イギリス音楽のエキスパートだったハンドリー。そのしっかりとした構成力と爽やかな音楽作りは、ここでも健在。リトルの、そよ風のように歌うVnとの協演は、シベリウスの協奏曲をより美しく磨き上げていく。 その反面、ドヴォルザークは民族色は薄い。が、やはり端正で美しい演奏だ。夭折したハンドリーの、隠れた遺産だ。

どっしりとしていて硬質、推進力がある。聴かせるところはじっくりと聴かせる事も忘れない。その緩急のコントラスト。緩徐楽章のメロディは泣かせる。３楽章の力強い説得力。ドヴォルザークの協奏曲は、このアッカルドの演奏を聴いて、好きになった。好きになったなんていうものではなく、ドハマリしたのだ。個人的にはテツラフよりも良いと思う。もっと評価されていいし、評価されるべき演奏だ。安いのでちょろっと買ってみて聴いたらその驚く程の演奏の質の良さにびっくり！な一枚。

シベリウスに関してのみですが、アッカルドの抜群のテクニックに裏打ちされた、懐の深い大きな表現は他に聞けないものでした。特に第二楽章は１０分もかけており、同曲異盤の８分前後から１分以上も長くかけて、ゆったりと哀切感たっぷりに切々と謡いあげています。第一楽章でも他で盤では弾き飛ばしてしまうところを”間”を持たせてディヴィスが付けたりと、デフォルメと感じる人もいるかも知れませんが、しっかりと消化しているという点で好感が持てました。

いずれも旋律に満ち溢れた有名曲、ともすれば、飽きが来やすい曲でもありますが、ビーチャムの演奏で聴くと、何度も聴きたくなります。 どちらも聴きやすいとはいえモノラル録音で、響きの拡がりを要求するこの二曲には、多少苦しいところはあるものの、シベ２の1楽章冒頭から、過剰な神秘性・幻想性を避け、ビーチャム一流のテンポ感・リズム感で、聴く者をたちどころにシベリウスの世界に引き込んでいくところなど、やはり、一聴の価値があります。曲が終わった後の拍手喝采は、両曲ともすざまじいものがあり、これがイギリス人？と驚くばかり。