Trio Live

「巨匠(マエストロ)」の魂が聴こえる
５０年に渡りトップに君臨するユルトルジェの真髄！
スタンダードナンバーを自在にスウィングさせる傑作トリオライブ

Rene Urtreger (p), Yves Torchinsky (b), Eric Dervieu (ds) Rec. Sep.30, 2005

＜以下、ライナーノーツ＞

低音の打鍵に導かれて１曲目の"Lovefor sale"が流れ出すとぐっと演奏に引き込まれる。ピアノは「巨匠」ルネ・ユルトルジェ。ベースもホンモノの音がしている。これはいいぞ、と音楽に向かい合う。

全９曲はあっという間だ。若さの弾けるような"JoueBud Powell"から実に５０年を第一線で過ごしてきたユルトルジェは間違いなくジャズ界で現役最古参の一人であり、リビング・リジェンドなのだ。

しかし、しかし……その演奏から受ける印象は年齢から想像する枯淡の境地からおよそほど遠い。何という力強いタッチなのだろう。そして何というみずみずしいフレーズをつむ
ぐのだろう。

誰もが知っている名曲の数々を、歌心豊かにドライヴさせるそのピアノからは老いの影などカケラも感じられない。

むしろ年輪を重ねた大樹が、広げに広げた枝々をあざやかな若葉で彩るさまを目の当たりにするような感動がある。

単に才能ではない。まちがいなく充実した人生がもたらす何かがそこにあるのだ。ダニエル・ユメールが今もなお驀進しているのと同じく、HUMの
同朋であるユルトルジェもまた歩みをやめようとはしないのか。

想いある人間はいつまでだって進化することができるのだな、とそんなことを教えてもらったような気がする。

凡百の演奏とは次元が違う。素晴らしいライブ・アルバムだ。聴けば、分かる。
Text by 北見柊