牧野貴作品集Vol.1 With ジム・オルーク

フィルムとビデオ、ふたつのメディアを最大限に活用し、また映像と音楽を同価値に捉えた作品をコンスタントに発表し続けている若き映像作家・牧野貴。ジム・オルークとのコラボレーション、5作品を収録。

【収録作品】
■「No is E」
3重、4重、5重と重ねられた海はその運動の秩序を、意味を失い、混沌へ回帰する。
意味と、名前を奪われた光の運動は、それを見る人により、投げかけるものを、変化させていく。分解された海が再び海へ回帰して行く様を描いた、否定と混沌の映画。

■「Elements of Nothing 」
『No is E』の発展形態として作られた作品。人間の視覚を第二段階へと運ぶことを目的とした。最大で24重に重ねられた光の運動と変化の持続は、鑑賞者の中に「存在しない、第二の運動」を誘発させる。運動により巻き起こる風、そして木、水、炎、人間、何もかもが同居した状態は、一度無に帰すが、映画が上映されている間の、鑑賞者の中でのみ、再生、秩序化が行われていく。

■「The Seasons 」
Elements of Nothingの発展形態の提示。水と木々から作られた有機的なハーシュ・ノイズは、鑑賞者の感情の中に、新たなイマジネーションの渦を誕生させていく。

■「still in cosmos」
東京都写真美術館でのインスタレーションの為に制作した作品。2009年に映画版として再構成した。目指したのは、多重露光による""完全なカオス""であったのだが、完成したら全く逆の現象""コスモスの誕生""が起こったという、前人未到な奇跡的な映画。この映画は、人類はカオスをコスモスに変える力を持つという事実を視覚的に証明している。イメージと音楽が、宇宙の壁を打ち砕き、
新たな世界へ突入する。

■「WORLD」
2009年、爆音映画祭の依頼で製作された、初の長編作品。この映画において「水」「炎」「風」「土」と呼ばれる四大元素は、それぞれ個別に存在しながら反応し合い、ひとつの“ 主観" を軸に、巨大な円環運動を構築しています。それら四大元素は互いに共鳴し、振動し合い、争い、愛し合う事で、世界という概念を、各個人の“主観"の中に育くんでいきます。スクリーンの発する「第1 の映像」。それに対峙したとき、“主観"の想像力の中に発生する「第2 の映像」。“主観"があらかじめ持つ、有機的な光の記憶としての
「第3 の映像」。そして、音楽により発生し、内的に繰り広げられる「第4 の映像」。4つの「映像」が出会ったときに、この映画は創造(クリエイト)され、生成を続けます。“主観"の数だけ、「第5 の映像」=新しい「World」が誕生するのです。

【スタッフ&キャスト】
監督:牧野貴 音楽:ジム・オルーク