの「ずっと一緒」に対して、こちらはちょっと意表を突く構成になっていますね。
SUI: リリース当時、本当に心に刺さった歌です。ずっと心の中で大切にしてきた曲。10年20年経っても歌い継がれる名曲として、みんなに受け入れて欲しかった。通常のラヴァーズからすると曲調が少し暗くもありましたが、絶対にコレやりたいと(笑)。なので、リミックスの切り口という意味ではかなり考えました。 JAY'EDではかなりポピュラリティを追求させていただいたので、こちらは好き勝手というか、CUT CREATOR$内の日常会話レベルでの音色選び、切り口といった設定になっています。たとえば、飯食いながら「あの曲カッコいいよな〜」 「そういえばあの音ヤバい」とかそういう感じ。リミックスにあたって、歌詞の世界観をワールドピース的なところまで持っていけたらというのはありました。音像的な要素が歌詞の世界観を押し広げるようなイメージです。そういう意識まで広がりを持てるようなトラックになるようがんばってみました。
- --- ヒップホップやR&Bと比べて、レゲエのプロデュース/リミックス作業はどんな面白さ/難しさがありますか?
SUI: 陽気なところかな? 楽曲構成の面で基礎がしっかりしてますよね。この楽器はこう使う・・・とか。今でもそのスタイルをキープしているジャンルなので、新しくやる側は拡張しやすいというか、楽しみやすいと思います。ヒップホップやR&Bとはまた違った文化で、言葉もたまに違う。なので、それなりに造詣が深くないと手を出せない分野でもあると思うのですが、そういう点ではレゲエというカルチャーがしっかり根付いた土地で2人とも生まれ育っているので違和感なく入っていけたと思います。
- --- CUT CREATOR$でプロデュース/トラックメイキング作業をする際、DJ SOULJAHさんとSUIさんとの役割分担はどのようになっているのでしょうか?
SUI: トラックメイクということに関しては全面的にSUIが担当しています。ただ、それだけではただのサウンド・メイキングに過ぎない。プロデュースという作業はそれだけじゃなく、いろんな音楽的要素と能力が必要になるので、そこは2人で相談しながら進めます。その上でDJ SOULJAHからは現場に立つDJとしての感覚、そしてSUIからは音楽の制作手法から最新のサウンドといったオタク的要素が注入されます(笑)。
- --- これまでKRS-ONE「You Must Learn 2009」や、Adriana Evans「Surrender (Remix)」などのプロダクションを手掛けてきていますが、ずばりCUT CREATOR$の個性や持ち味はどんなところにあると考えていますか?
SUI: 僕らの生まれ育った宮崎という土地は、やはり他の地方都市と同じで独特の音楽的要素と価値観を持っています。規模は小さいがとても自由で、良いものは良いと言って自分のものにしていく感覚と探究心。そこで得たものは僕らが誇るべき貴重な財産。そしてDJ SOULJAHはニューヨーク、SUIは東京という土地でそれぞれが培った人間関係とアーバンな価値観。これも何にも代え難い自分たちの糧です。それが良いバランスで混じり合った超絶カオスな感じ(笑)。ラーメンで言ったら超全部入りで隣の皿までつついちゃうみたいな、そういうところが僕らの味ですかね?
- --- プロデューサー視点から見て、現在の日本のヒップホップ・シーンはどのように映っていますか?
SUI: ラッパーやシンガーといった素材としてのクオリティや、周りのスタッフ含めシーンが内包しているエネルギーはものすごいものがあると思います。そのエネルギーをどういう方向に使うのかっていうのがすごく大事な時期。僕らの役目は音楽を創って発信していくことであり、できる唯一のことなので、それをコンスタントに形にしていけたらうれしいです。
- --- DJ SOULJAHさんがニューヨークに拠点を置いていること、そして、Jay-Zの『American Gangster』をリミックスした『Japanese Gangster』を現地でリリースしていることなどからも、CUT CREATOR$にはアメリカでの活躍も期待しているリスナーも多いと思います。日本人トラックメイカーがUSラッパーにビートを提供する可能性についてはどのように考えていますか?
DJ SOULJAH: 他の日本人トラックメイカーも含め可能性は充分にあると思います。ただし、誰しもがトラックメイクできる本場で頭角を表すには相当な困難があると思いますが、上を目指す以上挑戦してみたいです。今は時期かと言われるとまだかなとは思いますが、いずれその時期は来ると思います。
SUI: エンジニア視点から見ても、USシーンに通用する音を作っているクリエイターは少数ですが日本にもいると思います。現に水面下ではその動きも活発に行われている状態です。ただ、USで行われているビジネスに日本人が入っていくということはそう容易なことではない。いわゆるカルチャーとして現地に根ざすことができなければ、ただの輸入車でしかないということです。そういう点をクリアできなければそれを実現することは現実的に厳しいと思います。逆に言うと、日本で行われるビジネスに参加してもらえば良いわけですから、あまりネガティブには捉えていないのですが。その方向は厳しいが、可能性は無限大って感じですかね?
- --- 最後に今後の活動予定について教えてください。
DJ SOULJAH: リミックス/プロデュース業を中心に今年1年は活動したいと思っています。

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CUT CREATOR$
カット・クリエイターズ
NY在住、日本人現役No.1 DJ、SOULJAH(ソルジャー)と東京在住のトラックメイカー、SUI(エス ユー アイ)からなるCUT CREATOR$(カット・クリエイターズ)。G-Unit、Ne-Yoなどトップ・アーティストのツアーでのDJをはじめ、USヒップホップ界著名人のプライベート・パーティやEminem主宰の番組「SHADE45」でのゲストDJ、NYはマンハッタン最大規模のクラブ「AVALON」のレギュラーを勤めるDJ SOULJAH。2007年には、Southern Entertainment Awards(SEA)のDVD部門へのノミネートという快挙を成し遂げる。現在のUSヒップホップ・シーンを肌で知り尽くし、群雄割拠のNYで着実にキャリアを伸ばす日本人DJ。そして、”King Of Diggin”ことDJ MUROのメイン・エンジニアを中心に、国内外を問わず多数のセッションに参加、いかんなくその手腕を振るうプロデューシング・エンジニア、SUI。東芝EMIからリリースされた『Blue Note Street』、『Tokyo Tribe 2』をはじめ、参加楽曲数はゆうに3桁を超える。今最先端の音、そして現場の空気を知りつくし、NY/TOKYOの音楽市場の「これから」をクリエイト可能な、唯一無二にして最強のプロデュース・ユニット。





























