ようやく、待ちに待ったセルフ・カヴァー集が再発売されることになりました。
70年代後半からMOR系のアーティストに提供してきたヒット曲を作者自らが唄った作品に書き下ろしを加えた企画盤で、渾身のオリジナル『Fool’s Paradise』とは一味違った、コンポーザーとしての力量が発揮された1枚です。
個人的な聴きどころとしては、センチメンタルな Steve Perry の佳曲「Foolish Heart」や、心に沁みる Michael Johnsonの名曲「哀しみの序章 Bluer Than Blue」、クールでシックな TOTO の隠れた逸品「I’ll Be Over You」、創作能力の衰えを感じさせない珠玉のバラード・ナンバー「Reunion」、原曲とは違ったアプローチで独特の味を醸し出している「Savin’ It Up」といった辺りでしょうか。
欲を言えば、England Dan & John Ford Colry の「悲しみの彼方に It’s Sad To Belong」や Gene Cotton の「心の扉を開く前に Before My Heart Finds Out」などにもチャレンジしてほしかったところですが、何となくカラーが違っているようでもあり、そう考えるとこのセレクションがベストだったような気もします。
落ち着いたトーンと彼の創り出す温かいメロディーが疲れた心をやさしく癒してくれる、そんな大人の’Words & Music’集です。
オープニングからゾクゾクさせられる良質のAORナンバー「We’re So Close」。昼下がりの街角をそぞろ歩きたくなる「One More Fool」。聴き手の心を捉えて離さない優しくもセンチメンタルなバラード「Savin’ It Up」。何となく Rupert Holmes をイメージさせる「Win Back Your Heart」。小粋でハイセンスな佳曲「Dues」…。
ソングライターとしてではなく、シンガーとしての高い意識で創られたアルバムとして、良質の作品が揃った名盤だと思います。
その昔、FMラジオのAOR特集番組で紹介された Mary MacGregor との息の合ったデュエットが聴ける「Second Chance At Love」が個人的なお気に入りです。ソフトなタッチで描かれたMORのラヴ・ソングではありますが、この曲での彼女に起用は、何よりも”当たり”だったように思います。
この勢いで、セルフ・カヴァー集『Words And Music』も再リリース願いたいものです。