ライセンス系レーベルのオランダのブリリアントから、ロシアのピアノ協奏曲を集めたBOX物。
近年流行りのクラムシェル仕様である。
ロシアと言いつつポーランドの作曲家が入っているあたり、なんとも中途半端で、全体的に帝政ロシア期の作曲家が多く、ちょっと選曲はマニアックだ。
音源の原盤はVOXやナクソスが多いが、ブリリアントの自社音源もある。
CDのそれぞれの感想を。
CD1→リャプノフのピアノ協奏曲集でドミトリー・ヤブロンスキー指揮、ロシア・フィルハーモニー管弦楽団とショレーナ・ツィンツァバーゼによる演奏。
ナクソスが原盤でナクソスらしい堅実な演奏。
CD2→ルービンシュタインの作品集で、ピアノ協奏曲第4番は、オトマール・マーガ指揮、フィルハーモニア・フンガリカとマイケル・ポンティのピアノ。
ポンティはVOXの看板ピアニストでどんな曲も一定の水準で纏めらる実力派。
この演奏も堅実な出来。
コンチェルトシュティックは、ヘルムート・フロシャウアー指揮、ウィーン交響楽団、フェリシア・ブルメンタールのピアノ。
ちょっと安全運転気味で演奏は面白くない。
CD3→メトネルのピアノ協奏曲第3番はピエール・カオ指揮、ルクセンブルク放送管弦楽団、バラキレフのピアノ協奏曲第2番とリャプノフのウクライナ主題による狂詩曲は、ジークフリート・ランダウ指揮、ウェストファリア交響楽団による演奏。
ピアノはポンティ。
これもVOX原盤。
オケはどちらも伴奏に徹しており、ポンティのピアノが聴きどころの一枚。
リャプノフは一枚目に続く登場だが、ピアノパートだけならこちらの方がよい。
CD4→カバレフスキーのピアノ協奏曲第1、第2番をインジュのピアノ、ヤブロンスキーとロシア・フィルでグラズノフのピアノ協奏曲第2番をヤブロンスカヤのピアノ、ヤブロンスキーとモスクワ交響楽団で収録。
共にナクソス原盤。
カバレフスキーはナクソスらしいこじんまりと纏めた作品を知る演奏。
グラズノフは一見地味だが、オケ、ピアノの盛り上げ方が上手く、そこそこ楽しめた。
CD5→カバレフスキーのピアノ協奏曲第3番とリムスキー=コルサコフのピアノ協奏曲をヤブロンスキーとロシア・フィル、リュウのピアノ、グラズノフのピアノ協奏曲第1番をヤブロンスカヤ、ヤブロンスキーとモスクワ響で演奏したもの。
4枚目と変わってカバレフスキーは中々のもの。
ピアニストのタッチが優しいのでオケも荒々しさはないが時折ロシアらしい爆音と曲に相応しい快活な好演。
グラズノフはやや大人しめ。
CD6→ハチャトゥリアンの作品集。
ピアノはヤブロンスカヤ、ヤブロンスキー指揮、モスクワ交響楽団による。
このコンビの録音は良い演奏が良く、これもそうだがもう録音がこじんまりとしてるのが難点。
CD7→モシュコフスキのピアノ協奏曲とシャルヴェンカのピアノ協奏曲第2番を収録。
両名ともポーランドの作曲家だが、当時ポーランドが帝政ロシア時代だったからだろうか。
モシュコフスキがハンス・リヒャルト・シュトラッケ指揮、フィルハーモニア・フンガリカ、シャルヴェンカがリチャード・カップ指揮、ハンブルク交響楽団の演奏で、ピアノはポンティ。
ここでもポンティのピアノが非常に上手い。
CD8→アレンスキーのピアノ協奏曲をイェルク・フェルバー指揮、ベルリン交響楽団、リッタウアーのピアノ、パデレフスキのピアノ協奏曲をヘルムート・フロシャウアー指揮、ウィーン交響楽団、ブルメンタールのピアノで収録。
アレンスキーの作品は珍しい部類に入り、ここではマイナーな演奏者による演奏だが、まずまず。
パデレフスキはルービンシュタインと同じ演奏者だがこちらの方が良い。
CD9→スクリャービンのピアノ協奏曲とフレンニコフのピアノ協奏曲第2番を収録。
ハンス・ドレヴァンツ指揮、ハンブルク交響楽団とポンティによるスクリャービン、ここでもポンティのピアノがさえ渡るもので聴きやすい。
フレンニコフはウラディミール・フェドセーエフ指揮、チャイコフスキー交響楽団とキーシンによる演奏で、ライヴらしい熱演。
CD10→ポール・フリーマン指揮、サンクトペテルブルク・フィルハーモニー管弦楽団、ピアノはデレク・ハンによるチャイコフスキーピアノ協奏曲。
有名な1番より2番が良い。
CD11→ラフマニノフのピアノ協奏曲集。
第2番は、ウラデミール・シレンコ指揮、ウクライナ国立交響楽団、クララ・ヴュルツのピアノ、第3番はイェジー・マクシミウ指揮、アイルランド国立交響楽団、ベルント・グレムザーのピアノで演奏されたもの。
3番はナクソス原盤、2番はブリリアント原盤。
どちらも良くまとまった聴きやすい演奏で悪くない。
部分部分でスラヴ的な音色が聴ける2番が良い演奏だろう。
CD12→プロコフィエフのピアノ協奏曲第1番、第3番、第4番を収録。アントニ・ヴィット指揮、ポーランド国立放送交響楽団、パイクのピアノで録音されたもの。
隠れた名演であり、パイクの跳ねるようなピアノと、ヴィットとポーランド国立放送交響楽団の見通しの良い演奏が特徴。
CD13→ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲集。
ワシリー・ペトレンコ指揮するロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団、ボリス・ギルドブルクがピアノを弾いたもの。
ナクソスが原盤でペトレンコ&ロイヤル・リヴァプールフィルのショスタコ交響曲全集の評判はよく、それに続く一枚として、出された物で現代的で質の高いもの。
しかしオリジナルのCDには弦楽四重奏曲をピアノに編曲した珍曲もあり買うならこれに関してはナクソス盤が良いだろう。
CD14→B.チャイコフスキーのピアノ協奏曲とモソロフのピアノ協奏曲第1番を収録。
チャイコフスキーはソロヴィエバのピアノ、ミンバイエフ指揮、ロシア音楽院室内管弦楽団演奏のナクソス原盤、モソロフはシュライヤーマッハーのピアノ、カリツケ指揮、ベルリン放送交響楽団の演奏でカプリッチョ原盤。
共にソヴィエト時代の先進的な曲だが、モソロフの作品が印象深く演奏も良い。
CD15→ボルトキエヴィチのピアノ協奏曲第2番と第3番を収録。
20世紀に活躍した作曲家だが、作品はロマン派のようなわかりやすいもの。
ドニガとポルセリーン指揮、ヤナーチェク・フィルの演奏も立派なもの。
CDは先にも書いた通り、クラムシェル仕様だが、ジャケットは廉価盤故か、同一のデザイン(黒を基調にタイトルが書いてある)で味気ない上に、何枚目かは分かりにくい。
1960年代の録音もあるが、いずれも年代の割には聴きやすく、デジタル時代の音源は問題なく聴けるのでは無いか。
ロシアのピアノ協奏曲というと、チャイコフスキー、その次ぐらいにショスタコーヴィッチやハチャトゥリアン、プロコフィエフ等位しか知られてないので、色々な曲が知れるという意味では良いBOXだろう。