安価でないので購入を渋っていましたが,つよしくんのレビューで購入。これ,大変な名演の記録ではないでしょうか。これほど充実した名演のすべてを一日で録音できたことは驚異ですらあります。シューベルトの古典的な4番はバルビの手にかかると,特有の粘っこいレガートやカンタービレによってより劇性の強い「悲劇的」となり,その重々しさはシューマンやブラームスにつながるロマン性さえ感じさせます。ブリテンのセレナードも,説得力のある場面づくりが行われ,作品の詩情の豊かさをしみじみと味わえます。この演奏なら,作品を初めて聴く人でも作品の価値を深く理解できるでしょう。シベリウスの2番は,つよしくんの「バルビ,2番,4種類」は誤りで,以下の5種類あるようです。「@1940年NYP(T8’22” U12’31” V5’41” W12’25”) A1952年ハレO.(T9’22” U13’32” V5’42” W12’42”) B1962年RPOT10’13” U14’26” V6’01” W13’39”) C1966年ハレO.(T10’24” U14’59” V5’59” W14’21”) D本録音1969年ケルン放送響(T10’38” U14’43” V6’09” W14’13”) この演奏についてつよしくんの「あまりのテンションの高さに.....バルビローリの唸り声が聴こえ...」とあるのも,実は「バルビが唸り声を上げてまでオケのテンションを高めている」のが実情で,「バルビローリの燃えるような指揮に,アンサンブルのタテの線が合わないなど,若干の戸惑いを感じて....」とあるのはオケが戸惑いを感じることはなく「バルビが本番でオケを大いにあおったため,アンサンブルの乱れが生じた」とするのが妥当ではないでしょうか。さてこのシベリウスの2番。これまでの4つの録音も力演揃いで,特にNYPとの録音はスリムで颯爽としながら豊かな情感もたたえ,独特の魅力があります。しかし本録音の演奏は,それらとは次元の異なる高みへ達しているのではないでしょうか。1〜3楽章ではゆとりのある表現が抒情性をさらに深めます。また,フィナーレでは深い抒情性に加えて、緩急自在の表現により情熱の吐露ともいうべき壮絶で圧倒的な演奏を築き上げ,聴き手の魂を激しく揺さぶります。クライマックスの高揚感は並ではありません。御存知の方も多いと思いますが,ある演奏会の終演後,楽屋で興奮冷めやらぬバルビが突然「God!I love that music!]と言って妻の手を固く握りしめ,涙したといいます。このシベ2は正にそんなバルビだからこそなし得た,魂のこもった熱い熱い演奏。唯一絶対無二の経験をさせてくれます。正直な所,こんなにいいとは思わなかった。