天才的ともいわれたベーシスト、Miroslav Vitous(1947年〜)は、Weather Reportの創設メンバーのひとりであり、1971年のファーストから、「Live in Tokyo」を含む5枚のアルバムに参加。
バンド脱退後も、WRへの想いは強かったようで、2009年には「Remembering Weather Report」というそのものズバリのアルバムをECMからリリースしています。
そしてこの「Music Of Weather Report」。70歳を目前にして、ここまでWRに切り込む作品を制作するとは、思いもよりませんでした。
自己の音楽活動の総決算という意味合いもあるのでしょうか?
全体を通して、やはり初期のWRにあった「Vitous的なもの」を拡大再生産しているように感じました。ビートよりもムーディなサウンド作りに注力している部分に、それを強く感じます。
そして、当時は犬猿の仲と言われたJoe Zawinul(1932年〜2007年)の「Birdland」を正面切って取り上げているのには驚かされました。この「Birdland Variations」には、同じくZawinul 作の「In A Silent Way」を思わせるフレーズも登場し、VitousによるZawinulへのオマージュと解釈してもいいと思います。
録音は、Vitous のセルフ・プロデュースにより、2010年から2011年にかけて行われています。
メンバーは、Miroslav Vitous (double bass.key)、Gary Campbell (ss.ts)、Roberto Bonisolo (ss.ts)、Aydin Esen (key)、Gerald Cleaver (ds)、Nasheet Waits (ds)。ツインサックス、ツインドラムスという意欲的な編成。6人が高度な演奏技術を駆使して、自由にイメージを膨らませ、サウンドを構築しています。
目の前に幻想的な風景が広がるようで、久々に往年のECMを思わせる作品に出合うことが出来ました。