シューベルト：アルペジオーネ・ソナタ、フランク：ヴァイオリン・ソナタ［チェロ版］、他　ワシリエワ（ｖｃ）　

タチアナ・ヴァシリエヴァ / アルペジョーネ・ソナタ

1977年、ロシアのノヴォシビリスクに生まれた彼女は、1994年、17歳のときにミュンヘン国際音楽コンクールで最高位を獲得し、1999年、ニュージーランドの第３回アダム・チェロ国際コンクールで第１位、2000年、第１回パブロ・カザルス国際チェロ・コンクールで第２位、2001年、パリのロストロポーヴィチ国際チェロ・コンクールで優勝という輝かしい経歴を持つロシアの大器。

ストラヴィンスキー：イタリア組曲、ブリテン：チェロ・ソナタ、デュティユー：ザッハーの名による3つのストローフ、ドビュッシー：チェロ・ソナタという20世紀作品プログラムにより、NAXOSからCDデビューを飾った彼女ですが、活動の拠点をフランスに移したことに伴い、アコール・レーベルと契約して、今度は20世紀無伴奏チェロ作品集をリリース。
　これも、シチェドリン：ロシアの断章、デュティユー：ザッハーの名による３つのストローフェ、サーリアホ：回転と呪文、ラスカトフ：ドラマティック・ゲームズ、ストロッパ：それが厄介なのだ･･･、ペンデレツキ：スラヴァのために、シュニトケ：無伴奏チェロのための即興曲という個性的なプログラミングでしたが、『ザッハーの名による3つのストローフェ』は再録音にあたり、解釈もかなり変わっていますので以下に各曲の演奏時間を記しておきます。

HENRI DUTILLEUX:3 Strophes sur le nom de Paul Sacher
I. Un poco indeciso　03:41→04:06
II. Andante sostenuto　02:51→04:21
III. Vivace　02:58→03:03
TOTAL　09:30→11:30

　第1弾、第2弾とハードなプログラミングによる高度なチェロ演奏を披露してきた彼女ですが、第3弾となる今回のアルバムでは、歌心にあふれたチェロの魅力を満喫させるプログラミングでファンの期待に応えてくれます。
　といっても、実際には3曲ともオリジナルはチェロのための作品ではないというあたりに、ヒネリの効いた選曲センスがあらわれており、やはり一筋縄では行かない個性の強さを感じさせてくれますが、演奏そのものは素晴らしいものです。
　シューベルト《アルペジョーネ・ソナタ》の何と誠実でみずみずしい音楽！　フランクのソナタ（名作ヴァイオリン・ソナタの編曲版）でも、微風が軽やかに通りすぎていくような第4楽章「アレグレット」など、落ち着きとパッションの発露の交替が実に見事。得意のストラヴィンスキー《イタリア組曲》では軽妙な作品の味わいを好ましく伝えてくれます。NAXOS盤との比較も興味深いところ。演奏時間の差異は以下の通りです。

IGOR STRAVINSKY:Suite Italienne
Introduzione　02:09→02:25
Serenata　03:09→03:15
Aria　05:33→05:52
Tarantella　02:05→02:09
Minuetto e Finale　04:18→04:21
TOTAL　17:14→18:02


■シューベルト：アルペジョーネ・ソナタ イ短調 D.821
　11:05-04:21-08:23 T.23:49
■フランク：チェロ・ソナタ イ長調
　06:17-07:50-07:44-06:20 T.28:11
■ストラヴィンスキー：イタリア組曲
　02:25-03:15-05:52-02:09-02:09-02:12 T.18:02

タチアナ・ヴァシリエヴァ（Vc）
パスカル・ゴダール（P）

録音：2003年12月、パリ