Portico Quartet

＊ＵＫのインストルメンタル・ミュージック・シーンのカッティング・エッジをゆく４人組

　２年前に紹介した『イスラ』（ライス PPR-5142）が一部の店舗で大きな評判を呼んだイギリスの４人組ポルティコ・クァルテット。ジャズ、ワールド、アヴァンギャルド、インプロ、ニューエイジ…、これら全ての音楽の要素を内包する彼らは、インディーズ時代を経てピーター・ガブリエルが主催するレーベル“REAL WORLD”に所属しています。そして前作『イスラ』に続く新作をこの度発表してくれました。
　ポルティコ・クァルテットは2005年にロンドンで結成。サクソフォン、ダブル・ベース、ドラムズを基本ラインに、ピアノやエレクトロニック楽器も加えた新世代インストルメンタル・グループです。さらに“21世紀の打楽器”と知られるハング・ドラム（スティール・ドラムをひっくり返したような打楽器）をバンドにフィーチャーし大きな話題を呼びました。
　2007年にファースト・アルバム『ニー・ディープ・イン・ザ・ノース・シー』（サンビーニャ・インポート PPSI-2057）でデビューしスマッシュ・ヒットを記録。イギリスの有名誌Time Outにおいて2007年のベスト・ジャズ・アルバムにその作品が選ばれたほか、2008年にはかの有名な音楽賞“マーキュリー・ミュージック・プライズ”にノミネートされ最終選考まで残るなど、新人ながら大きな注目を浴びました。そして2010年のセカンド作『イスラ』は名プロデューサー、ジョン・レッキーの手腕のもと、ご存知ロンドンのアビー・ロード・スタジオで録音され、こちらも大きな話題作となりました。
　そして約２年の歳月を経てリリースしたのがサード作となる本作で、再びREAL WORLDからのリリースとなりました。前作までハングをプレイしていたニック・マルヴェイが脱退し、代わりにハング兼キーボード奏者のケイル・ヴァインが加入、新生ポルティコ・クァルテットとなっての第一弾作品でもあります。本作では前作以上にエレクトロニクスとの融合が進み、抽象的かつ幻想的なアレンジが次々と登場。アクースティック楽器をより一層引き立たせるのと同時に、彼らの持ち味であるアーティスティックな姿勢はこれまで以上のものとなり、聞く者の創造力を掻き立ててくれます。
　今回グループ名と同じタイトルにしたのも、そんな本作への強い自信の表れと言えるのでしょう。そして若い感性が作り出すカッティング・エッジ・サウンドに、是非是非注目してください。