SACD

Bruckner: Sinfonie Nr.9 D-Moll (Wab 109)

Bruckner (1824-1896)

User Review :4.5
(5)

Item Details

Genre
:
Catalogue Number
:
BVCC34149
Number of Discs
:
1
Label
:
Format
:
SACD
Other
:
Live Recording, Hybrid Disc

Product Description

日本独自企画
ヴァント&ベルリン・フィル / ブルックナー:交響曲選集[5]
交響曲第9番

ヴァントが第5番とともに最も高く評価した第9番。1998年ベルリン芸術週間のクライマックスとなった究極の解釈。
 1998年9月のベルリン芸術週間はブルックナー特集で、ブルックナーの交響曲全曲がさまざまなオーケストラによって演奏されました。ヴァントはベルリン・フィルともに第9番を演奏し、その演奏はNHKによって日本への衛星生中継され、日本の音楽ファンにも熱い感動を与えました。
 ここでは、1999年のレコード・アカデミー賞(交響曲部門)を受賞したこの名演をSACDハイブリッド化。究極の演奏を究極のサウンドで堪能できる贅沢な一枚に仕上がっています。
 SACD化にあたっては、実際にこれらのライヴ収録を担当したベルリンのエンジニアで、その音作りに生前のヴァント自身も厚い信頼を寄せていたクリスティアン・フェルトゲン氏が、オリジナル・マルチ・マスターから自らマルチ・チャンネル用にリミックスし、それを東京のソニー・マスタリング・スタジオで綿密にDSDマスタリング。ベルリンのフィルハーモニーで繰り広げられた究極のブルックナー演奏が、これまでにない生々しさと立体感で再現されています。
 2チャンネルおよびCD層部分も、オリジナルの2チャンネル・マスターから新たにマスタリングしており、既発売のCD(16ビット)を上回るクオリティを実現。
 オリジナル・マスターからのミキシングおよびDSD化の全ての工程において、ティアック・エソテリック社開発の超高精度ルビジウム・クロック・ジェネレイター(G-0S)と最高級オーディオ・ケーブルを使用。オリジナル・マスターに刻み込まれた音楽情報の全てをそのまま再現するとともに、コンサートホールの空気感までも醸し出すリアルで繊細なサウンド・クオリティを実現。SACDは定評ある日本のソニー・プレス。

【SACD化にあたってのノート】
クリスティアン・フェルトゲン[エンジニア]
 今回BMGファンハウスよりSACDハイブリッドとして発売される、ギュンター・ヴァント指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団によるブルックナーの交響曲5曲は、もともと16〜24トラックでマルチ収録されたものである。CDで発売するにあたっては、そこから2チャンネルにミックスダウンする必要があったわけだが、それでもマルチ収録した全てのトラックの音を使う必要はなかった。ヴァントは、リハーサルで丹念にオーケストラの各声部のバランスをコントロールし、本番の演奏会では彼の理想とする完璧なバランスを引き出していたからである。つまり、ヴァントのバランス作りを再現するには、メイン・マイク5本、木管用のマイク2本、そしてティンパニ用の近接マイク1本という計8本のマイクの音声を使えば基本的には事足りたわけで、マルチ・トラックによって後で微調整する必要などなかったわけである。ティンパニ用のマイクとて、ピアニッシモのパッセージでロールの粒立ちをよくするために部分的に使用したに過ぎない。弦や金管パート用の近接マイクが収録した音声はマルチ・トラックに録音されたわけであるが、どうしてもバランスの再調整が必要なごく少数の場合を除いては、使われることはなかった。
 これらの録音を行ったベルリンのフィルハーモニーは、音響的に「世界最高のホール」というわけではない。しかし、このホールの音響を熟知すれば、バランスのよい録音は比較的容易にできるようになる。しかしそのためには何らかの形で残響を付加しなければならないのである。聴衆が満杯の状態で、ブルックナーの交響曲のようなダイナミック・レンジの幅広い作品を録音する場合は、特に音量の大きなパッセージの場合に、このホールはややドライになりすぎる傾向があるのだ。それゆえ、ホールの残響を拾ったアンビエント・マイクの音声やデジタル・リヴァーブ(コンピューターで作られる人工的な残響)は適宜使用した。
 SACDの5.1マルチ・チャンネル用ミックスに当たっては、フロント・レフトとライト・チャンネルのバランスは基本的に2チャンネル用のそれを用い、フロント・センター・チャンネルには、それら2つのチャンネルを邪魔しないように、主にオーケストラの中央に位置する木管パートの音声を当てている。リア・チャンネルには、アンビエント・マイクが拾った残響成分をより多くミックスしている。それ以外にもイコライゼーション、ディレイなどを必要に応じてさまざまに使用している。もちろんSACDのマルチ・チャンネルのバランスをどうとるかに定則はないし、むしろ今でもさまざまな試行錯誤が続いているといっても過言ではない。今回スーパーヴァイザーのゲラルド・ゲッツェ氏と私が辿り着いたバランスは、コンサートでホールの1F中央に座ってオーケストラを聴く、というものではない。つまり「リア・チャンネルはほとんど残響成分のみ」という作り方ではないのである。私が目指したのは、オーケストラのメインの音イメージはフロントの3つのチャンネルから聴こえつつも、あらゆる方向からオーケストラの音が聴こえてくる、というバランスである。そのためリア・チャンネルにも直接音をミックスしているが、それは実際にお聴きになるみなさんが、リスニング・ルームの音響や条件に応じて、お好みのバランスに調整いただければ結構である。私は、1999年にバレンボイム指揮ベルリン・シュターツカペレとベートーヴェンの交響曲全曲をベルリンのナレーパ通りにある旧東ドイツの放送スタジオでテルデック・レーベルのためにマルチ収録した時から、このバランスを採用するようになった。
 最後に、一言機材のことについて記しておきたい。今回のミキシングの過程で使用したティアック・エソテリック社の機材は素晴らしいものだった。特にマスタークロック・ジェネレーターには完璧な信頼を置くことができた。使い勝手もよいし、一部の狂いもなく正確に作動する。デザインも非常に美しい。驚嘆すべきマシンである。この機会を与えてくださったティアック・エソテリック社とBMGファンハウスに感謝したい。

【プロフェッサー・ヴァントの耳に忠実に】
ゲラルト・ゲッツェ[スーパーヴァイザー]
 私はハンブルク北ドイツ放送の「首席トーンマイスター」として、プロフェッサー・ギュンター・ヴァントの晩年の約20年間にわたる録音−−演奏会の録音だけでなく、スタジオ・セッションにおいても――のプロデュースをてがけてきた。初めての出会いは、プロフェッサーが1981年9月、北ドイツ放送交響楽団の首席指揮者への就任が決定してからの初めてのハンブルクでの定期演奏会で、モーツァルトのセレナータ・ノットゥルナ、ストラヴィンスキーの「プルチネルラ」組曲、シューベルトの「ザ・グレイト」という3曲を指揮した時で、私は演奏会のライヴ収録を担当したのだった。最初の数年間は何人かのプロデューサーが分担してプロフェッサーの録音を担当したが、彼は私の仕事ぶりをとても気に入ってくださったので、1986年からは私が一手に録音を引き受けることになった。ハンブルク以外の場所、つまり今回SACDハイブリッドとして発売される、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との一連の録音でも、プロデュースを担当することになった。
 プロフェッサー・ヴァントとは、長年に渡って、録音や音の再生技術について、録音すると音色がどう変化するか、また再生音は原音にどこまで忠実なのか、などについて、話し合う機会が多々あった。実際の編集に際して、スタジオで作業に立ち会ってくださることも多かった。意外に思われるかもしれないが、彼は、録音技術に関心を抱き、その進歩を喜んでいた。録音再生技術が進歩することで、自分の解釈をより正確な音響で聴き手に届けることが出来るからである。最晩年の10年ほどは高齢ゆえに編集スタジオに自ら足を踏み入れることはほとんどなくなったのであるが。それゆえ、今回の本格的なSACDハイブリッド化に遡ること数年前に、われわれが試験的に作ってみたベルリン・フィルとのブルックナーの交響曲第8番のマルチ・チャンネルのミキシングを、プロフェッサーが実際にお聴きになることはなかった。
 プロフェッサー・ヴァントは、基本的には、自分が指揮台の上で聴くバランスを好んでいた。それでこそ、自分の作り出すオーケストラのバランスを判断できたからである。また演奏会のライヴ録音の場合(晩年はほとんど全てがそうだった)、聴衆が入ったことでドライになりがちなホールの音響を補うために、録音では残響を加えることを望んでおられた。
 ライヴ録音された演奏の場合、プロフェッサー・ヴァントは基本的に長いテイクを使うことを主張した。ベルリン・フィルや北ドイツ放送響の定期演奏会は同一プログラムで複数回演奏会が組まれていたため、我々はその全ての演奏を収録した。演奏会のあと、彼はその録音テープをスイスの自宅に持ち帰り、まず、録音された全ての演奏を丹念に聴く。そして、どの日の演奏がよいか(あるいはどの日はどの楽章がよいか)判断し、我々はその判断に基づいて、オーケストラにミスがあったり、ノイズがあったりする箇所を、他の日の演奏を使って修正するわけである。この作業に当たっては、プロフェッサー・ヴァントは、私の判断に全幅の信頼を置いていてくれた。
 こうした経験から、私はプロフェッサー・ヴァントが5.1チャンネルというマルチ音響再生技術に接したとしたら、どのようなバランスを聴きたかったか、手に取るように想像することが出来る。マエストロが常に聴きたいと願っていたのは、指揮台の上でオーケストラの音響に全身が包まれているという音のイメージだった。従来の2チャンネル・ステレオ再生ではそれを100%叶えることは出来なかったが、SACDやDVDのマルチ・チャンネルによって、家庭でも簡単にそれを再生することができるようになったのである。彼がこれを喜ばないはずはない。我々が今回のSACD化に当たって常に心がけたのは、「プロフェッサー・ヴァントの耳に忠実に」なのである。

アントン・ブルックナー:
・交響曲第9番ニ短調[原典版](61:59)
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 指揮:ギュンター・ヴァント

 録音:1998年9月18&20日、ベルリン、フィルハーモニー[ライヴ]
 プロデューサー:ゲラルド・ゲッツェ
 エンジニアおよびマルチ・チャンネル・リミックス:クリスティアン・フェルトゲン
 (ベルリン、シャローラン・スタジオ)
 SACD Hybrid
 CD 2.0ch./ SACD 2.0ch./ SACD 5.1ch.

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Comprehensive Evaluation

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ヴァントがブルックナーの交響曲の中でも特...

投稿日:2011/03/26 (土)

ヴァントがブルックナーの交響曲の中でも特に高く評価していたのが、第5と本盤におさめられた第9であったというのは、ヴァントの伝記などを紐解くとよく記述されている公然の事実だ。実際に、ブルックナーの第9は、ヴァントの芸風に見事に符号する交響曲と言えるのではないか。最後の来日時(2000年)に、シューベルトの「未完成」とともに同曲の素晴らしい名演を聴かせてくれたことは、あれから10年経った現在においても鮮明に記憶している。いずれにしても、本盤におさめられた演奏は至高の超名演だ。同時期にミュンヘン・フィルと行った演奏(1998年)もあり、ほぼ同格の名演とも言えるが、同曲の峻厳とも言える性格から、オーケストラの音色としてはベルリン・フィルの方が同曲により適していると考えられるところであり、私としては、本盤の方をより上位に置きたいと考える。なお、前述の来日時の2000年盤との比較については、なかなか難しい面があるが、オーケストラの安定性(ホームグラウンドで演奏しているかどうかの違いであり、北ドイツ放送交響楽団との技量差はさほどではないと考える。)において、本盤の方がわずかに上回っていると言えるのではないか。なお、本名演に匹敵すると考えられる同曲の他の名演としては、シューリヒト&ウィーン・フィル盤(1961年)、朝比奈&大阪フィル盤(1995年)が掲げられるが、前者は特に終楽章のスケールがやや小さいこともありそもそも対象外。後者については、演奏内容はほぼ同格であるが、オーケストラの力量においては、大阪フィルはさすがにベルリン・フィルと比較すると一歩譲っていると言えるだろう。今後、本名演を脅かすとすれば、未だDVDも含め製品化されていない、朝比奈&シカゴ交響楽団による演奏(1996年)がCD化された場合であると考えるが、権利関係もあって容易には事が運ばないと考えられるところであり、おそらくは、本名演の天下は、半永久的に揺るぎがないものと考える。本名演でのヴァントのアプローチは、いつものように眼光紙背に徹した厳格なスコアリーディングによって、実に緻密に音楽を組み立てていく。造型の堅固さにも際立ったものがある。金管楽器なども最強奏させているが、無機的な音はいささかも出しておらず、常に深みのある壮麗な音色が鳴っている。スケールも雄渾の極みであり、前述の堅固な造型美や金管楽器の深みのある音色と相まって、神々しささえ感じさせるような崇高な名演に仕上がっていると言える。特に、終楽章のこの世のものとは思えないような美しさは、ヴァントとしても、80代の半ばになって漸く到達し得た至高・至純の境地と言えるだろう。いずれにしても、前述のように、本名演が古今東西の様々な名演に冠絶する至高の超名演であるということに鑑みれば、ヴァントは、本超名演を持って、ブルックナーの第9の演奏史上において、未踏の境地を切り開いたとさえ言えるだろう。録音もマルチチャンネル付きのSACDによる極上の高音質録音であり、この崇高とも言うべき至高の超名演の価値を高めるのに大きく貢献している点も忘れてはならない。

つよしくん さん | 東京都 | 不明

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ヴァントの創り出す音楽は,緻密で均整のと...

投稿日:2009/09/13 (日)

ヴァントの創り出す音楽は,緻密で均整のとれた完璧なものだと思います。だからかも知れませんが,音楽が息苦しく感じます。もっと開放的な響きで楽しめる音楽であってもよいのではないでしょうか。また,SACDの音としては,開放感や伸びやかさが足りず,ヴァントの音楽と相まってますます息が詰まりそうです。好きな人にはたまらないでしょうが,合わない人には合わないと思います。私としては,★★★くらいです。

バリトン さん | 千葉県 | 不明

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エソテリックとの共同作品だったはず。原版...

投稿日:2009/05/21 (木)

エソテリックとの共同作品だったはず。原版から起こすのにも、最大限音質にこだわっていたとのこと。期待はしていたが、それ以上だ。SACD層ばかりに目が行きがちだが、何気にCD層もSBMを使うなど気を使っている。圧倒的な音質のよさである。音質にこだわる人ならほしくなるだろう。

KEI さん | 神奈川県 | 不明

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