Night and Day

夜も昼も、好きな本を読んだり、好きな映画を観たり、好きな音楽を聴いたり、そして時々、誰かのことを考えたり、そうして一日を過ごすことができれば、どんなに素敵なことでしょう。
　「Night and Day」は、かつて偉大な作曲家コール・ポーターが書いたスタンダード・ソングで、「夜も昼も」という邦題でもよく知られています。
この曲は、月明かりの下でも太陽の下でも、どんな時でも大切な人を想う甘いラヴ・ソングで、今もなお多くのジャズ・ミュージシャンから愛され続けてカヴァーされています。
　今回、「Night and Day」をテーマにして2枚組のコンピレイションを選曲しました。“ナイト・サイド”は月影に揺らめく安らかな曲を、“デイ・サイド”は太陽に照らされる昼は快い曲を、MUZAKのカタログから選んでそれぞれに並べました。
　夢見心地の“ナイト・サイド”には、カナダの妖精ことダイアナ・パントンが薄紅色の歌声でそっとささやきかける、グレン・ミラー作曲の「Moonlight Serenade」。ヴァイオリンの名手、ステファン・グラッペリが切ない旋律を奏でる、ホーギー・カイマケルの「Stardust」。ブラジルの詩人ポリーニョ・ガルシアがチェット・ベイカーへ想いを馳せて紡ぐ「That Old Feeling」。そしてカーリン・クロッグの神秘的な歌声が夜空にゆらめくスティーヴ・キューンの名曲「Meaning Of Love」など、どれもメランコリックに胸を締めつけます。
　
　心躍る“デイ・サイド”には、エイブラムス先生とストロベリー・ポイントの子どもたちによる愛らしい合唱が幸せを運ぶ「I Wonder」。ドイツ出身のピアニスト、ティチアン・ヨーストのユーロ・ピアニズムが光る洗練されたピアノ・タッチがまぶしい「Joyful November」。知られざる南アフリカのジャズ・ヴォーカリスト、トゥトゥ・プワネがとびきりスウィンギーにカヴァーしたボブ・ドロウの「I Just About Everything」。そしてヴィヴラフォン奏者、カル・ジェイダーが生みだす洒落たアンサンブルが心地いい「Armando's Bossa」など、どれも軽やかに空間を演出してくれます。
　さらにジャネット・サイデルとリンカーン・ブライニ―が歌う「Night and Day」を、それぞれのサイドに収録しました。ジャケットは、親密な雰囲気の中でスモール・コンボをバックにまろやかな歌声を聴かせてくれます。リンカーンは、ビーチ・ボーイズを彷彿させるコーラスも印象的な、得意のウェスト・コースト・ジャズ風味に仕上げています。どちらもこの作品でしか聴くことができない特別なカヴァー・ヴァージョンです。
　今日も楽しかった一日が過ぎようとしています。ジャズ・サックスの巨人、アルバート・アイラーが吹く「Going Home」のメロディーが流れてきたら、さあお家へ帰りましょう。明日は何をして過ごそうかな、そんなことを考えながら。