Iki-arada: イキ アラダ〜二人のあいだに

昨年のワールド・ミュージック・シーンにおいて、サプライズと言える出来事のひとつだったのが、
トルコの双子フラメンコ・デュオ“オイキュ＝ベルク”の登場でした。トルコ音楽とフラメンコという、一見無関係そうな二つの音楽を結びつけた事も大きかったですが、ジャケット写真や映像などを通して見れた二人のルックスの良さも、さらに人々の関心を集めた要因だったようです。それはファースト・アルバム『クスメット〜運命』に収録されていた「家の前の塗られた柱」という曲のプロモーション・ヴィデオがYouTubeで当時700万回以上ものアクセス数を記録した事が裏付けています。そんな人気者の二人が新作を携えて再びシーンに戻ってきてくれました。

双子の兄姉、オイキュ（女性：ヴォーカル）とベルク（男性：フラメンコ・ギター／ヴォーカル）は1982年8月4日生まれ。オイキュはトルコ古典声楽を、ベルクは本場スペインでフラメンコをそれぞれ学んでいましたが、その二つを融合して新しい音楽を作ろうというアイディアをオイキュが提案し、スペインからベルクが帰国した後に、このユニットが誕生しました。

一流のフラメンコ音楽家から直接学んだというベルクの本場仕込みのギター・プレイだけでも十分素晴らしいのですが、そこにオイキュがトルコ風味溢れる節回しで華麗なヴォーカルを聞かせてくれるのが、彼らの音楽スタイル。さらにそこにポップでキュートなエッセンスを振りまき、より親しみやすく聞かせてくれるのが、彼らの最大の魅力です。いまのフラメンコの多くは眉間に皺を寄せて聞くようなシリアスなものばかりですが、彼らのフラメンコは非常に健康的で、聞く者を自然と笑顔にさせてくれるという、不思議な力を持っているのです。

そんな彼らの最新作である本作も、基本的なコンセプトは前作を踏襲していますが、ギターとヴォーカルはより洗練され、彼らの理想とするフラメンコとトルコ古典声楽との高度なコラボレイションもより完成に近づいてきたように感じさせます。さらに今回はトルコの民謡系音楽家の曲なども取り上げるなど、ファーストにはなかった新しい試みも行っています。そしてますますユニークさが増した本作は、本国でもヒット・チャートにランクされるなど、国内でもかなり評価が高まってきたようです。