映像作品が素晴らしいだけに、どんな感じの絵本になるのか楽しみでした。「きりのなかのはりねずみ」映像作品では、きりのなかで、数々の経験をして、ちょっと大人になり「待ちぼうけ小熊」と最後にお茶を飲むのですが、絵本では「待ちぼうけ小熊」に負けちゃってる感じです。しかし絵本としてのクォリティーは十分あり、もし大人が子供に読んであげる機会があれば、映像版より時間をかけ、読んであげてください。（その朗読者には）是非、映像版も観てほしい素晴らしい作品です。

雄弁な映像表現でありながら、想像力が刺激されます。愛らしくもどこか淋しげなキャラクターが、印象的です。もちろんカラー作品なのですが、モノクロの様な光の階調が素晴らしい。独特な立体感は透かし絵の様な技法ゆえでしょうか。見る者の心に寄って、メッセージを幾重にも感ずることができます。 大人の観賞にたえるのは言うまでもなく、感性のアンテナが染まっていない子供達にみて欲しい。

いつだったか某新聞社がTVコマーシャルで『話の話』中の牛と少女が縄跳びをする幻想的な場面を借用していた。それ以来脳裡に焼き付いてけっして忘れられなかった。まさしく夢の夢。心みずからの語り。郷愁という名の実存。こういうと話が小難しくなるが、もちろん大人から子供まですべてのひとに心に刻んで欲しい珠玉の作品集。ちなみにかの宮崎駿も私淑しているアニメーションの巨匠。