Sobre Palavras

2009年初頭､優れたMPBアルバムでデビューし､現地をはじめ日本国内でもその魅力を広く知らしめることとなった美声♀シンガー､ヴェロニカ･フェリアーニが､現代的なセンスで印象的なソロ･タイトルからサポートまでを展開するギタリスト/コンポーザー､シコ･サライーヴァと組んで作り上げる､注目のブラジリアン･ヴォーカル･アルバム｡

ヴェロニカの1stがカバー中心だったのに対し､今回は全てシコ､そして本作のもう一人のキーマンで作詞家/プロデューサーのマウロ･アギアールとで創造した､叙情的なオリジナル･レパートリー作品｡マウロは､これまで Ivan Lins, Fatima Guedes, Zeca Pagodinho, Zelia Duncan, Monica Salmaso, Paula Santoro, Guingaなどに歌詞を提供した経歴を持ち､本作では表現者ヴェロニカ､メロディーのシコ､そしてメッセージのマウロとが三位一体で､豊かな感性を表出させる演目を構成｡ボサ･ノヴァ､ノルデスチ､サンバ･･･広くブラジル固有の暖かさを意識させつつ､凛としたポリシーがアルバム全体を覆う｡

シコの優しく跳ねるギターに導かれるように､しめやかに流れるヴェロニカのヴォイスが心地良いコーコ･リズムのM1に始まり､メロディアスな転調のサンバで揺らすM2､赤土の香りを湛えた清らかなカイピーラM3､スピリチュアルな旋律のミディアム･ナンバーM4/M6､アコーディオンのアクセントでジャジーにスウィングするバイアォン調のM5､フェミニズムを漂わせる芳醇なボレロM7､パーカッシヴなインストゥルメンツをアクセントにアフロ･ブラジルを美的に演出するM9､ふくよかなボッサ〜カンサォンM10､瑞々しいサンバ･パルチードで疾走するM12､ヴォーカル＆ギターのみでたっぷりの情感を込めて締めくくられるM13･･･どの楽曲も確かな存在感を放ち､しかも無意識で耳にスーッと馴染む聴き味｡

タイトルが示す「言葉について」という趣旨は､音を通じて馳せる想いを表現するヴェロニカの傑出した才能の開花を以って生み出された､アルバム･コセンプトの根幹そのもの｡ヴォーカル作品における｢発言｣の意図を限りなく高めた､繊細な作風は､MPBカバーは作には無かったヴェロニカの真のアーティスト･スピリットが聴いて取れるであろう｡オリジナル曲のみのアコースティックMPB作品として､最上級のクオリティを持つ逸品といえる｡

ゲスト･ミュージシャン:
Chico César, Carlos Malta, Toninho Ferragutti, Marcelo Pretto 他