ビューティフル・ラヴ -珠玉のジャズ・スタンダード集-Vol.1

ケニー・バロン スタンダードを収録したソロ・ピアノ・アルバムが2作同時発売！
ジャズ・ピアノの名手ケニー・バロンのソロ・アルバム、遂に登場！初心者からジャズ通まで、うならせるジャズ・ピアノの決定盤、華麗なるピアノ・タッチから繰り出される数々のフレーズは、まさにジャズそのものだ！一台のピアノからクリエイトされるサウンドは、時にはオーケストラをも凌駕する！

ケニー・バロンはジャズ界きっての器用人ピア二ストであると思う。前面に出て、素晴らしいソロをプレイすることもあれば、サイドメンとして、フロントのプレイヤーを引き立てる。冗長なソロで無駄に引っ張ったりせず、聴かせどころのポイントを押さえた、ストーリー性のあるインプロヴィゼーションがその持ち味だ。まず1曲目は“ビューティフル・ラヴ”。ミドル・テンポのスインギーなアレンジで、哀感あふれる曲調の中、見事にソロを歌わせて行く。続いてバラード“ボディ・アンド・ソウル”。情緒豊かにテーマを奏でた後に高速アルペジオのようなフレージングと絶妙なテンポで、適度にブレイクを盛り込んで進めるソロが絶品。次はフレディ・ハバードが作曲した愛らしいメロディを持つワルツ“アップ・ジャンプド・スプリング”。バロンは軽快なワルツに美しいコード・ワークを伴ったソロを交えてムーディに描いている。4曲目は“ドント・イクスプレイン”。ビリー・ホリディらの名唱でお馴染みのマイナー・バラードをメランコリックに奏でてゆく様は切なく、美しい。次はセロニアス・モンクの“ウェル・ユー・ニードント”。バロンにとっては、かつてセロニアス・モンクにトリビュートして結成したバンド、スフィアがあり、敬愛するモンクへのオマージュともいえるプレイが堪能できる。続いて名バラード“スカイラーク”。ホーギー・カーマイケルの名旋律がしっとりと情感たっぷりに響く。続いて、ラテン風なベースラインが始まり、テーマらしいテーマはなく、いきなりソロが進みつつ曲はどんどん先へ。この曲は何の曲なんだろう？と思っている間に起伏に富んだソロ・フレーズで魅了し、最後に“枯葉”のテーマが登場するというウィットに満ちたアレンジで意表をつく。8曲目はガーシュインの“ラヴ・ウォークト・イン”。スインギーでハッピーな感覚のアプローチで、ソロも変化に富み、軽やか。あと2曲。アルバムがもうすぐ終わりであるかのように思わせるロマンティックな雰囲気に満ちたスロー・ナンバー“メモリーズ・オブ・ユー”。ノスタルジックな雰囲気の中、ドリーミーなソロが展開される。ラストは“ララバイ”。こちらはバロンのオリジナル曲で、エンヤ・レーベルでの86年のリーダー・アルバム『ホワット・イフ』に収録されていたファンタジックで美しいワルツ。随所にロマンティシズムさえも感じさせる、このソロ・ピアノ・アルバムの最後を飾るにふさわしい。 ケニー・バロンというピア二ストの持つ熟成したピアニズムを本作を通して十分再認識されたし。 --「ライナー・ノーツ」2013/10